・第五十三話「糾弾対峙の転生者(5)」
・第五十三話「糾弾対峙の
「…………」
連合帝国帝宮の外、双都が一エクタシフォンの尖塔上にて、『
未だ外部からはその内で血で血を洗う連合帝国の未来を決する戦闘が行われているとは到底見えず、都の民は誰も知りはせぬ。だがラトゥルハには分かる。リアラとルルヤに対し【
己もまた参画している、〈帝国派〉による〈
「三秒貸せ!」「分かりました!」
ZQZQZQZQZQZQZQNN!
「【
閃光と、攻防と、言葉が交錯した。リアラ達を『
それを浮遊盾として稼働するリアラの【
【
三秒が経過した。
「三秒分、利子付けて返すぜっ!」
粒子砲の発射音等の『
「出来れば!」「分かってるぜ!」
リアラの返答は必死切実かつ短く、その意図をだがギデドスは即座察知。
斬! 斬!
「……甘い事。けど、やるわね」
ギデドスの『
『
「あれらとは違うところを、見せなさい『
「はっ、言われるまでもねえや!」
しかし所詮は幾つもある武器の一つに過ぎないと、僅かに不快の表情を浮かべるも『
他の『
同時リアラは、コピシュ二刀流で襲い掛かる人身狗頭の
矛の刃、石突、手甲、脚甲、肩鎧で、くるくると次々支点を変えるコンパスめいた動きで次々襲い掛かる曲刀を防ぐリアラ。繰り出される武器を互いに払いあい、左右に武器が流れて体が接近する。
「悪いな! 何とか……」
『
「死んでくれやぁっ!」
それを思い出させる事をフェイントに引き戻される刃! 弧を描くコピシュが後ろから首を狙う。あるいは狙いが外れるか斬撃効果が不十分でも切っ先でビキニアーマーの紐を引っ掛ける意図もあったか。何にせよ既に約束は破棄されたのだ。同盟・協力は裏切る為にこそあるという如何にも
「上等だけど冗談じゃないっ!」「ちぇっ! 清純派ぶってる癖に!」
その意図をリアラは看破! 回避! 避ける動きを利用して掬い上げるように突き出される矛! 舌打ちしながらそれを払う『
BIM! 「っ!」
今度はリアラが舌打ちする番だった。矛を握る手指の添え肩を、密かにリアラは変えていた。人差し指と中指で龍の顎を象り、拳銃じみた手つきから【
「これでも食らいなっ!」
その落下するシャンデリアは、丁度『
DBAM!
『
「そのくらいっ……」
魔法付与攻撃とはいえ、今やリアラの【
「えぇいっ!!」
「KIEEEEEEEEEE!」
ZZDDAAAANN!
……直後リアラは防御を放棄し両手に握った矛を【真竜の骨幹】で変形させながら自分の体をがら空きにして横に突きだし、そして吹っ飛ばされた。同時に響くは、爆発じみた、それが斬撃とは信じられぬ程の風切音!
「TYESTO! やりおる!」
「くそっ!!」
その斬撃は、リアラが庇わなければ『
しかし欲能による効果をそれによって無効化しても尚自身の
吹き飛ばされたリアラを剣を持ったままの片手で辛うじて器用に支え受け止めるギデドスは屈辱に唸るが、しかしリアラがそうした自分達に生き残ってほしいという理由と戦術的妥当性は理解できる為一唸りする以外出来る事も無く、代わりにせめてリアラを支え押し返し体勢を建て直させると同時に襲いかかってきた『
「くっ! ギデドスさん、僕と背中合わせに! 『
立ち上がったリアラは立ちはだかるように構えた。【骨幹】で作った黒鉄のビキニアーマーに二、三ヶ所の凹み。吹き飛ばされる最中の一瞬に狡猾に放たれた『
「くそっ……!」
強引に背中合わせにさせられたギデドスは叫ばずにはおれなかった。背負ったルマをサンドイッチめいて庇う体勢で、背後から襲うであろう『
「さあ、皆さんやりますよ! 『貴方は人を謀る
「『
「《破砕》! 魔法力収束! 成功! 魔法力追加充填! 成功! 収束! 成功! 充填! 成功! 収束! 成功! 充填! 成功! 収束! 成功! 充填! 成功! 収束! 成功! 『
「『秘剣・
一斉攻撃を『
呼応して『
更に揃ってバックステップで距離を取った『
『
リアラは自らの前に展開した【
(本当、悪辣だよ……!)
リアラも好きであるいはギデドスの誇りを傷つけたくてやっている訳ではない。やらずにはおれない、避けられないのだ。
頑丈な帝宮内という戦場は周囲に巻き添えになりうる人間を多数含んでいるというだけではなくその狭さ自体もリアラとルルヤに不利な状況の一つだ。【
機動力があれば敵を引きずり回し翻弄する事が出来る。守るべき相手から敵を遠ざける事も、守るべき相手を逃がす事も。それが出来ない。破壊力をもってすれば壁をぶち破って飛ぶ事も不可能ではないが、それは当然力を消耗するし人を抱えて飛ぶのも難しく、場合によっては非戦闘員を巻き込みかねない。突入時に可能だったのはどうしても急がねばならぬ程緊急かつ竜術でルート上の非との不在を確認できたのとそもそも人の居ないルートの情報を得る事が出来るアレリドの知恵あってこそで。
つまりこの状況では、機動力を発揮できるのは廊下の広さまでが殆ど限界だ。そして同時に何より仲間を守る事を放置出来る筈も無し。必然その二つが組み合わされば、狭い廊下故に守るべき相手を抱えて飛んで逃げる事も出来ず庇うしかなくなる。消耗戦を強いられているんだ……!
それは、ルルヤも同じだ。
「【
同時ルルヤと戦う相手も、同じ戦術を取っていた。
『
それら全て、避けようもなく狭い空間を埋めつくし壁を破って逃げれば仲間を見捨てる事になる〈布陣・王手飛車取〉! 『
「「……!!!!!!」」
リアラも、ルルヤも、爆裂に飲み込まれ。
轟音と閃光と爆裂が、遂に帝宮を突き破って外部まで達し、エクタシフォンの夜を揺るがすのをラトゥルハは見た。
同時。ナアロ王国首都コロンビヤード・ワン。〈
……帝宮で繰り広げられている戦闘を嘲笑うような、
「何の用だ? 『
「いえいえ。そうではありません」
『
「……もっと大事な用件ですとも。個人的な交渉です。というよりは、勝利宣言ですね。〈
それに対抗して『
「ふん。何がほしい。詳細を言ってみろ」
つっけんどんに、しかし発言を促す『
「私の真の名を知る以上、既にご存じでしょうに。……私の
〈帝国派〉は己が完全掌握していると。一般
「それに加えて、直接操れませんが新参三人に比べれば『
そしてそれはある意味他の
「故に、それら戦力を背景に交渉します。貴方の目的、TR計画。地球への帰還。あれに〈
つまり私には力があり、即ち私の意見は通されるべきであると。
『
「……ここまでの〈帝国派〉の動きはお前の黙認下にあったという事か? 派閥抗争において組織内の地位を確固たるものにする為に」
「いかにも」
「……成る程。利得でないなら、派閥の力を得た先に何を求める。新聞屋は売り上げを求め、TV屋は視聴率を、即ちその先にある広告収入を求めるものだろう」
『
その後、『
「私が欲しいものはたった一つですよ」
ピンと指を立てる動作と共に、『
「正義与奪の権利。それだけです」
「正義与奪?」
生殺与奪ではなく正義与奪という造語。その意味を『
「いいだろう。必要ならば混珠はくれてやる。但し、地球は渡さない。そして、必要ならば、だ」
「ええ。そりゃまあ。ちゃんと成果を提出しないと対価は請求できませんとも。取引成立ですね」
それを『
「尤も。取引材料を実際に整える事が、可能であればの話だが」
付け加えるように『
「ま、多少の損耗はあるかもしれませんが、結果は代わりませんよ」
「そう願おうか。それと」
「何です?」
「何。〈首領派〉については、どうなのかと思ってな」
「……ああ、言うのを忘れてましたが。正義与奪、意味がお分かりであれば、伝わっているでしょう? 私が正義を、貴方が地球を貰うのであれば……」
僅かの間の沈黙。そして『
「……私は首領の動静・意向を報道してきましたが、取材する側とされる側は別に同盟者という訳ではありません。『
それは、その発言を首領の目からごまかす為、か。
「わかった。ならば、もういい」
「はい。それではこれにて。次は
テレビのスイッチを切った様に消える『
「成程、首領、『
見えざる〈首領派〉と駒を差し合い打ち合うように。それだけではなく。
「そして、
〈首領派〉に加え、真竜達の足掻きも読もうとするように。
「はっ、はっ、はっ……こっち、へ……!」「「はっ!!」」
同時。後方に離脱した第四
「ぜはっ、急が、ないと……やら、ないと……」
(古、愛と怒で竜は世界を変えり。統合と平和より古き竜の本質は表裏一体不可分の愛と怒、愛許さぬ世界への怒り即ち復讐、悪への応報を示す始源の法なり)
読み上げる。僅かに触れ秘密と悟ったが、未だ全て把握した訳ではない内容を。
(悪とは何か。それは意識が織り成せし旧世界で精霊が相争った理由、そしてそれより更に古い拡散と分断と拒絶に抗った、この水の世界が生まれた根本の理なり。竜は旧世界を繋ぎ世界を生む愛の物語である。だが同時に、その力は旧世界の象徴。怒りと拒絶の力なり)
それは歴史や真竜の口伝で語られる事柄より深みを語り始めた。
(故に竜は恐るべき〈真実〉と〈呪い〉を宿せり。即ち……)
ルキンは読み進め、呻いた。震え慄いた。それは、理解する事が出来ないという恐怖だった。なのに本能的に分かった。これが、
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