・第五十七話「この美しくも醜い世界(前編)」
・第五十七話「この美しくも醜い世界(前編)」
「うヴ嗚呼アアアアアアアアアアッ!!!!」
猛烈な爆裂する嵐にリアラは天高く弾き飛ばされ吹き上げられた。これ程の攻撃は『
「っ!? (僕、は)」
リアラは一瞬トびかけた意識を立て直す。立て直した。改めて認識した。
自分は『
響き渡る凄まじい咆哮は、正にゼレイルが変じた取神行『
そしてリアラは見た。狗頭と繋がる黒い全身の体毛を炎のように燃え上がらせ、両目と体に走る緑のラインを霊的な発光にぎらつかせ、全身の筋肉をパンプアップする事でそれらと合わせ一回り巨大になったが如き凄まじい姿となった『
吹き飛ばされ砕けた部分を先程まで使えていた【
「案の定、予想以上の被害が出たようじゃないか」
「否定はしませんよ。ええ」
く、く、と、『
「ですが相手の切り札を消耗させた事も包囲網に追い詰めたのも事実。そして」
『
「狙い通り、取っておいても〈
そして『
「健気なものでしょう? それを秘密にする為だけに殺しを楽しむ風を装い、多くの人間を唯ひょっとしたらいるかもしれない仲間に関する本音を探ろうとする相手への目眩ましとして殺していたのです。なんと人間的で残忍でいじましい健気さでしょう!」
皮肉120%で『
「彼は臆病で保身第一の小市民好青年です。それが彼にとっての枷になっている。唯でさえ仲間を守る為に力の半分を割いているのです。その必要が無くなるだけで力は倍同然。そしてそこにさらに復讐心を上乗せし、復讐者が復讐されるという因果応報と暴力の螺旋を〈
とびきり残虐な宣言をする。躊躇なく、敵も味方の振りをしていた道具も纏めて地獄に落とす。
頬を歪め、口許を吊り上げ、裂けたような笑いを『
「とびきりの番組、とびきりの記事です! 綺麗な花火ですよ! この
地球での己が名を宣言する程この悪辣を愉悦し、『
「KIIIEEEEEEAAAAAAA!!」
夜明けに向かうが未だに夜明けに遠い夜空、『
QGOOOOO!
叫びと共に唐突に町中で砂嵐が巻き起こった。突然その場で砂嵐が発生する確率等本来零に等しい。だが完全に零で無いのなら起こしうる、それが『
「KIIIII!」「SYCKOOO!」「GAAAA!」
更にその叫びに呼応して、地中から、空中から、一体何処からやってきたのか、一体いつから移動してきていたのか、因果律を無視するように無数の亜獣魔獣が現れ、偶然にもという名目でその行動を操られ全頭が飢えて怒り狂い、全頭が攻撃対象をリアラに偶然選んで襲いかかる! さながら『
「【PKSYLLLLLL】!!」
リアラも【
「ふんっ!!」
そこに『
「死ね!堕ちろ雷! 唐突に! 偶然に! 運の悪い奴に!」
更に追撃。『
「死ね!堕ちろ隕石! 脈絡もなく! 偶然に! 運の悪い奴だけに! 運悪く死んだ苦しみ痛みと絶望と死を!! 思い知らせろぉぉぉっ!!!」
絶対に発生し得ない事で無ければ全てを絞り尽くす勢いで暴れ狂う今の『
「くっ……!」
雷による攻撃には、リアラは咄嗟に対処していた。陽の【息吹】で大気を焼きイオンを発生させ、【
「ぁあっ…………!!??」
ZDOOOOOOONNNN!!!!
その攻撃に込められた苛烈な怒りと憎しみと恨みに、苦しむ心の声を零す暇すら無し。帝都の夜空を揺るがして、ツングースカめいた大爆発の花が散る!
「リアラ……! おのれぇっ!!」
「ひひっ! 私の描いた筋書きで踊るしかない分際で、生意気な邪魔を! 貴女のお陰で『
「貴ッ様ァアアアアアアアッ!!させるか! そんな事までっ!!」
『
実際、罠は閉じた、全員逃がさないと嘲笑う『
しかし、その阻止はできたが攻撃は『
「貴様の首も! よく喋る舌も! 奴隷も! 貴様の手には残さんっ! 私達を見下すのもそこまでだ! 必ず思い知らせてやる!」
VOZ! VON! VOZ! ZON!
だがそれならばとルルヤは【息吹】の連打を見舞い、『
「O……O……!?」
「辿り着けますかァ? ここまで! それには随分私が遠いようですねぇ!」
それでも尚攻撃が届かぬ。『
「OOOO! GAKIGAAAAAA!」
だが本来その戦闘力を強化する『自分の方が社会的に上位である』という自己認識がぶれたせいか、ルルヤは身を翻し雷は無人の残骸と化した帝宮の尖塔残骸に避雷針めいてぶち当たるばかり。
「温いっ! そっちこそ、その程度の力で私の命に届くものか! 邪魔だっ!」
空中戦となった事で自由度は増した、リアラの元に駆けつけたい。『
それに対して『
「「足りない戦力は、駆り立てればいいのですよ」」
邪悪な笑みを『
「借りるのと違って勝手に動いてくれるなら、許可も要りませんでしょう?」
それは『
自分が死んだ時を条件に発動する魔法で送付される《作音》《作画》による、仇を取ってほしいというメッセージ。この為に『
「女性同士の麗しい友情。仇討の為に派閥を越えて義勇軍が参戦する。麗しい話じゃありませんか。ああ、『
洗脳して操るのではなく、完全に口先三寸で言いくるめたのだ。恐らく、嘘もついてはおるまい。単に事実の一部を伝え、一部を省いただけだろう。
「姑息な。だが、そういう地球流の汚濁こそ、あるいは
物憂げさと頭痛を堪えるような苛立たしさを織り混ぜた口調と表情で『
そして、あらぶるはがねのりゅうがたたかいにくわわった。
VAGBOOOOOOOMMNN!!!!
「【
猛烈な火炎が周囲を嘗め尽くした。ラトゥルハの【
「よう!
その背中から展開するのは、燕や鴎の様な、細く固く鋭い翼を象った【
「俺は涙を流さない、兵器だから、機械だから! だけど厚い友情は分かる……なんて柄じゃないが。『
「その『
暗にいっそ『
「かもな。巻き添えにして殺さない義理も理由もない。けどどっちにしろ
「『
(戦馬鹿の愚物はこれだから! まあいい、もし共倒れず勝ち残ったら改めて対処してあげます! 貴方も手札の一つでしかないのですから!)
あっけらかんと実際殺したいと同じ組織の一員に言われ、敵からは汚物めいて扱われ。内心苛立ちながらも、それでも浅ましく後方に下がれた事で再び陰謀を動かし始める『
(
そしてラトゥルハは、一瞬奇妙な感覚を覚えた。戦の楽しみでパンパンの筈の心中に、何か隙間が空いた感覚。与えられた敵と、作られた戦場の中で、それでも、何かは生まれ育っていたが。今はまだ微かに首をかしげるだけに留まり、複雑な表情にもう一色加えて己を見るルルヤと対峙し、交戦を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます