第5話:透明

なんとなくお互いに距離を取ってしまうのでは・・・と心配したが、そんなことはなくて


今までよりも距離は近くなった気がする・・・月曜の放課後


カズハ「光の描き方って少しは進んだ?」


ユウキ「家のパソコンがリビングの家族共用しかないから、なかなか・・・」


カズハ「私の部屋にパソコンあるからくる?」


ユウキ「え?そうなの」


カズハ「お父さんがそういうの好きでさ、相当いいやつが私の部屋にある」


ユウキ「なにそれ?」


カズハ「まあ、説明してもらったけど何言ってるか全くわからないから笑顔で聞き流してる、いつも。ネット見たり色々やっても全然へこたれる感じはないよ」


ユウキ「いいな~」


カズハ「ワークステーションのCPUがXONEの何で64BITでメモリが・・・って聞いても意味わかんない」


ユウキ「ははは、たしかに・・・ってワークステーションって一般向けじゃないよね」


カズハ「そうなの?」


ユウキ「それならたぶんペンタブで余裕でお絵描きできるよ・・・」


カズハ「・・・そうなんだ」


そうなら、って部活は放棄してカズハの部屋に移動


イラストレーターのメイキング動画を2人で見ながら・・・


まあ、当然のように隔離された空間で2人でいたら・・・もう理性を制御なんてできる訳もなく、お互いの温度を感じる距離で・・・世界の色が変った気がした。


色の入れ方をお互いにああでもないこうでもないといいながら・・・一週間はカズハの部屋に通ったと思う・・・


絵の構成はなんとなく出来ていてイラストレーターのペイントソフトで最後に光を足しているのを考えると、水彩で描くなら光を描く部分は白のまま抜いて最後に調整を行えばそれっぽくなるって結論は出た。


結論はあるけどそれがなかなか・・・出来そうでできない、2人で慰め合いながら・・・(いやらしい意味ではなくて・・・まあ・・・どう取られてもいいか・・・)納得できる仕上がりになったのは応募期限のギリギリ。


カズハ「最初のイメージよりはよくなったきがする・・・」


ユウキ「うん、きれいな夕焼けと海に仕上がってるとおもうよ」


カズハ「ありがとう、ユウキの絵も鮮やかな緑の木漏れ日になったと思うよ」


結果としては2共上位にはならなかったものの佳作としての評価がもらえた。


結果が発表された後の部室で


ユウキ「ちょっと、がっかりだね」


カズハ「なに言ってるの2人とも評価されたんだから、間違っていないってことでしょ?」


ユウキ「ああ、なるほど」


カズハ「いきなり目立つ必要はないからもう少し練習してすごいのができた時に評価されてた方がうれしくない?」


ユウキ「確かに・・・そうだね」


カズハ「でしょ?」


ユウキ「次のコンクールってテーマなにかな?」


カズハ「焦らないでよ、今回の2人の佳作を祝ってないじゃない」


ユウキ「そうだったね」


そう言いながら、どちらともなく唇を重ねた。

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色の温度 Iris @Iris-8800

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