029

 バーニィたちだ。

「おやおや、お邪魔だったかな」

 バーニィがにやにやしながら馬を降りる。

「お、お前たちが遅すぎるから、待ちくたびれていたんだ」

 ヨミがしどろもどになっている。

「あ、ペミカンじゃないっすか。おかしら、ずるいですよ」

 キャットが馬を降りながら、ヨミの手元を覗き込んだ。

「まだあるよ」

「お、すまないな、レン」

 僕が放ったペミカンをキャットが受け取る。

「馬を休ませよう。このぶんだと日が暮れるまでに余裕で向こうに着くだろう。俺たちも腹ごしらえといくか」

 バーニィがTBをふり返ると、TBは何かをどさっと地面に放り投げた。

 立派な野うさぎが二羽。

「これ、TBが?」

 TBはにやっと笑って自分の二の腕をぱんぱんと叩いた。

「うう。また肉か……」

 ヨミがつぶやいた。

 でも、結局ヨミはTB特製の兎スープを二杯たいらげた。

 TBは鮮やかな手さばきで兎をバラすと、ハーブと根菜、塩コショウを鍋に入れて小一時間煮立てた。

 スープはシンプルなのにおいしかった。TBのさばき方とハーブのおかげで肉の臭みがほとんどしない。だからヨミにも食べやすかったんだろう。

「あーこれでジャガイモがあればなぁ」

 キャットがしみじみとつぶやいた。TBが顔を上げる。

「いや、別にケチつけてるわけじゃ……」

 TBはうん、うん、とうなずいている。

「え、あんたもそう思うかい?」

 再びTBが大きくうなずく。

「俺の生まれ故郷のジャガイモはすごいんだぜ。いや大げさじゃなくて、ただ茹でただけなのにびっくりするくらいうまいんだ。食べさせてやりてぇよ。あと、おススメの食べ方としては――」

「しまった。こいつのジャガイモ談義は長いんだ」

 ヨミのうんざりした声も耳に入らない様子で、キャットは熱心にTBに話しかけている。

「で、どうするお嬢ちゃん。いったん町に入るか、それとも直接鉱山に行くか」

 バーニィが食器を片付けながらたずねた。

「とりあえず、お前たちは町にいてくれ。まず私が行って事情を説明してくる」

「わかった」

 腰を上げようとしたバーニィをヨミが止めた。

「ちょっと待て」

「どうした」

「いや、その、なんだ。ココアを飲んでいかないか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る