第六十六回 曹嶷は際遇して青州に拠る
漢の
道が
▼「臨朐」は『
・襄國 ┏━━海
┏━┛
・易陽 清河・ 黄 ●臨菑
河 ◆廣固
・邯鄲 平原・ ┏┛ 臨朐◆
┏━┛
・鄴(相州) ┏━┛◇ 泰山▲ ◆
┏━┛碻石敖城 東安
頓丘・ Z委粟津 東莞
┏黄河━┛ ◆東平 ◆
┏┛・濮陽 ┌┐
━┛ ┌┘│ ・兗州
・白馬 └─┘ ・南武陽
巨野澤
瑯琊・
陣形を披いて攻撃に備えると軍勢は馬を停めて進軍を止め、曹嶷は軍使を遣って何者であるかを質させた。
「お前たちは何者であればゆえなく吾らの後を追ってきたか」
軍勢の士官らしき者が答えて言う。
「吾らは青州の
報告を受けた曹嶷は単騎で夏国相との会見に向かって言う。
「俺らは漢の軍勢だぜ。その言に偽りがないってんなら、俺らと行を共にしろ。平陽に行って漢主に上奏し、軍勢を借りて苟晞に復讐すりゃあいいだけの話だろ」
夏国相が言う。
「苟晞はまだ東平に軍勢を止めている。まずは青州に向かって苟晞の子の
その言葉を聞くと、曹嶷が言う。
「それにしたって五百ばかりの兵しかいねえで仇に報いられるもんかね。そんなら、俺らも一丁噛ませろや。俺の軍勢は二万を超えて上将が十人ばかりいる。夜陰に乗じて青州の城下に入り込むこともできらあな。お前は俺らに追われているふりをして城兵に救いを求めろ。城門さえ開けばこっちのもんだ。一族を保護して親爺の仇を討てばいいだけだぜ」
「幸い、青州の軍勢は兄の夏国卿が握っている。義に従って助力を頂けるなら、その策の通りにしよう。青州の東は海に囲まれて西は険隘な地形が守り、吾らが拠れば苟晞であっても軽々しくは手を出せまい」
曹嶷は夏国相の兵とともに夜陰に紛れて軍勢を進め、数日のうちに廣固の城にまで到った。
※
廣固の城を臨んで曹嶷が言う。
「夜が更ければ城下に向かう。お前は城兵に助けを求めて城門を開かせな。俺らが城内に入りゃあ何も心配はいらねえ。親爺の仇とはともに天を戴けねえ。何があっても仇に報いて討ち漏らすんじゃねえぞ」
「承知しています。約を違えられませんように」
「心配すんな。夔安と
頷いて出発した夏国相は、一更(午後八時)頃には廣固の城下に到った。この時、城門はすでに閉ざされていたが、城を守る兵は篝火を焚いて警備にあたっていた。
夏国相が城門上の兵に叫ぶ。
「吾は夏国相である。城門を開いて吾が軍勢を迎え入れよ」
「将軍は夏大将軍(夏陽)とともに漢賊どもを平定に向かわれた。何ゆえにこの夜半にお戻りになられたのか」
「大将軍は曹杯を救わんとして東平の城に入られ、その周囲は漢賊どもが包囲している。そのため、葉福を鄴城に、吾を廣固に遣わされたのである。二郡の兵糧を取りまとめて東平に向かい、城内の軍勢と表裏をなして漢賊を打ち破る計略の一環として帰還したのだ」
城兵たちは東平の事情を知らず、夏国相の言葉を信じて門を開ける。後につづく夔安と黄彪が城兵に言う。
「吾ら五百は夏将軍とともに此処まで駆けとおしてきた。みな力尽きており、全軍が城内に入るには時間がかかろう。お前たちは先に退いておれ」
城兵たちが退こうとしたところに曹嶷の軍勢が現れる。城兵たちはその多勢を見ると、慌てて城門を閉ざそうとする。それに先んじて夔安と黄彪が門を奪った。漢兵が城内に雪崩れこみ、城兵たちは夏国卿と苟豹に報せるべく逃げだした。
騒ぎを知った苟豹は、夏国卿を召して軍勢を整えるように命じた。自らも鎧兜を着込んで府を出んとしたところ、夏国相に前を塞がれる。近臣たちが苟豹を庇って詰問すれば、夔安と黄彪が大斧を振るって斬り散らし、周囲の兵たちも命からがら逃げ奔る。ついで曹嶷の軍勢が到着し、ついに廣固の城は制圧された。
夏国相は苟豹を擒えて首を斬り、夏陽の霊前に奉げて復仇を報じる。それより、兵士には掠奪暴行を禁じて城内の民を慰撫し、青州はついに曹嶷の手に落ちた。
※
翌日、曹嶷は平陽に遣わした。これは、苟豹の首級とともに青州の図籍を平陽に献じて捷報を送るためである。夏国相は苟晞の親信を二十人ほど斬り、それ以外の者には害を加えず、民はこの処置に心を安んじる。
漢主の
曹嶷は詔を得て刺史に上ると、軍備を揃えて兵を練り、険要の地を固めて本拠地の平陽、石勒が拠る襄國とともに鼎足の勢をなしたことであった。
▼「鼎足の勢」と記すが、これは三つの拠点が相互に支援できることが前提となる。この場合、山西の平陽、山東の
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