登場キャラクター紹介第3弾・現代史編~物語は東日本大震災へ
登場キャラクター紹介第3弾・現代史編
二度目の東京オリンピック決定・ウクライナ騒乱・ギリシャ経済危機・パナマ文書・キューバの雪解け
そして、東日本大震災……物語は「現代史」のド真ん中へ!
1996~1997年に発生した在ペルー日本大使公邸人質占拠事件など『スーパイ・サーキット』では〝これまで〟にも国内外で起きた近代の出来事を取り上げてきました。そして、〝これから〟は私たちが「リアル」に体験してきた様々な事件が主人公・キリサメの前に立ちはだかります。
キリサメとその家族・仲間たちを翻弄する出来事へ関わる新たな登場キャラクターたち28人を一挙にご紹介します!
〈主人公・キリサメに関わる人々〉
●作草部雪於(さくさべ・ゆきお)
キリサメの実父。日本の大手食品メーカー『ジプシアン・フーズ』に勤務する企業戦士であり、ペルーの日系社会にビジネスチャンスを求めて海を渡った。首都リマに青年海外協力隊として赴任していたミサト・アマカザリ(天飾見里)と出会い、一人息子のキリサメを設けた。その前後に在ペルー日本大使公邸人質占拠事件(1996~1997年)に巻き込まれた。見里とは結婚しないままペルーを離れ、その死を長く知らずにいた。
『ジプシアン・フーズ』では東日本大震災に伴う東北支援プロジェクトを指揮していたが、その矢先に病に倒れてしまい、ペルーに残してきた忘れ形見を親友・八雲岳に託す。
キリサメにとっては顔も知らない父親であり、家族などと考えたこともなかったが、彼と関わった人々の話に触れる内、少しずつ気持ちが変わっていく。
●芽葉笑(めばえ)・ルデヤ・ハビエル・キタバタケ
日系ペルー人。キリサメの幼馴染みであり、かけがえのない少女。ペルーにはバリアーダスと呼ばれるスラム街があちこちに点在しており、キリサメの根城とは異なる地域で暮らしていた。ブラックマーケットで露店を開いているが、陳列されている品々は全て旅行客から掠め取った物である。
投げナイフの名手でもあり、同じ境遇で生まれ育ったキリサメとは背中を預け合う関係でもあったが、内戦同然の反政府デモ『七月の動乱』に巻き込まれてしまう。
血塗られた想い出は永遠に消えない傷としてキリサメの心に残り続ける。
〈国内の総合格闘技活動を監督する機関・MMA日本協会〉
●岡田健(おかだ・けん)
MMA日本協会会長であり、古き良きプロレスを継承する団体『大王道プロレス』の名誉会長を兼任。昭和を代表する名レスラーのひとり。
与党議員としての顔も持っており、2014年現在は文部科学大臣の地位にある。この為、協会そのものが政府の影響下にあるよう見なされることもあるが、岡田本人はあくまでも一人のレスラーとして参加している。
共に熱い心を持つ八雲岳のことは立場を超えた同志として信頼し、東日本大震災の復興支援として新しいMMA団体の旗揚げを決意した彼を支持する。
二度目の東京オリンピック決定を受け、総合格闘技(MMA)の正式種目採用に向けて奮闘。難民高等弁務官のマイク・ワイアットと親友同士でもある為、難民選手の受け入れにも尽力していく。
●吉見定香(よしみ・さだか)
MMA日本協会副会長。日本初の女性総合格闘家でもあり、かつてはプロレスラーとしても活動していた。
現役引退後は大学の准教授を務める一方、総合格闘技(MMA)の国際普及を目指してインドネシアなど世界各国で特別指導に取り組んでいる。〝スポーツ外交〟の担い手であり、人脈の広さはMMA日本協会でも群を抜いており、『キューバの雪解け』に当たっては同国をルーツに持つ格闘家たちがアメリカのリングにも参戦できるよう取り計らう。
東日本大震災発生後、総合格闘技の試合を通して被災地を元気付けたいという岳の呼びかけにはMMA日本協会の立場から誰よりも強く賛成する。
●折原浩之(おりはら・ひろゆき)
MMA日本協会理事長。伝説的な覆面レスラーにして『天叢雲(アメノムラクモ)』前身団体の出場選手でもあったヴァルチャーマスクが作り上げた〝総合格闘技術〟を受け継いだ愛弟子であり、これを教え広める団体の役員も兼任している。
現役時代から格闘家らしからぬ粋人として注目を集め、雑誌モデルとしても活動。「いつでも武道衣を着ていて堅苦しい」という格闘家のイメージを塗り替えた人物でもある。自身で立ち上げたブランドを運営し、競技選手たちに引退後のセカンドライフこそ重要であると示している。
MMA日本協会の誰よりも総合格闘技に精通し、岡田会長と共にオリンピック競技種目化を目指す。その一方でアマチュア選手の育成にも力を注いでいる。
口笛を吹きながら記者会見に臨むなど熱量の高い八雲岳と比べて軽佻浮薄な印象を与えるものの、総合格闘技への愛情は勝るとも劣らない。
●徳丸富久千代(とくまる・ふくちよ)
MMA日本協会副理事長にして、同団体の最長老。日本を代表するゲームメーカー『ラッシュモア・ソフト』の会長(東日本大震災当時は社長)にして、世界的にも有名な経済人。格闘関係者以外の視点からMMA日本協会の活動を客観視することを期待されている。MMA日本協会の経理を引き受けるほか、監督団体の経済状況も管理する。
協会役員として名を連ねているものの、格闘技や武道の経験はなく、意見を発する際の判断材料は社会的な意義や経済的な観点に基づいており、感情に左右されずあくまでも中立公平を貫く。『ラッシュモア・ソフト』は格闘アクションゲームの開発で成功を収めた企業であるほか、フィットネスクラブ運営やアスリートの支援にも力を注いでおり、スポーツ競技について全くの門外漢というわけでもない。
〝福耳〟を指でいじる癖がある。
●杖村朱美(つえむら・あけび)
MMA日本協会理事の一人。内科・外科・脳外科に留まらず、解剖学など総合的な観点から格闘家・武道家の負傷を癒すほか、最も効果的な肉体の使い方をも研究する『格闘技医学』の一角を担う整形外科医。同医学会の主要メンバーでもある。
明治時代から多くの格闘家・武道家を支えてきた千住の名医『名倉堂』にも認められた名医であり、後遺症の回避を含む予防医学の普及にも熱心に取り組んでいる。MMA日本協会のメンバーではあるものの、総合格闘技だけでなくフルコンタクト空手の名門『空呉館』など様々な競技団体にも講義・指導を行っている。
自身も優れた格闘家であったが、トレーニングの最中に故障して長期離脱を余儀なくされ、その間に日本ではMMAブームが去ってしまった。小さな頃からの夢を絶たれた無念を次の世代にまで味わわせたくないという想いを胸に秘めている。
近現代の日本格闘技に寄り添い続けてきた『名倉堂』歴代の史料編纂にも尽力。
〈総合格闘技団体・天叢雲の関連人物〉
●城渡匡(じょうわた・たすく)
『天叢雲』の前身団体の頃から日本総合格闘技のリングで闘い続けてきたベテラン・城渡マッチの妻。夫と共に湘南でバイク屋を営んでおり、実の父親から置き去りのような形で預けられた御剣恭路にとっては母親代わりといっても過言ではない存在。トラブルメーカーの恭路を〝肝っ玉母さん〟の気風で見守っている。
最愛の夫がプロの格闘家としての限界に達しつつあることも理解しており、セコンドを務める盟友・二本松剛と共に無事に現役引退を迎えられるよう支え続ける。
若き日には城渡マッチと同じようにリーダーとして暴走族を束ねており、その迫力は未だ衰えていない。
●ギロチン・ウータン
日本で最も有名な女子プロレス団体『超嬢プロレス』の代表者であり、本人も現役のヒールレスラー。毒々しいフェイスペイントとパワフルそのものの闘魂でファンを魅了する一方、団体の運営者にまで不当な扱いを受ける女子プロレスラーひいてはヒールレスラーの地位向上・待遇改善に心血を注いできた。タレント活動なども積極的にこなしてヒールレスラー自体のイメージアップに努めてきた。
家族を大切にし、団体の仲間やファンから「ママさんヒール」のニックネームで慕われている。
ヒールレスラーとして心ない風評被害を受けてきた経験から東日本大震災の復興支援を議論する会合では当初、八雲岳に慎重論を説いていた。
現在は『天叢雲』にも参戦し、総合格闘技(MMA)をプロレスでねじ伏せてみせると豪語する。
●ライサンダー・カツォポリス
ギリシャ人選手。『天叢雲』の前身団体を始め、『NSB』など世界中の総合格闘技団体を渡り歩く歴戦の選手であるが、腕試しや向上心ではなく格闘技以外に生計を立てる術を持たない為である。何年も前に肉体・気力とも限界を迎えているが、家族を養うべく知名度の低い団体とも契約し、文字通り命を削ってファイトマネーを稼いでいる。
故郷・ギリシャは深刻な経済危機から立ち直っておらず、青年期から格闘技一筋に生きてきたライサンダーには転職すら望めない状況であった。
戦績も低迷し続けており、ベテランの排除を目論む樋口から『天叢雲』本戦と比べて遥かにファイトマネーが低いネット配信の試合へ出場するよう打診される。事実上の左遷人事だが、愛する家族の為にはプライドを傷付けられようとも受け入れざるを得なかった。
いわゆる、〝スポーツ労働移民〟としての生き様は格闘家の在り方に迷うキリサメにも大きな影響を与える。
●ヴェールクト・ヴォズネセンスキー
コマンドサンボを極めたロシア人選手。山岳部隊に所属する現役のロシア軍人でもある。『天叢雲』を代表する強豪であったが、正体不明の道場破りを迎え撃った挙げ句に重傷を負ってしまい、長期の戦線離脱を余儀なくされてしまった。彼が抜けた穴を埋める為にキリサメはMMAデビューを飾ることになった。
復帰を目指してリハビリに励むものの、2014年ソチ冬季オリンピックに前後して起こった『ウクライナ騒乱』とそこに絡む政治的情勢が原因となり、『天叢雲』への参戦そのものが難しくなってしまう。格闘家としての誇りと軍人として使命の狭間で葛藤する悲劇の男。
●銭坪宝好(ぜにつぼ・かねよし)
悪名高いスピーツ・ルポライター、銭坪満吉の息子。『天叢雲』が新人発掘を目的として新設したネット配信のMMAイベントに出場するが、既に若手とは言えない年齢である。かつてはフルコンタクト空手の名門道場『空呉館』の日本選手権で優勝した経験もあり、その実績を携えて海外のMMA大会に挑戦したのだが、実績を上げられないまま敗戦を重ね、幾つもの団体で戦力外通告を受けてしまう。
父・満吉が手を回し、再起の過程をテレビのスポーツ番組が密着取材することになるが、最高の練習環境を人から無理矢理に与えられ、結果だけを求められる状況によって精神的に追い詰められていく。
●倉持有理紗(くらもち・ありさ)
総合格闘技団体『天叢雲』を運営するスポーツ・プロモート企業『サムライ・アスレチックス』で経理を担当している女性。数年前まで日本最大の女子MMA団体の代表を務めていたが、樋口の謀略に嵌められて『天叢雲』と吸収合併された上、懲罰人事としか表しようのない待遇を強いられる。
一度は没落した日本MMAの復活を心から願っており、今度こそ一つの文化として定着させるべく屈辱的な仕打ちを甘んじて受け入れた。しかし、樋口の横暴を許したわけではなく、支配的な体制に不満を持つ選手やスタッフが彼女を頼って相談に訪れることも少なくない。
2011年3月は三刀谷と名乗っていたが、現在は元の名字である倉持に戻し、結婚指輪も外している。
●今福(いまふく)ナオリ
国内外の格闘技を幅広く取り扱う雑誌『パンチアウト・マガジン』から『サムライ・アスレチックス』に出向している広報スタッフ。『天叢雲』所属選手への取材を担当するほか、同団体の公式ホームページの管理・運営も一手に引き受けている。八雲岳の活動をファンに向けてブログから発信する未稲はナオリを手本としており、彼女自身も一番弟子として可愛がっている。
以前に編集長を務めていたというだけで『パンチアウト・マガジン』に無理難題を押し付け、『天叢雲』の関係者にまで強権的に接する樋口へ敵意に近い感情を秘めているほか、格闘技と暴力の区別すら付いていないように思えるキリサメ・アマカザリの出場にも疑問を投げ掛ける。
合同大会を開催する『NSB』のメディア戦略に強い対抗心を抱くなど野心家な一面も。
極端な恋愛下手でもあり、なかなか理想の男性に巡り合えないのが目下の悩み。
●四宮巧(しのみや・たくみ)
『天叢雲』が開催するイベントの撮影や生中継を伴うパブリックビューイングの実行といった映像制作全般を委託されている外部スタッフのリーダー。前身団体の頃から日本MMAと提携し続けているスポーツ番組制作会社のディレクターが本来の肩書きである。試合の撮影に必要な機材の調達まで引き受ける縁の下の力持ちであり、ADとしてテレビ局に務めていた頃、最前線で体感した日本MMAの黄金時代を今でも忘れられずにいる。
その為、『天叢雲』に対する思い入れは運営企業の人間以上に深く、独裁者さながらの樋口が相手でも物怖じせず映像制作の新提案を次々と打ち出していく。
同社は『天叢雲』と専属契約を結んでいるわけではなく、『新鬼道プロレス』など国内の有名格闘技団体から撮影を依頼され、極めて高い実績を誇っている。
イベントの企画段階からミーティングに参加し、映像演出の立場で意見を述べることも多い。開閉会セレモニーや幕間のステージ演出も手掛ける樋口とはその度(たび)に言い争いとなるが、そこには確かな信頼関係と、より良い作品を届けたいという情熱が漲っている。
〈アメリカの総合格闘技団体・NSBの関連人物〉
●エイモス・ファニング
アイルランド系アメリカ人選手。『NSB』の次世代を担うエースとして期待される総合格闘家でありながら、同時にプロバスケ選手(パワーガード)としても活躍。映画俳優として有名なダン・タン・タインと同じように『NSB』を代表する兼業格闘家である。MMAには主にオフシーズンに出場。
ボランティアにも積極的に参加しており、社会的影響力も非常に高い。ニューヨーク出身だが、同州は法律で総合格闘技(MMA)の興行を規制しており(※作中時間2014~2015年)、その改革を働きかけるなど政治活動にも力を入れている。
かつて『天叢雲』の前身団体に出場し、引退後にトレーナーへ転向した日系人選手が総合格闘家としての活動を支えている。
●フロスト・クラントン
『NSB』の前代表。同団体には共同代表として発足当時から関わっていたが、パートナーの失脚に伴って支配権を掌握し、選手の間で禁止薬物が蔓延する原因を作った。
自ら誘導したドーピング汚染が露見してアメリカの格闘技界から永久追放されたが、世界最大のスポーツメーカーである『ハルトマン・プロダクツ』の会長に取り入り、ヨーロッパ最大の格闘技団体『ランズエンド・サーガ』の代表に就任。『NSB』への復讐を暗い情念を燃やす。
白人社会の価値観を基準としている為、物事の捉え方が著しく偏っており、ドーピング汚染の根幹もその思想が背景にあるのではないかと報じられた。
●ヴァルター・ヴォルニー・アシュフォード
通称はVV。ハワイ出身のアメリカ人だが、カナダ(英領カナダ時代)にルーツを持ち、アメリカの南北戦争にも北軍として参戦した軍人の家系に生まれた。
『NSB』代表、イズリアル・モニワの傍らにボディーガードとして付き従っているものの、同団体の上級スタッフと名乗ることはない。
銃器を隠し持ったまま日本へ入国するなど不審な行動も多く、言葉の端々から裏社会との繋がりを匂わせる。
アシュフォード家は『ハワイ王国』の悲劇にも深く関わっており、或る歴史的事件の当事者である先祖の名前、『ヴォルニー(Volney)』をミドルネームとして現代まで受け継いでいる。
〈打撃系立ち技格闘技団体・金剛力の関連人物〉
●教来石沙門(きょうらいし・しゃもん)
フルコンタクト空手の名門道場『空呉館』に所属する若き空手家。キリサメと同時期に『金剛力(こんごうりき)』からプロデビューを果たす。同道場の日本選手権で三連覇を成し遂げ、日本最強の空手家とも謳われる。
会う度に別の女性を連れ立つなど軽薄なところもあるが、空呉館空手を心から愛し、内面には熱いものを秘めている。
本部以外の地方の道場では「シゴキ」とも呼ばれる悪習的な稽古が未だに残っており、アメリカ留学などで培った知識や経験に基づいて旧態依然とした組織体質の改善に挑んでいる。
それ故に道場内に敵も多いが、自分の命よりも空呉館の未来を最優先に考えており、自己犠牲にも近い「命の使い方」はキリサメにも影響を与える。
●教来石今朝友(きょうらいし・けさとも)
沙門の父親であり、「金剛力」でも実力派の選手として活躍していた。現役を退いてからは競技統括プロデューサーに就任。「金剛力」はプロの競技団体としては異例なほどチャリティーイベントに力を入れており、その精神を誰よりも体現している。
歌手や俳優などタレントとしても活動しており、むさ苦しくも愛くるしい姿で人気を博す。
八雲岳を自身の好敵手として尊敬しているが、その思いは空回り気味。
東日本大震災の復興支援に当たって岳から協力を要請された際には「金剛力」が長年、取り組んできたチャリティーのノウハウで貢献する。
〈現代格闘技を取り巻く人間関係〉
●サイクロプス龍(りゅう)
東北で最も有名な地方プロレス団体『奥州プロレス探題』の花形レスラー。奥州の王者とも謳われた戦国大名・伊達政宗をモチーフにしたプロレスマスクを着用して闘う。長野県の『まつしろピラミッドプロレス』に所属する赤備人間カリガネイダーのライバルでもある。
底抜けの明るさで観客を引き込んでいく人物で、『天叢雲』が岩手県大会で実施したパブリックビューイングでは奥州市内の設置場所を巡り、試合を見守る観客たちを大いに盛り上げる。
東日本大震災直後には被災地の現状を遠い土地まで伝えるべく島原市の巡業へ赴いた。
●佐志輔頼(さし・すけより)
日本を代表するブラインド柔道(B1)の選手であり、2008年パラリンピアン。様々なパラスポーツ団体の理事も務めている。
2011年までは心身にハンデを持つ人々の就業支援を行うコンサルタント企業にマネージャーとして勤務していたが、独立してより高度な福祉社会の実現の為に活動している。
実業家として立ち働く一方、ピラリンピック出場への挑戦も続けており、ブラジリアン柔術も体得。
東日本大震災の復興支援を巡る会合では岳に慎重論を唱えつつ、彼の理想を実現し得るプランを考案した。
のちに空閑電知と交流を深め、彼の成長を促していく。
●トビアス・ザイフェルト
古くからドイツに君臨し、世界中のアスリートから愛されるスポーツメーカー『ハルトマン・プロダクツ』の会長にして、経営者一族・ザイフェルト家の総帥。ヨーロッパ圏のスポーツ関連団体を次々と傘下に収め、国際的な競技大会とも密接に結び付いて利権を貪り食らうことからマフィアの如く畏怖されている。
スポーツ用品の開発よりも経営手腕に長けており、若き日には独裁政権下で全国体育(スポーツ)指導者を務めたハンス・フォン・チャンマー・ウント・オステンとも接点を持ち、1936年ベルリンオリンピック前後から『ハルトマン・プロダクツ』を国内最大のメーカーに躍進させた。
第二次世界大戦時は兵士として前線に送り込まれ、戦争捕虜として終戦を迎えた。戦時中、『ハルトマン・プロダクツ』の工房では父が自分と同じような戦争捕虜を労働力として投入しており、そのことから親子の間に決定的な溝が生じてしまう。
かつての苦い経験から何よりも正しくあろうと自らを厳しく律する一方、かつてドイツを独裁した人物とも思想的に近いフロスト・クラントンへ再起のチャンスを与えるなど不可解な行動も見受けられるのだが……。
●マリオン・マクリーシュ
アイルランド系アメリカ人。『天叢雲』の契約選手である大石・マクリーシュ・七七七の夫であり、アメリカの格闘技雑誌『ゴッドハンド・ジャーナル』に所属する記者でもある。『NSB』が前代表フロスト・クラントンを追放し、ドーピング汚染という暗黒時代から復活する過程を追い掛けた記事でスポーツ雑誌としては異例ながらピューリッツァー賞を受賞した。
難民選手の地位確立を急務に掲げる難民高等弁務官への取材を敢行し、スポーツ労働移民の実態にも切り込むなど国際的なジャーナリストであり、2016年から『パナマ文書』の名称で世界中に知れ渡る匿名情報の解析にも携わる。そこで知り得た情報を巡り、記者としての倫理観と格闘家の夫としての感情が激しく揺さぶられる。
●サタナス
アメリカ人。格闘技とそれに関わる人々を人権侵害と見なして批難し、競技大会の破壊すら正義と断言する思想活動『ウォースパイト運動』の活動家。地獄を司る者を意味する『サタナス』とはハンドルネームである。
『シリコンバレーの寵児』とも呼ばれており、ハーバード大学の学生であった頃にネットゲーム『エストスクール・オンライン』の開発を主導。空前の大ヒットを受けて若年ながら世界の億万長者に名を連ねた。
芸術性・創作性こそ価値観の基準と定めており、格闘技など何も生み出さず存在する理由もないと切り捨てる。『NSB』副代表の孫娘と所属選手を迎え入れたエアフォースワンにサイバーテロを仕掛けた挙げ句、逮捕後は公務執行妨害罪などに問われて重罪犯専用のフォルサム刑務所に収監された。
一連の事件は9・11同時多発テロの再現とも報じられ、『ウォースパイト運動』は激しい批判に晒されたが、世界中に散らばる同志は超大国の大統領をも恐れぬ勇気と称賛し、異常な攻撃性はSNSを通して伝播・増幅していくことになる。
獄中にありながら全世界の格闘技を脅かす最大最凶の敵。
●国舘一蛮(くにたち・いちばん)
往年の漫画原作者・小説家。数々のスポーツ漫画を生み出して昭和の〝スポ根ブーム〟を牽引した。格闘技漫画のパイオニア的存在でもあり、プロレス業界ともタイアップして現実のプロレスラーを自作の登場キャラクター(ヴァルチャーマスク)に仕立て上げ、日本中を熱狂させていった。自身の映画プロダクションを立ち上げるなど日本のエンターテインメント業界に絶大な影響力を持つようになったが、その絶頂期に過去の悪事が露見して逮捕に至る。
格闘技雑誌『パンチアウト・マガジン』の駆け出し記者であった頃の樋口は晩年の彼を長期に亘って取材し、その過程で荒唐無稽な発想を引き継ぎ、「最後の弟子」と呼ばれている。
過去の逮捕歴から没後も長い間、名前を出すことさえ封印されてきたが、樋口が名誉回復に奔走し、テレビや雑誌で往年の大作家と紹介されるまでに復権した。
樋口という最後の弟子を通じ、故人でありながら現代の格闘技界にまで影響を及ぼし続ける怪人。
〈その他の登場人物〉
●カマプアア
ハワイ出身のアメリカ人。都内でフラダンス教室を開くインストラクターであり、希更・バロッサが主演するテレビアニメ『異界神座イシュタロア』のダンス監修も担当している。フラダンスだけでなく世界中の伝統舞踊にも精通しており、秋葉原で開催された同アニメのファンイベントでは剣舞まで披露した。
出身地ハワイでは物心つく前から日本文化に触れてきた。
●ゼラール・カザン
ギリシャ系アメリカ人。カリフォルニア州第19選挙区選出の与党下院議員(三期)。アメリカ陸軍の一員(少佐)としてアフガン戦争にも従軍した経験を持ち、現在も予備役として軍との関わりを保ち続けている。下院退役軍人委員会のメンバーでもあり、彼らの社会復帰をバックアップする。
希更・バロッサの父であるアルフレッドとは腐れ縁のような関係。格闘技関係者に対する『ウォースパイト運動』の攻撃はアルフレッドにとっても憂慮すべき事態であり、一般には出回らない情報を握っているゼラールは何にも代え難い情報源である。
またアルフレッドの母親であり、アメリカ初の女性統合参謀本部議長はかつての上官。
カリフォルニア州第19選挙区は対立政党の牙城であったが、持って生まれたカリスマ性で当選を勝ち取った。同州サンノゼに在住する『NSB』の契約選手、ンセンギマナとも交流を深めていく。また同団体のドーピング汚染に巻き込まれて犠牲となった悲劇の人物、アイシクル・ジョーダンのことはアフガン戦争時代からよく知っている。
2016年に実施される大統領選挙へ出馬する意向を示す。
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