・第九十五話「人の光は全て物語(後編)」
・第九十五話「人の光は全て物語(後編)」
(……終わらせる)
『
この変則的な1対2対1の局面、『
(そう。やはり、誰にも世界は救えない。私以外の誰にも。私こそが世界の救い。だから、誰も私は倒せない。誰も)
「いいや、いいや」
だがそれに。
「世界を救うという程大した事をしようとはしてない。せいぜい自分が思う少しマシなほうに転がればと力を尽くすだけだ。物語を愛して現実を嫌っているのはその通りだし……ああ認めるよ、僕とお前は鏡写しに似ているかもしれない。でも!」
リアラは立ち上がり、立ちはだかる。傷と血にまみれてもその目を光らせて。
「だからこそ僕は僕にもお前にも負けない……勝つ!」
「ああ……」
故にルルヤが付き従う。傷だらけの黒い守護竜が。
「勝たせてやる。私が、お前を……誰にだって!」「ふん」
相対し尚『
(そろそろ……勝負に来るか、リアラ!)
一方、それでも尚『
リアラも自分と同じだ。唯の物語を愛した人間でありながら、それ故にこの境地に立った。人間の凄まじさと恐ろしさの体現者。であるからこそ、己が勝利を諦めぬ間は、リアラも勝利を諦めまいと。憎くも愛しい、鏡写しのかの怨敵。
そうだ。リアラが何を見いだそうと、そこにこそ勝機がある。諦めぬ。最後に勝つのはこの己だと、『
「……お前は『
「それも、させんさ」「ああ、君にも、勝つ」
割って入る『
「揃いも揃って……思い上がるな。さあ、死のうか」
『
ZDDDDDDDDDDDDDDDDD!!!!
SYZZZZZZZZZZZZZZZZ!!!!
乱れ叫ぶ『
自分以外の全てを消滅させんとする無差別なりし『
リアラとルルヤを遮蔽物めいて己と『
その無機質で圧倒的で、世界そのものが圧倒して襲いかかるような破壊の嵐に。
「【うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!】」
「【はぁあああああああああああああああああああっ!!!!】」
知恵と勇気、どちらかではなく両方、知恵の足りない部分を勇気で補い、勇気では無理な事を知恵で補う、物語の英雄と生きる血肉の籠った叫びが食らいつく!
ZDON! ZDON! ZDONZDONZDON!!
「これは……!?」
グレートシャマシュラーのコックピットで『
「ラトゥルハを倒すのに使った技か!!」
世界に対し背中合わせ、身を寄せあったリアラとルルヤ。そのルルヤが、グレートシャマシュラーの発射した様々の超兵器を、弾き返し打ち返してきたのだ。それがグレートシャマシュラーの更なる攻撃を打ち落とし、逆にグレートシャマシュラーに攻撃を着弾させている。
生身の女の姿の時より腕に対して巨大化した肉体をカバーする為か、【巨躯】の両手甲に切り払う為の剣めいた器官を【真竜の骨幹】で形成しているが、その手首に土星の環めいた黒い重力の円環が形成され、それにより射撃が受け流され、衛星めいて回転させられ撃ち返されているのが確認された。
「【巨躯】であそこまで精妙高速の動きを、しかもあれほど強力な術を……戦いながら成長したか! だが、何より……」
確かに過去に使用記録があるがこの巨大な力と力のぶつかり合いでやってのけるとは。今まで地球の戦いでは使って来なかった力、相手の気質からして【地脈】等の条件を満たし【巨躯】で戦い抜いてこの体での戦い方に完全に熟練しきった結果と分析するが、それより何より大事な変化は。
「リアラまで、とはな!」
背中合わせの二人。ルルヤがグレートシャマシュラーの攻撃を跳ね返すだけでは無かった。『
リアラもまた『
「連携と【宝珠】で……ここまでのレベルに達したか!」
「そういう事だ! 漸く、全力で、ここまでの全てを必要としての精一杯の全速で、ここまで辿り着いた!」
『
『
それに対してここまでの激闘。連合帝国での戦い、ナアロ王国との戦い、地球での分断、遭遇戦。その大半において、リアラとルルヤは分断されていた。
その分断された間の互いの戦い経験を、並んで戦い【宝珠】で互いの主観映像記憶と体感を直接流して交換し、自分の魔法を相手にも付与しながら理解し合ったか。実際、それを一瞬で済ませられる程に二人の息はぴったりだ。互いに完全に全ての攻撃を跳ね返せているわけではない。受け止めたり反らしたりするのが精一杯の攻撃もある。だがお互い相手に対し弾き損ね反らした攻撃を漏らす事無く、寧ろお互い相手が受け止めるのが精一杯の攻撃に自分が後方へ反らした攻撃を当てて相殺させたり、後方にそらすのが精一杯だった攻撃同士をぶつけ互いへの流れ弾にならないようにしたり、息を合わせてかわしたり、常にダメージを最小限度に二人揃って留めている。
更にそれだけではなく、レーザーによる攻撃をリアラが光操る【息吹】で制御を奪い捻じ曲げて撃ち返し、雷による攻撃すらレーザー誘雷で反らす。ルルヤがリアラに技量と魔法を与えるだけでなくリアラがルルヤに知恵も加えて、二人で一体となって防ぎ反撃し抗う!
「せせこましい、それが、どうしたの?」「ッ~~~~~!!」
だが『
「どうやってだって……!? どうしたっ、だって……!? どうするかっ……見せてやるよっ……ッ!!」
【巨躯】を限界を越えて駆動させ、再び血で染まり息を詰まらせながら、リアラは前後左右全てから吹き荒ぶ嵐に向かって叫んだ。
「大体さっきも、何が異世界転生が嫌なら〈現実に帰れ〉だ!」
跳ね返しながら、反撃の、反論の言葉を。
「異世界転移モノとかで昔からちょくちょく見る言葉で、勿論そういう言葉が必要な理由だの意味だのは分かるけどさ! 僕等も大概時代遅れだけど、その上で言うよ、それはもう飽きたって!」
先の『
「理論的に言うなら、現代は多様化した、その言葉はもう陳腐だ! 世界は相変わらず暗い所は物凄く暗いけど、明るい所を目指してそれでも人が歩いていけるなら。人は世界に昔より画一的な生き方を強いられずに生きる事が出来るって僕は信じる! 何の為に何を信じて生きるのか、誰を何を友とし愛し生きるのか、僕達は選ぶ事が出来る、選んだ道が苦しくても信じて貫く祈りを心に持つ事が出来る!」
リアラは抗う。猛烈な勢いで両腕を動かし、跳ね返せる限りの攻撃を跳ね返し、跳ね返しきれない攻撃を食らいながらも尚。
「僕は異世界転生が唯一の救いだなんていう自称〈現実〉に負けない! 異世界転生を、本来もっと希少で奇跡的でだからこそ救済の出会いだったそれを、現実というブーツで物語という愛する人の顔を踏みつける征服蛮行者とそれに付き従う模倣者と嘲笑に貶めるお前に負けない……」
悲壮な表情のリアラの脳裏に、一瞬『
「異世界転生者そのものだって、このチートにまみれた過剰な濁流を止めなきゃ救われなかった、それがなければ憎まれなかった、なんて、憎んだ僕に言う資格は無くても、こうでなきゃもっと救われたかもしれない人がいたんだっ……!!」
苦しみも悲しみも罪も力に変える。自分に言う資格はあるのかと分かった上で血反吐と共に言い放つ。血反吐を吐きながらも視線は真っ直ぐ敵を見据えて。異世界転生の濁流は個々の異世界転生自体すら害してしまうようになった、故に止めると。
「人間は異世界転生でしか救われないなんて事は無い。人間は誰だって自分の望む物語になれるとまでは言えないけれど、物語と〈現実〉どちらが尊いと思うかや、なにが尊く何が良いかを選ぶ自由くらいあると言ってやる!」
BASIIIIIINN!!
鋭い拳が弾き返した一発の光弾が、奇跡めいて、殆ど物質で出来た壁の分子の隙間を潜り抜けるに等しい程の弾幕を潜り抜け『
……それでも尚、その光弾は『
「ふん……」
故に『
KATT! ZAP!
その後頭部を、鏃が叩き光線が焼く。それすらも複合
しかしそれは、
二人は本来『
……リアラと『
即ち、このか弱い反撃こそが、リアラの言葉の証明なのだ。
『
「……リアラ・ソアフ・シュム・パロン、
「そんな言葉に、何の意味が……!」
世界に抗いながらも、世界を担いながらも、尚無力を知り血反吐を吐いて足掻く。その世界の一隅だけでも救うという意思は
『
「ならば」
均衡が崩れた。
「死ぬがいいリアラ、ルルヤと『
『
GPOOOONN……!
グレートシャマシュラーの各部の発光体が鳴動する。さながら星々の如く。それはグレートシャマシュラーの必殺兵器・超セイオウ攻撃の予兆であったが、その動きは原作そのままのものでは無かった。
BAM!
内側から、グレートシャマシュラーの胸部装甲が吹き飛んだ。自己再生せぬ。あえてだ。それは、そこから『
より一層リアラに『
ならば超セイオウ攻撃のモーションを行う間に攻撃を遂げる、今がその時だと。
姿を表した『
衝撃を放つ巨大な棘付鎚矛『
それらを片端から打ち放つ、リアラに、ルルヤに、『
SEEEEEIOOOOOOOOUUU……!!
グレートシャマシュラーが両腕を構える。その数秒間、グレートシャマシュラーの他の射撃武装の連射が停止。その数秒を補う為だけに〈Destiny/Duel in the Dark〉に存在する全ての武器を撃ち尽くす勢いで発射する!
(見せてみろ、貴様等の答えを!)
破壊の嵐の中に身を乗り出し、敵の反撃を食らい尚攻撃し続ける為に自己再生用のグレートシャマシュラーの次元エネルギーを全身に流しながら、『
『
その上で『
【宝珠】通信を傍受して尚、その考えをまだある程度としか言えないレベルでしか察知できなかった事に、『
「む……!?」
『
「「……!!」」
そしてリアラとルルヤは二人の光を放つ。
人の光、物語の光の輝きを放つ。逆襲の物語を歌う。
次話前編開始の最終エピソード群、【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】に続く。
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