第八十九回 索綝は兵を会して劉曜を破る
漢に降った
その後を追うように長安から司馬模が殺害されたとの報せがあり、司馬保は
安定にある
※
索綝は詔を拝すると、雍州にある晋帝に謁見して司馬模の死に大哭し、それを終えると檄文を発して雍州各地の軍勢を召し寄せる。駆けつけた諸将は晋帝を前に盟約してその指揮に服すると誓った。
その場で全軍の先鋒には鞠允に従う韓豹が任じられ、韓豹は命を拝受して晋帝のために死力を尽くことを誓う。司馬業はその言葉を
◆「大統制」という官名は記録にない。ここでは元帥と同じく全軍の指揮権を委ねられたと解するのがよいと思われる。
また、閻鼎を
◆「掠陣」という官名は見当たらない。意味は「敵陣を陥れる」と解され、実働部隊を委ねられたと考えるのがよい。
◆「監運」は『
大將軍の
※
漢の間諜はそのことを探り出すと、司馬業の許に関中の軍勢が集っていると長安に報せる。それを知った
「古より、大事は義によって興り、人心に応じる者が勝つと申します。洛陽はすでに破れて
「
◆「黄丘」という地名は見当たらない。秦州は長安に西にあるため、長安の西、秦州からの大道上にある地点と解するのがよい。
長安の鎮守を姜發、
※
それより三日の後、長安を目指す五万の晋軍は、黄丘で漢兵が道を阻んでいることを知ると、包囲するべく動きはじめた。先鋒を務めるのは韓豹、魯充、梁緯が率いる三万の軍勢、華勍と胡忠が率いる二萬の軍勢がその後につづく。
劉曜は包囲を恐れ、自ら平野に布陣して迎え撃つ構えを見せた。陣頭にある姜飛は馬を飛ばして晋陣に向かうと叫ぶ。
「お前たちは何処の軍勢か。何ゆえに此処に来たのか」
晋陣からは韓豹が馬を出して答える。
「吾は大晋の先鋒を預かる、
◆「雍州」の治所が長安である点は先に述べたとおり。雍州から来たという韓豹の発言は意味を解しがたい。
大言を聞くと劉曜も馬を出して言う。
「吾は幼年より軍に従い、
韓豹が怒って叫ぶ。
「妄言せず、馬を進めて腕を比べてみるがよい」
劉曜は怒って馬を拍ち、鞭を振るって打ちかかる。韓豹も大刀を払って架け止め、二人は馬をぶつけて力を比べる。歴戦の劉曜に対する韓豹は新進の勇将、日頃の技量を発揮して刀鞭を交わすも、互いに毛ほどの傷も与えられない。
戦はすでに六十合を過ぎて勝敗を決する気配もなく、両軍の将兵には喝采せぬ者がない。
※
劉曜と韓豹の戦の最中、梁緯が魯充に言う。
「劉曜は強敵、韓徳威であってもにわかに打ち破れますまい。ここは吾らも馬を出して前後より襲い、劉曜めを擒とするべきです。劉陽を擒とすれば、洛陽までも恢復できましょう」
魯充と梁緯は馬を拍って陣頭に飛び出し、一散に劉曜を目指す。それを見た
馬蹄が揚げる黄沙は滾々と宙に舞って視界を遮り、戦場からはただ刀鎗の声のみが響いて姿が見えない。
魯充が関河と戦って劣勢となったところ、華勍と胡忠が加勢に到り、左右を挟んで攻め立てる。それを見た
姜飛は軍勢を迎え撃って一鎗に魯元を突き殺し、呼延勝は大刀を振るって宋始を追い詰める。宋始と焦嵩は劣勢に陥ると、戦を捨てて逃げ奔る。
姜飛と呼延勝は二人を追わず、ただちに関河を救いに向かう。華勍と胡忠は関河を捨てると馳せ到る漢将に向き直った。四将が激突して数合ばかり、賈疋、梁綜、宋哲、胡崧が大軍を率いて到着し、鬨の声が天を震わせる。
漢将たちは敵を防いで死戦する最中に陳安に斬り込まれた。漢兵の軍列は陳安により寸断されて晋兵の圧を支えられず、ついに後退を始める。麴持と閻鼎の軍勢も到着するや漢兵の軍列を蹴散らした。
ついに漢の将兵たちは黄丘を捨て、長安を指して逃げ奔ったことであった。
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