・第七十五話「異世界転生へようこそ! (中編)」

・第七十五話「異世界転生へようこそ! (中編)」



 閃光! 閃光! 閃光! 夕焼け空が裂けそうな閃光!


「TR計画! 奪った資料で何度か見た名前! 薄々内容の想像はつくけど……!」


 それはリアラと『交雑マルドゥク』がぶつかりあう光だ。


「聞きたいか、TR計画!」

「倒される前に言わないと、後世の歴史で誰も君の真意を知らないままになる。転生してまた死んだら、後悔する事も出来ないんだろ!?」

「ほざけ! 下手な挑発だ、だがいいだろう、聞いて慄いて死ね!」


 太刀打ちの一瞬、【息吹】の剣と【骨幹】の盾に〈傑証けっしょう〉の武具がぶつかりあう火花だけではない。〈青騎士ブルーサマーズ〉で飛翔する『交雑マルドゥク』はそのフィールド展開推進でルルヤや『虚無ウチキリ』と同じく感性を無視して飛翔する。稲妻の如きその速度も閃光。そして、数多の傷跡数多の苦痛を乗り越えてそれに食らいつき続けるリアラの飛翔もまた閃光だ。過去の戦いより速い。一合毎に速度を増していっている!


 言葉の刃も火花を散らしていた。リアラは長髪半分、そしてこれまでの戦いで思った事、悲しみと血に塗れた真心も込めて尋ねた。『交雑マルドゥク』は、生意気なという獰猛さと、しかし同時に良かろうという思いも、牙剥く笑みに乗せて応える。


「TR計画即ち地球帰還Terra Redi計画、こんな中世めいた世界を征服し得られる利益はたかが知れている。地球に帰還し地球も征服しようと部下には言っていたが……」


 『交雑マルドゥク』はリアラの剣とその右手に持つ赤褐色の剣、『歌う沈黙スクレップ』を飛燕のごとく翻して鍔競り合い、機密保持の為か英語ではなくあえてラテン語での略称としたその計画について語り、そして己と敵対する転生者全てへの、心の底からの侮蔑の嘲笑を浮かべた。だが眼前の敵に対しての侮りは無い。


「そんなのは馬鹿共への目晦ましだ。誰も彼も目先の欲望にしゃぶりつく事しか考えない薄汚い屑共だ。自分が何で、どうしてここにいるのかを忘れてる。それに比べればここまで辿り着いただけあって、お前は少しはマシみたいだがな!」


 騙して悪いが自分の真の目的は違うと高揚した表情で『交雑マルドゥク』は宣言。最早隠す必要も無くなったからだ。そして笑いながら左手に持つルルヤが以前に使った仕掛鞭剣と類似した構造の鎖鞭めいてしなる『殴り打つ鉄鎖の剣ナーゲルリング』を更に叩きつける。強烈な衝撃波が発生!


 同時に武器として〈傑証けっしょう〉と〈青騎士ブルーサマーズ〉や〈緋王鉄拳クリムゾンブースト〉による倍力機構・魔力強化だけではなく、幾つものライトノベル主人公の自己強化系特殊能力を同時に多重に上乗せしている。速度でも力でも『増大インフレ欲能チート』に次ぐ域にまで一気に力を増大させている。それにリアラは追随し剣舞を舞い続ける。装備と能力による多重強化に初期の何倍にも達した竜術身体強化で対抗し、翻り絡み付き衝撃を放つ剣の機能を武術の冴えで捌き耐える!


「勝ち組だった奴も負け組だった奴も等しく地球に殺されているというのにな! あくどく勝ちすぎ殺された奴、欲望を貪り頓死したバカ共、地球のショボい物理法則の中で戦い死んだ奴。数少ない元負け組の貧困や苛めに殺された過去を必死に隠し誤魔化してる奴! 誰も彼も結局自分は地球という世界に殺された事を忘れてる!」

「僕は生憎忘れてはいない!」

「そのようだ、な!」

「くぅっ!?」


 【真竜の武練】の根本理論の一つ、旋回の遠心力と位置関係の掌握。それを以て盾と剣で二刀を捌ききるリアラに『交雑マルドゥク』は〈青騎士ブルーサマーズ〉の大型機械腕部で追撃を加えた。機械腕部には巨人用サイズの大剣、雷纏う『巨鉄なりし焼雷の剣ドズス・クアラ』と炎帯びる『巨人担う炎の剣エッケザックス』! 翼めいて展開する『神定む天命の書板トゥプシマティ』が輝き四武器が踊る!


「だがどうでもいい! 計画がここまで進んだ以上玩想郷チートピアも王国派も雑兵共も不要、お前のこれまでの戦いも無意味だ! 糞ヤンキーも負け犬も臆病者も覗き魔も全員死んでいい奴等だ、ロケットの切り離されたブースターだ! あるいは月世界征服を目指す古典SFの砲弾型宇宙船にとっての燃やされた火薬や地上の砲台コロンビヤードに等しい!」


 『交雑マルドゥク』は嘲笑い己が機体を舞い踊らせる。さりげなく己の国の都の名コロンビヤード・ワンに込めた意図を語りつつ。計画の成就は間近と、全てを見捨てながら。衝撃を受け流し旋舞し、追撃の巨剣を単分子刃化させた【翼鰭】で受け止めるリアラ。〈傑証けっしょう〉たる鍛造された神秘鋼にすらその羽は食い込む! 強度が上昇しているのだ!


 ZDGN!!


「くあ……! お前の、計画は、そういう事か!」


 だが戦の笑顔と共に『交雑マルドゥク』は容赦なく切り結ぶ四剣を多重強化の魔法力過剰供給で爆発させた。弾き飛ばされかけながらも【陽の息吹よ、守護の祝福たれフォトンブレス・バリアー】を張り巡らし踏み留まるリアラの眉間を汗が伝う。『交雑マルドゥク』の過去、エオレーツ・ナアロの国盗りに関する風聞、その前日譚、混珠こんじゅに現れてから初めて晴れた夜空を見上げた直後突然変心し征服者となった元英雄という過去の意味を確信する。


「この征服、最初から混珠こんじゅはどうでも良かったのか!? どうでもいいって思ったのか!? あれを、〈不在の月ちきゅう〉を見た瞬間、全部どうでもよくなったのか!? それまでの戦いの仲間も守った人も君を英雄だと思ってくれた人も全て!?」

「そうとも!」


 己の攻撃の反動等無傷の『交雑マルドゥク』は肯定し遂に真意を明らかにした。笑みを狂暴に二色の瞳を爛々と輝かせ、武器を爆砕させた素手を掲げる。天へ。水の宇宙の空に幻として浮かぶ〈不在の月〉へ、そう、地球へ。


「ああ、そうだとも! あの星に、〈不在の月〉に、地球に俺は殺された。唯のちっぽけなガキとして、踏み潰され、無視され、否定された。何も愛せず、何にも愛されず。その屈辱! 怒り! 怨み! 俺の目的は地球への復讐だ、地球の全てが呪わしい、許せない! それに比べりゃ、俺を英雄扱いする声なんざ、雑音だ! 邪魔だ! 寧ろウザいんだよ俺が怒ってる事も知らないで纏わりつくゴミ屑共が! 」

「……!!」


 天に輝く〈不在の月〉を潰す様に拳を握り、掴み引きずり落とす様に握った拳を己の眼前に引き付け、怒りを宣誓する『交雑マルドゥク』。苛烈猛悪を通り越し、生身のまま全世界の敵になり全世界を己の敵として下し勝つと宣言する極大感情。


 リアラはそれを受け止める。噛み締める。今はまだ言葉もない。何故ならば、分かるからだ。世界そのものを憎悪する感覚。虐められて死んだ前世も、世界を裏から支配する玩想郷に一度全てを奪われた今生も。それは、限りなく近い、だが、それでも遠い。ルルヤはリアラに告げた。生贄を要求する残酷な世界の横面に拳を叩きつけろと。世界を憎み、世界に抗う事、生きるという事は、より良き、より優しきを目指すという事だ。世界以上の残酷になろうとする事ではない。


 それは譲れないと思った。例え、己が血に塗れ、優しさに遠く、ルルヤの教えを追い切れていないとしても。それでも、ルルヤ自身が己の不完全を認めたうえで、この僕を愛してくれているのだから。これまで積み重ねた過去の為にも、この『交雑マルドゥク』の憎悪に答えを返さなければ。今はまだ考えなければならないとしても。


「真のTR計画、即ち地球崩壊Terra Ruina計画! 混珠こんじゅはどうでもいい、混珠こんじゅに執着する奴等は誰も彼も現実で負け死んだ事を忘れ異世界に逃避し満足する引き籠りの××××放送禁止用語野郎だ。俺の願いは唯一つ、俺を殺した地球への復讐だ! 地球人類七十億人の皆殺しだ! その為の混珠こんじゅ征服、その為に混珠こんじゅ人を征服し使役し殺す。その為ならこんなちゃちな異世界一つ、カスのような他の転生者共、全部使い潰してやる!」


 掲げた自身の両手に更に強大な魔剣型の〈傑証けっしょう〉である『憤怒する戦神の腕テュルフング』と『殺従える侵犯の剣ダインスレイフ』を、〈青騎士ブルーサマーズ〉の大型機腕に神格の武装たる相応しい巨大さの『青炎の蛇槍シウコアトル』と『天なりし石雷の斧ウコンバサラ』を装備! 更に機体のランチャーと周囲の空間に無数の〈傑証けっしょう〉を展開!


「そしてお前らもだ! 不完全な復讐者。『旗操フラグ』如き復讐者の名にも値しない目先の欲に耽溺した犬に手こずる程度のお前らでは、俺には絶対に勝てん!」


 一斉射撃! 炎、雷、エネルギー、射出武器乱舞! 『神定む天命の書板トゥプシマティ』が瞬く!


「そ・れ・は! どうかなっ! 負ける、もんかっ!」


 だが、ルルヤの教えを今も尊いと思うが故に、リアラもそれに抗う! 負けぬ!


 実体を伴う攻撃は【陽の息吹よ、過たぬ鏃たれホーミングフォトンブレス】で撃墜! 炎や雷やエネルギー攻撃は【陽の息吹よ、守護の祝福たれフォトンブレス・バリアー】で防御! 掻い潜り再び間合を白兵戦距離に!


「いいや、お前は負ける、俺は勝つ! 何故なら、俺の復讐は純粋だ! 俺一人以外は地球も混珠こんじゅも全て敵だ! 唯復讐だけを思いその為には戦力への情も正義も愛も不要! 復讐より保身と女が大事だった肉欲野郎の『旗操フラグ』よりも、復讐と正義と仲間の命と愛情をごちゃ混ぜにしているお前ら真竜シュムシュよりも、俺の復讐心は遥かに強い! より多く憎み、より多く許さず、それら全てを跳ね返し勝つ決意に満ち満ちている! 純度で言えば金剛石と灰、質量で言えば山と石程にもお前らとは違う。躊躇わない、揺らがない、迷わない!」


 そんなリアラの強さを『交雑マルドゥク』は侮らぬ。これほど消耗して尚消耗より成長が上回っている。勇者の心が無限の魔法力を生みつつある。今のリアラなら単独でもかつての第七位キャピタル以下の十弄卿テンアドミニスターを【真竜シュムシュの地脈】抜きで討ち取れるだろう。だが!


「俺の復讐心の方が……強い! 故に! 勝つ!」

 ZDOM!

「ごっほっ……!?」

「計画第一案、混珠こんじゅの征服による強制徴兵戦力での地球直接侵攻には無理があった。混珠こんじゅの普通の魔法は混珠こんじゅ世界への神や精霊が持つ操作権限の貸与によるもの、地球では使えん。魂の歪みで世界法則を歪める欲能チートは会得すれば地球でも使えるが、地球から来たという事実が世界の歪みをより強くする、つまり地球では力が低下する。どちらも混珠こんじゅで別世界を迎撃する事に問題はないが、それはあの負け犬共浄化管理局から聞いたか? それを無視し他世界に干渉可能な者もいるしその限界を越える手段もあるが、何れにせよ第一案は不可能だ。今は地球より先にお前を焼いてやる!」


 それでも尚『交雑マルドゥク』は己の力が勝っていると確信する。機械脚部で武装を立て直す隙を突いてリアラの腹に蹴りを見舞う。見舞いながら己の目的を語り続ける。これはそれを実現する作業行程に過ぎないのだとリアラの戦意を貶めようとする。更に機械脚部から推進エネルギーを噴射してリアラの体を炙ろうとする!


「余裕ぶって! 舐めるなっ!」「む!」


 GAGIIINN!!


 だがリアラも負けていない。蹴り足を掴み爪先を打ち込む。スラスターを兼ねるISSインターステラストライダーの機械脚部を膝裏から砕く! 『交雑マルドゥク』は『神定む天命の書板トゥプシマティ』に表示される楔型文字を高速で流れさせながら、即座に己の有する様々なライトノベル主人公の能力からISSインターステラストライダーを修復出来る力を選り出そうとするが、推力を減じたISSインターステラストライダー青騎士ブルーサマーズ〉にリアラの【《生ける息よ死の骨よ、縛れブレスバインド&ボーンバインド》】が絡みつく方が速い!


「余裕? こいつは力量差と言うものだ!」「どう、かな!」


 BZZZZZZZ! OOOOOO!


 機体表面への放電昨日で『交雑マルドゥク』はリアラを攻撃せんとする。リアラはそれを魔法でそれを防御! ならばと『交雑マルドゥク』は流し込む力を呪詛に変更! リアラはそれにも魔法を切り替え即座に対抗!


「……第二案である混珠こんじゅで核兵器を生産しての地球全土への格攻撃は、核兵器の生産自体には漕ぎ着けたが、地球全土を焼き付くす量の核兵器清算は水素爆弾の起爆用原子爆弾として計算しても混珠の資源総量的に困難だった。それに何より、第一案にも第二案にも不安要素がある。わかるな?」

「……今のままでは、それは更なる転生者の発生を生む……!」


 組み合っての力比べにも似た魔法力の押し合い状態、呪文めいて『交雑マルドゥク』は語り続けた。狂熱に燃える妖眼を、リアラは真正面から見返した。


「故にの第三案だ。調査の結果、竜術は地球でも問題なく行使できる」

「……!!」

「何故それが可能か。皮肉な話だ。混珠こんじゅ外でも一切減衰無く欲能チートを行使可能な例外存在、『全能ゴッド欲能チート』と原理は同じだ。お前もここまで、帝龍ロガーナン家の伝承を、〈浄化管理局〉の伝言を拾い集めて、もう分かっているだろうがな?」

「……ええ」

「ならば王手詰みチェックメイトの状況である事も理解しているんじゃないのか? 何故まだ抗う? お前の女はというのに」

「いいや、それでも僕は、諦めない……!」


 差を【《生ける息よ死の骨よ、縛れブレスバインド&ボーンバインド》】で補い、【陽の息吹よ、灼き斬れフォトンブレス・ブレイド】と【《傷口よ顎門と成れ、陽と血の息吹で報いよブラッディリベンジ・フォトンブレス》】を併用し最大威力の一撃を叩き込まんとするリアラ。四振りの〈傑証けっしょう〉をリアラへ向け、『経済キャピタル』の魔法武器多重発動めいて、だが遥かに上回る威力で纏めて叩き込もうとする『交雑マルドゥク』。


真竜シュムシュ、魂の無念を吸収する【真竜シュムシュの地脈】を使う、信仰と神の名の下に魂が循環し続ける今の混珠こんじゅを作った要。これを使い混珠こんじゅ人の輪廻に地球人を取り込み、【地脈】と、竜術の奥義、自らの望む法則を展開し世界法則を書き換える【真竜シュムシュの世界】を併用させて纏めて燃やし尽くす。竜術を使えるだけのラトゥルハでは不足だ。【世界】の法則は魂の形を元に決定される。ラトゥルハや『竜機兵ドラグーン』の魂の形では適した【世界】を構築出来ん。だからお前達が必要だ。お前達の地球への憎しみを利用し混珠を滅ぼしてでも地球を滅ぼしたいという程に魂を崩壊させる事で【世界】を形成させ地球を攻撃させる……」


 縛り続けながら術を発動せんとするリアラ、それを撥ねのけ武器の切っ先を向けんとする『交雑マルドゥク』。競り合う。押し合う。力と意思がぶつかり合う。


 その為にルルヤの精神を破壊しようと目論んだ『交雑マルドゥク』だが、その目標はリアラでも構わない。望んだ【真竜シュムシュの世界】を『交雑マルドゥク』が利用可能な状態となるならルルヤをダシにリアラを壊してもいいのだ。『交雑マルドゥク』にとって、〈帝国派〉も〈王国派〉もその為の生け贄に過ぎなかった。〈首領派〉もまた別の目的で〈帝国派〉を利用していた様に、最初からこの局面までは双方の絵図は共に一致していたからこその今の状況なのだがそれは兎も角。ここまでは計算通りだと、お前達はどうだと、双方の武器がきしむ音が混ざる声で嘲り問う。


「ルルヤを暴走状態へと追い詰め追い込み、地球へ放り込む。地球を攻撃させ、破壊させる。地球人の魂ごと! 全く苦労させてくれる、そちらも転生者の増加問題については頭を悩ませてきただろうが……何か解決策は思い付いたか?」

「考えてはいたさ。雨を止める事が出来るか? ……そう問うてくれた人もいた」


 それにリアラは精神を集中し鎖を引き絞りながら是と答えた。『神仰クルセイド欲能チート』と戦った時からリアラは考え続け、資料を集め、戦いの合間に研究し続けていた。それ故に進みは遅かったが、『交雑マルドゥク』の計画と同じく幾つかの案を考えていた。


 竜術防御を混珠こんじゅ全土に展開し地球からの魂の流入を阻止する第一案。玩想郷チートピアを打倒した後に転生者の発生を関知し確保するシステムを構築し、玩想郷チートピアの再結成を阻止する第二案。第一案の実現可能性の不透明、転生者の増殖と玩想郷チートピアの新規加入の速度より早く玩想郷チートピアの転生者を殺し続ければ実現可能でありまた何より玩想郷チートピアを無くしてかっこ対応すれば悪行転生者にならない者も増えるのではないかという希望からも、リアラは後者を志向していたが。


「だからそれを成し遂げてみせる。君を倒して! 君はあの物語の書き手だったんだろう。あの事件は酷かった。君がここにこうしているという事は、つまりそういう事なんだろう。自分の物語を否定されるのは辛い事だ。それでも……!」

「ああ、そうだよ。俺は、物語だけが救いの現実の肉体を踏みにじられる側の餓鬼だった。お前の前世についても調べさせてもらった。お前も俺と、俺はお前と、俺ら二人の前世は大体同じだ。だが、俺は物語も失った。俺は己の愛で己の愛を愛を殺してしまった。物語にすら裏切られた。糞が。物語にも、結局詰まってるのは糞みたいな人間共の欲望と嗜虐欲だ。俺はそれを知っている。物語に理想を夢見てるお前より、俺は賢く正しい!」


 何にせよまず目の前の戦いに勝たねば。リアラは専誓詠吟を完成させる。だが同時に『交雑マルドゥク』も〈傑証けっしょう〉の切っ先をリアラに向けた。


「ハ! 少し語弊があったな。さっき混珠こんじゅはどうでもいいといったが、あれは嘘だ。生きてる人間なんてどうせどいつも同じだ、ただ生きてるだけで、俺を踏み潰した奴らと同じ、生きてる人間だという点が同じなだけで我慢がならん! 汚らしい穢らわしい汚物と同じだ触るんじゃねえ、だ! それに、ハハ、教えてやろう。そっちも調べた情報で薄々いるかもしれんが改めて言おう。混珠こんじゅ人にも、結局昔から薄汚い地球人の魂が混じっている。つまり地球人と同じだ。俺は二度殺された。生身の人間の学生としても苛め殺され、物語の書き手としても燃やし殺された。同罪だ。俺の復讐の対象だ。地球殲滅の過程で使い潰して……誰一人たりとて残さない。その魂の最後の一欠片まで完全に消滅させてやる!」


 こいつは僕以上の怪物だ、とリアラは認識する。


 無論、人を苛め殺す事は殺人であり重いが、僕はただ苛められて死んだ子供なのに、その無念一つで、いかなる敵も己の大義で蹴散らかしどんな傷も恐怖も踏み潰すようになった。そんな己は明らかに大分異常な存在だ、それだけでここまでになる奴は居ない訳では無いだろうが少数派だと思っていた。だが。


「僕だって玩想郷チートピア全体を憎んでいるけど、敵の仲間を憎むというなら兎も角、敵と同じ世界にいるから、同族だからって、全人類を憎んで抹殺するのは!」

「下らない! 誰かを社会的リンチにかけて殺す事が平然と罷り通る社会を構築しそれを是とし継続した時点で地人は全員同罪だ! ハ、ぬるいぞ似非復讐者! 二度殺された俺と一度殺されただけのお前では、思いの強さが違う! 勝つのは俺だ!」


 しかし『交雑マルドゥク』はそれより遥かに怪物だ。自分一人の復讐で、無辜の世界一つ丸ごと、否、地球と混珠二つの世界を滅ぼそうとしている。リアラにはそれを止める理由がある。地球の人間だった、前世たる神永正透かみながまさととしてもだ。


「似非復讐者でいいよ、中途半端な偽物の正義の味方でもいい。地球にそれほど義理がある訳じゃないって思っちゃうような人間だ。でも。君がたった一人の復讐の為に戦うなら、僕は混珠こんじゅの皆の為にも、地球に残してきた妹と友人、絶対に死んで欲しくない二人の為にも君を止める! 全部捨てる君の強さと、沢山背負った僕の強さ! どっちが上か……勝負だ!」


 沢山の命と沢山の罪を背負ってリアラは吼える。『旗操フラグ』、ゼレイル・ファーコーンの、死にゆく複雑な笑顔が心をよぎる。担い、答えを出さねばならない事が山ほどあるし、それだけじゃない、他にも大きすぎるものを背負っている。死ぬわけにはいかない、いかなくなってしまった。【真竜シュムシュの宝珠】でルルヤさんが教えてくれた……ルルヤさんに関する致命的な情報を。


 だから、ルルヤさんに後を託して死ぬわけにはいかない。そして……



 同時。そのルルヤはその【巨躯】を猛然と戦わせていた。『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】を倒す為に。敵は合計九体、圧倒的多数。だがそれでも!


 対して『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】達は陣形を組み、一斉に二股槍型の腕を向けた。その巨大な棘の又を口に見立て、極大規模で個々の属性の【真竜の息吹】が発動! 発射直後、膨らんだ両肩に埋め込まれていた六角形の金属が空中に浮遊し、それぞれの金属板が繋ぐ間の空間に【陽の息吹よ、守護の祝福たれフォトンブレス・バリアー】や【月影天盾イルゴラギチイド】の様な【息吹】の属性を持つバリアシールドを自分の体の前にその前面を遮る様に形成する。そのバリアシールドの影で、再び『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】達は【息吹】の発動準備。

「【GEOOOOOOO】!?」


 攻防、共に堅牢。城砦めいて『文明巨躯メカシュムシュ】を守り立ちはだかる。ルルヤの【巨躯】の【息吹】は無効化され、何発もの【息吹】がルルヤの【巨躯】に食い込む。傷だらけとはいえ分厚い【鱗棘】は健在であり、月の【息吹】の暴走寸前の奔流が体を侵食している為、それに逆に弾かれてダメージはある程度防がれるが、このままではジリ貧だ。


(このまま射殺じゃ!)(遠距離戦は不利か、だが!)


 独自の【真竜シュムシュの宝珠】ネットワークで『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】を指揮する『文明マキナ』とルルヤの思惑が交錯し、そして……


「だったら突破すればいいだけの事だ!」「それが簡単に……何と!?」


 そしてルルヤが上を行く! 『文明マキナ』の布陣も決して誤りではなかった。ここまでのルルヤの能力の分析結果を反映していた。


 唯ルルヤの突撃が、ここまでのルルヤの動きを更に上回っていた。残った方の翼を使い猛然跳躍。過去最速を更新する速度。殆ど飛ぶに等しい跳躍。バリアシールドを飛び越えんとする。ギリギリ飛び越えきるには足りない。だが、ルルヤの戦における直感はそれを予期していた。バリアシールドを構築する六角形の金属板。空中に浮遊するそれを踏みつけ蹴り飛ばす。ルルヤの【巨躯】の威力に金属板は砕け散る。するとそれによって維持されていたバリアシールドが消滅する。即座に残った金属板同士を結ぶ角度で再構築されるが、面積が減ったバリアシールドを飛び越え、ルルヤはバリアシールドの内側、近接距離の間合いに飛び込んでいた。


 密集陣形が仇となり急襲への対応にもたつく『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】達。その内最大の破壊力を持つ火の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】に、まずルルヤの【巨躯】は飛びかかった。跳躍の勢いをの頭部に腕を振り下ろす。取り囲んで有利という状況分析に胡坐をかいていれば反応の暇もなし、頭を潰されそのまま胴体ごと血の柱を吹き上げ真っ二つ!


「一つ!」


 そして着地と同時に翼を振るって毒の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】をなぎ倒した。転倒した頭部を巨大な足で踏み潰す!


「二つ!」


 この教習に残りの『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】が漸く反応した。雷の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】が襲いかかる。巨大な刃のついた腕を振りかざすが、【巨躯】と化しても武術の達人たるルルヤ、よりコンパクトな動きで振り上げられる腕に割り込み相手の腕関節に爪を叩き込んで逆に切り落とす。しかし雷の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】もまたルルヤにカウンターを入れる。永い尻尾を叩きつけ、その君に悪い先端から雷の【息吹】を打ち込んで反撃する。だが、ルルヤは最早苦痛も電撃も、慣れた、通用せぬとでも言うのか、まるで痛覚が麻痺しているかの様に突き進んでそのまま相手の首をへし折る! 力を一切出し惜しみせず使い尽くし絞り切る、ここで力を使い果たしてもいいと言う程の勢いだからこそ成立する徹底的即殺戦術!


「三つ!」


 その背後から風の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】が、刃の腕を掲げて飛びかかる。風を纏い一際速い。水の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】もそれに続く。だがルルヤの【巨躯】は更に早かった。もとより重力を操れる以上、巨体のパワーをそのままにその重量を瞬間的に無視して振る舞えるのだ。切り落とした雷の腕を投げつける。風はそれを切り払ったが、その隙を突くルルヤの鉤爪が雷を袈裟斬りに! 肋骨がぱっくり開いて肺と心臓が露になる程の一撃! そしてその斬撃は流れるように閃き、続く水の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】を上下に両断、氷の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】の左足を叩き斬り転倒せしめる!


「四つ! 五つ! 六つ!」


 だが、残り三体がまだいる! 『文明マキナ』が号令!


「犠牲は構わん、確実に潰せぃ!」


 無の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】が攻撃と同時に傷による片腕が落ちた死角の隙を突いてルルヤの【巨躯】に体当たりを食らわせた。轟音と共に倒れるルルヤの【巨躯】。押し倒し、食らいつき刃の腕を打ち込んで槍の腕で串刺しにせんと躍りかかる!


 更に全滅しても倒すと呪と力の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】が無の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】を諸共に巻き込んででも纏めて倒そうと再度間合いを取って陣形を組み【息吹】の発射準備!


「【GOEAAAAAAFAAAANN】!!」


 が、ルルヤのゼロ距離【息吹】の方が速い!無の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】の【息吹】を放とうとする口に逆に【息吹】を叩き込む狙撃! 無の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】の頭部が吹き飛ぶ! 更にもう一発! 無の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】の体も爆発四散! その鱗や甲や爪や腕部武装や骨の残骸が散弾と化して呪と力の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】に炸裂!


 呪と力の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】がその散弾に対しバリアシールドを展開して防御、その後バリアシールドを解除し再度【息吹】による攻撃を行おうとする一瞬に、ルルヤの【巨躯】はその重量を無視して起き上がっていた。バリアシールドのオン・オフの隙を見切り呪の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】に体当たりをぶちかまし、その顔面と頭部を鷲掴みにして力めがけて投げ飛ばす!


 ZDDDGAAAAAAANNN!!


 激突!


 ぶつかりあい縺れあう呪と力。翼を打ち振り帯びた月の【息吹】を前回にしたルルヤの【巨躯】が黒い閃光か地面に沿って走る流星のように疾走! 一億の大砲が同時に轟いたかの如き轟音! 衝撃波が大地を薙ぎ払い……


 ルルヤの【巨躯】の腕が、呪と力の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】の胴を纏めて貫通していた。


 呪と力の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】が崩れ落ちる。


 同時。


 QZDZDGDOOOOONN!!!!!!


 大爆発!


 ……天上で競り合っていた『交雑』とリアラが双方の力を激突させたのだ。



「はーっ、はーっ、はーっ……」

「……勝ったな」


 爆煙から弾き出されるリアラ。その場に留まり続けた『交雑マルドゥク』は勝利を宣言した。その姿は無傷。故に、一見そう宣言するに値するように見えるが……


「まだ、だ」


 リアラは諦めない。眼下ではルルヤが、全ての『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】を撃破していた。


「いいや、終わりだ。分かっているだろう? あれら量産型があれを象っている理由が。お前の愛する女は、お前の眼前で貪り食われるのだ!」


 『交雑マルドゥク』は重ねて宣言する。確信を込めて。その確信の理由が、蠢き出す。


 ぐぞっ、ぐぞぞっ、ぐじゅっ、ぶくぶくっ、じゅじゅっ、ぐずずっ……


 ……おぞましい音を立て、ぐちゃぐちゃに粉砕された筈の『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】達が、自己再生を始めていた。



「【真竜シュムシュの地脈】は最早お前達のものではない。この広い混珠こんじゅの戦場に満ちた死者の想念は、『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】も復活させる。お前達が先程から少々予想より抵抗を強めたのも、生者から力を得れば双方の【地脈】争奪戦で人死にが出かねないが、先に死んだ人間の無念を使うのならば問題が無いからだろう? 浅ましくもいじましい抵抗だ。だが、こちらも同じリソースを使える以上、何の意味も無い」


 再度四振りの〈傑証けっしょう〉を構え、『交雑マルドゥク』は事実を認めろ、絶望しろと迫る。


「残念ながら時間切れだ。お前達の仲間内のひそひそ話を、こちらがいつまでも分析できないとでも思っていたのか。今のルルヤは怨念による暴走の分水嶺を既に越えている。勇気の魔法力を最後に振り絞って、限界を越えて体を動かし続けていただけだ。せめて一人でも多く倒そうと……無駄な足掻きだったな」


 【真竜シュムシュの宝珠】で何を話しているかなんて、竜術自体に干渉出来ずとも外部から其方の状況を分析すればお見通しだと『交雑マルドゥク』は宣告した。『文明サイエンス欲能チート』はその名の通りその手の能力に長け、『交雑マルドゥク』も『神定む天命の書板トゥプシマティ』はまさに思考力・観察力を強化する効果を有する〈傑証けっしょう〉である。『予知ネタバレ』や『情報マスコミ』はそちらの内実の状況は悪にしくじったが、俺たちは違うと。


「ああ、そうだよ、ファック野郎。ルルヤさんが、限界を越えた力を振り絞ったと、振り絞ると決めてもうやった後だ、ってのは、さっき聞かされた」


 リアラは『交雑マルドゥク』が認めろと迫る事実を認めざるを得なかった。もう、残された時間は少ない。ルルヤさんはもう、限界を超えてしまっていると。


((すまないが、皆を守る為に仕方が無かった。限界を超えて戦うことを選んでしまった))


 と、《大仕切直》で転移した直後に流れ込んできた【宝珠】を通じて告げられたルルヤのメッセージにあった。


「それでもお前達は、全知全能の神様なんかじゃなかった」「何……?」


 だが、『交雑マルドゥク』が認めろと迫る絶望には、リアラはそう答えた。こちらの手札を、お前は読みきった訳じゃない、と。


「『神定む天命の書板トゥプシマティ』の力は僕も知ってる、原作読んでるからね。竜術の様な妨害の無い状況なら全知に近いが、近いだけだ。凄いコンピューターの様な物で、情報の一部が隠された状態では、それ自体の機能が完全でも使う人間によって効果は限られる。何を知りたいか『書板』に命令するのは使い手だ。筋書きのある物語の中で主人公が使うならどんな後付けも先回りも容易だろうけど……」


 ぴく、と、僅かに『交雑マルドゥク』の頬が引き攣った。


「君は唯の人間だ。僕と同じ地球の唯の少年だ。僕が不完全で血に塗れているように、君もまた不完全だ。考える事は地球の人間が勝っていると考えて、ルルヤさんの考えにも気づけなかった。ルルヤさんは、もう、手を打っていたんだ」


 『予知ネタバレ』や『情報マスコミ』がこちらの内実の状況は悪にしくじったように、お前もしくじった、とリアラは告げた。


「おごっ」「!?」


 不意に『文明マキナ』が呻いた。何事かと『交雑マルドゥク』はそれを見る。そして、そこで繰り広げられているのは。


「おごあがっ!? なっ、なっ、な……!?」


 『文明マキナ』は苦悶し混乱した。ラトゥルハに全て押し付けた筈の苦痛。極度の腹痛か、寄生虫が腹の中で蠢いているか、内臓に強制的に膨らむ風船をねじ込まれて内側から破裂させられそうになっている如き感覚。認識する。『文明巨躯メカシュムシュ】の体、胸部が、内側から爆裂しそうに膨れ上がっている……!


「言った、ろう。攻撃はラトゥルハを切り離す事も狙いだった、と。つまり逆に言えば、それだけが狙いじゃなかったという事だ」


 ZZN……


 ルルヤの【巨躯】が地面に膝を突いた。苦しげな、声。しかしその声は、ルルヤの計画成就を告げていた。


「さっき、他の玩想郷チートピアの構成員を、切り離したロケットブースターに例えたね。一つ言っておく。ロケットは、少なくとも21世紀前半部までのものは、地上からの管制があって初めてちゃんと宇宙まで飛ぶんだ。そうでなきゃたちまち空の塵か海の藻屑だ……つまり、そういう事さ」


 それに反応してリアラが、先程の『交雑マルドゥク』の例えを使って、【宝珠】で秘密裏にルルヤに告げられた彼我の方針の違いを語った。


 ZAPZAPZAP! DOMDOMDOM! ZDOOOONN!


「「「「「「「「「うおおおおおおおおっ!」」」」」」」」」


 そして大量の攻撃魔法の一斉発炸裂の轟音、鬨の声が全方位から轟いた。


 無数の攻撃魔法が、再生しようとしている『竜機兵巨躯量産型メカシュムシュ】の肉塊に着弾した。再生する肉が爆砕され、焼き尽くされ、再生を阻止していく。


 それは〈欲能を狩る者達チートスレイヤーズ〉だった。それと共に戦うことを選んだ諸国の軍勢だった。混珠の人々の軍勢だった。ナアロ王国軍も、それを率いていた生き残りの〈王国派〉も、最早どこにも見当たらなかった。


「僕には君を食い止めるのが精一杯だったけど。これから、悲劇が待っていても。その悲劇を覆さなきゃいけないとしても。それは兎も角、エオレーツ・ナアロ、君に言おう。……君の王国は終わりだ」


 全ての苦難を背負う事で味方全員に逆転を齎した真竜の戦士が宣言する。ナアロ王国が、新天地玩想郷ネオファンタジーチートピア王国派は、崩壊しつつあった。


「まだ僕は、諦めない! ……僕自身の運命も、混珠こんじゅも、ルルヤさんもだ!」


 ルルヤからの、皆を守る為に限界を超えたというメッセージには続きがあった。


((私はリアラを愛し、信じている。きっとリアラが私を助けてくれると、暴走の闇から救い出し、皆と私を救ってくれると信じている。頼む。頑張ってくれ))


 それに込められた思いは嫌と言う程分かった。無責任に放り投げたのでも、縋ったのでもない。目の前の人を自分の命と天秤にかけても見捨てられなかった優しいルルヤは、リアラが絶望しないように目標を与えてくれたのだ。


 それが可能かどうか。まだわからない。だが、やるだけだ、と。リアラは諦めてはいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る