圧倒的後者
@sirayuki1124
第1話 始まりか終わりか
東京都江東区森下 7月
電気代ガス代水道代、それから携帯代もまだ止まっていない。
すべてを無くした今のわたしには、セミの声を聞いても暑くない。
心が冷え切ったのだろうか、こんなにも寒いと感じる夏の始まりは初めてだ
『18歳 高収入 日払い バイト』
もう何度も検索して得た結果、吉原で稼げるということ。
水商売は日払いではないが、風俗は必ず日払いらしい。
一日二桁も夢でない、そこに惹かれて少し遠い吉原へ出向いた。
*
私はここへ、スカウトされに来た。
スカウトだと、条件が良くなるらしいからだ。なのに、誰も声をかけてくれない
だけどみんな、じろじろ舐めるようにわたしを見る
たまに見る女性の顔からは、生気を感じられない。風俗関係だろうか?
仕方ないので、京都のような古き良き、という感じの建物の前に立ってみる。
花柄のワンピースを着た女が一人ここにいたら、きっと目立つだとうと予想して
「ちょっと、そこの人」
案の定一人の男が声をかけてきた
おじさんぽいが、イケメン
「スカウトですか?」
「店でも探してんのか?」
「はい!今すぐお金が必要で、何でもできます、処女じゃないので!」
「とりあえずここにいちゃマズいな。甘いもんとしょっぱいのどっちが良い?」
「え!パスタで!」
「わかった。じゃあ店に入るまでは何も聞かずについてきて」
男は名も名乗らずにわたしの少し先を歩き始めた
*
「あの、なんでさっきの所にいちゃマズいんですか?」
「いや、あそこは江戸時代からある有名な料亭だから。
あそこは俺の島じゃないから本当は俺は入れない。知り合いに見つかったらいつ絞められるか・・」
「俺の島って、領地的なものがあるんですか?」
「まあ色々あんだよ。それにお前のいた店が悪かった。
料亭とはなってるけど60分30万する超高級ソープだからなー
ていうか、お前なんで風俗なの?銀座の高級クラブでも全然いける
話した感じじゃ頭も良いだろうし」
「わたし、本当に明日の生活費とか光熱費がかかってるんです
優雅に談話なんてきっと出来ないから。そしたらお客さんに失礼です」
男は、黙って聞いていたものの神妙な面持ちで切り出した
「いいか。風俗はお前が思ってる以上に心にも体にも来る仕事だぞ
今は全国的に梅毒も流行ってる
それにいくら高級店にいたって、客は高級クラブのナンバークラス級の、
都合の良いセックスマシーンがたくさんいるくらいにしか思わない。
それでもやりたいのか?」
「やりたいんじゃなくて、私が裏切らないって感じるのはもうお金しかないです。
だから、男の目なんてどうでもいい。お金が入れば演技だってするし資本である体も壊れないでいる自信があります」
自分が思っている以上に、口からぽろぽろと強気な発言が出て驚いた
男も目を丸くしていたが
「わかった。けど、俺の島の店は紹介しない。」
「えっ、どうして?」
「んー、、お前が辛くなってる先が見えるからって言ったら良いかな
とにかく、スカウトに声かけられても無視をして、さっきお前が立ってた店に行ってくれば良い」
「さっき。。あの凄そうなところですか?」
「そう。あそこなら、辛うじて働きやすい。少ない人数でしっかり稼げるし
ただ採用率はかなり低いけどお前ならいける
まだオープン前だから、早く行ってみた方が良い」
「わかりました。ありがとうございます」
「おう。頑張んなよ。俺はもう行くけどさきに会計しとくからごゆっくり」
男はそう言っていなくなってしまった
わたしはこの後ずっと、その男が気になって仕方なかった
圧倒的後者 @sirayuki1124
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。圧倒的後者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます