・第九十一話「物語への扉(中編)」
・第九十一話「物語への扉(中編)」
地球。東京湾。リアラ&ルルヤVS『
だがここで重要なのはあくまで三つ巴であるという事だ。そこにおいて戦う順番を見極めるのは卑劣という事ではない。
(さて、リアラ、どうする?)
故に〈宙のグレートシャマシュラー〉を呼び出した『
『
即ち『
「はは、さあ行け地球防衛軍! 悪い怪獣やっつけろ、なんてね!」
実際、まさに冗談めかせて笑いながら『
(見せてみろ!)(どうするかな?)
『
砲撃を行う、周囲の戦車隊。無論、そこにも心ある人間はいる。
「……!」
督戦めいて中華ソヴィエト共和国軍に背後を押さえられた日本共和国防衛隊、その戦車隊員は、戦う理由を見いだせないまま発射ボタンを押そうとしていた。
あれを何故撃たねばならぬ? あれは何も傷つけてはいない。唯現れただけだ。先の交戦と言っていいのか分からない怪現象で天地は鳴動したが、それだけだ。
あれが敵性存在等というのは欺瞞ではないのか。中華ソヴィエト軍の側についた者こそが真の侵略者ではないのか。それもまたありうる話だが、どちらにせよ、出来る事は無い。
過去の戦いで散った戦友達に詫びながら発射ボタンを押さんとする。何となれば、それは国民のかなりの割合の望みでもあるからだ。その情報に従う方が楽で、無難で、消されていく一部を除けばある程度豊かに生きられるからだ。
あいつらを撃たなくても、それが変わる訳ではない。
中華ソヴィエト軍の砲撃が開始されんとする。向こうの兵士達は、淡々と機械のように動いている。そんな下らない事は考えない。ただ命令に従い、ただそれにより糧を得る。己が生きる為に何を吹き飛ばしても関係ないし関心も持たない。
だが、自分達も客観的に見ればそれと同じか……
どこからか、死んだ戦友の声が聞こえたような気がした。それでいいのか、と。そして、もし嫌なら……
「【
ルルヤの【巨躯】が吼えて、鉤爪を打ち振った、その瞬間。
VOVOVOVNNN!
連続した怪音と同時に、次々と中華ソヴィエト共和国軍の兵器達が闇に呑まれた。
【息吹】で削り取られるように破壊された? いや違う。兵器達を球状に包み込む、黒い影の泡めいた球形の壁とでも言うべきそれは【
「【
ルルヤが笑った。要するに早い話がそれはバリアーによるカプセルと重力による動きの束縛の併用での無力化捕縛。飛来するミサイルや砲弾を叩き落としながら、次々鉤爪を向けた兵器を封印していくルルヤ! 防御はリアラも支援し、息の合った驚く程軽々としたアクションで二人が踊る!
「【中華ソヴィエト軍は! 金縛りにする!】」
昨晩アニメ見て考えた新しい専誓詠吟。これで寄ってくる中華ソヴィエト共和国軍は全て無力化する。それが当然しつこく繰り返されるだろう『
「ははっ」
アニメ見てたら強くなってる。そんな馬鹿げた非現実的な現象を引き起こす敵に、痛快だと『
「はっはっ、はっ。おい、この世を、地球を甘やかす過保護もいい加減にしろ」
地球を憎む『
「守ってやれば地球人が改心して、圧政や侵略を止めて、一致団結して仲間になって、立ち向かったり声援で力を与えてくれたりすると思うか!? 地球は現実だ、物語じゃない、怯えて逃げるだけが精々の屑共だ! 守ってやれば奴等は腐る、弱くなり、もっと欲しがり、他人に命を握らせながら愚昧化してそいつを罵る! 目の前の相手を怒らせればそいつに殺される可能性もあるから礼儀が生まれた事も忘れて! そんなもの守って何になるっ!」
事実として中華ソヴィエト共和国軍の攻撃は止まず、日本共和国防衛隊は命令がない為混乱し、そして民衆はただ只管に野次馬だ。
「はっ」
そして『
「その程度の対策か」
「流石に一晩ではね……そして『
対して構わずリアラは叫ぶ。『
「【危害は加えません! だけど攻撃してくるなら無力化はします! 今世界を回っている公式報道はでっちあげです! 僕達は僕達の戦いをしているだけで、地球を害する心算はありませんし周囲の……】」
ZDOOMM!
「ッ!」「リアラ!」
そう叫ぶリアラの体を強烈な衝撃が撃ち抜いた。ルルヤが叫ぶ。防御の構えを取り、その衝撃をリアラは堪える。
「まあ、せいぜい必死に無力化していく事だね。攻撃は続くし、それはそれとしてそれとは別に私も殴るけど」
沖合いに展開する艦船も、水上に水中に、黒い巨大な球体が浮かんだかのようになって無力化されている。
どころか、空を飛んでいた航空機ですら、同じように球体に包まれ空中に固定されたように無力化されている。飛行する時のルルヤと同じく慣性を無視しているため、停止させられたパイロットにも無茶な負荷はかかっていない。
それほどの奇跡を『
それとは何か?
「『この手に取らん神の行い、我こそこの世の主人公!』」
『
「ッ、【周囲の被害を出さない対策をしています! 詳しく説明している時間はありませんが、僕達は貴方達と敵対する心算はありません、だから出来るかどうかは分かりませんが、敵対しないで下さい! それだけです!】」
それでもリアラは必死に叫ぶ。全てを説明する余裕は無い。言えるだけ言う。衝撃を受け海水を弾けさせ吹き飛ばされ後退しながらも構えを解かず、顕現に備える。
「『物語よ、悶死せよ』」
天地が鳴動した。その鳴動する天を中華ソヴィエト共和国軍の航空機部隊第二陣が空を轟音と飛行機雲で更に切り刻んで飛翔する。再び放たれる
「『自然とは、死なり』」
凄まじいプレッシャーが、『
「【ええい! 来るなとリアラが言っているだろうが! 既に理解した奴等もいるだろう! 下がれ!】」
だがそれに屈する事無く、追加の敵にルルヤが舌打ちしながら【
日本国共和国防衛隊の車両やヘリコプタにもは一部先走って攻撃しようとして捕縛封印されているものもいるが、状況に困惑し、あるいは中華ソヴィエト共和国軍に唯々諾々と協調する事への抵抗感から困惑を装った消極的サボタージュに入ったものが確かにいる。
それは僅かだが二人の正しくあろうとする振舞いが作った結果であり、ルルヤからに少しだが確かに助けになったが、中華ソヴィエト共和国軍の数が多く、捕縛封印すれば無力化出来るとはいえそもそも捕縛封印するのに手間はかかる。邪魔である事に変わりは無い。
「『法則とは、滅びなり』」
『
「『現実とは、幻滅なり』」
風が轟く。波が逆巻き水柱が立ち上がる。何処からともなく砂嵐が訪れて周囲を暗くしながら渦巻き、火球が舞い、『
「ふん……!!」
詠唱を聞きながら、重圧を受け流し『
GPOOOOONN……
SYAAAAAAA……! ZAPZAPZAP!
「地球の軍隊等……いや違う、それだけではないか! だが!」
最大威力の必殺技を全力でぶちこもうとする『
『
エネルギーをバリアにより多く割り振り、攻撃をより隙の少ない副武装の複数一斉射撃に変更し、代わりに武器を追加。機体の武装だけではなく
「来い、今こそ全てが乱れ砕ける時!」
~~~~~~~~~♪
DSYSYSYSYSYSY!
『
人間が重機関銃を構えているような大型の火器を装備したそいつらが一斉に頭をあげる。二つのアイカメラが大きく展開する。
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON
そのアイカメラをディスプレイにして、そう書かれた赤い文字が延々と流れる。
「〈M-10クレインクインP〉に、NEOSプログラムか……!」
それが何なのかをリアラは知っている。路地裏で襲撃をかけてきたマライカと同じ、ロボットもののライトノベル〈ジャケット・パニック!〉に出てくる機体、物語前半の主人公機である〈M-10クレインクイン〉の量産型。量産型とはいえ主人公機と同じ限定的だが思考力をエネルギーとする現実変換兵器オメガ・ドライバを搭載している。ウィルスめいて機体を乗っ取る自立型AI・NEOSで無人起動する為にその力を一定形式でしか使用できないが、一種の人造超能力の為【鱗棘】にもある程度攻撃が通る。
「あれは障害ですが破壊して問題ない奴です、ルルヤさん、兵器の方は!?」
「分かったっ! あと、少しで終わる!」
リアラとルルヤの声が交錯する。邪魔な中華ソヴィエト共和国軍の兵器は、この変神の最中に片付けなければならぬ。それは間に合うだろう。だが『
(面倒なっ……!)
これが終わっても尚多数の敵が残存する。加えてこれは心猛らせる戦いではない。言わば復讐の対象外を戦場から除外する作業に過ぎぬ。勇者の心を持ち猛れば猛る程魔法力が沸く状態に今のルルヤは無い。無論消耗自体は致命的ではないが……
「『夢見人よ夢から覚めよ、全世界よ絶望を知れ、之こそが我が現実なり!』」
その全ては策の通りとばかりに悠然と、『
「
『
「『
そして、詠唱を終える。力を解放するように両腕を大きく開きながら、『
「『
「食らえっ!!!!!!」
QDDDDDDDDDZGDOOOOONNMM!!!!!!
同時に『
〈月のシンナンナル〉の
「……さて、出撃セレモニーも一段落か。号砲とクラッカー、どうもありがとう」
その爆発の向こうから、悠然と無傷のままそれは姿を現した。平然泰然たる余裕を含んだ『
『
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