アライグマくんとかばんちゃん
むきめい
出会い
ここは、とある森の中。小道の脇にかばんちゃんが倒れていました。大型セルリアンとの戦いで、サーバルちゃんをかばってセルリアンに取り込まれたかばんちゃん。そんなIFの世界。
かばんちゃんがセルリアンに取り込まれた瞬間、かばんちゃんの意識はここに飛ばされてきたようです。倒れていたのはほんの一瞬。すぐに気がついて起き上がりました。ジャパリパークよりもなんだか風景がのっぺりしている気がします。
すると向こうからこちらに近づいてくる姿が見えました。のっしのっしと歩くその姿は誰が見ても乱暴者だと思うことでしょう。茶色い全身でイライラしているのか、こめかみには筋が入っています。
そう、かばんちゃんが出会ったのは、サーバルちゃんではなく、
「たべないでください~」
「たべねえよ!」
2本足で歩くアライグマでした。
「す、すいません……。こ、ここはどこですか?」
「ここはどこかって言われたって、それは森だ」
「そんなことは分かってます!」
かばんちゃんはアライグマくんに噛みつきます。
「お、おう……」
さすがのアライグマくんもかばんちゃんの気迫に圧されてしまいました。
「ぼくは……サーバルちゃんやフェネックさんが心配で早く皆と会わないといけないんです」
それを聞いたアライグマくんは
「そのサーバルってのは知らないが、フェネックなら知ってるぞ」
と言い、小道の先を指差します。
「本当ですか!? ぼくを、連れて行って下さい」
今までの気迫や、ただならぬ状況を感じたアライグマくんは同情に似た気持ちで
「ついてこい」
とフェネックに会いに行きます。
「そういえば、自己紹介してなかったな。オレはアライグマ。おまえは?」
道すがらアライグマくんはかばんちゃんに話しかけます。
「アライさん? ではないみたいですね。……ぼくはかばん、って言います。よろしくお願いします。アライグマさん」
かばんちゃんは軽くお辞儀をして返します。
「アライグマさん……、いい響きだな。まるで自分が一番になったような気分だ」
アライグマくんは満足そうに言います。そんなアライグマくんを見て、かばんちゃんが尋ねます。
「その、フェネックさんはどんな方なんですか?」
「あ? フェネックのことか。あいつは、変なやつだよ」
かばんちゃんが会いたかったフェネックの姿が見えます。しかし、かばんちゃんの知っているフェネックさんではなく、
「やあ、アライグマくん」
こちらに気づいたようにピンク色の体に大きな耳の男の子が挨拶してきます。
「おう、フェネギー。今日は嬉しそうじゃねえか」
「そうなんだよ。アライグマくん。新しい遊びを思いついたところなんだ」
「そうか! じゃあぼのぼのたちと遊ぼうぜ! ……っと、その前に」
アライグマくんはかばんちゃんの方を向き言います。
「知り合いを連れてきてやったぞ」
「ボク知らないよ」
フェネギーが言います。
「ぼくの探してるフェネックさんじゃないですね。ごめんなさい」
続けてかばんちゃんも言います。
「なんだよ。人違いだったのか。まあ良いや、かばんも一緒に遊ぼうぜ。ここであったのも何かの縁だしな」
「ごめんなさい。ぼくは……サーバルちゃんが心配なので、早く会いたいんです」
かばんちゃんは言います。
「そうだよな。オレもお前がサーバルってのに会えるように探してやるよ」
アライグマくんも意を決めたように言いました。
「あの~? 最初から説明してくれないかな」
フェネギーが言います。
「実はな」
「なるほどね」
フェネギーが納得したように言いました。そして続けて言います。
「でもどこにいるのか全くわからないんだよね?」
二人は黙ります。
「あっ、スナドリネコさんに聞いてみようよ」
フェネギーが言います。
「そうだな。何か知ってるかもしれん。行ってみるか」
アライグマくんが頷きます。
「いってらっしゃい。アライグマくん」
「おめえはこねえのかよぉ!!」
アライグマくんとかばんちゃん むきめい @mukimei94
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