とある夏の苦く甘い物語
@takuzo
第1話 悲劇の始まり
2017年 8月中旬
どうして……どうして俺だけが…
健一は自宅の自分の部屋のベッドに腰を下ろして涙を流していた。
健一「俺が…俺が肝試しに行こうなんて言わなければこんなことに……こんなことに…」
健一はそんなことを泣きながら言うと同時に
先日からの出来事を思い出していた。
事の始まりは先々月、6月の中旬の俺たち4人の会話からだった…
健一「よぉ慎一、それと美穂ちゃんと歩美」
慎一「おぉ健一か。なんか用か?」
美穂・歩美「健一さんこんにちは」
健一「7月30日に皆で毎年恒例の肝試し行かないか?」
慎一・美穂・歩美「おぉ!いいね!」
健一「じゃあ今年も行くか!」
慎一・美穂・歩美「おう!(うん!)」
毎年恒例の肝試しと言うのは、元々は中学1年の時に幼稚園からの幼馴染みである慎一に「肝試し行かないか?」と誘っているのをオカルト系が大好きな歩美が聞いていて、女子一人だと流石に可哀想だと言うことで、慎一の双子の妹である美穂に声を掛けて渋々OKを貰って4人で肝試しに行ったのが始まりだった。美穂の渋々と言うのは、彼女は幽霊などが大の苦手で最初は嫌がっていたが、歩美も一緒に行く事を伝えると渋々OKを出してくれた、と言うことだ。まぁ美穂がOKを出してくれたのは歩美に過去の実績が有るからだと思う。過去の実績と言うのはまたの機会に
美穂「で、今年はどこに行くの?健一」
健一「今年は桐立山の梺にある民家の廃墟に行こうかなって思ってる。」
慎一「その民家ってあれだろ?廃墟になる前は中学生の男の子と高校生の女の子とその両親が住んでいて、高校生の女の子がストーカーに殺された怒りで父親が中学の男の子と妻を斧で腹と首を切った後、自分もその斧で首を切断して自殺したって噂のあそこだろ?」
美穂「え?お兄ちゃん違うよ。」
慎一「え?」
美穂「高校生の女の子が殺された後、父親の精神が壊れて中学生の男の子と妻の肉を食べて殺して、自分の腕も食べて亡くなったって聞いたよ?」
慎一「いやいや、そんな噂聞いたこと無いし。」
健一「俺も美穂ちゃんと同じだな。聞いたことある噂は。で、その民家に行くとバリボリバリボリって骨を砕く音や中学生ぐらいの男の子の悲鳴が聞こえてくるって言う噂だよね?」
美穂「そうそう!ほらぁ健一も私と一緒だって言ってるよ?お兄ちゃんが違うんじゃないの?」
歩美「美穂ちゃん、慎一さんは間違ってはいないと思いますよ?私も慎一さんと同じ噂を聞いたことがありますもん。」
美穂「なに?歩美ちゃんは私達の方が間違ってるって言うの?」
歩美「間違ってるも何も私達が聞いたことのある噂の内容と美穂ちゃん達が言ってる内容が全く違う物ですもん。」
美穂「じゃあ私達が」
健一「はいはい。ストップストップ。言い争いはしない。実際に行ったときにどっちが正しいか見れば良いじゃないか。俺達が聞いたことのある噂だと、骨を砕くような音などが聞こえる。慎一達が聞いたことのある噂は何か証拠と言うかそんなようなものはあるの?」
慎一「あーそう言えば。刃物みたいなのが床に落ちるような音とか父親が自殺するときに出来た床のキズが残ってるって言うのを聞いたことがある。」
健一「じゃあ、それが有ったらそちらが正しいって事ね。真実が解るまでこの件に関しての言い争いはしない。二人とも分かった?」
美穂・歩美「はーい」
健一「じゃあ来月の30日忘れるなよ!」
慎一・美穂・歩美「はーい!」
慎一「あれ?時間は決めないの?」
健一「あー忘れてた!どうしようね。時間もいつもと同じで20時半で良いよね。」
慎一・美穂・歩美「OK!」
健一「じゃあその時間で!」
7月30日 肝試し当日
慎一「予定の時間より30分も早く着いちまったな。二人が来るまでどうする?怪談話でもするか?(笑)美穂。」
美穂「止めて!お兄ちゃん!怖いんだから…グスッ」
慎一「冗談だって。ほらそんな泣きそうな顔をしないの!」
美穂「う、うん…グスッ」
慎一「にしても、二人が来るまで何してよう」
と慎一が呟き、スマホをズボンのポッケから取りだしホーム画面を開いた瞬間、電話がかかってきた。
テレテテ テテテテテン♪ テレテテ テテテテテン♪
慎一「健一か歩美さんかな? ん?下部?誰だろ」
美穂「その電話大丈夫だよね?お化けとかじゃないよね?」
慎一「馬鹿いえ。そんなことある分けねぇだろ。もし、お化けだったとしても俺が守ってやるから安心しろ」
美穂「分かった…」
慎一はその電話に応答してスマホを耳に当てた。
慎一「もしもし?もしもし? あれ?おかしいな?」
美穂「どうしたの?お兄ちゃん?」
慎一「ん?ずっと無言なんだよ。向こうはうんともすんとも言わないし。」
美穂「それって本当にゆうr…」
慎一「しっ!何か電話から聞こえる。……………ヒェッ!」
慎一は声をあげながら驚くと同時にスマホを落とした。
美穂「ど、どうしたの?大丈夫だよね?一体何が聞こえたの?お兄ちゃん」
慎一「………………」
慎一は遠くを見たままボーッとしていた。
美穂「お兄ちゃん?お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
美穂は何回も何回も慎一に声を掛けた。しかし、慎一は遠くを見たままだった…。
そして、美穂は泣きながら地面に崩れてしまった。
美穂が泣き崩れてから数分後、健一と歩美がやって来た。
健一は美穂の泣き声に気が付くと走って寄ってきた。
健一「美穂ちゃん大丈夫?何があった?」
健一はそう言いながら美穂に寄り添った。
寄り添いはじめてから少し後、歩美も到着した。歩美が到着したのが遅れたのはただ単に歩美は走るのが苦手だからである。
歩美「健一君、歩美ちゃんは大丈夫?」
健一「分からない。とりあえず、泣き止むのを待って、事情を聞いてみる。歩美さんは慎一の様子を見てくれる?美穂ちゃんがここにいるって事は近くに居るはずだから」
歩美「はい!」
歩美はそう返事をすると「慎一さーん!」、「慎一さーん!」と声を掛けながら周囲を探し始めた。
すると、突然…
歩美「慎一さん!慎一さん!しっかりして!
健一さん!美穂ちゃんと一緒に来て!」
歩美が大声で健一と美穂を呼んだのだ。
健一「歩美さん!今行く!美穂ちゃん歩ける?」
美穂「……うん」
健一は歩美にそう返事をした後、美穂に声を掛け、慎一と歩美の方へと向かった。
健一と美穂が慎一と歩美が居るところに到着したときには美穂は泣き止んで気持ちも落ち着いていた。
健一達はただただ立って居るだけの慎一を見るなり名前を呼びながら走って近寄った。
3人が慎一の呼び続けてどのくらいの時間がたっただろうか。突然慎一の意識が戻ったのだ。
慎一「あ、あれ?美穂に健一、歩美さんも皆どうしたの?」
健一「どうしたの?じゃねぇよ!」
美穂「そうよ!お兄ちゃん。心配したんだから…グスッ」
歩美「まぁ何がともあれ意識が戻って良かった。」
3人が慎一の事で安心した後健一がスマホで現在の時刻を確認した。
健一「ゲッ!もう22時かよ。今日はもう帰るか。」
そう健一が話した瞬間にどしゃ降りの雨が降ってきた。
美穂・歩美「ヒャッ!」
健一・慎一「ウワッ!」
4人はすぐ近くにあった肝試しに来ていた廃墟の中に入った。
4人はそれぞれの鞄の中に入っていたタオルやハンカチなので雨で濡れた体を拭いた。
歩美「突然の雨でビックリしましたね。皆さんは風邪引いてませんか?」
慎一「俺は大丈夫だぜ。」
健一「俺も大丈夫。そうそう慎一、さっきは何があったんだよ。言える範囲で教えてくれよ。」
慎一「え?さっきの事って?」
健一・美穂・歩美「え?」
美穂「お兄ちゃんさっきの事覚えてないの?」
慎一「だからさっきの事ってなんだよ」
美穂「さっきの事はあれだよ。お兄ちゃんのスマホに電話が掛かってきた後の事だよ」
慎一「あぁ、あれか…。」
健一「どうした?慎一いきなり元気無くして。覚えてないなら話さなくて良いぞ。」
慎一「いや、覚えてる。ハッキリと。」
歩美「覚えてるのですね。良ければ聞きたいです。」
慎一「分かった。話すよ。」
そう慎一が言って、そのときの事を話そうとした瞬間に、廃墟の奥から…
「ヴヴヴヴヴぅぅぅぅ」
と言ううめき声が聞こえたとほぼ同時に美穂の叫び声が。
健一「美穂ちゃん!」
健一は美穂を呼んで周囲を見渡したが、美穂の姿がない。
慎一「あれ?美穂は?」
歩美「美穂ちゃんなら私の隣に…いない…。」
健一「二人は美穂ちゃんの叫び声が聞こえなかったの?」
慎一「美穂の叫び声?聞こえてないけど、奥から聞こえたうめき声じゃなくて?」
健一「うん。美穂ちゃんの叫び声」
歩美「私も美穂ちゃんの叫び声は聞こえなかったです。」
健一「あれ?おかしいな。気のせいかな…」
『俺はこの時に素直に大人達に美穂ちゃんが居なくなったことを伝えてこの場から離れていれば……こんなことには…』
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