case 無色の虹
六。何の数字かと言えば、これは、深澤がハンバーガーショップでアルバイトを始めてから辞めた男の人数である。更に言えば、深澤に告白をし、見事玉砕した後に辞めた男の人数だ。
「深澤チャン、また告白されたんだって?モテる女は違うね、サスガ!でも深澤チャンいると求人追っつかなくて大変だよ、はは。ま、深澤チャン目当てに来る応募も多いんだけどさ。」
なにがサスガだ。もううんざりだ。喉の奥の方からコロリとした笑い声を無理やりに産むのも、お局のやっかみに耐えるのも、禿げた店長のセクハラも。
「ご迷惑お掛けしてごめんなさい。次の人が見つかるまで、わたし多めに出勤します。」
でも、それでも、こうして目尻を下げて笑ってしまう。だってそうしないとあの人に会えないのだから。此処じゃないと駄目な理由は、陽の良く当たる角の席にあった。
「すみません、そこの席に座ってもいいですか」
ドアについた鈴のように、涼しげな声を紡いで現れた彼女こそが此処に残る理由。
土曜日の街角で @ineko552
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