・第六十二話「闇の底の真竜(中編)」
・第六十二話「闇の底の
『
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地下といっても先に述べた『
高度に発展した帝都の地下はそれ以外にも様々に活用されていて、地下倉庫、地下墳墓、秘密の離れ、かつての合戦で掘られた攻城地下壕、滅亡した組織の秘密基地、脱出用地下通路、貸倉庫ネットワークの地下通路等、様々なものが別個にあるいは古いものを吸収する形で酷い場合は互いの存在を知らずに造られた結果接触したりして構築されていて。
〈
「……それでもごめん。見抜けなかった事が、あるから」
「ミレミちゃん!」「いいかミレミ、生存が最優先だ。忘れるんじゃねーぞ! ……切れたか……伝わったか……?」
魔法による小さな照明で辛うじて照らされた薄暗いタイル張りの空間。リアラと
そう、幸い
「……ごめん……僕が、もっと……」
「生きてる以上まだ勝負は続いてる。何も始まっても終わってもいねえ」
気落ちし謝罪するリアラに対し、
生存した仲間達はこの場に全員が居るわけではない。長い通路のそこここや各国大使館の地下施設等に分散して隠れている者もいて。そして、縁のある者全てが逃げ切れたわけではないという冷厳な事実がある。接触し交渉を持っていた諸部族領の族長達や一部の辺境諸国の王侯達は、警告を促す事しか出来なかった。
あくまで使節団として残ったから普通ならば手荒な真似はされない筈だが何しろ相手は
四人の
太子四人については、ギデドスはあの後ルマを乗せた龍馬を呼び戻してそれに跨がって共に離脱、ギデドスは『
それでもルキンは件の
「まだ少し、胸が落ち着くにゃ時間が掛かるだろうから、平行して現状と作戦について練っておくぞ。考えなきゃならんのは次の点だ」
だが尚、
「まず一つ。太子さん達が無事で、こっちが四人とも押さえてるから大義名分で勝負する事は出来る筈だが、
『
「二つ。ミレミ達が頑張ってるとはいえ、諸部族領はもうダメだ。ミレミ達を寧ろ助けなきゃなんねえ」
……指折り数えながら、名無は流石に無表情を保てず、折る指が僅かに震え、下唇を食い縛った。傭兵団は友達であり家族であり、副団長のミレミは様々な友情と愛情が入り交じったパートナーだ。
失う痛みを幾度も知っても、人の心は保っている。飛べるなら飛んでいきたい。誰よりも強い力があるなら、幾万の軍勢を薙ぎ倒してでも助けにいきたい。そういう感情は忘れられないし忘れたくないと名無は思い誓う。
苦しくても、辛くても。それを忘れたら、躊躇い無く切り捨てる怪物になると。
「三つ。その二つからの派生部分もあるが、まず現状認識として、今の俺達はジリ貧だ。『
だが堪えながら名無は三つ目を数え……自分には苦悩を強いる事を前提としながらも、リアラに気遣いながら問うた。
『
それに対し、『
「うん……各地に残した、皆が繋げてくれた連絡網から【地脈】に流れ込んでくる力は、幾らか待てば生きている人の力だから前と同じ位には回復する……尤もそれも、今回の連合帝国の布告、とかで、僕達が見捨てられなければ、だけど」
「……見捨てられや、しねえよ。……俺からの作戦提案としてはこうだな。ここは、エクタシフォンからアヴェンタバーナに退く。こいつは、各地の村長達を束ねてくれたオンジャルムの爺様が、村々の新田から訴えを挙げてくれた事と、海賊と同時に神官、
リアラを慰め、苦悩し続けるリアラに
アヴェンタバーナはエクタシフォンと遠からず近からずの位置で、同時に諸部族領により近い。地図を指でなぞる
「アヴェンタバーナに拠点を写し、諸部族領の支援と帝国に巣食ってる
しかしこの戦況で立てうる作戦は、やはり苦しい要素の多いもので、名無としては苦々しい限りだ。
そして複雑な心中を抱えたまま、リアラはそれを聞く。考える。純粋に戦略的に言えば、太子の身柄を抑えさせなかった事により、敵は偽物の
それに撤退したとはいえ、与えた損害という意味では、
(違う、違う。そんなんじゃないんだ。人の命は、本当はそんな計算じゃ……)
「……僕のせいでとリアラは言ったが。正確に言えば私達のせいの所もあり、リアラのお陰の部分もある、だな。少し気恥ずかしくも有難い事に、私のお陰の部分もあると
考えかけ不意にそれまでとは別種の自己嫌悪を感じて苦悩するリアラに、
「……どうした?」
それでも尚気丈に、苦痛の声一つ漏らさず補佐し励ますルルヤは包帯を巻いていない方の手でリアラの頭を撫でた。
リアラはそんなルルヤの手に、頷こうとして、出来ず、俯いてしまった。それにルルヤは包容力のある穏やかな表情で、片手でその白く豊かな胸に抱き締めようとし。しかしますますリアラを深く俯かせてしまい、困り果てた。
その問題がやはり深刻なのだと理解して。
「大丈夫です、大丈夫……」
「焦るな、リアラちゃん」
そう、堪えようとするリアラを、
「どのみち、ここまでの状況を分析して、これからの作戦を立てなきゃならねーんだ。それは当然な事で、人の命を数字で考える酷い事とか、そういう事じゃない。状況がそうしなきゃならないようにしてるんだ。強いられてるんだ、って奴だ」
今無事を装って急ごうとするな。無理をして負けたら犠牲はもっと増える。そう、自分自身現状分析と作戦について考えながら自分を落ち着かせる為に心中呟いただろう言葉を、ミレミを狂おしく案じる心を制御しながら
「……ここには今、俺等とリアラちゃんとルルヤの姐さんだけだ」
「勇者らしからぬと思った事も話していい。……もやもやしてたら、駄目だぜ」
「その通りだ。水くさいぞ、リアラ」
リアラはそれを悟り……躊躇いがちに、感情を溢し始めた。
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