・第三章後編あとがき

・第三章後編あとがき



(※この注意書きは1週間後には消しますが、念の為こちらでも告知しますけど第七十九話が加筆修正されています。話の筋自体は変わりませんが、描写が増強されよりテーマが伝わりやすくなっていると思います。もしよろしければ確認された上であとがきをご覧になっていただければ幸いです)


 第三章前編から引き続いた物語は、かくして、最後まで急転に急転を重ねつつ、重ねた因果と絆を相克させながら最終の章へと雪崩れ込みます。


 リアラは苦しみ、苦しみに耐え、それでも尚その心にその苦しみの破片を抱えています。作者も共に執筆において苦しみました。


 ですがそんなリアラに、ルルヤはそれでもそれは必要な事であり、そしてそれでもルルヤという物語は君に寄り添う、君が完全ならずとも、悩み苦しめども、劣等であろうと感じようとも、逆接にそうでこそ英雄だという救いを述べ伝えました。そうしてリアラは遂に先に進むのです。


 これは言わば寓話です。リアラは人、ルルヤは物語であり、人が自らは救いに値しないのではないかと思っても、物語はそれでも人が物語を愛する限りを救うのだと私はそう訴えます。


 そして苦しみ、不完全であるからこそ、リアラは現実に寄り添い勇気づける事が出来る存在だと思います。


 何故ならば。


 異世界転生チートモノの主人公は、本編においてそう語るものが主張したように救いとしての存在、感情移入の対象、自分が物語世界の主人公となる夢の為の存在という側面もあるように思えますが。


 果たして無敵である事が、成功者である事が、多くの異性に愛される事が、果たしてそれのみが救いなのか。同じ救いの形を何度も何度も摂取し続ける事が果たして救われる快感をもたらし続けるのか?


 リアラは地球の視点を併せ持つ存在が必要であるという物語的必然として地球出身の転生者ですが、それはあくまでその部分が必要だったからで、この物語には他にも様々にそれぞれの人生の物語を生きてこの【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】とその物語を交錯させる人々がいます。彼ら彼女らはリアラに出来ない・やらない事をして、リアラに言えない・言わない事を言います。それぞれに必要な存在です。リアラより彼ら彼女らに近い考え方をする人も沢山いるでしょう。


 即ち、物語の中で活躍する事に、輝く事に、人の心を動かす事に、人の心を移入させる対象である事に、別に転生者である事は必要ない……当たり前の事ですが。


 であるならば、無敵である事、成功者である事、多くの異性に愛される事もまた同じ事。リアラは一般的な感情移入に向いた異世界転生者主人公と言うには少し違い、癖の強い性格の子で、主人公として少々変わっています。異世界転生者であってもなくても、その本質は変わらない。そして、その無敵でも完全でもなく異世界転生者である事が一番の特徴でもないリアラによって、少々風変わりでも感情移入には癖があるかもしれなくても、不完全だからこそ実際には無敵でも完全でも異世界転生者でもない現実の読者の心に寄り添えると思うのです。


 さて、そして。


 第一章の敵である現実の残酷さと辛苦へ没入し現実と一体化し現実そのものになって君臨しているのだという錯覚に救いを求める者達は共に潰え、第二章前半の敵である絶対の神に救いを求める者も消え、第二章後半での敵である超人となる事に救いを求める者も潰え、恋愛や科学に救いを求める者達もそれぞれの形で物語から去りました。


 今風の異世界転生モノの要素を解体しその〈本来物語によって救われる事を必要とする人を苦しめる現実〉との類似を露わにする風刺的パロディと、昔風の物語へのオマージュによる王道復古宣言、そして物語を愛する人への応援から始まったこの物語。そこから気がつけば〈何が人を救うのか〉を問う物語へと至り【逆襲物語ネイキッド・ブレイド】はここまで戦い抜いてきました。


 残ったのは、物語にすら救いを見いだせなくなってしまった憎しみの化身と、異世界転生モノのみが救いであると語る地球そのもの。


 次章、いよいよ最終決戦へ。異世界転生モノについて扱った物語としてその主題に結論を出し、戦いの中で問い探してきた〈何が人を救うのか〉という主題について答えを掴み、必ず、完結させます!ご期待ください!



 <スペシャルサンクス>


 読者の皆様に。私と縁ある皆様に。この物語を格に至った理由の様々な物語に。ありがとうございます、最後まで頑張りますのでよろしくおねがいいたします!

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