・第四十話「大悪夢! 恐怖の娘、強敵『反逆』の挑戦! (中編2)」
・第四十話「大悪夢! 恐怖の娘、強敵『
何れも機械で金属の、膝と踵が鋭い棘の脚甲、爪の尖った手甲。
それと同材質の肩鎧が竜の頭蓋骨を一直線に尖らせた様なビキニアーマー以外の部分を透けるような暗青色のストッキングじみたボディスーツで覆った細身の肢体。
両側頭部から水平に生え垂直に上に曲がった角を付けたヘッドギアじみた鉢金と、翼の様な耳と、後ろ髪を纏める髪飾りに縁取られた、踝まで届く後ろ髪一房を除けばギザギザしたショートヘアの紫髪。
細い首に嵌ったチョーカーというにはごつく首輪と言うには
猫科の猛獣と妖精を足した様な愛らしい容姿と狂暴で獰猛な笑みが露にする蛇の様に縦に裂けた瞳孔と尖った牙。
「新しい
理解しがたい事態に眉を潜め眉間に皺が寄る程目付きを鋭くするルルヤだったが、困惑を混乱にはしない。欠片も隙も油断も無く、既に【
「単純な事さ。オレは
自然体に、隙だらけとすら言える立ち姿で、『
「まさか。けど、それは……それは転生者って、言っていい……のか?」
「その反応も聞き飽きたな。けどまあ、説明されるまで察せなかった
自分の【
その凄まじい違和感、有り得なさからくる推測を、ラトゥルハは中性的で荒々しい口調で肯定した。
「本来
「な……な……」
「なんて、無茶苦茶な……!」
それは確かに『
ルルヤは己とリアラの血を混ぜ合わせたものから自分達の複製が作られたという地球由来の技術にも驚いたが、それとは別にそしてそれ以上に、そのあまりの禍々しくおぞましい魂への冒涜に流石に唖然とした。生命倫理が問われるような技術が開発されている地球から転生してきた
「ま、どうせ転生者なんて、前世が妄想でない保証もなければ、今が末期の幻想でない保証もなし。そういう訳で一応遺伝子的に二人共血の繋がりはある、つまり遺伝子的には親子関係だと言えるが、気にするな。オレは気にしない。オレからすりゃオレの自我を構築する材料は
再びラトゥルハは先ほど感じた通り
「お前ら
直後ラトゥルハは叫びと共に両肘を曲げ、両手指を真正面に突き出した!
「!!」
その瞬間リアラの思考がスパークした。目の前の
(ルルヤさん相手の目と口と指先と膝と爪先に注意して! あと胸、じゃない肩!)
(なっ!? それじゃ殆ど全身……!?)
閃きはニューロンの速度で【
「食らえっ!!」
直後、正に全身に近いそれらの部位から一斉に、火山の大爆発か燃える嵐の如くラトゥルハの攻撃が火を吹いた!
爪先から迸るのは地面の上を突っ走る衝撃波・地割れ・結晶散弾・溶岩! 高位土属性霊術! 機械脚甲の膝に生えた棘からは電撃が走る! 強力な雷の霊術あるいは取神法術! 恐らくそのどちらも、機械で出来た膝から下に霊術魔法武器を組み込み、使用前提条件を『
正面に向けられた両手、その手首が回転するや鋭く尖った指先が全て開きそこから放たれる攻撃魔法の連射! 連射! 連射! 籠手から排出されるのは生身のそれより一回り太い機械指の内側を通る程に小型化された弾丸薬莢サイズの極薄フィルム巻物型攻撃魔法発動媒体の巻物芯! さながら魔法のガトリングガンだ!
更にラトゥルハの両目と、竜の頭蓋骨を象った肩鎧の眼窩に相当する部位が輝く……【
そしてその口からは、殆ど爆発と言っていいレベルの強烈な炎!
……平穏な町の路地裏で炸裂して良いレベルを遥かに越えた破壊力が炸裂する!
KYU!DDOOOOOOOOOOONNNN……!!!!!!!!!
「きゃあっ!?」「うわああああっ!?」「何だ何だ!?」「ひ、火消衆総員起こし!」「非番の神官を呼べ、今のは何だ!?」
二、三区画は軽く消し飛ばしそうなレベルの大爆発。忽ち街に溢れる悲鳴と絶叫。
「ば、馬鹿野郎!?」
その有り様に、不意に物陰から飛び出す声。何時の間にか戻ってきていた〈超人党〉の面々の一人、『
「今夜は暗殺任務と試運転だ、暗闘の範囲に留めろって言われてたろうが!? こんな大爆発……まだ、夜明けまでに仕留めきれなかったら暗闘が衆目に晒される前に退けって言われてるだろ!?」
だがその出現も叫びもガン無視し、ラトゥルハは爆煙の向こうを目を見開いて見つめていた。
「【……GEOAAAAAFAAAAAAANNNN!!】」
「【……PKSYURRRRRRRRRRRRRRR!!】」
爆煙が晴れる。その向こうにあるのは吹き飛んだ区画の焼け野原ではない! そこから響き渡るは二人の【
「【
勿論ルルヤだ。その掲げた掌の先、ラトゥルハとの間に立ちはだかるのは、揺らめく月影に月光の金環縁を付けた様な防御障壁。これまでの戦いにおける経験に学び、休息の中で編み出したリアラの【
飛び道具を威圧する【
(やっぱり、女の子の外見で【咆哮】対策に実体弾じゃなく魔法攻撃になってるけど、武装は殆ど昔の特撮映画のメカ怪獣! ネタ元のメカ怪獣なら胴体部分にあった武装は肩に回してそこは
過去の十弄卿の中でも『
「クク、やるな! ああ! それでこそだ! 【KSYAGOWAAAANN!!】」
ともあれその圧倒的な火力を防いだ。それをラトゥルハは寧ろ大いに喜び、そして吼えた。リアラともルルヤとも違う、高いが獰猛な獣の如き【
「「「「「「「「「!!!!!!!!!!??????????」」」」」」」」」
……〈超人党〉の面々に返答もせぬまま、彼らが危惧した爆音に反応した帝都の人々の叫びと騒ぎを、あたかも酸素を絶った火の如く一瞬で沈静化させた。
「……これで暫く邪魔は入らない。楽しい殺し合いが出来そうだ」
咆哮を響かせ終えた後、晴れ晴れとした表情でラトゥルハは告げる。対してルルヤとリアラは、とてもそんな戦闘に集中した表情は出来ぬ。
「邪魔は入らないだと? 動けぬよう恐怖で縛っただけだろうが。これでは戦闘範囲が広がった時守護を怠ればどっちみち巻き込む! 貴様、そんなに私達に気を使わせないと怖いか?」
「それに今の破壊力。魔法武器を両手両足に埋め込んだり、【眼光】に攻撃力があるだけじゃ説明がつかない。なにより、その魔法力の流れ……!」
ルルヤが指摘する。単に戦場から追い返しただけの絶妙に嫌らしい【咆哮】。人質をとって戦うも同然、全身に武器を仕込み真竜の力を持ちながら臆病なものだな、という挑発を込めて。実際少しでも相手のペースを乱せばしめたものというよりは、少しでも乱せないとやばい。何故ならリアラの危惧が当たっているならば……こいつは最強かどうかは兎も角最悪の敵だ。
「オレにとっての邪魔は入らないが、オレが邪魔をしない訳じゃないからな。勝負とか兵法軍略というのはそういうものだろ。にしても、流石に勘が良いな、お母様」
ラトゥルハは笑う。傲慢に、平然と、乱れる事なくルルヤの挑発を受け流して、そしてリアラの危惧を肯定する、が……
「え、ちょっ!? お母様僕の事なの!?」
「まて、父親枠は私か!?」
「リアアラの方が背が小さい。リアラの方が体が柔らかい。リアラの方が胸がでかい。ルルヤの方が顔立ちが凛々しい。ルルヤの方が力が強い。何か間違ってるか?」
少しばかり別の意味で場の空気が乱れた。転生前男だったにも関わらず母親扱いされたリアラが驚き、生粋の女なのに父親扱いされたルルヤが慌て、そしてラトゥルハが、え、何かおかしいか? とでもいうように、首に嵌まった金具が少し邪魔そうに小首を傾げた。
「「それは……」」
「ま、それは兎も角、だ」
困り顔で一瞬横目を合わせるリアラとルルヤに、首をこきっと鳴らして改めて正面に顔を向けてラトゥルハは本題に戻った。
「いい勘してる。当たりだ。オレは【
ひひひ、と、先程姿を現した『
「この上お前らまで【
「「…………!! !!」」
それ即ち【地脈】封じ! リアラとルルヤが
「これさえあれば」「最早勝ったも同然っ!」「後は誰が首を拾うかの勝負!」「首は二つ……」「どっちかは必ず貰うぜっ!」「お偉方が出てくる前になーっ!」
血の臭いを嗅いだ肉食獣のように、周囲を取り囲む『
「使わないなら使わないで、死ぬし、巻き添えで大勢死ぬな。せいぜい悩め。オレは好きに暴れるだけだ……!」
GYRRRRR……!
そんな中、周囲の様子を超然と無視して、嗜虐的な笑みを含んだ唸り声の様な音を立て再びラトゥルハの手首が旋回。
「折角オレはその為に生まれてきたんだ! 楽しませろ!」
そして再びその両腕が火を吹いた!
その光景を、遥か彼方から
『
一方〈帝国派〉の面々は、『
『
そして『
「ああそうだ、全て気にする事は無い。『大人として判断しろ』。ここでこれ以上の混乱が起これば、〈戦争戦災対策国際会議〉はどうなる? 揉み消せ、いいな」
ZIZI、ZIZIZIZI……!
『
「そうだ。筆頭大臣閣下のご許可も得ている。『これは正式な命令だ』。手向かう者は排除せよ」
全身鎧を纏う騎士姿の『
何れもそれは各々の
((さあ、見せてもらおうか))
それぞれ秘めた力を使う機会を、使う相手を、虎視眈々と見定め続けていた。
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