・第三十話「僕等は一つじゃない(中編)」
・第三十話「
波風が激しく揺らぎ、俄に嵐じみてきた諸島海の中心で、ルルヤとリアラの二人は『
嵐の中心はルルヤだ。【
それを上回る攻撃力を発揮するには、【地脈】と【
「目突き鼓膜破りに口に剣突っ込むたぁ、中々容赦がねえじゃねえか。『
手にしていた棒を弾き飛ばされたが、毛髪を材料としたものであるが故に再構築は余裕であるにも関わらず、べろりと舌をだして口腔の傷の回復を強調した後『
「【骨幹】よ【息吹】よ、
切っ先を噛み砕かれた鉄剣を【
爆!!!
空気が超音速の衝撃波で爆裂する中、ルルヤは【
したはずだった。
間違いなくしたのだ。
ましてルルヤの重力の【息吹】と【
であるのに。
「がっ……! (これ、はっ……?)」
ルルヤが次の瞬間に知覚したのは、決まった筈の切り払いが刃を当てた相手の腕に押し負けて、自分の腕がちぎれそうな衝撃で弾き飛ばされる衝撃だった。
『
そして。
(
直後ルルヤが対面したのは、視野全域を埋め尽くす程の拳の弾幕だ。さながら腕だけを分身させているか拳型の弾丸を放つ
「【
BAKIBAKIBAKIBAKIIIINNN!!
直後枚散る光の量が一挙に十倍以上に増大した。【
だがそれでも尚、このタイミングが限度であったし……張り巡らすのではなくルルヤと『
「っ……【
拳撃の気の篭った事により純粋に物理的な力を強力に防御する【鱗棘】を通しても尚ダメージを与える力を得た衝撃波だけで片方の肩を肩鎧ごと砕かれ、苦痛に歯を食い縛り片方の翼が弱体化して錐揉み飛行になりながら、咄嗟にルルヤを横から突き飛ばすように拳嵐の軌道から外し……不甲斐なさを狂わんばかりに噛み締めながらそのまま空中で距離を取る……言葉を飾るまい、一旦逃げる様な飛び方をしながら、ルルヤにも同調を提案し、【
「くっ……【
屈辱を感じながらもリアラの体に負担をかけまいという思いが即座に優先し、ルルヤもばさりと翼を開いてリアラの肩と翼が【血脈】と【骨幹】の再使用で回復するのを支えながら、ただ一撃で骨と手甲に皹が入った片腕を同じく【血脈】で癒しながら、黒い重力の【息吹】を反対の腕で断続的に放射、空に光の花の如き軌道を描くリアラの【息吹】の合間を貫くように【地脈】の魔法力を込めた太く強く青空を切断するような黒い線を幾重にも描く!
「エフッエフッ! オラオラ気張れよ! オラは
リアラとルルヤを追い、嗜虐的に楽しげな含み笑いと共に、自慢を喚き散らしながら『
「
飛翔し哄笑しながら、ぐいと揃えた掌を『
「
メジャー漫画の元々広く受容されたから珍妙と認識されなくなったが落ち着いて考えれば相当珍妙な技名を更にパロディしたふざけた技名と共に放たれた出鱈目な量の気力は、凄まじい破壊力を持つ光線砲めいて炸裂した。
Z‐GTOOOOOOOOOOONNNNNN!!
海が裂け、余波で津波が巻き起こった。島に直撃していれば、恐らく跡形もなく消し飛んだだろう。衝撃波だけで、リアラとルルヤはきりきり舞いさせられた。
「う、くぅっ!?」
「あああああああっ!!?」
咄嗟にリアラは【
「アッハハハ! この程度で死んだらつまらねぇだろ! お前らの
哄笑する『
「……っいくぞリアラぁっ!」
「はいっ!!」
連続して放たれるそれを辛うじてかわし、青い水面のすれすれを白い水柱の連続を引きながら仲間達を巻き込まぬように飛翔するルルヤとリアラ。ルルヤは気力を振り絞るように叫び、リアラも必死にそれに答え、【息吹】を撃ち返しながらその弾幕を煙幕に再度接近戦を挑みに行く。
無謀? 確かに無謀だ。相手の力は桁違いだ。だがそれでも世を守る為戦うからこそ、世に満ちる死者の無念の魂や世を荒らされる精霊や命の嘆きから、【
事実ジャンデオジン海賊団は〈
(だが、それで、届くか……!? あいつの、命に……?」
「エフッエフッエフッアーッハッハッハッ! 笑えるぜ! それがこの世界のあり方って奴なのかよ!? 誰かを守るぅうう!? 復讐も正義の為にぃぃぃ!? 実際にてめーらがそうだなんて、そんな軟弱野郎が俺たちに歯向かえる程の強さだなんて、見るまで信じられなかったぜ! こんな綺麗事ばかりが、この世界かよ!」
必死の表情でこれ以上周囲を舞い込む破壊的な射撃攻撃を防ごうと飛び込んでくるルルヤとリアラに対し、黒白の『息吹』の炸裂の中から『
「綺麗事の何が悪い! それを、通しさえ出来れば、何が悪いんだっ!」
FLAAAAAAASH!!
その傲慢を隙と突き刺せまいかと、リアラが思いを叫びながらそれまでと違った形で【息吹】を白魔術《作音》と同時発動させた。即ち、直接攻撃に対する傷は即座に回復されるのならば、あえて目潰しに止めた光と耳を聾す轟音といういわば魔法的に再現させた閃光手榴弾〔それを遥かに上回る威力を出していたが〕を乱打、更にそこから逆に光学迷彩と 《作音》逆用による消音を併用した疑似透明化を組み合わせ【骨幹】を使い金属繊維で編んだ無数の逆棘針をつけた投網を形成、連続投射!
「通せねえからだよぉっ! 手前らがオラに勝てねぇよぉになぁっ!!」
それに対する【増大】の対処は、雷や大砲の直撃にも更に勝る閃光轟音には最初の一瞬はわずかに反応速度を減じたが二発目からは無効。このレベルの閃光轟音が初めてでも
「ーーーーっ! (くそっ、無茶苦茶……無茶苦茶の癖に、バカの一つ覚えで!)」
弾き飛ばされ直撃ですらない衝撃波に混じった気力の放出で全身を打ちのめされ吹き飛ばされながら、『
「生意気な目ぇしやがって……『
己を恐れぬその目に、『
「
それに、リアラは突っ込む! 馬鹿な、かすっただけで吹き飛ぶ拳、直撃すればいかな【血潮】による回復能力に優れようと頭蓋を一撃で粉砕されれば即死! 激情で判断を誤ったか!?
「その隙させるかぁあっ!!」「ルルヤさん少し早いっ!?」「
否。変幻自在のリアラの攻撃は、すべて悪までルルヤの攻撃を通す為の牽制。ルルヤは全力で【地脈】で得た魔法力を増やして突撃した。だが、ここまで完璧に連携をこなしていた二人だったが、ルルヤがわずかにリアラの想定より早く仕掛けてしまった。リアラは本当にぎりぎり、理想を言えばなんとか東部直撃を裂けて即死さえしなければ自分が致命傷級のダメージを食らった瞬間こそが理想的攻撃タイミングと覚悟すらしていたのだが。
ルルヤは、それを厭った。思わず声が出たのもその為だ。
『
結果……!
GIRI……!
「くっ……!」
「アッハハハハハハ!!」
両手で全力を込めたルルヤの剣は『
(ルルヤさん、何で……!?)(……すまん、心が乱れた……)(あっ……)
ルルヤは、こと戦闘においてこの手の過ちをした事が殆ど無い。故にリアラの驚きは大きかった。しかし、一瞬の視線と思考の交錯。それで、リアラには理由が分かってしまった。ルルヤの苦悩の表情。それは改めて強く意識するようになってしまった、お互いと離れたくない、悲しませたくない、傷つけたくないという心。それが捨て身をさせる事を躊躇わせてしまったか。
「けっ……何てぇ気っ色悪ぃい世界なんだ、えぇ!? この
だがそれが『
「下らねえ下らねえ。魔法の無え俺の故郷じゃ
轟ッ!!!!
「そぉらぁ」「っ!」
挑発的な余裕ぶった声と共に、『
「よぉっ!!」
SMAAAASH!!
「ぐっあっ……!」
ルルヤと競り合っている方の腕を掴んだ状態から、体操の鞍馬めいて羽の助けを借りながらその腕の上を身を捻って飛び越え、『
バリアー全貫通、盾粉砕、肩鎧粉砕、肩骨骨折! だが、それでも止めた! 止めて砕け散った肩鎧と盾を今は【翼鰭】は浮力を保つだけでいいし肩を【血潮】で再生している余裕も無いと急ぎ【息吹】を使い全て【《
【
「~~~~っ!!」
「捕まえ、ました! 大丈夫! おかげで! だから!」
結局リアラに自己犠牲を強いてしまったと一瞬思うルルヤに、想定したダメージよりずっとまし、だからこれでよかった、このままやるしかない、と、短く鋭くリアラは訴え、そしてルルヤは頷いた。
「分かったっ……やむを得ん、押し通るっ! 【森羅万象、天地万物、諸神諸霊に希う。我は
ZZDDOOOMMNN!!
「おおおおっ……!! こいつあ……!!」
零距離、拳と剣の競り合いから、剣に宿る黒の【息吹】が天を衝く程激しく燃え上がる。剣が強化巨大化される。【
「はぁあああああああああああああっ!!」
リアラを傷つけられた事への悲しみ、己の不甲斐なさへの戒め、傲慢なこの敵への怒り、防げない周囲の被害への悲憤……様々な感情を込めてルルヤは吼える。吼えて【息吹】を注ぎ込む……!
「【諸霊の愛と命を宿し、諸神の善と智を思い……】! (っ、まだか……!?)」
「へ、へへ……こいつぁ……!!」
だが硬い! 切り込めぬ! いや! 『
「こいつぁ! どうだぁっ!」「っ!? だがっ! 【我此処に約定を果たさん】!」
眉間を汗が伝った一瞬、【増大】が動いた。重力束縛を振り切り、拳を突き出して剣を弾き飛ばし掌から気を放つ技の体勢に入ろうと、だがそれをルルヤは許さぬ。既に此まで【世壊破】三発分の重力を込めた所に更に重力を追加、そして『
「【悪しき世界を齎す者に、
炸裂!!!! !!!! !
…………
…………………
…………………………
「下らねえ」
メリメリ、バキバキと、砕け散る音と共に、声がした。ルルヤは愕然として目を見開いた。
「オラはな。戦えば戦うほど強くなるんだぞ? 強い力と戦えば、それを上回るようにより強くなる。だからわざわざ……お前らも薄々気づいてるから、こっちが油断でもしてると思って、焦って今の内に決着つけようと思ったんだろうが……わーざーわーざー、『
眼前に、『
「まあまあだ。まあまあだったが……この程度かってばよ?」
顔面を歪め引き攣らせせ皺を刻み牙を剥く様に、『
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