・第七十五話「異世界転生へようこそ! (中編)」
・第七十五話「異世界転生へようこそ! (中編)」
閃光! 閃光! 閃光! 夕焼け空が裂けそうな閃光!
「TR計画! 奪った資料で何度か見た名前! 薄々内容の想像はつくけど……!」
それはリアラと『
「聞きたいか、TR計画!」
「倒される前に言わないと、後世の歴史で誰も君の真意を知らないままになる。転生してまた死んだら、後悔する事も出来ないんだろ!?」
「ほざけ! 下手な挑発だ、だがいいだろう、聞いて慄いて死ね!」
太刀打ちの一瞬、【息吹】の剣と【骨幹】の盾に〈
言葉の刃も火花を散らしていた。リアラは長髪半分、そしてこれまでの戦いで思った事、悲しみと血に塗れた真心も込めて尋ねた。『
「TR計画即ち
『
「そんなのは馬鹿共への目晦ましだ。誰も彼も目先の欲望にしゃぶりつく事しか考えない薄汚い屑共だ。自分が何で、どうしてここにいるのかを忘れてる。それに比べればここまで辿り着いただけあって、お前は少しはマシみたいだがな!」
騙して悪いが自分の真の目的は違うと高揚した表情で『
同時に武器として〈
「勝ち組だった奴も負け組だった奴も等しく地球に殺されているというのにな! あくどく勝ちすぎ殺された奴、欲望を貪り頓死したバカ共、地球のショボい物理法則の中で戦い死んだ奴。数少ない元負け組の貧困や苛めに殺された過去を必死に隠し誤魔化してる奴! 誰も彼も結局自分は地球という世界に殺された事を忘れてる!」
「僕は生憎忘れてはいない!」
「そのようだ、な!」
「くぅっ!?」
【真竜の武練】の根本理論の一つ、旋回の遠心力と位置関係の掌握。それを以て盾と剣で二刀を捌ききるリアラに『
「だがどうでもいい! 計画がここまで進んだ以上
『
ZDGN!!
「くあ……! お前の、計画は、そういう事か!」
だが戦の笑顔と共に『
「この征服、最初から
「そうとも!」
己の攻撃の反動等無傷の『
「ああ、そうだとも! あの星に、〈不在の月〉に、地球に俺は殺された。唯のちっぽけなガキとして、踏み潰され、無視され、否定された。何も愛せず、何にも愛されず。その屈辱! 怒り! 怨み! 俺の目的は地球への復讐だ、地球の全てが呪わしい、許せない! それに比べりゃ、俺を英雄扱いする声なんざ、雑音だ! 邪魔だ! 寧ろウザいんだよ俺が怒ってる事も知らないで纏わりつくゴミ屑共が! 」
「……!!」
天に輝く〈不在の月〉を潰す様に拳を握り、掴み引きずり落とす様に握った拳を己の眼前に引き付け、怒りを宣誓する『
リアラはそれを受け止める。噛み締める。今はまだ言葉もない。何故ならば、分かるからだ。世界そのものを憎悪する感覚。虐められて死んだ前世も、世界を裏から支配する玩想郷に一度全てを奪われた今生も。それは、限りなく近い、だが、それでも遠い。ルルヤはリアラに告げた。生贄を要求する残酷な世界の横面に拳を叩きつけろと。世界を憎み、世界に抗う事、生きるという事は、より良き、より優しきを目指すという事だ。世界以上の残酷になろうとする事ではない。
それは譲れないと思った。例え、己が血に塗れ、優しさに遠く、ルルヤの教えを追い切れていないとしても。それでも、ルルヤ自身が己の不完全を認めたうえで、この僕を愛してくれているのだから。これまで積み重ねた過去の為にも、この『
「真のTR計画、即ち
掲げた自身の両手に更に強大な魔剣型の〈
「そしてお前らもだ! 不完全な復讐者。『
一斉射撃! 炎、雷、エネルギー、射出武器乱舞! 『
「そ・れ・は! どうかなっ! 負ける、もんかっ!」
だが、ルルヤの教えを今も尊いと思うが故に、リアラもそれに抗う! 負けぬ!
実体を伴う攻撃は【
「いいや、お前は負ける、俺は勝つ! 何故なら、俺の復讐は純粋だ! 俺一人以外は地球も
そんなリアラの強さを『
「俺の復讐心の方が……強い! 故に! 勝つ!」
ZDOM!
「ごっほっ……!?」
「計画第一案、
それでも尚『
「余裕ぶって! 舐めるなっ!」「む!」
GAGIIINN!!
だがリアラも負けていない。蹴り足を掴み爪先を打ち込む。スラスターを兼ねる
「余裕? こいつは力量差と言うものだ!」「どう、かな!」
BZZZZZZZ! OOOOOO!
機体表面への放電昨日で『
「……第二案である
「……今のままでは、それは更なる転生者の発生を生む……!」
組み合っての力比べにも似た魔法力の押し合い状態、呪文めいて『
「故にの第三案だ。調査の結果、竜術は地球でも問題なく行使できる」
「……!!」
「何故それが可能か。皮肉な話だ。
「……ええ」
「ならば
「いいや、それでも僕は、諦めない……!」
手数差を【《
「
縛り続けながら術を発動せんとするリアラ、それを撥ねのけ武器の切っ先を向けんとする『
その為にルルヤの精神を破壊しようと目論んだ『
「ルルヤを暴走状態へと追い詰め追い込み、地球へ放り込む。地球を攻撃させ、破壊させる。地球人の魂ごと! 全く苦労させてくれる、そちらも転生者の増加問題については頭を悩ませてきただろうが……何か解決策は思い付いたか?」
「考えてはいたさ。雨を止める事が出来るか? ……そう問うてくれた人もいた」
それにリアラは精神を集中し鎖を引き絞りながら是と答えた。『
竜術防御を
「だからそれを成し遂げてみせる。君を倒して! 君はあの物語の書き手だったんだろう。あの事件は酷かった。君がここにこうしているという事は、つまりそういう事なんだろう。自分の物語を否定されるのは辛い事だ。それでも……!」
「ああ、そうだよ。俺は、物語だけが救いの現実の肉体を踏みにじられる側の餓鬼だった。お前の前世についても調べさせてもらった。お前も俺と、俺はお前と、俺ら二人の前世は大体同じだ。だが、俺は物語も失った。俺は己の愛で己の愛を愛を殺してしまった。物語にすら裏切られた。糞が。物語にも、結局詰まってるのは糞みたいな人間共の欲望と嗜虐欲だ。俺はそれを知っている。物語に理想を夢見てるお前より、俺は賢く正しい!」
何にせよまず目の前の戦いに勝たねば。リアラは専誓詠吟を完成させる。だが同時に『
「ハ! 少し語弊があったな。さっき
こいつは僕以上の怪物だ、とリアラは認識する。
無論、人を苛め殺す事は殺人であり重いが、僕はただ苛められて死んだ子供なのに、その無念一つで、いかなる敵も己の大義で蹴散らかしどんな傷も恐怖も踏み潰すようになった。そんな己は明らかに大分異常な存在だ、それだけでここまでになる奴は居ない訳では無いだろうが少数派だと思っていた。だが。
「僕だって
「下らない! 誰かを社会的リンチにかけて殺す事が平然と罷り通る社会を構築しそれを是とし継続した時点で地人は全員同罪だ! ハ、ぬるいぞ似非復讐者! 二度殺された俺と一度殺されただけのお前では、思いの強さが違う! 勝つのは俺だ!」
しかし『
「似非復讐者でいいよ、中途半端な偽物の正義の味方でもいい。地球にそれほど義理がある訳じゃないって思っちゃうような人間だ。でも。君がたった一人の復讐の為に戦うなら、僕は
沢山の命と沢山の罪を背負ってリアラは吼える。『
だから、ルルヤさんに後を託して死ぬわけにはいかない。そして……
同時。そのルルヤはその【巨躯】を猛然と戦わせていた。『
対して『
「【GEOOOOOOO】!?」
攻防、共に堅牢。城砦めいて『
(このまま射殺じゃ!)(遠距離戦は不利か、だが!)
独自の【
「だったら突破すればいいだけの事だ!」「それが簡単に……何と!?」
そしてルルヤが上を行く! 『
唯ルルヤの突撃が、ここまでのルルヤの動きを更に上回っていた。残った方の翼を使い猛然跳躍。過去最速を更新する速度。殆ど飛ぶに等しい跳躍。バリアシールドを飛び越えんとする。ギリギリ飛び越えきるには足りない。だが、ルルヤの戦における直感はそれを予期していた。バリアシールドを構築する六角形の金属板。空中に浮遊するそれを踏みつけ蹴り飛ばす。ルルヤの【巨躯】の威力に金属板は砕け散る。するとそれによって維持されていたバリアシールドが消滅する。即座に残った金属板同士を結ぶ角度で再構築されるが、面積が減ったバリアシールドを飛び越え、ルルヤはバリアシールドの内側、近接距離の間合いに飛び込んでいた。
密集陣形が仇となり急襲への対応にもたつく『
「一つ!」
そして着地と同時に翼を振るって毒の『
「二つ!」
この教習に残りの『
「三つ!」
その背後から風の『
「四つ! 五つ! 六つ!」
だが、残り三体がまだいる! 『
「犠牲は構わん、確実に潰せぃ!」
無の『
更に全滅しても倒すと呪と力の『
「【GOEAAAAAAFAAAANN】!!」
が、ルルヤのゼロ距離【息吹】の方が速い!無の『
呪と力の『
ZDDDGAAAAAAANNN!!
激突!
ぶつかりあい縺れあう呪と力。翼を打ち振り帯びた月の【息吹】を前回にしたルルヤの【巨躯】が黒い閃光か地面に沿って走る流星のように疾走! 一億の大砲が同時に轟いたかの如き轟音! 衝撃波が大地を薙ぎ払い……
ルルヤの【巨躯】の腕が、呪と力の『
呪と力の『
同時。
QZDZDGDOOOOONN!!!!!!
大爆発!
……天上で競り合っていた『交雑』とリアラが双方の力を激突させたのだ。
「はーっ、はーっ、はーっ……」
「……勝ったな」
爆煙から弾き出されるリアラ。その場に留まり続けた『
「まだ、だ」
リアラは諦めない。眼下ではルルヤが、全ての『
「いいや、終わりだ。分かっているだろう?
『
ぐぞっ、ぐぞぞっ、ぐじゅっ、ぶくぶくっ、じゅじゅっ、ぐずずっ……
……おぞましい音を立て、ぐちゃぐちゃに粉砕された筈の『
「【
再度四振りの〈
「残念ながら時間切れだ。お前達の仲間内のひそひそ話を、こちらがいつまでも分析できないとでも思っていたのか。今のルルヤは怨念による暴走の分水嶺を既に越えている。勇気の魔法力を最後に振り絞って、限界を越えて体を動かし続けていただけだ。せめて一人でも多く倒そうと……無駄な足掻きだったな」
【
「ああ、そうだよ、ファック野郎。ルルヤさんが、限界を越えた力を振り絞ったと、振り絞ると決めてもうやった後だ、ってのは、さっき聞かされた」
リアラは『
((すまないが、皆を守る為に仕方が無かった。限界を超えて戦うことを選んでしまった))
と、《大仕切直》で転移した直後に流れ込んできた【宝珠】を通じて告げられたルルヤのメッセージにあった。
「それでもお前達は、全知全能の神様なんかじゃなかった」「何……?」
だが、『
「『
ぴく、と、僅かに『
「君は唯の人間だ。僕と同じ地球の唯の少年だ。僕が不完全で血に塗れているように、君もまた不完全だ。考える事は地球の人間が勝っていると考えて、ルルヤさんの考えにも気づけなかった。ルルヤさんは、もう、手を打っていたんだ」
『
「おごっ」「!?」
不意に『
「おごあがっ!? なっ、なっ、な……!?」
『
「言った、ろう。攻撃はラトゥルハを切り離す事も狙いだった、と。つまり逆に言えば、それだけが狙いじゃなかったという事だ」
ZZN……
ルルヤの【巨躯】が地面に膝を突いた。苦しげな、声。しかしその声は、ルルヤの計画成就を告げていた。
「さっき、他の
それに反応してリアラが、先程の『
ZAPZAPZAP! DOMDOMDOM! ZDOOOONN!
「「「「「「「「「うおおおおおおおおっ!」」」」」」」」」
そして大量の攻撃魔法の一斉発炸裂の轟音、鬨の声が全方位から轟いた。
無数の攻撃魔法が、再生しようとしている『
それは〈
「僕には君を食い止めるのが精一杯だったけど。これから、悲劇が待っていても。その悲劇を覆さなきゃいけないとしても。それは兎も角、エオレーツ・ナアロ、君に言おう。……君の王国は終わりだ」
全ての苦難を背負う事で味方全員に逆転を齎した真竜の戦士が宣言する。ナアロ王国が、
「まだ僕は、諦めない! ……僕自身の運命も、
ルルヤからの、皆を守る為に限界を超えたというメッセージには続きがあった。
((私はリアラを愛し、信じている。きっとリアラが私を助けてくれると、暴走の闇から救い出し、皆と私を救ってくれると信じている。頼む。頑張ってくれ))
それに込められた思いは嫌と言う程分かった。無責任に放り投げたのでも、縋ったのでもない。目の前の人を自分の命と天秤にかけても見捨てられなかった優しいルルヤは、リアラが絶望しないように目標を与えてくれたのだ。
それが可能かどうか。まだわからない。だが、やるだけだ、と。リアラは諦めてはいなかった。
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