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今夜を乗り越えればきっと何とかなるに違いない。暗い夜に考え事をしても悪い結論しか出てこない。朝になればきっと。
橋に辿り着く前に
「
「海斗がやったんですよね。酷い
海斗の問いに薄く笑う美魚。
「私が楽にしてあげました。心配いりません。もう追っては来ませんよ」
「こ……殺したの?」
「帰りましょう、海斗。帰って私と
美魚の目に私は映っていない。その瞳はただ兄だけを映している。
「その気はねえよ」
言い捨てるや、海斗は
「クソッ!?」
「そいつが強いからですか? それなら私も強くなります!」
海斗を切り裂いたのは刃物ではなかった。細く滑らかだった美魚の
「どれだけです? どれだけ強くなれば私を求めてくれるんですか!?」
わたしを
「……これ以上邪魔をするな。もう行かせてくれ」
「行かせません! じきに
切り捨てる海斗の言葉に、美魚は涙で汚れた顔を上げ叫んだ。
時間稼ぎをしていたのか。不吉な気配を感じ、海斗とわたしは弾かれたように、月に照らされる海に目を向ける。
海面に、幾つもの魚人の頭が浮かび上がる。それに、こんな場所に
津波のように不自然に潮が満ちてくる。砂浜は波に沈み、すぐに堤防を越えた海水が道路にまであふれ出す。
「津波が! はやく……はやく逃げないと!」
泳げないばかりではなく、海恐怖症の私は軽いパニックに
海には怖いものがたくさん潜んでいる。実際に、あいつは海の底から浮かんで来たじゃないか!
「早く登れ!」
追い詰められたわたしは、山側の壁を登り始めた。水への恐怖に急き立てられ、爪が割れるのも構わず、何度もずり落ちながら必死に登るも、反り返る落石防止柵に阻まれ、それ以上身動きが取れなくなる。
海斗は満ちてくる潮に
美魚は
「あなたは強いですか? 直系の私が
……直系?
美魚の発した生々しくも不吉な言葉に見下ろすと、
「
大人の腕ほどもあるそれに、頬を寄せ口付ける美魚。
「だからあなたは、あなたの全てを捧げてください……」
震える声で
「美魚!?」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884704612
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