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2018年11月4日 06:10 編集済
十六傑の中でも別格の扱いを受けていた張軌が死去し、いよいよ西晋の落日が明らかになってきました。張軌は、西晋への忠誠を保ちながら、かつ、前涼の創業者ですから、別格扱いもうなずけるところです。涼州も流民が多く、鮮卑が攻め込んできており、後漢時代から中央に組したい漢人と独立したい漢人同士の対立や、異民族の反乱など、争いが絶えない地域です。比較的、安定したといえども、これを「避難できる国は涼土だけ」とした張軌の手腕は、傑出したものといえましょう。しかし、劉聡が相談するのは、陳元達ばかりで、諸葛宣于は指揮官の候補としても上がっていませんね。劉聡を諫めて、引退していたのでしょうか。張賓のような巧みな指揮を見せることはなく、大会戦の時の勝利しか軍事的には目立った功績はなく、外交による功績もあっさりした描写で、余りにも大物扱いで神格化し過ぎて、結局、張賓の方が目立ってしまったようですな。今回は、楊龍・李祐・王伏都・黄臣という意外なところの子から人物が出てきました。李祐が忘れられていなかったことはうれしいですが、読んだ時、「また、人物が増えるのかよ」と思ったことも間違いないです。後で、フェードアウトさせるぐらいなら、せめて、前趙の人物の血縁を作成して出してほしかったですね。劉岳は劉伯根の子になっていましたし。とにかく、今回は今までに比べても本格的な長安侵攻ですね。北漢と西晋の最終決着が近づいてきたようです。西晋十六傑(十四路諸侯+二)✕ 征西大元帥・陸機✕ 荊州刺史・劉弘✕ 西涼刺史・張軌✕ 幽州惣官・王浚✕ 揚州刺史・陳敏幷州刺史・劉琨廣州刺史・陶侃✕ 青州刺史・苟晞✕ 豫州刺史・劉喬樂陵太守・邵續滎陽太守・李矩✕ 雍州刺史・劉沈✕ 順陽太守・張光✕ 武威太守・馬隆南平太守・應詹南中郎将・祖逖【追伸】ここまで来れば、もう慌てることもないですな。ゆっくり最後までいきましょう。>竜頭蛇尾とはこのことだ!もう一度、大会戦が欲しかったですね。酉陽野史は、常識に支配されて、諸葛亮や姜維の北伐みたいな、総力戦で、一郡、一城を奪っていく発想しかなく、戦争によるカタルシスを感じさせる感覚がないのですよ。項羽の鉅鹿や彭城の戦いのような戦いもあり、石勒も王衍相手に行っているのに、だから、これほど描写が長くなると思われます。水滸伝の遼討伐や方臘討伐に影響受けすぎなのかもしれません。>吐谷渾が慕容廆の弟の慕容吐谷渾から始まったというのはマジメな話なのかなあ。。。私も資治通鑑で読んでビックリしました。元は、唐代好きだったので。歴史研究ではどうなっているのでしょうか。>諸葛宣于戦術・戦場での謀略は張賓に振ったので、戦略、外交や内政、通常の国家運営の役割を与えられたが、史実と酉陽野史の限界で活躍できなかったと推測します。酉陽野史にそれなりの筆力があり、演義の諸葛亮や、水滸伝の呉用の話の使いまわしを良しとしないのが、あまりよくなかったのかもしれません。戦争描写を減らして、晋に仕えてしまい、王頎の養孫となってしまった王弥の人材獲得などのエピソードや、匈奴の七縱七禽による心腹エピソードが欲しかったですね。史実を余り壊さないというのは、酉陽野史の良さではありますが、それが限界をつくってしまい、八王の乱に主人公が加われず、石勒・張賓が無双してしまい、史実の北漢が余り冴えないという制限ができています。>このあたりもストーリーテリングの手並みの違い、ということでしょう。そうですね。今までの人物の厚みを増やしていけばいいものを、無駄に人物を増やすという中国文学の悪癖がでています。おそらくは、話の盛り上がりのために旧キャラも死なせねばならないのが惜しくて、無駄に増やすのかと。史実も重視するため、余計に人物が増えてしまいます。史実の北漢のエピソードが少なく、オリジナル人物の描写が少ない問題点の解消としては、当時の発想の限界を考慮して、蜀漢人物の子孫は各一名ずつだけをクローズアップして、演義や水滸伝のエピソードのコピーをすることで、ある程度は可能だったのではないかと感じます。関防の「三関突破」とか、張敬が無実の罪で流刑に遭うとか(林冲のパロ)、そういうエピソードを読みたかったですね。>講談慣れした江戸の人もそう思ったんじゃないかなあ。。。もうすぐ、次のまとめができますが、やはり、「通俗続後三国志」の方の売れ行きは余り良くなかったようですね。>盛り上がりにかけますよねえ。もう、出てくる人物が同じで、完全にパターン化されていますからね。「後編」の翻訳があるとしたら、淡々とお進めになるのが良いのかなと感じます。資治通鑑をそのまま読むよりは読みやすく、意義は存在するでしょう。「後三国石珠演義」と長所を分け合った作品が読みたかったですね。
作者からの返信
こんばんは。いよいよ本作の最終局面スタートですね。竜頭蛇尾とはこのことだ!やっぱり最後は盛り上がりを作らないとダメ、とよくわかる仕上がりになっています。> 張軌仰る通り、涼州は幽州と同じく異民族の侵入が多く、それほど安寧な地ではありません。とはいえ、この頃は東北で鮮卑が猛威を振るったのに対し、青海の吐谷渾もまだ勃興しておりませんので西は比較的平穏だったのかもありますかね。しかし、吐谷渾が慕容廆の弟の慕容吐谷渾から始まったというのはマジメな話なのかなあ。。。出来すぎているような気もしますね。> 諸葛宣于残念ながら張賓ほどは活躍できませんでしたね。なんとなく、諸葛亮に対する酉陽野史の評価が反映されている、ようにも邪推しております。「内政の鬼」のイメージだったのかも知れません。その反面、神格化と言われれば確かにそうなのですが、とにかく出番が少ない少ない。何か含むものでもあったのかなあ、と勘繰りたくなります。> 楊龍・李祐・王伏都・黄臣という意外なところの子これがまたビミョーなんですよね。。。関防や張敬の子なら、おっという感じなのですが、三国志演義における関索や張苞の登場時ようなトキメキがないというか。。。このあたりもストーリーテリングの手並みの違い、ということでしょう。羅漢中ってやっぱりスゴイですよね。> 劉岳お、劉伯根のお子さんがおりましたか。気づかなかったなあ。> 今までに比べても本格的な長安侵攻なのですが、生き残りの十六傑の誰も参加しないので盛り上がりにかけますよねえ。危ないところに駆けつけて敵を退ける、あるいは優勢に戦いながら泣く泣く兵を引く、そういう王道の展開が欲しいところです。せめて張寔くらいはもう少し絡めてもよかったと思うのですが、こう、燃えるツボを外しているというか、最終局面でありながら、全体的に残念な感じが漂っております。。。もっと面白くできんじゃねえのー?とか言いたくなるのですね。講談慣れした江戸の人もそう思ったんじゃないかなあ。。。
編集済
十六傑の中でも別格の扱いを受けていた張軌が死去し、いよいよ西晋の落日が明らかになってきました。張軌は、西晋への忠誠を保ちながら、かつ、前涼の創業者ですから、別格扱いもうなずけるところです。
涼州も流民が多く、鮮卑が攻め込んできており、後漢時代から中央に組したい漢人と独立したい漢人同士の対立や、異民族の反乱など、争いが絶えない地域です。比較的、安定したといえども、これを「避難できる国は涼土だけ」とした張軌の手腕は、傑出したものといえましょう。
しかし、劉聡が相談するのは、陳元達ばかりで、諸葛宣于は指揮官の候補としても上がっていませんね。劉聡を諫めて、引退していたのでしょうか。張賓のような巧みな指揮を見せることはなく、大会戦の時の勝利しか軍事的には目立った功績はなく、外交による功績もあっさりした描写で、余りにも大物扱いで神格化し過ぎて、結局、張賓の方が目立ってしまったようですな。
今回は、楊龍・李祐・王伏都・黄臣という意外なところの子から人物が出てきました。李祐が忘れられていなかったことはうれしいですが、読んだ時、「また、人物が増えるのかよ」と思ったことも間違いないです。後で、フェードアウトさせるぐらいなら、せめて、前趙の人物の血縁を作成して出してほしかったですね。劉岳は劉伯根の子になっていましたし。
とにかく、今回は今までに比べても本格的な長安侵攻ですね。北漢と西晋の最終決着が近づいてきたようです。
西晋十六傑(十四路諸侯+二)
✕ 征西大元帥・陸機
✕ 荊州刺史・劉弘
✕ 西涼刺史・張軌
✕ 幽州惣官・王浚
✕ 揚州刺史・陳敏
幷州刺史・劉琨
廣州刺史・陶侃
✕ 青州刺史・苟晞
✕ 豫州刺史・劉喬
樂陵太守・邵續
滎陽太守・李矩
✕ 雍州刺史・劉沈
✕ 順陽太守・張光
✕ 武威太守・馬隆
南平太守・應詹
南中郎将・祖逖
【追伸】
ここまで来れば、もう慌てることもないですな。ゆっくり最後までいきましょう。
>竜頭蛇尾とはこのことだ!
もう一度、大会戦が欲しかったですね。酉陽野史は、常識に支配されて、諸葛亮や姜維の北伐みたいな、総力戦で、一郡、一城を奪っていく発想しかなく、戦争によるカタルシスを感じさせる感覚がないのですよ。項羽の鉅鹿や彭城の戦いのような戦いもあり、石勒も王衍相手に行っているのに、だから、これほど描写が長くなると思われます。水滸伝の遼討伐や方臘討伐に影響受けすぎなのかもしれません。
>吐谷渾が慕容廆の弟の慕容吐谷渾から始まったというのはマジメな話なのかなあ。。。
私も資治通鑑で読んでビックリしました。元は、唐代好きだったので。歴史研究ではどうなっているのでしょうか。
>諸葛宣于
戦術・戦場での謀略は張賓に振ったので、戦略、外交や内政、通常の国家運営の役割を与えられたが、史実と酉陽野史の限界で活躍できなかったと推測します。
酉陽野史にそれなりの筆力があり、演義の諸葛亮や、水滸伝の呉用の話の使いまわしを良しとしないのが、あまりよくなかったのかもしれません。
戦争描写を減らして、晋に仕えてしまい、王頎の養孫となってしまった王弥の人材獲得などのエピソードや、匈奴の七縱七禽による心腹エピソードが欲しかったですね。
史実を余り壊さないというのは、酉陽野史の良さではありますが、それが限界をつくってしまい、八王の乱に主人公が加われず、石勒・張賓が無双してしまい、史実の北漢が余り冴えないという制限ができています。
>このあたりもストーリーテリングの手並みの違い、ということでしょう。
そうですね。今までの人物の厚みを増やしていけばいいものを、無駄に人物を増やすという中国文学の悪癖がでています。おそらくは、話の盛り上がりのために旧キャラも死なせねばならないのが惜しくて、無駄に増やすのかと。史実も重視するため、余計に人物が増えてしまいます。
史実の北漢のエピソードが少なく、オリジナル人物の描写が少ない問題点の解消としては、当時の発想の限界を考慮して、蜀漢人物の子孫は各一名ずつだけをクローズアップして、演義や水滸伝のエピソードのコピーをすることで、ある程度は可能だったのではないかと感じます。
関防の「三関突破」とか、張敬が無実の罪で流刑に遭うとか(林冲のパロ)、そういうエピソードを読みたかったですね。
>講談慣れした江戸の人もそう思ったんじゃないかなあ。。。
もうすぐ、次のまとめができますが、やはり、「通俗続後三国志」の方の売れ行きは余り良くなかったようですね。
>盛り上がりにかけますよねえ。
もう、出てくる人物が同じで、完全にパターン化されていますからね。「後編」の翻訳があるとしたら、淡々とお進めになるのが良いのかなと感じます。資治通鑑をそのまま読むよりは読みやすく、意義は存在するでしょう。
「後三国石珠演義」と長所を分け合った作品が読みたかったですね。
作者からの返信
こんばんは。
いよいよ本作の最終局面スタートですね。
竜頭蛇尾とはこのことだ!
やっぱり最後は盛り上がりを作らないとダメ、
とよくわかる仕上がりになっています。
> 張軌
仰る通り、涼州は幽州と同じく異民族の侵入が多く、それほど安寧な地ではありません。
とはいえ、
この頃は東北で鮮卑が猛威を振るったのに対し、
青海の吐谷渾もまだ勃興しておりませんので
西は比較的平穏だったのかもありますかね。
しかし、吐谷渾が慕容廆の弟の慕容吐谷渾から
始まったというのはマジメな話なのかなあ。。。
出来すぎているような気もしますね。
> 諸葛宣于
残念ながら張賓ほどは活躍できませんでしたね。
なんとなく、
諸葛亮に対する酉陽野史の評価が反映されている、
ようにも邪推しております。
「内政の鬼」のイメージだったのかも知れません。
その反面、
神格化と言われれば確かにそうなのですが、
とにかく出番が少ない少ない。
何か含むものでもあったのかなあ、
と勘繰りたくなります。
> 楊龍・李祐・王伏都・黄臣という意外なところの子
これがまたビミョーなんですよね。。。
関防や張敬の子なら、おっという感じなのですが、
三国志演義における関索や張苞の登場時ような
トキメキがないというか。。。
このあたりもストーリーテリングの手並みの違い、
ということでしょう。
羅漢中ってやっぱりスゴイですよね。
> 劉岳
お、劉伯根のお子さんがおりましたか。
気づかなかったなあ。
> 今までに比べても本格的な長安侵攻
なのですが、
生き残りの十六傑の誰も参加しないので
盛り上がりにかけますよねえ。
危ないところに駆けつけて敵を退ける、
あるいは優勢に戦いながら泣く泣く兵を引く、
そういう王道の展開が欲しいところです。
せめて張寔くらいはもう少し絡めてもよかった
と思うのですが、
こう、燃えるツボを外しているというか、
最終局面でありながら、全体的に残念な感じが
漂っております。。。
もっと面白くできんじゃねえのー?
とか言いたくなるのですね。
講談慣れした江戸の人も
そう思ったんじゃないかなあ。。。