笠岡さんは今日も平和
楠木黒猫きな粉
第一日 笠岡さんは喋りたい
僕の学校には不思議な人がいる。
いや、別に変人というか訳でも露出狂という訳でもない。
ただ、僕はその人の声を一回も聞いたことがないのだ。引き込もって学校に来ないとか病気だとかそんなのでもないのだが喋らないのだ!
そしてその人はめっちゃ美人!!
告白され放題だった。けれどその告白した本人も声を聞いたことがないという。筆談で断られたらしい。それもその紙が使い古されていたのがフラれた心を余計に折ったらしい。知るか!!
まぁ、そんな男子の心傷はどうでもいいんだ!
今、大事なのはその喋らない美少女こと笠岡さんの事だ!
そう、今この場所にその彼女がいるのだ。何故?僕が知りたい。かえっていいですか?
僕だってなんでこんな事になってるのか知りたい。教えて笠岡さん!!
僕は今帰りのSHが終わって帰ろうとしていた所に彼女がきたのだ。それまでに僕たちには接点もなにもないし初対面だ。
そして僕は人見知りだ。初対面の人と喋るなんて至難の技だぞどうしてくれる。助けろ親友。
というかこんなことしてる間にも時間が過ぎてるし何か話しかけねば!
「あ、あのぉ……何かご用でしょうか?」
スッゴクコエガフルエテルヨ。
だから言ったじゃん人見知りだーって。助けろ親友!心の友よ!あ、しまったアイツは今、オーストラリアにコアラと戯れに言ってるんだった。チクショウユーカリの葉を土産に頼んだ!一回生で見たい!!
心で頼めば通じるはずだ!きっと多分!!
ん?視界の端に何か文字が……
『私は笠岡です。今回は中原君に頼みがあって来ました』
は!?僕に頼み事……だと!?そんな馬鹿な!僕は笠岡さんとは初対面のはずだ!信頼関係がないと頼み事はできないって妹が言ってた。ちなみに僕の妹は女神だ。これまでに近づいてきた男どもは僕が処分しておいた。これで世界は救われたね!!
っとそれより笠岡さんの事だ。頼み事ってなんだろ。
「……頼み事って?」
すると笠岡さんは高速でペンを走らせて文字を書いて見せてきた。字は綺麗だった。
『私は喋ることが苦手で今まで筆談で会話をしてきたのですがつい先程先生からそろそろ筆談やめろと言われまして。だから中原君に話相手もとい練習台になってほしくてですね』
うわぁ……(感想)じわぁ……(浸透)いや、浸透ってなに?
「それで何故ぼくがその役に?」
するとまた高速でペンを走らせて文字を書いた紙を見せてきた。
『クラスの人達や他の男子と違って私に気が無さそうなので』
……そりゃそうか。あのゾンビごとき男子とレズ集団がいるクラスだったね笠岡さん。
「うん……大体わかったよ。正直ホントに気はないしね」
『なら!!』
ホントに気がないのは良いのか悪いのか。まぁ、今の状況だったら良いでしょ。
「……うん手伝うだけなら良いよ」
『ありがとうごさいます!!』
すると笠岡さんは思いっきり頭を下げて机にぶつけた。ドジっ娘なのか?
「大丈夫笠岡さん?」
「……だい…………じょ……ない」
おーい今思いっきり喋ったぞ!!それも可愛かったぞ。好きな声です(真顔)
「とりあえず起き上がろっか」
コクコクと頷いて起き上がった笠岡さんは顔を赤くしていた。
可愛い。
そう思った。いや普通に可愛い。妹には敵わないが僕が見てきた中で結構上位に食い込む位で可愛い。あーこれは男子が惚れる理由がわかりますわぁ~。僕は妹がいるからなんとか惚れずにすんでいるがな!!
すると笠岡さんはまた高速でペンを走らせて文字を書いた。
『あの……そろそろ目立ってきたので場所を移しませんか?』
「賛成」
そうして僕たちは学校を逃げるように後にした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます