目的地

午後9時過ぎ

ド派手な痛車もどきのペットショップの軽箱、運転席に僕、助手席に亨とレアが乗り込む。

「さてさて、カーナビセットするかね~♪」

亨がナビを入力していたその時

『ゴォぉぉぉ!!』

後部のスライドドアが勢いよく開いた。

「え?!」

ビクッとして2人と一匹が後部座席へ目をやる。

「ジジィ!!」「ジィーちゃん!?」《ふがっ!!》

「お前さんら、どこ行くんけ?」

よっこらせっと、祖父の卯月孝が乗り込んでくる。

「はぁ?ジジィ乗るなしっ!てか、今日は用事があるってゆうとったが、一体何なんなん!気変わりしたんか?」

なんだか亨があわて気味にジィーちゃんに突っかかる。

「まぁええがな、落ち着け亨。さっきの玲たちの話も聞いとってじゃな、その頃チョロチョロうろつく妙な気配が気になってしもうてな、なぁ猫殿?しっとろうが?」

俺とレアを交互に見ながら言うジィーちゃん。

短いウサギのようなレアの尻尾がピンッと立って、ピッピと動く。

なんなん?その尻尾の動き???

あっ!話って・・・ということは、僕とレアとの会話のことなのか??

ハッ!!スゲェー地獄耳(頭)だ!!


『ゴォー!バンッ!!!』スライドドアが閉まる

「さぁて、レットゴー!」

「プっ!ジィーちゃん、それを言うなら〈レッツゴー〉じゃが!あはは」

【案内を開始します…】

「さてと、セット完了!れっつらごぉ~~!♪」

おいおい、行き先くらい教えろよ~と思いながら僕はアクセルを踏んだ。


車は郊外から外れ、小山の山道へと入っていく。

談笑しなが小一時間走らせている。

ナビの目的地までの距離が数百メートルになった時、ジィーちゃんが話し始めた。

「亨、玲、今更じゃけぇどな、この気質は一族皆が持てるものじゃぁねんじゃ。わかるな?」

まぁ父母や伯父伯母も祖母も僕の姉も何も感じないみたいだけれど…

「ワシらの気質は三毛猫の雄が生まれる確率と同じなんじゃよ。それでじゃ、見聞きできる者や思念を読む者、次元を超える者色々と一族から出てくるんじゃ。」

「へぇ~、ひょっとして一族でも男だけとか?」亨が僕を見る。

「そうじゃな、女も子供のころは気質を負うが、徐々に消えていくみたいじゃな、ほれ、毬も幼子の時は荒れて困ったもんじゃったろ?」

あ、そういえば僕の姉、卯月毬は小さいころよく神社に〈火の玉捕ってくる〉って虫取り網もって出掛けて行ってたな。

でも中学校くらいから何も言わなくなったのは単に恥ずかしくなったからじゃなかったんだ…。

「そうだった、姉さんは見える系だったんだね。僕は最近発症したけど」

「そうじゃのう、ワシは玲は気質はないんかと思うとってのぅ。というのもじゃ、気質持ちが出てくるのも、ワシの世代も一人きりじゃったからのぅ。てっきり亨だけかと思うとったわ」

世代に一人?どういうこと?

「で、こっからが大事な話じゃ。この気質を絶対に銭儲けに使うたらイケンぞ。命に係わるからの。よう胆に銘じとけや」

「んぐっ!ジジィ、俺ら銭儲けにつこうとるじゃね~か!!」

亨があわてて突っ込む。

「そういうんじゃのうて、霊能者いうたり、超能力じゃいうて銭儲けしたらおえんっていうことじゃ。猫や犬の痛みを聞いとるって誰が信じるんなら?」

そういうことか。って良くわからないけど、妙に納得した。


【目的地付近です。案内を終了します】

がはっ!!!ここは…。

80年代に閉園して女性が自ら命を絶ったっていう元遊園地!!

超有名ないわゆる「心霊スポット」と言われる場所だっ。

ビビりの僕…なんで付いてきたんだ…。

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血統 猫矢しき @comayu

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