古今東西の神話やオカルトに登場する不思議ワード、黒魔術に白魔術、陰陽道に錬金術まで。
謎の妖刀が手放せなくなった女の子ルキに巻き込まれるようにして、主人公は逃げ惑います。
オカルトにまつわる追っ手たち、主人公に手を貸す仲間たち……ここまでは普通の現代伝奇ファンタジー。
いっちょこの辺で主人公も何らかの能力に目覚めて反撃開始……となるのが定番ですね。
そう思っていた時期が俺にもありました。
という気がしていたが、別にそんなことはなかったぜ!!
なんてこった!
主人公にも一応、脳内に憑依した別人の精神体がアドバイスをくれるというユニークスキルが目覚めますが、戦闘はからっきしです。
ひたすら逃げる。
真相を探るために、とにかく逃げる。
仲間たちが代わりに体を張ってくれます。
逃げるは恥だが役に立つ。
逃げるが勝ち。
謎を解き明かすまで、この遁走曲(フーガ)は鳴り止まないっ!
何かのきっかけがあれば、きっと大ブレイクするに違いないと信じて疑わない、正しく美しく、それでいて魅力にあふれる御作者様の文体。
作品に応じて最適に変貌する魔法の筆が、本作で、四つ目の顔を私に見せてくれることになりました。
今回の物語、設定も物語も凄いのです。未だ小出しにされているものの、光る戦闘(逃げ?)センスにぴりりとした刺激を感じさせる主人公が、なにゆえヒロインが手にする日本刀に狙われなければならないのか。そして、彼に語り掛ける声は一体何者なのか。
……そんなシリアスな設定が、笑いの起爆剤となって次々と襲い掛かって来るのです。
こんな作品見たこと無い!
落ち着いているのにハイテンション。
高尚な文章なのに大笑いのセリフの応酬。
そしてシリアスで骨太のストーリーなのに、弱気なヒロインが可愛すぎてたまらない。
二極三重。この世界を是非とも皆様に堪能していただきたいと思います。
完結後、再びレビューを更新させていただきます!