無双

あまりもの人集りに目を回すラウラ。

「うぅ……。ものすごい人集りですが、いつもこんな感じなんですかこれ?」

「いつもはそんなことは無いんだけどね〜。」

流石の人混みにエマも困った顔をしている。

「うーん。今日は腕自慢大会があるからね。」

「腕自慢大会?いったい何の腕を競うのでしょうか?」

「それは勿論喧嘩だぜ。喧嘩!拳と拳のガチンコ勝負!燃えるだろ?」

いきなり熱を出すジャックにエマ、アメリア、ゾーイはまたかと呆れる。

「こんなのラウラちゃんも困っちゃうよね?……ってあれー?」

エマが振り返ると、それまでのラウラからは想像出来ないくらいの熱を出していた。

「それは素晴らしいですね!無双……いえ、互いに本気で戦うというのは互いに自分の実力を確認出来ると同時にフルボッk……自分を高める場になりそうですね!」

本音が見え隠れするが目を輝かせるラウラに呆気にとられている3人を余所に二人の熱は上がり続ける。

「だろだろ?ラウラちゃんは分かってくれるんだな!ちなみに俺も参加するんだぜ?」

「因みにそれは今から参加はできるのでしょうか?」

「当日飛び入り参加はできるはずだぜ?流石に途中参加はできないみたいだけど。大会には屈強な大男や戦士も参加する。銃火器の類は禁止だが、剣などの武器は持ち込み可能だ。ラウラちゃんみたいな女の子には向いてないと思うよ?」

ラウラはその言葉にムッとする。

「お言葉ですが、それは偏見というものですよ。大会で私に負けて泣いても知りませんからね。」

そう言われたジャックは渋い顔をする。

「そんなつもりは無かったんだが……すまねぇ。気に触ったなら謝る。」

「……いえ、僕も言い過ぎましたね。大会ではお互い全力を持って正々堂々戦いましょう!」

恥ずかしげも無く恥ずかしい言葉を言ってしまうラウラに、ジャックはちょっと照れ臭そうに答える。

「ああ、正々堂々な!拳で!」

「ちょっと2人とも早くしないと受付終わっちゃうよー」

語り合う二人を置いてエマ達は大会入り口に向かっていた。

「あっ、やばい。受付あと5分じゃねーか!?」




『さあ、ついに始まる腕自慢大会!!ルールは簡単単純明快。闘技場で最後まで立ってた奴の勝ちだッ!!!!優勝者には賞金3000ドルが貰えるぜ!武器は銃火器は禁止。リタイア宣言した者への攻撃は反則とみなして負けにする。他質問があったらスタッフに聞いてみてくれな!10分後のブザーと共に開始だ!健闘を祈るぜ。』

ルールのアナウンスを聞くとフェリックスはにやりと笑う。

「わかりやすくていいじゃねぇか。つまり全部吹き飛ばせばいいって事だろ?」

まるで脳まで筋肉なのかというくらい単純な

開始まで後10分。参加者はほとんど物陰に隠れたり、それぞれいいポジションを探して移動をしている。

「全員は見えねぇがだいたい600人くらいか?それに思ったより広い。チッうざってぇな。」

しかしフェリックスは隠れる所か闘技場のど真ん中に立っていた。

「派手に行くか。」

笑がこぼれる。

ブザーと同時に地面が吹き飛んだ。




「意外と参加者いるみたいだねー」

アナウンスの後ラウラ達は無事受付を済ませて闘技場の中にいた。

「俺で613番目だったからだいたいそれ位いるんだろ」

ジャックがギリギリに受付をしたからおのずと人数はそれ位だということがわかる。

「しかし、ゾーイ。お前まで来る必要は無かったんだぜ?」

「お前を一人では心配だ。安心しろ、足で纏にはならない。それに危なくなったら棄権するつもりだからな。」

それを聞いてジャックは目を輝かせる。

「ゾーイ!なんて優しい子なんだ!俺が心配でこんな危険な所まで着いてきてくれるなんて!可愛すぎrグハッ」

「あと五分でブザーが鳴る。集中しろ。」

赤面した顔を隠しながらジャックの腹にパンチを入れる。彼女なりの照れ隠し?なのだろう。

「ではそろそろ私も移動しますね。お互い残ってたら全力で戦いましょう。ご武運を。」

そう言ってラウラはその場を離れる。


――さて、この岩陰でいいかな。

ラウラは適当な大きさの石の影に隠れて中央の様子を窺った。

中央に人影が見える。もう数百で開始時間なのに中央にいるなんてよっぽど腕に自信のあるの命知らずか馬鹿くらいである。

――あいつ何やってんだ?ん?あのシルエットは……!?

ブザーが鳴り響くと同時に地面がめくれ上がった。



ジョージ・ブラウンは混乱していた。

さっきまで自分は、いち早く良さげな隠れ場所を見つけ、一息ついて、逃げも隠れもしない中央にいた馬鹿を見て笑っていたはずだった。

このまま最後まで隠れ続け、最後に疲弊しきった相手を倒すという算段だったのだが、それは開始と共に崩れ去った。

絶対的優位に立っていた。立っていたはずだったのだが。

自分は瓦礫と共に宙に浮き、無防備な状態を晒していた。視界にはさっきまで嘲笑っていた男が笑いながら迫ってくるのが見えた。

そこでジョージは自分が一つ過ちを犯した事にに気がついた。そう、この大会に参加した事自体が間違いだったのだ。

それから彼が目を覚ましたのは2日後だった。



「吹き飛べッ!!!」

フェリックスは地面に全力で拳を振り下ろす。

するとそこを中心に地面がめくれ上がり瓦礫や無防備な人が一瞬宙に浮き上がった。

「オラァ!」

すかさず一番近くにいた男を手加減をして殴りつけた。

もう少し向こうにも人がいたから瓦礫を蹴飛ばして命中させる。

それを見た参加者は戦意を喪失し、棄権者が続出する。

「チッ呆気ねぇ。死にたくねぇならとっとと失せろ。」


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KOKUBYAKU @yuhimanatu

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