・第九十八話「逆襲物語ネイキッド・ブレイド(中編2)」
・第九十八話「逆襲物語ネイキッド・ブレイド(中編2)」
「手前等如きがっ……!」
「何が如きだ! 『
フェリアーラ、ミレミ、ユカハと共に『
「何だと!?」
「今を生き続ける永遠って対価で雇われて、その為に武器を振り回して人を殺し、奪い、虐げる! その有様は……俺の敵だって事だよ!」
それは皮肉であり、己への鼓舞。相手が傭兵だと言う事で、己が殺すべき相手だと宣言する。
「つまり僕の敵で!」
「「私達の敵だ!」」
ミレミが叫び、ユカハとフェリアーラが切りかかる。防具を使い捨てる事でダメージを低減できる魔法があるとはいえ、鍔迫り合いをすれば武器を破壊されかねないという状況は多対一とはいえ極めて困難だ。切り飛ばされた〈戴冠せるもの〉の服の切れ端が浄化魔法で消える。逆に言えば、肉に刃が届いていない
「『闇の多面体』!!」
「ミレミ!?」
苛立ち異界攻撃魔法を弾幕めいてぶちまけ状況を打開しにいく〈戴冠せるもの〉。ユカハ、フェリアーラ、
「大丈夫っ!」
KYUOOOONN!!
だいぶボロボロになってしまった派手でかわいらしい装束が二色翻る。ミレミを抱き抱えて飛ぶ、『
「やれる!?」「やる!!」「よし!」
一瞬の交錯。ミシーヤはミレミを降下させ更に飛ぶ。一人で『
その一瞬の言葉の交錯、それは、〈戴冠せるもの〉をここからこの場のメンバーで倒せるかという確認だ。それにミレミは是と答えた。その意図が、【真竜の宝珠】で全員に共有される。
「舐めたなっ!! ライトファンタジーハーレム野郎がぁああっ!!」
間合いを取ったのは意図通り。勝つのは己だ、ここから眼前の相手を薙ぎ倒し、青息吐息の残りの生存者も諸共殲滅してやると〈戴冠せるもの〉は切り札を切る。
打ち振られる『
「「「「「「OOOOOOOOOOOO!! !! !!」」」」」」
剣から『死者の軍勢』が溢れ出る。それは
「舐めてないさ! 僕が舌で触れたいのは
「ドサクサ何いってやがるハーレムは
「それは貴方だけじゃ」「ないだろう!?」
憎悪と軽蔑をミレミは笑い飛ばした。杖を掲げる。赤面しながらも
「お前が永遠と名乗る程昔から先んじているとしても! 俺達の世界が滅んだ世界の残骸から出来てるんだとしても! それでもと言ってやる!」
『死者の軍勢』に抗うのもまた同種の存在。彼等彼女らが背負ってきた思い達だ。即ち、地球の軍事力に蹂躙され果てた自由守護騎士団の先達にして本来正規の男の騎士達、そして、これまでに
「弱く未熟で紛い物の世界などっ!!」
「だからこそ継承できる! だからこそ成長できる! お前を! 超えていく!!」
「貴様等如きがぁああっ!!」
叫ぶ〈戴冠せるもの〉。旧き者。その叫びは怒りと動揺だ。彼もまた旧きものだが、絶対最古ではない。彼の剣も『死者の軍勢』もまた、より古き者を継承し、それを上回ってきたものだ。永遠を忌みながら耽溺し手放せず、遊惰の最強者にして処刑者でありつづけて忘れていたツケが襲い掛かる。
故に今、古きを継承し新しき
最初に突き立ったのは、飛翔してきたミレミが槍めいて構えた杖だった。確かに言う通り、優位に立ちつつあった〈戴冠せるもの〉の『死者の軍勢』に押されつつあった【霊の軍勢】のエネルギーと自身の魔法力、普段は全員に行き渡らせていた支援魔法をこの場の少数者と己に限定しに一点集中した勢いで超音速の鏃となる。
本来、超音速程度では〈戴冠せるもの〉の迎撃をかいくぐる事等出来はしない。それを為せた理由は四つ。
一つは、自身が『刻呪の杖』を使用しようとしていた事。『闇の多面体』を同時使用しての迎撃が出来なかった。
二つは、死者達の戦い故だ。『死者の軍勢』と【霊の軍勢】との激突は周囲に合戦場を構築していたが、それは同時に隙を生む妨害となり、更に単に眼前の敵を破砕しようとしていた『死者の軍勢』に対【霊の軍勢】は自分達の勝敗を考えず激突の間に生者達がこの戦場を突破する為の道を作る事を考えて動いていた。
三つは、時を同じくしてこの場で最も剣技に長けたフェリアーラが動いていた事だ。彼女の一撃は至極単純な剣の術理に基づいていた。剣の平の部分でものを切れる実体の剣は存在しない。平手打ちの様に、『
そして四つは。
「(ありえん……!!)おおおおおおおっ!!」
それでも尚、剣を握る手を焼かれ、剣を弾き飛ばされかけながらも〈戴冠せるもの〉は剣を手放さなかった。己の肉体を損壊させる程強引に剣を振り戻す。冠を砕き、頭蓋をも砕く程の魔法衝撃を受けても尚。
「《
「ええぇええいやああああああああっ!!」
「おおおおおおおおっ!! !」
嵐を巻き上げ、飛び込む
同時に〈戴冠せるもの〉が剣を強引に降り戻す、その動きに《
「………………!! !? ? ?」
その三連携が完全に決まった。腕を滅茶滅茶に吹き飛ばされ、五体をバラバラに粉砕されて〈戴冠せるもの〉は吹き飛んだ。
だが!
「皆剣から離れろぉおおおおっ!! !!」
剣が。四本に分裂した『
ラトゥルハが戦う『
「逃すと思うかぁああああああっ!! !!」
追い詰められて尚狩るのは己だと猛り狂う。飛来した三本の『
〈妹なるもの〉だった存在は変形していた。四本の魔剣を構成していた超自然の黒鉄が欠損を補い明らかに体積を無視して全身を多い、四面四腕、刃鉄を捩り合わせたような異形の魔人へと変貌した!
突撃するラトゥルハと飛翔するミシーヤ、それを追う
ラトゥルハの両手から
「それはオレ達の台詞だぁああああああっ!! !!」
だがそれでもラトゥルハは吼えた。今や最後の一人となった《
それに対して。
「行ったろう『
《
「延々と虐げてきた、報いを受けろ自称永遠っ!!」
ミシーヤが『
「馬鹿なぁああああああああああああっ!!? ?」
これまでの四体の姿を合わせた力を持つ筈の、敵全員を殺しつくせてしかるべき最後の姿である
「馬鹿じゃ、ない! こいつらの事を馬鹿とは言わせない、お前だって!」
道理を蹴っ飛ばすラトゥルハの両腕が、掌を焦がしエネルギーの刃を費えさせながらながら『
『
(奴?)
一瞬、『
「お前だって! お前の物語はどうした! 馬鹿ぁああっ!!」
ラトゥルハが、両腕が焦げて使えなくなった事を恐れず叫び、尖った肩鎧から全力で『
お前の物語はどうしたと。己の〈
「!! !? ? ?」
その言葉に『
それは唯否定し続けるだけの存在、己の物語とそれが体現する
『
「わ、私は、私はあああああああああああああああ!?」
故にダメージに加えてのその言葉に『
(ああ、つまり、己は。転生を避けたのでも無く。救いを求めたのでもなく。ただ、懐古を。その為に、この姿であり続ける為に……成程、勝てぬ、訳だ)
かつて己という剣を捨てた使い手達の人が自らを尊ぶ為の永遠と神々の権威の拒絶という結論を否定する訳ではないがまた違う、人の心の尊厳を守る為に物語は守られねばならぬという結論に、拒絶された神秘だった魔剣は浄化され、『
(最後まで役に立て、剣!)(『
忌々しいと、『
「オレが味方するあいつ等は、昔を受け継ぎつつも、新しい物語を見るんだ! ……明日を否定する今も明日を馬鹿にする昨日も! 砕け散れぇえええっ!」
ラトゥルハは叫んだ。『
「ギィイイイイイイイイ!!」
『
「ィイイアアアアアアアアアアアア!!!」
だが尚、『
「ッ!!!!!!」
ラトゥルハと『
(避けられ、ない!)
ラトゥルハは悟る。既に周囲の空間は歪んでいる。逃れられぬ。落ちる。だが突撃を続ければ、『
「なら、やるっきゃねえだろ!」
ラトゥルハは突進を止めなかった。償う。果てに至ろうと。それと呼応するように、戦場が鳴動した。それは、二つの世界で繰り広げられる戦いの共鳴だった。
「リアラ!?」「ルルヤ!?」
目撃した者が口々に名を呼ぶ、この場の誰もが知るこの戦いを始めそして終わらせるだろう少女戦士二人、リアラとルルヤの姿を併せ持つ者。空を翔るは、地球の化身と
それと取っ組み合う、白亜の巨躯に赤と黒の模様が走った無表情で重厚な異形の神像。【融合巨躯】が髪から発した鎖めいた魔法が絡んだ取り囲む者が数体、正面対峙する者が一体の同型の複数体が存在するという驚くべき状況、だがそれが最後の敵、『
東京湾での戦いがそれから更に推移し、世界を飛び出し、飛び回り、この
割れた世界の障壁を撒き散らし、それを【世界】の効果で徐々に再生させながら、英雄達は一瞬の別れをした。誰もが、様々な特別な思いを込めてそれを見た。
「「ラトゥルハ!?」」
しかし残念ながらそれに専念してられる状況では無い。あまりに一瞬過ぎた。故にそんな中、
「大丈夫だ! トドメは刺す! 刺すが! ちょっとそれには距離がな! 何、戦後の事を考えりゃ気まずいんでな! 少々ルール違反だが、トンズラさせて貰うぜ!」
「何を! 馬鹿な事を! 次元世界間が、そんな気軽に渡れる物だとでも! 漂流者に! なりたいかぁあああっ!?」
ラトゥルハが笑う。『
「ッ……! 大丈夫!」「信じろ、私達も、頑張る!」
リアラとルルヤも、咄嗟に叫んでいた。世界と世界の間を跳躍しながらの死闘の最中。一瞬帰り来て、また行き過ぎる
「そっち、こそなっ……!!」
ラトゥルハは、意地を張って不敵に笑った。だからラトゥルハも、出来るだけの力をリアラとルルヤに送った。少しでも勝てる可能性を上げる力を。
「シャアアアアアア!」「ッ……!」
ラトゥルハが世界断裂に飛び込む一瞬前。『
世界を去る、最後の一瞬。
Z!!
「……言ったろ、終わらせる、ってな」
(……さらば、友よ。汝は我の千倍も……)
最後のそれ自身の思念は、過去への郷愁であると同時に、己を打ち倒した者への感慨でもあり、そして同時に己を使役したものへの、複雑な感情の断片でもある、それら全てを表す言葉だった。
だが
否。
「リアラーーーーーーーーーーーッ!! !!」
ミシーヤが、叫んだ。万感の思いを込めて……私もまた貴方のように誰かを、そして貴方の心を救える力になると。二人が出来ない事をして助けると。その思い故に、最早ラトゥルハの世界間漂流は避けられないものと思ってそれを少しでも支える為の魔法を構築したリアラとルルヤの思惑をすら超える。
ミシーヤの魔法が
リアラもルルヤも
「助かった! 助けた! 何とか! する! ……御武運を!」
ミシーヤは叫んだ。リアラもルルヤも、その場にいた他の全ての全員に向けて。端的に。リアラとルルヤが使った力もあり、ラトゥルハを助けられた。彼女の法的地位とか面倒くさい問題は何とかする。私達は大丈夫だ。勝った。だから……
ラトゥルハがその状態に陥る事を危険として必死に対応しようとした場所で戦う貴方達に、どうか勝利と幸運と帰還を祈る、と。
「っ、あり、がとう!」「私達も、負けん!」「おのれ……!!」
リアラとルルヤ。再び世界の狭間に消える一瞬前。感謝を必死に叫ぶ。
そう、
「……勝ち鬨は、まだだ!」
だがそれは
「術式転換! 通信・遠距離支援に切り替え! ……繋ぐんだ! 思いを!」
皆、空を見上げた。そこに、祈りを捧げる。
そこには、
それに向かい、あらゆる魔法と竜術、【
どっか、と、
「……頼むぜ、ルルヤ、リアラ」
定めた生き方から開放された少年は。少なくとも今ひと時は脅威から開放された世界に座り、空を見上げ友に祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます