第4話
高校生というものになると皆「自主性」を押し付けてくる。
教師たちがいちいち詳細に指導するのが面倒臭いだけだろうが、「自主性」という言葉をうまい具合に利用して僕たちに押し付けてくる。
思い返せば小学校時代、中学時代は望むようなことは何もさせてもらえなかったし、高校時代はむしろ教師たちの優しさなのかもしれない。
それは今から振り返ると思うだけで当時はその優しさなんて考えもしなかった。
あれほどまでに自分たちのいう通り文武両道品行方正の道を歩めるように言ってきたくせに突然したいようにやれというのは一貫性がないし信用できないと思った。
しかも自主性と言いながらも結局グループでやるように言われて誰かが誰かの尻拭いをさせるようなことにしかならないじゃないか。先生の代わりに一番心配性なグループの誰かが
先生ではなく自分たちと似たような立場ということで良心の呵責でも狙っているのだろうか。小学生の時も中学生の時も結局はそうだった。
「僕は
この日生活を共にするグループを組まされてそのメンツを見た時、今までの
では傍から見たら愉快で僕にとって不愉快なグループのメンバーを紹介しよう。
僕を含めて3人グループだ。2人だと合わない人とは合わないし、4人以上だと大体内部分裂するから考えられてる人数だなとは思う。
1人目は
怒ったように顔をしかめているので非常に話しかけづらい。
頑張って話しかけても言外に「だからなんなの?」と言ってるようにしか感じられない。
眼鏡をかけているがもしかしたら度があっていないのかもしれないなと思うレベル。決めつけはよくないが早く眼科に行ってほしい。
髪の毛は三つ編みにしている。高校生にもなると頭髪も自由なのだがここで三つ編みにしているとすごく真面目そうな感じがする。それでいてこの態度なので正直怖い。
2人目は
こちらは一切表情が変わらない。表情筋が仕事していない。
話しかけても「…………そう。」と一切興味がなさそう。
非常に気怠げな雰囲気がある。
もしかしたら眠いのかな。なら今日は早く部屋に戻って睡眠を10時間くらいとってほしい。
片目が完全に前髪に隠れている。風紀委員でもなんでもないのに「前髪切るか横に分けるかしてください」と言いたいレベル。髪の毛せっかくサラサラそうなのに全くかまっておらずボサボサである。
見てわかるように同じクラスの名前の順でグループを組まされてるわけだ。
二人して僕と仲良くしようという気概が一切見られない。最初くらい愛想よくしようと思わないのだろうか。
入学して早々僕は不安でいっぱいになった。
こういう時俺はどうしたらいいんだろうか。このグループに一人でもニコニコして同意してくれるムードメーカー的な存在がいたらまだやりやすかったのに、人の話一切聞かなさそうな人とどうやったら共同作業できるだろうか。俺自身が超有能人材であれば、作業を完全に分けて一切共同しなくてもなんとかなるよう采配できると思うが、普通に俺自身も何をやればいいのかわからない部分が多々ある。三人よれば文殊の知恵をやりたいのだが。
しばらく無言が続いていた中ようやく西條が発言してくれた。
「で、何をやるんだっけ。分担どうする?」
まあ全投げの意見だが無言よりは100億倍マシなので全力で乗っかろう!!
「わからん!!!!」
「はあ?!?わからないなら黙ってくれる?」
そういう全否定はよくないと義務教育で習わなかったか?人は肯定してはじめて場が和んで話しやすくなるんだよ……口に出すとより怒られそうなので心の中だけで呟く。
「…とりあえずこの教科書と資料集を一通り読み込んで大事なところを適宜マークして、仮説と手順をまとめて、結果を…」
「そんなの前提でしょ。まあ時間決めてやるわよ。10分で読んで10分で大事な場所まとめるとしてまあ20分作業しましょ。その後理解度が高そうな人から仮説と手順まとめてさっさと実験するのが一番早そうね」
意外とまとめてくれるタイプか?俺がやらんと死ぬかと思ったがなんとかなりそうだな。
「OK!」と俺が勢いよく言ったところに
「……資料集って今日いるの?」とまさかの染宮の初発言がこれ。
「あんた授業受ける気あるの???」と最初からブチギレる西條…
多分この二人水と油だから俺が定期的にシャッフルしてやらないとこんな感じにすぐなるんだなと諦めた。
花が散るころに 柚木奏多 @kntty
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