・第三十九話「大悪夢! 恐怖の娘、強敵『反逆』の挑戦! (中編)」
・第三十九話「大悪夢! 恐怖の娘、強敵『
〈戦争戦災対策国際会議〉発足の為各国代表団が集合する夜の訪れ。昼の内に巻き起こった『
本来であるならば夜にでも開かれていた会合はキャンセルされ、各国使節団は、これが偶発の事故でありそれぞれの国家の意図による敵対的行動ではない事について、互いに人を派遣しての意見交換に終始する事になった。
また連合帝国においても、必然警備体制に関して政治的な混乱が発生した。
その夜を翔る者有り。
即ち蒼銀の髪を靡かせ凛々しい赤瞳煌めかせ、しなやかに引き締まった白い肢体に金色のビキニアーマーを纏う〈最後の
二人の
その夜に備える者達あり。
砂海の代表の座に収まったマルマルの街の首長アドブバ・ラド・デバルド、その護衛として同行しているルアエザら舞闘歌娼劇団。
等々。即ち、反
ちなみにこの反
リアラとルルヤの二人から始まった事を忘れない為。そして、国家や組織の同盟に個人も加わる、のではなくあくまで対等の同盟である事を示す為。
旗は無い。強いて言えば団員に広く配られた竜術護符に刻まれた十六画の爪痕で描かれた牙剥く竜の顔である
そしてあくまで同盟であった。しかし、無理に組織である事を否定する訳でも無かった。組織による統一された上下関係である事を強要する必要はなかったが、大きな繋がりがある事を否定し個人である事に拘りすぎ依る辺無き人々への支えを絶やす事も理念の共有をしない事も、やはり余り良い事ではないと考えたからだ。
ともあれその面々が動いたのは、まず迎撃であった。事が起こる可能性を予見し、皆備えていた。
中でもリアラはエクタシフォンの空高く【
とはいえ水騎以外の飛行乗騎を搭載した類の諸島海海軍・海賊が用いる港艦や、法獣や強力な魔法使いや魔法装備を有する英雄が所属する軍隊、潤沢な魔獣兵力を有する魔王軍等は古くから航空戦力を偵察等に用いており、
実際それ故にエクタシフォンの城壁搭にも対空弩砲や対空魔方陣等が設えられ、隠密魔法を使うのはその目を誤魔化す為でもあった程だ。
生半な隠密魔法では探知されていただろうが、しかしここまでの戦いでリアラの魔法は鍛え上げられており、問題なく警戒を展開出来た。むしろ、航空戦術が必ずしも地球の軍事知識に限られる訳ではないという事からリアラの精神的な地球への嫌悪感も幸い和らいで、警戒がそういった意味で心の助けとなった程だ。更に空を飛ぶだけではなく、事前に派遣していた《
それは
(地下下水網、戦闘レベル魔術反応複数。
この段階で
(皆さん、識別には用心を。まず第一に接触してくるのは魔族転生者とその手下共ですが……)
(分かってる。配置図は受け取った。ミスはしないし……リアラちゃんの知識の出番だな、こりゃ)
通信用魔法で返答が帰ってくる。
それに加えて
この分ならば、まず敵第一波の襲撃は大丈夫、と、リアラは安堵した。
(……追加反応あり。エクタシフォンの外から
BYOU! (こちらも交戦に入ります!)
発言途中でリアラが妖精の様な羽を大きく閃かせた。直後その頭のあった場所を猛烈な速度の矢が通り過ぎる……!戦闘は新たな局面に入った!
かわした直後のリアラの至近距離で、威力は極めて高いが驚く程炸裂音と視認性の低い《怨弾》の魔術が炸裂した。純粋な怨念による純粋な精神衝撃を与える破壊力ではなく制圧力に全振りした高位魔術・隠秘術。味方は既に配置についたと直後にリアラは通信でそう宣言した後羽を畳み急降下。転移で出現した
迎撃側はある程度の察知はあれど完全に知悉している訳ではない今夜の襲撃での全体的な絵図としては、この時〈帝国派〉は先に描写した様に〈帝国派〉が魔王を擁立する余地の無くなった結果派閥内における戦力的・政治的な値打ちと地位が低下した魔族転生者を尖兵として出撃させており、その他の
そして〈王国派〉は派閥内党派である〈超人党〉を多数繰り出していた。
その目的はこの場に集った反
しかしこれが狙いの全てではない事は明白だ。リアラとルルヤが警戒している事は先方も承知だろう。二人が
HYOOOOO……!
敵の第二矢、鏑矢の鳴る中、無音のまま大きく広げた夜気を切り裂くのが似合う蝙蝠に近い【
迎撃網を構築する仲間達と、敵の意図を見抜くべく抑止に飛翔する者、そして迫り来る敵、その夜の戦いはこうして始まった。
威嚇の叫びも欲望本意の略奪も無い、生物というよりはTRPG等のゲームにおいて悪意ある
「何!? バカな!?」
それが狙われうる対象を護衛すべく周囲に展開していた自由守護騎士団や〈無謀なる逸れ者団〉に的確に捕捉殲滅されていく。
〈七大罪〉ではないが『
世界を歪める力に傲った
これまでも折に触れて語ってきたが、ソティアやハウラは辺境の民を助ける冒険者として、時に農学の研究で可食物を増やして山村民を富ませ、時に生物学の知識で亜獣を山に追い返せるように、魔物魔族の襲撃を防ぐ為に戦うだけの対処ではなく周辺環境の分析からの対策を考える研究をしてきた。
それは古くから〈一に
そんなソティアとハウラの研究のなかでは都市部で繁殖する下級魔族についての研究もあった。塵芥処理施設、下水道、郊外の廃屋、港湾。潜みうる場所に対してのこれまでもある程度民間で知られ当然共有されていた対策をより理知的に研究したもの。それをリアラは受け継いで、そしてそれに追加の要素を加えた。即ち、
そしてその助言を元に動くのは、辺境において国境線を跨ぐ犯罪や魔物と戦い続けてきた経験豊かな自由守護騎士団と、悪意ある戦術の裏をかく事に特化して自らを復讐心で律し鍛え続けてきた〈無謀なる逸れ者団〉なのだ。
未知という事はそれだけで奇襲効果を持つ。〈魔王が存在しないにも関わらず悪意に統率され個々の生命を無視して動く
だけれども、通常の
(種さえ割れてしまえば外道の手品など何ほどの事も無いわ!)
下馬市街戦なれど果敢に騎士を率い、決然無言無音にて敵を屠るユカハ。
「く、クソッ、畜生……服装や文化は兎も角、面は甘っちょろい和製ラノベファンタジー風の見た目の癖に生意気な……!」
『
(こっから先は)
追撃を
敵が地下を進んでいるとリアラが認識した時から既に都市部における
かの有名な〈
(頼んだぜ)
(了解)
名無の通信魔法にミレミが答えた。その手にはハリハルラから預かった彼女の短杖。従えるのは、鍵開け等の技に長けた用兵団員と、公的期間と接触した時の為の自由守護騎士団の騎士。
そしてハリハルラから借り受けた魔法で、下水道に中の生命体を溺死させるのに十分な大量の海水が流し込まれた。
他にも敵手勢は様々に繰り出され、また
その間、リアラとルルヤは〈王国派超人党〉とやや非積極的な交戦を行っていた。
「はっ!」
超低空非行と屋根上の疾走、屋根から屋根、塔から塔、銅像から石像へと跳躍を繰り返しながら、ルルヤは【
しかしそれぞれ『
(秘密裏の行動故か?否、それもあるがそれだけではない。それにしては何発か大っぴらに鏑矢を使っている。そしてある程度しか隠密に配慮していないにしては都の警備の動きが鈍い。狙いは……)
考えながらも、ルルヤは空中で通常の翼では不可能な鋭角に背後に向かって進行方向を変えるギザギザの軌道をとった。
「せぇえいっ!」「ちっ!」
幾度かの弓射の後、源義経の八艘跳びを思わせる大跳躍で太刀振りかざしリアラに襲いかかった『
棍棒じみた頑丈な手斧を武器としその様々なものを打ち切る欲能で重力と慣性の法則を遮断する『虚無』と
「やるなあ! お前! 見抜いたなあ、俺の
「チートで! 日本刀だろ!前殺した奴は別の地からだったけど、警戒はするさ!」
その一瞬の間、撃ちかかった『
その力で切り捨てる心算が直前でリアラは【
「欲の形としちゃ、ありがちだからね! 尤も、侍というには凶暴だな!」
「ははっ! 今更お上品な武士道などは流行るかよ! 面目の為に殺すを防ぐ為に貼り付けた礼儀作法等もう不要! 俺達は誰かを殺したい程むかついて生きてきた! 何でも奪いたい程の貧乏人よ! そうよ、俺らは蛮族よ!何が悪い、俺はその蛮を誇る! 武士道は怒って殺して奪う事こそが現実よ!」
「……それでも僕は意地を張る! 蛮にも品位の上下はある、お前は蛮でも何でもない、蛮を名乗る者に謝れ、お前は唯欲望に忠実な外道だ! それが現実の武者であれ……それとは別に人が理想の武士道を掲げた以上、人は本質的にそれは嫌だと思っているんだと僕は信じて戦う!」
「吼えよる! 相容れぬし腹は立つが、成る程噂どおり天晴れ頑固、良い敵よ!」
ベタな欲望だとぶちかまし、理解は出来るが浅ましい・醜い、即ち格好悪いと言葉で殴りながら同時に蹴りをかますリアラの足に『
「悪いが、俺達の戦いはこれからだ!」
直後、『
「多分、次が連中の狙い、ですね」
「恐らく、な。いっそ、すっぽかして帰るか?」
息を弾ませながら勿論相手の真の狙いについて考え続けていたリアラが、ここで的の本命が仕掛けてくる事を察知し。ルルヤが要人を暗殺から守る関係上そうもいくまいがと知りながらも軽く笑ってみせて。
「うぼあああーっ……うぼあああーっ……うぼあああーっ……」
鳴った、戦いのゴングが。それは都の建物の壁に格闘ゲームのKOシーンの過剰演出のように響き渡り木霊する、帰るわけにもいかない絶叫。暗殺阻止対象の一人、連合帝国将軍ダビンバ・ロス・ドバスの叫びで。
そして
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