・第九十一話「物語への扉(中編)」

・第九十一話「物語への扉(中編)」



 地球。東京湾。リアラ&ルルヤVS『交雑マルドゥク』VS『全能ゴッド』。決戦開始。


 だがここで重要なのはあくまで三つ巴であるという事だ。そこにおいて戦う順番を見極めるのは卑劣という事ではない。


(さて、リアラ、どうする?)


 故に〈宙のグレートシャマシュラー〉を呼び出した『交雑マルドゥク』は、まず迎撃に専念しリアラ達の動きを見に回る。油断なくじわりと、戦は動き始めた。


 『全能ゴッド』が地球の軍隊、厳密に言えば地球の代表面をした中華ソヴィエト共和国軍とそれに従わされている日本共和国防衛隊を引き連れてきたのは、リアラの心を攻める為だ。即ち、現状ではそれはリアラ達に向かう。リアラとルルヤはそれへの対処を行う事になる。


 即ち『交雑マルドゥク』は『全能ゴッド』本体のみ警戒すればいい。あくまで正面切って戦うとしたがリアラ達を『全能ゴッド』から守る義理は無い。無論『全能ゴッド』に負ける心算も劣っている心算も無いとはいえリアラ・ルルヤが一方的に倒されるのではなく『全能ゴッド』をある程度消耗させてくれるのが理想的ではあるが、リソース配分としてリアラ達の為にリソースを消費する事が自分の為に使う事より効率が良いという状況はそうそう無いし、また漁夫の利を狙いすぎて隙を晒したり袋叩きの対象になる程リアラ達を攻撃する事に消極的になってもいけないと『交雑マルドゥク』は自己の視点から判断。


「はは、さあ行け地球防衛軍! 悪い怪獣やっつけろ、なんてね!」


 実際、まさに冗談めかせて笑いながら『全能ゴッド』はジャブめいて地球の軍隊をリアラに向けてけしかけた。ミサイルが、砲塔が、一斉にリアラを狙う。それら全ての兵器に対して『全能ゴッド』は力を付与。砲口の前に魔方陣が展開し、ミサイルが超自然の霊光を帯びる。


(見せてみろ!)(どうするかな?)


 『交雑マルドゥク』と『全能ゴッド』、共に意識が集中する。先の戦いのように単に防ぐのであればそれにより『全能ゴッド』はじわじわと消耗を強い、二段三段の手で更に消耗させ、隙をこじ開けに来た時リアラを庇いに来てその【真竜の世界】の防御から外れるだろうルルヤを殺しにいくだろう。そして『交雑マルドゥク』はその隙を狙う。無論単なる防御以外の手をとっても無いよう次第では罠の連続からは逃れられぬ。果たしてどうする、これはまだ小手調べの手並み拝見に過ぎぬ……!



 砲撃を行う、周囲の戦車隊。無論、そこにも心ある人間はいる。


「……!」


 督戦めいて中華ソヴィエト共和国軍に背後を押さえられた日本共和国防衛隊、その戦車隊員は、戦う理由を見いだせないまま発射ボタンを押そうとしていた。


 あれを何故撃たねばならぬ? あれは何も傷つけてはいない。唯現れただけだ。先の交戦と言っていいのか分からない怪現象で天地は鳴動したが、それだけだ。


 あれが敵性存在等というのは欺瞞ではないのか。中華ソヴィエト軍の側についた者こそが真の侵略者ではないのか。それもまたありうる話だが、どちらにせよ、出来る事は無い。


 過去の戦いで散った戦友達に詫びながら発射ボタンを押さんとする。何となれば、それは国民のかなりの割合の望みでもあるからだ。その情報に従う方が楽で、無難で、消されていく一部を除けばある程度豊かに生きられるからだ。


 あいつらを撃たなくても、それが変わる訳ではない。


 中華ソヴィエト軍の砲撃が開始されんとする。向こうの兵士達は、淡々と機械のように動いている。そんな下らない事は考えない。ただ命令に従い、ただそれにより糧を得る。己が生きる為に何を吹き飛ばしても関係ないし関心も持たない。


 だが、自分達も客観的に見ればそれと同じか……


 どこからか、死んだ戦友の声が聞こえたような気がした。それでいいのか、と。そして、もし嫌なら……



「【月影縫縛イルゴラドバイン】!」


 ルルヤの【巨躯】が吼えて、鉤爪を打ち振った、その瞬間。


 VOVOVOVNNN!


 連続した怪音と同時に、次々と中華ソヴィエト共和国軍の兵器達が闇に呑まれた。


 【息吹】で削り取られるように破壊された? いや違う。兵器達を球状に包み込む、黒い影の泡めいた球形の壁とでも言うべきそれは【月影天盾イルゴラギチイド】に似ていた。具体的に何をされたかというと早い話が……


「【馬鹿者バカモンゲットだぜ! ってな!】」


 ルルヤが笑った。要するに早い話がそれはバリアーによるカプセルと重力による動きの束縛の併用での無力化捕縛。飛来するミサイルや砲弾を叩き落としながら、次々鉤爪を向けた兵器を封印していくルルヤ! 防御はリアラも支援し、息の合った驚く程軽々としたアクションで二人が踊る!


「【中華ソヴィエト軍は! 金縛りにする!】」


 昨晩アニメ見て考えた新しい専誓詠吟。これで寄ってくる中華ソヴィエト共和国軍は全て無力化する。それが当然しつこく繰り返されるだろう『全能ゴッド』の嫌がらせに対抗する為に考えた対策だった。この局面で軍隊をけしかける理由は、あくまでそれを返り討ちにすれば地球の敵認定が更に確定するという所にある。無力化の手段があるならそれで蹴散らせばいい。敵としての強さについては問題ではないと。


「ははっ」


 アニメ見てたら強くなってる。そんな馬鹿げた非現実的な現象を引き起こす敵に、痛快だと『交雑マルドゥク』は笑った、だが、それ自体は痛快だが……


「はっはっ、はっ。おい、この世を、地球を甘やかす過保護もいい加減にしろ」


 地球を憎む『交雑マルドゥク』にとって、ルルヤまでもがリアラと共にそこまで地球を大切に守るのは業腹だ。快活な笑いを怒気の哄笑に切り替えて唸る。


「守ってやれば地球人が改心して、圧政や侵略を止めて、一致団結して仲間になって、立ち向かったり声援で力を与えてくれたりすると思うか!? 地球は現実だ、物語じゃない、怯えて逃げるだけが精々の屑共だ! 守ってやれば奴等は腐る、弱くなり、もっと欲しがり、他人に命を握らせながら愚昧化してそいつを罵る! 目の前の相手を怒らせればそいつに殺される可能性もあるから礼儀が生まれた事も忘れて! そんなもの守って何になるっ!」


 事実として中華ソヴィエト共和国軍の攻撃は止まず、日本共和国防衛隊は命令がない為混乱し、そして民衆はただ只管に野次馬だ。


「はっ」


 そして『全能ゴッド』もそれを嘲笑った。確かに、欲能チートで単純に兵器を強化した程度の地球の軍隊なら、その程度で無力化可能だ。だが、効率が悪い。消耗はする。自分達には通じぬ。


「その程度の対策か」

「流石に一晩ではね……そして『交雑マルドゥク』……僕は、君が思う程甘やかしてないよ、こうしているのは、僕が守りたいものを守る為に一緒に守っているという要素もあるから……でも、それだけじゃない。 これは、僕達が僕達である為でもあるんだ! 世界に負けない為に! だから、空しい結果に終わるかもしれなくても、時々失敗しても、純粋に他者の為じゃなく自分の優先したい願いが混じっていても、それでも少しでも良くあろうとする事に、僕達は妥協しない! そしてそういうあり方を間違いだと言われても引っ込めない!」


 対して構わずリアラは叫ぶ。『全能ゴッド』に、『交雑マルドゥク』に。そしてそれから続いて、全ての人々に。それでも尚、良くあろうと抗い続ける。【真竜シュムシュの咆哮】を使い、その叫びを湾岸全体の人間に過不足なく伝わるように増強して語りかける。助けたい人がいるから世界を守る不純な救世主でも、地球に肯定されなくても、それでもこの道を歩むし、それを誰にも否定はさせないと!


「【危害は加えません! だけど攻撃してくるなら無力化はします! 今世界を回っている公式報道はでっちあげです! 僕達は僕達の戦いをしているだけで、地球を害する心算はありませんし周囲の……】」


 ZDOOMM!


「ッ!」「リアラ!」


 そう叫ぶリアラの体を強烈な衝撃が撃ち抜いた。ルルヤが叫ぶ。防御の構えを取り、その衝撃をリアラは堪える。


「まあ、せいぜい必死に無力化していく事だね。攻撃は続くし、それはそれとしてそれとは別に私も殴るけど」


 沖合いに展開する艦船も、水上に水中に、黒い巨大な球体が浮かんだかのようになって無力化されている。


 どころか、空を飛んでいた航空機ですら、同じように球体に包まれ空中に固定されたように無力化されている。飛行する時のルルヤと同じく慣性を無視しているため、停止させられたパイロットにも無茶な負荷はかかっていない。


 それほどの奇跡を『全能ゴッド』は嘲笑する。『全能ゴッド』は空中を前進していた。両手を胸の前で交差させ、両肩の付け根を平たくして伸ばした指先で押さえるような構えを取っている。その周囲で巨大だが透明で空間がわずかに歪んでるように見えるだけで詳細が分からない『交雑マルドゥク』のグレートシャマシュラーと同等のサイズの何かが覆い、それの手がリアラに触れた。触れただけでそこから強烈な衝撃がリアラの【巨躯】を撃ち貫いた。


 それとは何か?


「『この手に取らん神の行い、我こそこの世の主人公!』」


 『全能ゴッド』が詠唱する。それは即ち今正に具現化せんとする『全能ゴッド』の取神行ヘーロースだ。


「ッ、【周囲の被害を出さない対策をしています! 詳しく説明している時間はありませんが、僕達は貴方達と敵対する心算はありません、だから出来るかどうかは分かりませんが、敵対しないで下さい! それだけです!】」


 それでもリアラは必死に叫ぶ。全てを説明する余裕は無い。言えるだけ言う。衝撃を受け海水を弾けさせ吹き飛ばされ後退しながらも構えを解かず、顕現に備える。


「『物語よ、悶死せよ』」


 天地が鳴動した。その鳴動する天を中華ソヴィエト共和国軍の航空機部隊第二陣が空を轟音と飛行機雲で更に切り刻んで飛翔する。再び放たれる欲能チート付与ミサイル。


「『自然とは、死なり』」


 凄まじいプレッシャーが、『全能ゴッド』に敵対する全てに襲いかかる。一瞬視界がぐにゃりと歪む程の圧迫感。


「【ええい! 来るなとリアラが言っているだろうが! 既に理解した奴等もいるだろう! 下がれ!】」


 だがそれに屈する事無く、追加の敵にルルヤが舌打ちしながら【月影縫縛イルゴラドバイン】を連打しそれらを捕縛・封印していく。乱れ飛ぶ漆黒の球体、うねり踊り四方を制する黒い竜。まだ敵は多い。だが。


 日本国共和国防衛隊の車両やヘリコプタにもは一部先走って攻撃しようとして捕縛封印されているものもいるが、状況に困惑し、あるいは中華ソヴィエト共和国軍に唯々諾々と協調する事への抵抗感から困惑を装った消極的サボタージュに入ったものが確かにいる。


 それは僅かだが二人の正しくあろうとする振舞いが作った結果であり、ルルヤからに少しだが確かに助けになったが、中華ソヴィエト共和国軍の数が多く、捕縛封印すれば無力化出来るとはいえそもそも捕縛封印するのに手間はかかる。邪魔である事に変わりは無い。


「『法則とは、滅びなり』」


 『全能ゴッド』の詠唱は続く。更に威圧感が増す。まるで、地球全てが敵と変わるように。天も地も海も全てが『全能ゴッド』の一部として、敵意の視線を向けてくるかのように。


「『現実とは、幻滅なり』」


 風が轟く。波が逆巻き水柱が立ち上がる。何処からともなく砂嵐が訪れて周囲を暗くしながら渦巻き、火球が舞い、『全能ゴッド』を囲む。


「ふん……!!」


 詠唱を聞きながら、重圧を受け流し『交雑マルドゥク』はグレートシャマシュラーを操作。ここまで来た者に敵も味方も、今更威圧に臆する者はいない。機体の機構を展開し、武装を実体化しつつある『全能ゴッド』の取神行ヘーロースに向ける。変身中は防御障壁が展開している。だから変直後にぶちこむ為だ。


 GPOOOOONN……


 SYAAAAAAA……! ZAPZAPZAP!


「地球の軍隊等……いや違う、それだけではないか! だが!」


 最大威力の必殺技を全力でぶちこもうとする『交雑マルドゥク』に対して、しかし『全能ゴッド』も当然それは読んでいた。予備動作をするグレートシャマシュラーに迫るミサイル、それを副武装の一つであるレーザーで迎撃するグレートシャマシュラーだが、それとは別の欲能チートを付与された兵器ではない純粋な欲能チートによる攻撃が来た。エネルギー光弾、爆発、細かくどういう欲能チートかは分からないが、光球が飛翔し、何発か攻撃がグレートシャマシュラーに降り注いだ。


 『交雑マルドゥク』自身の力で強化されたグレートシャマシュラーのバリアがそれを防ぐも、その欲能チート攻撃は自分達へ攻撃しようとしてくる兵器を無力化封印していたリアラ達も想定していなかった新戦力の様子で、故に『交雑マルドゥク』も警戒。


 エネルギーをバリアにより多く割り振り、攻撃をより隙の少ない副武装の複数一斉射撃に変更し、代わりに武器を追加。機体の武装だけではなく偽真竜バベルの時も使用していた『星なるかな知恵の天道ムル・アピン』も射出。更に。


「来い、今こそ全てが乱れ砕ける時!」


 ~~~~~~~~~♪

 DSYSYSYSYSYSY!


 『交雑マルドゥク』の叫びと共に、一瞬間欠泉のような短い光の柱が湾岸周囲一体に幾つも立ち上がった。まるで、というかそれは、とあるシミュレーションゲームで敵増援ユニットが出現する時のエフェクトそのものだった。ご丁寧に敵増援出現時の代表的なBGMまでかかった程だ。出現したのは、メタリックなブルーグレーを基調とした、ミリタリーな雰囲気とヒロイックな雰囲気が程好く入り交じった、俗にリアルロボットと呼称されるタイプの人型機動兵器。鎧を来た人狼といったヒロイックかつシャープな機体に、頭部と胸部にそれぞれバンダナとタンクトップを思わせるウェポンラック兼用の追加装甲らしいパーツがついているのが特徴だ。サイズは十数m程、【巨躯】やシャマシュラーよりは小さい、陸戦兵器寄りのサイズ。


 人間が重機関銃を構えているような大型の火器を装備したそいつらが一斉に頭をあげる。二つのアイカメラが大きく展開する。


 666 BABYLON 666 BABYLON 666 BABYLON

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 そのアイカメラをディスプレイにして、そう書かれた赤い文字が延々と流れる。


「〈M-10クレインクインP〉に、NEOSプログラムか……!」


 それが何なのかをリアラは知っている。路地裏で襲撃をかけてきたマライカと同じ、ロボットもののライトノベル〈ジャケット・パニック!〉に出てくる機体、物語前半の主人公機である〈M-10クレインクイン〉の量産型。量産型とはいえ主人公機と同じ限定的だが思考力をエネルギーとする現実変換兵器オメガ・ドライバを搭載している。ウィルスめいて機体を乗っ取る自立型AI・NEOSで無人起動する為にその力を一定形式でしか使用できないが、一種の人造超能力の為【鱗棘】にもある程度攻撃が通る。


「あれは障害ですが破壊して問題ない奴です、ルルヤさん、兵器の方は!?」

「分かったっ! あと、少しで終わる!」


 リアラとルルヤの声が交錯する。邪魔な中華ソヴィエト共和国軍の兵器は、この変の最中に片付けなければならぬ。それは間に合うだろう。だが『交雑マルドゥク』側も追加兵力を出した。加えて『全能ゴッド』側も軍以外の未知の戦力を展開している。


(面倒なっ……!)


 これが終わっても尚多数の敵が残存する。加えてこれは心猛らせる戦いではない。言わば復讐の対象外を戦場から除外する作業に過ぎぬ。勇者の心を持ち猛れば猛る程魔法力が沸く状態に今のルルヤは無い。無論消耗自体は致命的ではないが……


「『夢見人よ夢から覚めよ、全世界よ絶望を知れ、之こそが我が現実なり!』」


 その全ては策の通りとばかりに悠然と、『全能ゴッド』は変を完了させる。クレインクインP達もオメガ・ドライバを攻撃にチャージして狙いを定めるが撃たぬ。恐らくこの瞬間に何らかの攻撃を加えようとしても、地球そのものが庇ったかのように阻止されるだろう。否、地球が砕ける程やそれ以上の威力の攻撃であろうとも、この次元そのものが、いや『全能ゴッド』が積み重ねてきた幾重もの地球を中心とした宇宙の歴史そのものが防ぐだろうと、本能に理解を押し付ける威圧感と共に。


取神行ヘーロース!」


 『全能ゴッド』が胸の前で交差させる腕に力を込めた。


「『絶対絶死世界バッドエンドォォォォ……!』」


 そして、詠唱を終える。力を解放するように両腕を大きく開きながら、『全能ゴッド』は己の神としての名を解き放った。


「『地球ガイアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!』」

「食らえっ!!!!!!」


 QDDDDDDDDDZGDOOOOONNMM!!!!!!


 同時に『交雑マルドゥク』が一斉射撃を叩き込む。『星なるや知恵の天道ムル・アピン』、クレインクインP達のオメガ・ドライバ・バースト。更にグレートシャマシュラー本体からの、シャマシュラーが取り込んだ他の星王機神達の各種武装の内の一部の発射。


 〈月のシンナンナル〉のPFプリズムフレキシブルレーザー、〈火のネルガリオン〉のテラフレイム、〈木のマルドラブル〉のハイパーレールガン、〈金のイシュタール〉の超硬度金属砲、光が熱が砲撃が、リアラの【真竜シュムシュの世界】無くば東京壊滅必至の大爆発を引き起こす!


「……さて、出撃セレモニーも一段落か。号砲とクラッカー、どうもありがとう」


 その爆発の向こうから、悠然と無傷のままそれは姿を現した。平然泰然たる余裕を含んだ『全能ガイア』の声と共に。


 『絶対絶死世界・地球バッドエンド・ガイア』。遂に顕現した終の化神。それはグレートシャマシュラーに匹敵する巨大さを持ち、完成された神々しさを持つ大理石の神像のような中性的で抽象的な仮面めいた顔と、原始的な生命力を持つ石器時代・初期土器時代の地母像や土偶を入り混ぜたような重厚な頭部と体と四肢を持つ、禍々しく霊的・呪的でありながら同時に無機質という矛盾した印象の意匠をその全体に帯びた、滑らかな乳白色に赤と黒と黄金の模様が絡みつく巨神であった。

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