二天の交わる処
非常に危うい事態だ。
最強に等しい
突き崩そうにも死角がない。
「………………」
この
「あなたは、持ってるわね?」
そんな娘の隣を見ると、こちらは早々に事態を察したらしいもう一人の子が、何やら情けない顔をしている。
果たして血を分けた仔ではないが、母と慕われれば情も湧く。
「お姉ちゃんのこと、お願いしていい?」
「それって……」
目を見張った
「任せて。 でも……、でもお母さん!」
「ちょ待って!? そういう事か!」
そこでようやく辻褄を得た様子の曉が、錯乱したように吼えた。
「ダメでしょ!? 一人じゃダメだよ!」
慌てて長剣を払い、母に加勢しようと働くも、これを
「離せや! 離せって!」
「……巻き込まれる。 ダメ」
「あ……?」
「うぁ?」
何やら
極天に暗雲のごとく居座る猛火が、
「ぅ……、つ!」
目を
つぎに見た時、眼前に母の姿はなく、代わりに大きな窪地があるのみだった。
その所々に、墨色の残火がチラチラと居残っている。
「骨まで
「かの
「なに……?」
曉の心臓が嫌な跳ね方をして、眼の奥に
もちろん、あの母上が、こうも簡単にやられる
しかし、先の黒炎は、あの
それをまともに
「──────!!!」
そこに、絹を裂くような悲鳴がした。
目を
「どうして!? どうして!!?」
その悲痛な叫びを聞いていると、
「てめえら……」
一時は混乱したが、落ち着いて考えれば、なるほど簡単な話じゃないか。
目の前のコイツらに、母上がやられた。
ならアタシは娘として、
たとえ心の臓を砕かれようとも、奴らの跡形を無くすのが道理だろうよ。
「あん……?」
殺伐とした意気込みを負って、大きく踏み出そうとした矢先のことである。
曉は、またぞろ自身を制止する手があることを知った。
いの一番に黄昏かと考えたが、どうにも様子がおかしい。
当方の手を握り止める手腕は、異様にゴツゴツとしていて、武骨極まりないものだった。
「ご案じ召さるるな。 お母上はご無事に御座る」
「御座……?」
勢いよく振り返ったところ、何とも頼もしい威容があった。
浅黒い肌に猛禽のような眼。 肩先に
それは、単に数々の修羅場に通じているというだけではなく、一道を極めに極めた者の、烈火の
「何者か?」と問う姫君に、彼は「外道に名乗る名など無し」と、
「
そんな男性の
着物を
「母上は大丈夫。 内にいるよ? すこし焦げちゃったけど」
その唇が静かに物語り、鈴のような
「あなた、誰?」
ようやく一語を絞り出した曉は、ともかく身構えることに専念したが、彼女が敵でないことは一目で知れた。
覚えはないが、ひどく懐かしく、
この思いを証拠づけるように、目先の姫君に
「ど外道めが。 わが身内に無礼を働いたこと、死ぬほど後悔させてやろうさ」
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