第二日 中原君のお悩み相談室

あの後の事を纏めよう。僕たちは学校を逃げるように出ていったあととある喫茶店によった。そこで話し合ったのは(笠岡さんは筆談)どうやって笠岡さんを喋れるようにするか?ということ。

本人が言うには


『私は極度の恥ずかしがり屋で喋るのも恥ずかしいんです』


らしい。それはもう恥ずかしがりどころじゃない。意志疎通ができないよ。

それで僕が考えた解決法は


「とりあえず友達を作ろう。あ、自分で喋ってね?筆談はなしの方向で」


強行手段だった。ここまでとは思ってなかったので僕も困っている。

まぁ、さっきの解決法は最終目標みたいなものだ。じゃあ解決法じゃなくね?気にしたら敗けだ。そう自分に言い聞かせた。

笠岡さんの顔が絶望に染まっていた事も付け加えておこう。


そして今の状況を説明しよう。

笠岡さんが頑張って僕に喋りかけようとしている。以上!!

いや、本当にこれ以上説明することがないんだよね!!


「ぁの……ぇえと……な……ん」

「なん?あのインドでカレーにつけるやつのこと?さすがに喫茶店には無いんじゃないかなぁ?」

「ち……が……!?」


……訂正する。もうひとつだけ付け加えよう。ナニコレ可愛い!!小動物かよ!!クッソカワクッソカワ!!別に川ってついてる人をけなしてる訳じゃないよ?ホントダヨ


「…………とまぁからかうのもここらでやめにして」

「ひ……ど」

「酷くない酷くない」


ここまでして分かったこと!!一つ!!頑張れば会話できないこともない!二つ!!可愛い

収穫がなぁぁぁい!!


「…………笠岡さんが可愛いのは分かったんだけどさ……これって練習になってるの?」


僕がそう言うと笠岡さんは小首を傾げて紙を見せてきた


『さぁ?』

「………………」

「ぃ……たぁ」


あ、しまった。条件反射で軽くチョップしてしまった。


「あ、ごめん!ついやっちゃった♪」

「ゅ……さな……い」


おっとぉ、殺意を感じたぞぉ~。流石に女子がよくやる可愛く言えば許してくれるよねアピールは効かないかぁ……


「これで……おぁいこ!!」


ブォン


「あっぶなぁぁぁぁぁ!!!!」


さっきのブォンって音は笠岡さんが僕の頭を叩こうとしたが身長が足りなくて思いっきり目に当たりかけた音だ。

どこがおあいこなのかなぁぁぁ!?


「ま……ちが……た」

「何を間違えたのかな?目測かな?それとも狙いかな?まさか始めから目を狙ってたり?」

「ぅん!!」


まぁ可愛らしい!!でも素直なのは時として邪魔になるよね♪

始めから目を狙ってくるとはヨソウガイデシタ。 


「てかあれだね。笠岡さんってさかなりお喋りだよね」

「そぅ……なの?」 

「あとで筆談で消費した紙の枚数見てみなよ」


そう僕たちがこの喫茶店きてかれこれ一時間ほどだが多分百枚ほど消費しているはずだ。それに途中から普通に喋ってたし

というか僕も声を震わせることなく喋れてるし。いやー話題がつきませんわー


「それはそれとして笠岡さんやそろそろお開きにしませんかね?」


笠岡さんは腕時計をみて時間を確認すると


『それもそうですね』


喋ろうよ。さっきまでしゃべれてたじゃない……

すると笠岡さんはもう一枚紙を見せてきた。


『ではとりあえず連絡先でも交換しませんか?』


…………そういえば交換してなかったなぁ~。これ男子に売ったら何円になるんだろうか。いや、売らんけど

てか連絡先ってどう交換するだっけなぁ。いっつも親友に任せたり妹に任せたりしてたから分かんないんだけど

じゃあ笠岡さんに任せよう!!分かんないことはできないしね!!


「じゃあ交換しようか。笠岡さんって交換のやり方知ってる?僕は知らない」

「し……ない…で…か!?」

「知らないできない分からないの三拍子揃ってるよ」

「うわぁ」


軽く引かれた気がするのは気のせいじゃない。地味に傷ついた。僕のカバーガラス並の心を砕く気かな?


「……そこまで引かなくてもいいんじゃないかなぁ」(震え声)

「あ……ご……さい」

「許すから交換して……はいケータイ」


僕がスマホを渡すとロックも何もかかっていないことに驚きながらも某無料通話アプリを開いた。しかし彼女はまた驚いた。そこにもロックをかけていなかったからである。


『中原君の個人情報が全然守れてないのですが』

「なんか一日に一回妹か親友に検索履歴やらチャット履歴やらを調べられるからそのときに邪魔だって言われて外した」

『個人情報保護法は何処へ』

「僕が聞きたいよ」


笠岡さんはそういいながらも指は高速で動いていた。これは人類の指の動きだろうか?いいや多分この動きを僕はできないと思う。理由はすぐ指がつるからだ。貧弱かな?


「はぃ……こ……ん……でき……した」

「あ、ホントだ。皆どうやって交換してるんだろ。不思議だなぁ」


まさか、あんな感じに指を高速で動かさないと交換できないのか?なら僕には一生かかっても無理だろう。諦めた試合終了だ。

にしても友達欄に家族と親友以外がいるのは新鮮だ。一番不思議なのは笠岡さんがその欄にいることなのだが

…………やっぱり売れそうだな


「それじゃあ今日はこれでお開きということで」


僕が席を立って会計を済ませに行こうとしたとき笠岡さんが意を決したように顔を赤くして息を吸い込んでこう言った


「また明日!!」


……なーんだ。やっぱり喋れるじゃんか。


「笠岡さん……声が大きいよ……」


でもさ案外大声だったから周りの人に注目されちゃってるよね。恥ずかしいよね。

まぁでもまた明日って言われたからこっちも返事をしないとね


「じゃあね笠岡さん。また明日」


そう言って僕は二人分の会計を済ませて妹が待つ家に走って帰った。なんで走ったのかは僕でも分からない。疲れた











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笠岡さんは今日も平和 楠木黒猫きな粉 @sepuroeleven

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