・第九十五話「人の光は全て物語(後編)」

・第九十五話「人の光は全て物語(後編)」



(……終わらせる)


 『全能ガイア』は判断した。『交雑マルドゥク』もリアラもルルヤも底は見切ったと。【真竜シュムシュの地脈】を使用してこの程度ならば、ここから更にその規模を増やした所で、そういった想定出来る更なる強化の可能性を考慮してもその程度ではやはり己には及ばぬと分析し終えた。


 この変則的な1対2対1の局面、『全能ガイア』と『交雑マルドゥク』がリアラとルルヤに当たるか、最強の者……当然『全能ガイア』だ……に残り全てがぶつかるかは状況にもよるが、少なくともリアラとルルヤは分析結果において自分が『交雑マルドゥク』と組まねばならぬ程強くはないし、そして、『交雑マルドゥク』は今更リアラとルルヤと同盟を組める程卑屈ではなく、さらに言えばそもそも仮に同盟を組んでも私には及ばないと。


(そう。やはり、誰にも世界は救えない。私以外の誰にも。私こそが世界の救い。だから、誰も私は倒せない。誰も)


「いいや、いいや」


 だがそれに。


「世界を救うという程大した事をしようとはしてない。せいぜい自分が思う少しマシなほうに転がればと力を尽くすだけだ。物語を愛して現実を嫌っているのはその通りだし……ああ認めるよ、僕とお前は鏡写しに似ているかもしれない。でも!」


 リアラは立ち上がり、立ちはだかる。傷と血にまみれてもその目を光らせて。


「だからこそ僕は僕にもお前にも負けない……勝つ!」

「ああ……」


 故にルルヤが付き従う。傷だらけの黒い守護竜が。


「勝たせてやる。私が、お前を……誰にだって!」「ふん」


 相対し尚『全能ガイア』は悠然と光弾連射の構えを崩さぬ。不可能、唯潰すのみと。


(そろそろ……勝負に来るか、リアラ!)


 一方、それでも尚『交雑マルドゥク』は侮らぬ。現状において応戦し続ける限りリアラとルルヤに自分を殺し切る事は出来ない。一瞬の隙を突いて操縦席にいる己を叩き潰しすらしても尚、この機体はパイロットをすら再生してしまう。機体の中枢を破壊するにしても同じ事だ。次元接続システムは言わば既に形作られた空間の歪みであり、最早自然現象めいて別の次元からエネルギーを収奪し流れ込ませ続けるあり方だ。それがある限り、機体そのものはどこを壊されても再生し続ける。欲能チートによる概念的な不死や不滅ではなく他の複合的な力による強制的な連続回復で、全欲能行使者チーターの中で『全能ガイア』を除けば最も竜術に対し不死不滅に近い境地に立った。後は、勝利の為の機会を掴むまで耐えればいい。だが。


 リアラも自分と同じだ。唯の物語を愛した人間でありながら、それ故にこの境地に立った。人間の凄まじさと恐ろしさの体現者。であるからこそ、己が勝利を諦めぬ間は、リアラも勝利を諦めまいと。憎くも愛しい、鏡写しのかの怨敵。


 そうだ。リアラが何を見いだそうと、そこにこそ勝機がある。諦めぬ。最後に勝つのはこの己だと、『交雑マルドゥク』はリアラの声に対し身構える。


「……お前は『全能ガイア』に勝つだろう。だが、俺はお前にも『全能ガイア』にも勝つ」

「それも、させんさ」「ああ、君にも、勝つ」


 割って入る『交雑マルドゥク』の言葉に、リアラとルルヤが答え。


「揃いも揃って……思い上がるな。さあ、死のうか」


 『全能ガイア』が引き金を引いた。


 ZDDDDDDDDDDDDDDDDD!!!!

 SYZZZZZZZZZZZZZZZZ!!!!


 乱れ叫ぶ『全能ガイア』の光弾。猛り狂う『交雑マルドゥク』のグレートシャマシュラー。


 自分以外の全てを消滅させんとする無差別なりし『全能ガイア』。


 リアラとルルヤを遮蔽物めいて己と『全能ガイア』の間に挟み、射竦め纏めて擂り潰さんとする『交雑マルドゥク』。


 その無機質で圧倒的で、世界そのものが圧倒して襲いかかるような破壊の嵐に。


「【うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!】」

「【はぁあああああああああああああああああああっ!!!!】」


 知恵と勇気、どちらかではなく両方、知恵の足りない部分を勇気で補い、勇気では無理な事を知恵で補う、物語の英雄と生きる血肉の籠った叫びが食らいつく!


 ZDON! ZDON! ZDONZDONZDON!!


「これは……!?」


 グレートシャマシュラーのコックピットで『交雑マルドゥク』が小さく叫ぶ。機体に発射の反動だけではない衝撃が伝わり、ディスプレイに被弾の情報とバリアの状況の変動のパラメータが明滅する。


「ラトゥルハを倒すのに使った技か!!」


 世界に対し背中合わせ、身を寄せあったリアラとルルヤ。そのルルヤが、グレートシャマシュラーの発射した様々の超兵器を、弾き返し打ち返してきたのだ。それがグレートシャマシュラーの更なる攻撃を打ち落とし、逆にグレートシャマシュラーに攻撃を着弾させている。


 生身の女の姿の時より腕に対して巨大化した肉体をカバーする為か、【巨躯】の両手甲に切り払う為の剣めいた器官を【真竜の骨幹】で形成しているが、その手首に土星の環めいた黒い重力の円環が形成され、それにより射撃が受け流され、衛星めいて回転させられ撃ち返されているのが確認された。


 装填式攻撃魔法機械指機関砲マジカルマシンキャノンを跳ね返した、かつて五十八話でラトゥルハとの戦いで用いた技。『全能ガイア』とグレートシャマシュラーが共に遠距離攻撃に長けた故の対策。だがかつてより遥かに大威力の攻撃を跳ね返せる、それは成長と寄せられた思いの力を【地脈】で束ねたが故か。


「【巨躯】であそこまで精妙高速の動きを、しかもあれほど強力な術を……戦いながら成長したか! だが、何より……」


 確かに過去に使用記録があるがこの巨大な力と力のぶつかり合いでやってのけるとは。今まで地球の戦いでは使って来なかった力、相手の気質からして【地脈】等の条件を満たし【巨躯】で戦い抜いてこの体での戦い方に完全に熟練しきった結果と分析するが、それより何より大事な変化は。


「リアラまで、とはな!」


 背中合わせの二人。ルルヤがグレートシャマシュラーの攻撃を跳ね返すだけでは無かった。『交雑マルドゥク』の戦術機動の結果、リアラとルルヤは『全能ガイア』と『交雑マルドゥク』に挟まれている。ルルヤだけが攻撃を跳ね返せても意味はない。つまり。


 リアラもまた『交雑マルドゥク』の欲能光弾猛射に抵抗していた。細腕にルルヤの【息吹】を纏い、【真竜シュムシュの武練】で光弾を受け流し、弾き、跳ね返している!


「連携と【宝珠】で……ここまでのレベルに達したか!」

「そういう事だ! 漸く、全力で、ここまでの全てを必要としての精一杯の全速で、ここまで辿り着いた!」


 『交雑マルドゥク』の言葉にまず答えたのがルルヤだ。それは『交雑マルドゥク』の最初の推察の、後半部分を肯定する回答だ。ここまで耐える必要があったのだと。


 『交雑マルドゥク』が目を見開き、ルルヤの口許が牙を剥いて笑う。省みよ、二人は、揃ってこそ真の強さを発揮する。十弄卿テンアドミニスターとの最初の戦いも、その後の様々な戦いも常にそうだった。


 それに対してここまでの激闘。連合帝国での戦い、ナアロ王国との戦い、地球での分断、遭遇戦。その大半において、リアラとルルヤは分断されていた。


 その分断された間の互いの戦い経験を、並んで戦い【宝珠】で互いの主観映像記憶と体感を直接流して交換し、自分の魔法を相手にも付与しながら理解し合ったか。実際、それを一瞬で済ませられる程に二人の息はぴったりだ。互いに完全に全ての攻撃を跳ね返せているわけではない。受け止めたり反らしたりするのが精一杯の攻撃もある。だがお互い相手に対し弾き損ね反らした攻撃を漏らす事無く、寧ろお互い相手が受け止めるのが精一杯の攻撃に自分が後方へ反らした攻撃を当てて相殺させたり、後方にそらすのが精一杯だった攻撃同士をぶつけ互いへの流れ弾にならないようにしたり、息を合わせてかわしたり、常にダメージを最小限度に二人揃って留めている。


 更にそれだけではなく、レーザーによる攻撃をリアラが光操る【息吹】で制御を奪い捻じ曲げて撃ち返し、雷による攻撃すらレーザー誘雷で反らす。ルルヤがリアラに技量と魔法を与えるだけでなくリアラがルルヤに知恵も加えて、二人で一体となって防ぎ反撃し抗う!


「せせこましい、それが、どうしたの?」「ッ~~~~~!!」


 だが『全能ガイア』は動じぬ。両手を掲げた射撃体勢を平然と金城鉄壁めいて崩さぬまま、射撃を続行。寧ろ勢いをどんどん増していく。己の周囲に張り巡らせたバリアのほうが己の射撃攻撃よりも絡め取られ交差して飛んでくるグレートシャマシュラーの弾よりも強いと、体勢を変えぬまま射撃密度だけを際限無く上昇させていく。弾き返される攻撃より更に打ち込まれる攻撃の方が多く弾き返された攻撃すら飲み込んで弾幕が進み、それが跳ね返されてくるより更に次の弾幕が指数関数的に増大する事で問答無用に押し切りにかかる、発射数が内蔵機械兵器の数に縛られていたラトゥルハには不可能な強引な強行突破、最早光弾でホワイトアウトし『全能ガイア』の姿が見えぬ! 弾き返しきれぬ! 真珠銀をしたリアラの【巨躯】が切り裂かれ、ルルヤの【巨躯】の黒い鱗が削られる。どころかグレートシャマシュラーにまで自機の攻撃の反射に加えて『全能ガイア』の欲能チート光弾までもが襲いかかる!


「どうやってだって……!? どうしたっ、だって……!? どうするかっ……見せてやるよっ……ッ!!」


 【巨躯】を限界を越えて駆動させ、再び血で染まり息を詰まらせながら、リアラは前後左右全てから吹き荒ぶ嵐に向かって叫んだ。


「大体さっきも、何が異世界転生が嫌なら〈現実に帰れ〉だ!」


 跳ね返しながら、反撃の、反論の言葉を。


「異世界転移モノとかで昔からちょくちょく見る言葉で、勿論そういう言葉が必要な理由だの意味だのは分かるけどさ! 僕等も大概時代遅れだけど、その上で言うよ、それはもう飽きたって!」


 先の『全能ガイア』の言葉、教訓めかせたオブラートに包んだ物語に逃げる夢想者めという罵倒と最早逃げ場である物語は異世界転生のものだという勝利宣言に。


「理論的に言うなら、現代は多様化した、その言葉はもう陳腐だ! 世界は相変わらず暗い所は物凄く暗いけど、明るい所を目指してそれでも人が歩いていけるなら。人は世界に昔より画一的な生き方を強いられずに生きる事が出来るって僕は信じる! 何の為に何を信じて生きるのか、誰を何を友とし愛し生きるのか、僕達は選ぶ事が出来る、選んだ道が苦しくても信じて貫く祈りを心に持つ事が出来る!」


 リアラは抗う。猛烈な勢いで両腕を動かし、跳ね返せる限りの攻撃を跳ね返し、跳ね返しきれない攻撃を食らいながらも尚。


「僕は異世界転生が唯一の救いだなんていう自称〈現実〉に負けない! 異世界転生を、本来もっと希少で奇跡的でだからこそ救済の出会いだったそれを、現実というブーツで物語という愛する人の顔を踏みつける征服蛮行者とそれに付き従う模倣者と嘲笑に貶めるお前に負けない……」


 悲壮な表情のリアラの脳裏に、一瞬『旗操フラグ』の姿がよぎる。


「異世界転生者そのものだって、このチートにまみれた過剰な濁流を止めなきゃ救われなかった、それがなければ憎まれなかった、なんて、憎んだ僕に言う資格は無くても、こうでなきゃもっと救われたかもしれない人がいたんだっ……!!」


 苦しみも悲しみも罪も力に変える。自分に言う資格はあるのかと分かった上で血反吐と共に言い放つ。血反吐を吐きながらも視線は真っ直ぐ敵を見据えて。異世界転生の濁流は個々の異世界転生自体すら害してしまうようになった、故に止めると。


「人間は異世界転生でしか救われないなんて事は無い。人間は誰だって自分の望む物語になれるとまでは言えないけれど、物語と〈現実〉どちらが尊いと思うかや、なにが尊く何が良いかを選ぶ自由くらいあると言ってやる!」


 BASIIIIIINN!!


 鋭い拳が弾き返した一発の光弾が、奇跡めいて、殆ど物質で出来た壁の分子の隙間を潜り抜けるに等しい程の弾幕を潜り抜け『全能ガイア』の顔面に打ち付けられた。


 ……それでも尚、その光弾は『全能ガイア』の複合欲能チートによる障壁に防がれたが。


「ふん……」


 故に『全能ガイア』の反応は冷淡だ。しかし。


 KATT! ZAP!


 その後頭部を、鏃が叩き光線が焼く。それすらも複合欲能チート障壁が防ぐ。


 しかしそれは、緑樹みき歩未あゆみによる攻撃は、強くないからこそ意味がある。弱いからこそ意味がある。


 二人は本来『全能ガイア』が攻撃を開始した時に跡形もなく吹き飛んでいる程度の力しか持たない。そんな二人が生きて攻撃を行えたのはリアラの【真竜シュムシュの世界】のおかげで。リアラがこの形の【真竜シュムシュの世界】を会得したのは『旗操フラグ』との戦い故で。


 ……リアラと『旗操フラグ』が決定的殺し合いをせざるを得なくなったのは、『旗操フラグ』が他を踏みにじってでも成り上がらなければならないような構造を作った、野放図な異世界転生チートの大繁殖から生まれた〈己誇りで他者を踏む〉異世界転生チートの悪い側面のあり方を象徴する玩想郷チートピアの存在故だ。


 即ち、このか弱い反撃こそが、リアラの言葉の証明なのだ。


 『全能ガイア』の取神行ヘーロースの無表情な貌に。ほんの僅かな苛立ちが浮かんだ。


「……リアラ・ソアフ・シュム・パロン、神永正透かみながまさとは真竜の戦士である。僕を復讐者とした玩想郷チートピアは世界征服を企む悪の秘密結社である。リアラ・ソアフ・シュム・パロンは、人間の自由を守る為に玩想郷チートピアと戦うのだ!」

「そんな言葉に、何の意味が……!」


 世界に抗いながらも、世界を担いながらも、尚無力を知り血反吐を吐いて足掻く。その世界の一隅だけでも救うという意思は欲能チート=欲望の反対としての謙虚、それは異世界転生チートの化身たる女神を苛立たせた。


 『全能ガイア』が一歩踏み込む、リアラは一歩も引かぬ。


「ならば」


 均衡が崩れた。


「死ぬがいいリアラ、ルルヤと『全能ガイア』諸共に! 玩想郷チートピアと地球を滅ぼし、人間の苦しんで生きて死ぬ事に絶望し他者を踏みにじる転生を、俺が終わらせてやろう!」


 『交雑マルドゥク』が動いた。


 GPOOOONN……!


 グレートシャマシュラーの各部の発光体が鳴動する。さながら星々の如く。それはグレートシャマシュラーの必殺兵器・超セイオウ攻撃の予兆であったが、その動きは原作そのままのものでは無かった。


 BAM!


 内側から、グレートシャマシュラーの胸部装甲が吹き飛んだ。自己再生せぬ。あえてだ。それは、そこから『交雑マルドゥク』自身が姿を見せた、その為にだ。


 より一層リアラに『交雑マルドゥク』の光弾が集中する。それはグレートシャマシュラーの方にも向かっていた光弾の数が減るという事でもある。


 ならば超セイオウ攻撃のモーションを行う間に攻撃を遂げる、今がその時だと。


 姿を表した『交雑マルドゥク』は、ハリネズミのように無数の武装をしていた。両手に持ち、両肩に背負い、両腰に帯び、腕にくくりつけ、全身に装備し、青天井となったコックピット中に突き立て、更に背後に浮遊させていた。


 衝撃を放つ巨大な棘付鎚矛『裁き成す聖獣の鎚グルザ・イ・ガウザール』、雷で形成された霊獣達を従える刀『諸神率いる虎杖の刀クトネシリカ』、万象を切り裂く剣『守るは無意味な斬鋭の剣ミーミング』、水を操る抜けば魂散る氷の刃『村雨丸ムラメサ・ブレード』、衝撃を吸収し砲撃めいて打ち放つ防御と攻撃を兼ねる縁が鋭い刃の盾『吼抗の盾オハン』等様々無数の〈傑証〉を。


 それらを片端から打ち放つ、リアラに、ルルヤに、『全能ガイア』に。


 SEEEEEIOOOOOOOOUUU……!!


 グレートシャマシュラーが両腕を構える。その数秒間、グレートシャマシュラーの他の射撃武装の連射が停止。その数秒を補う為だけに〈Destiny/Duel in the Dark〉に存在する全ての武器を撃ち尽くす勢いで発射する!


(見せてみろ、貴様等の答えを!)


 破壊の嵐の中に身を乗り出し、敵の反撃を食らい尚攻撃し続ける為に自己再生用のグレートシャマシュラーの次元エネルギーを全身に流しながら、『交雑マルドゥク』はリアラとルルヤを睨んだ。


 『全能ガイア』も『交雑マルドゥク』も、ルルヤとリアラがまだ何か手を打とうとしているのを知っていた。【真竜シュムシュの宝珠】による二人、いや緑樹みき歩未あゆみも交えた四人での会話を、ある程度傍受していたからだ。だから射撃反射を行った時に即座に理解できた。


 その上で『全能ガイア』はその切り札が己に及ぶ者ではないと判断していた。『交雑マルドゥク』は逆にそれを油断と見て『全能ガイア』はこの瞬間己に劣った、『全能ガイア』の器の底を見切ったと考えた。その上で、リアラとルルヤにより警戒が必要だと判断した。


 【宝珠】通信を傍受して尚、その考えをまだある程度としか言えないレベルでしか察知できなかった事に、『交雑マルドゥク』は感嘆していた。主観映像と体感を直接やりとりした互いの通信と違い、緑樹みき歩未あゆみも交えた【宝珠】通信は最小限の情報だった。お互いに阿吽の呼吸で察し合い、【あれを頼む】とか【確かめて】とか、極僅か単語のやり取りで詳細を明かさず意思疏通していた。〈機械兵士ガンエース〉世界の住人は、人から進化する為の超能力である〈ニューエンジェル能力〉を会得して尚、滅びるまで争い合いをやめなかったのに。凄まじく共闘し慣れているリアラとルルヤだけならまだ分かる。緑樹みき歩未あゆみまでその領域に達しているとは。いや、二人の物語を綴り続けていたのであれば、次の展開を察する事は不可能ではないか。何をした? 何をしてくる? 超セイオウ攻撃が発動した。無限なるソラの光が周囲を満たす。


「む……!?」


 『全能ガイア』が攻撃を中断した。初めて守りの構え。その防壁が破れ装甲が燃える。


「「……!!」」


 緑樹みき歩未あゆみが祈る。まだ【真竜シュムシュの世界】が効いているが、リアラが死ねば二人とも町ごと紙屑の如く燃え尽きるだろう。


 そしてリアラとルルヤは二人の光を放つ。


 人の光、物語の光の輝きを放つ。逆襲の物語を歌う。



 次話前編開始の最終エピソード群、【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】に続く。

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