ASK ~くたばれ〇高◇
Yohukashi
ASK~くたばれ〇高◇
A国は長引く戦乱に終止符が打たれ、人々の念願であった平和がようやく訪れたのだが、深刻な食糧危機に陥っていた。そんな中で成立した食糧供給法により、政府が設立した外郭団体が格安で国民にパンを配ることになり、人々は飢えをしのぐことができるようになった。パンを配る団体の名はA国食糧協会、略してASK。ASKは政府からの補助金とパンを配ることで得られる収入すなわち糧食料金で運営されている。一定の収入のない人々には支払いが猶予されるなど、糧食料金には一定の配慮がなされている。家庭には宅配ボックスが設置され、そこにASKから届くパンや郵便物、宅配の荷物が入れられる。
時代が経つにつれ、A国の経済は上向き、人々の生活も豊かになっていった。パンを作る民間企業も次々にでき、様々な種類のパンが市場に現れた。そうした民間企業に負けないようASKも様々な種類のパンを作るが、長い間独占企業として胡坐をかいてきたASKの新製品開発能力はなかなか上向かない。人々はASKより優れている民間企業のパンを求めるようになった。だが、人々の求めとは関係なく毎日ASKのパンが届く。人々の中から、ASKのパンはいらないから配達を止めてくれと訴えるものも現れた。だが、A国食糧供給法には、
「宅配ボックスのある家庭は、糧食料金を払わなければならない」
と記載されている。宅配ボックスを設置しているということは、ASKのパンが必要だと言っていると見做されるということらしい。ASKのパンを受け取りたくなければ宅配ボックスを撤去すればいいらしいが、撤去すると郵便物や宅配便が受け取れなくなる。
人々はやむなく裁判所へ訴えることにした。宅配ボックスはASKとは関係なく設置しているものなのだから、A国食糧供給法に記載されている「宅配ボックスのある家庭は、糧食料金を払わなければならない」は違憲なので削除すべきだと訴えたのだ。だが、29年12月6日にA国最高裁判所が出した判決は、
「違憲性は認められない」
ということだった。結局A国の国民は、お金を払って要らないパンを買わなければならなくなり、しかも支払い拒否ができないことを逆手にとってASKは、更なる品質向上と安定供給をするためとか尤もらしい理由をつけて突然大幅な値上げを実行に移した。大幅に値上げされたにもかかわらず、ASKのパンの品質は下降するし配達遅延はするし、一向に良くならない。良くなったのは、ASK幹部の給与だけだった。
やがて、A国はASKのような政府外郭団体が雨後の筍のように次々に設立され、国民の生き血を吸い取るハゲタカがウジムシのように増えていった。国民生活は逼迫し、生活に苦しむ人々は軍の半数を仲間に引き入れると一致団結して政府に戦いを仕掛け、A国は再び血で血を洗う内乱へと突入していったとさ。おしまい。
ASK ~くたばれ〇高◇ Yohukashi @hamza_woodin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます