第5話
宗くんに突然キスされてから、宗くんとは何だかぎこちなくなってしまった。
お互いあの日の話はしないけれど、何となく距離をとってしまう。
そうこうしているうちに、憂うつな梅雨の時期が過ぎ、中間テストが間近に迫っていた。
テスト前ほど学生の自分を呪う時はない。
毎回授業で言われる「ここは大事だぞー、テストに出すぞー」の単語を聞き取った時には、もう既に大切な部分の説明は終わっているものだ。
テストまであと1週間と迫った頃、急に宗くんが学校に来なくなった。
「ねえ、宗最近休んでるけど大丈夫かな?もうすぐテストなのに。」香織が心配そうに聞いてきた。
「そうだよね。机のプリントも溜まってきてるし…。」私が言うと、亜子が思いっきり立ち上がって、元気良く言った。
「じゃあ、宗ちゃん家に届けようよ!宗ちゃん家って、噂だとすっごく大きいんだって!私見てみたい!」
「え?でも家知らないじゃん。」
「大丈夫だよ!林田先生に聞いてみよ!」
亜子はぐいぐい私と香織を引っ張り、職員室に向かった。
「まさかあんなにあっさり教えてくれるとはねー。」香織が呆れた様子で言う。
確かに。生徒の個人情報なのに、プリントを届けたいといったら、担任の林田先生はすぐに宗くんの住所を教えてくれた。
まったく…今回は良かったけど、さすが2年目の新米教師だ。
「あっ!ここだよ!ホントに大っきい!!」亜子が興奮気味に声をあげた。
教えてもらった宗くんの住所には、周りの家と比べて圧倒的に豪華な洋風建築に、家を取り囲むように、白と深紅のゼラニウムが咲き乱れている豪邸が建っていた。
彼は可哀想な人でした 晴嵐 まち @machi_77
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