・断章第四話「リアラルルッヤ」

・断章第四話「リアラルルッヤ」



 ※本話は言わば〈文章による四コマ漫画〉とでも言うべきギャグ風に挑戦する短文の集合体です。各短文は番号と小題で分別され、個別の短いエピソードとなっております。著しいキャラ崩壊、設定無視、昔のドラマCDめいた番外編あるあるネタ、平行世界めいた別舞台等、パロディ的エピソード等でございます。ご了承ください。



1.今回の断章の名前リアラルルッヤ的な何か。



「えいえい!」


 それは、日々恒例に行われているリアラとルルヤの組手修行において、初めてリアラがルルヤ相手に一手有効打を取った時の事であった。掛け声と共に放たれた二連の短打が、ルルヤの防御を掻い潜り、攻撃を放ったリアラ自身が驚いた瞬間。


 むぎゅっ、と。


 ……下から掬い上げ滑り込む様に放ったせいで、掌底による打撃のつもりが、ルルヤのビキニアーマー胸部に下からモロに手を突っ込むような形になってしまい。


////赤面!?)


 リアラは赤面し沈黙し停止した。ルルヤも赤面し沈黙し停止した。



「お、怒った?」

「お、怒ってないぞ」


 恐る恐る尋ねるリアラに、動揺を圧し殺した強張って視線を反らした顔のままルルヤはそう答えた。リアラは何て色気重点しすぎてラブコメの筈がラブよりコメディより全年齢対象の限界への挑戦が本題になってしまった様な漫画じみた事故トラブルだと慌てながら、一刻も早くその気まずい雰囲気から逃れようと再度の手合わせを提案し。


「えいえぶるうううわぁあああああっ!!?」


 うっかり視線をそらした状態のまま組手を再開したルルヤの拳がリアラの顔面の真芯をぶちぬき、リアラは昔二枚目もやっていたのに今ではすっかりクリーチャーキャラばっかりになった男性声優の強力な野太い絶叫じみた声をあげてのたうち回った。



「お、怒った!?」


 うっかりクリーンヒットを見舞ってしまったルルヤは泡を食ってリアラを助け起こすが、すまないというところを動揺したせいかさっきのリアラの言葉を繰り返す。


「お、怒ってないよ……そっちこそ……怒った……?」

「お、怒ってないぞ!? ……本当だぞ!?」


 そして、胸に手を突っ込んでしまった事に怒ったのかと問うリアラに対し、それを必死に否定した。あくまで恥ずかしがってよそ見をしただけだと。実際そういうタイプでもなく、表情は変わらず恥じらいっぱなしだったので、それが事実なのは……何とかまあ、リアラには伝わったのだった。



2.あの世編〔本編では再転生は無い事にご注意ください〕



「おりゃあああ!」「ぎゃあ!」


 頭に適当な光る輪っかの浮いた『必勝クリティカル欲能チート』が同じく頭に適当な光る輪っかの浮いた『複製コピペ欲能チート』を殴打!



「ATYOOOOOO!」「ぐわーっ!?」


 頭に適当な光る輪っかの浮いた『功夫カンフー欲能チート』が同じく頭に適当な光る輪っかの浮いた『複製の欲能チート』をカンフー殴打!



「FUCK YOU!」「アッー!」


 頭に適当な光る輪っかの浮いた『色欲アスモデウス欲能チート』が同じく頭に適当な光る輪っかの浮いた『複製の欲能チート』を触手で責め立てる!



「お前が! お前がよりによってあんな所攻撃するから!」×沢山!

「ウボァーーーーーーーーーッ!!?」


 頭に適当な光る輪っかの浮いた『経済キャピタル欲能チート』『惨劇グランギニョル欲能チート』他数多が同じく頭に適当な光る輪っかの浮いた『複製の欲能チート』を袋叩きにする!


(空想中)ほわんほわんほわん……って位あの世でされてもいいよな、『複製』の阿呆は」


 〈欲能を殺す者達チートスレイヤーズ〉の対策を思案しながら、ここまでに新天地玩想郷ネオファンタジーチートピアの受けた被害の大きさに、『旗操フラグ欲能チート』はふと嘆息した。寝ている怪獣の巣穴の近くで環境破壊かくじっけんとかを行ってしまったも同然だよなあ、と。


「ま、私ら転生者に天国どころかあの世もありませんけどね」


 同意しつつも『情報ネット欲能チート』は、軽く自分達に対する事実についてへらりと突っ込みをいれた。糸のように細い目で、『旗操フラグ』を見ながら。



3.人格入れ換えネタ



「ふふ、通常では有り得ん突拍子もない事件イベントを起こすこの『奇妙ランダムイベント欲能チート』と!」

「ランダムに発生しうる事柄をどれにするか自由に選び取るこの『選択ロールオアチョイス欲能チート』があれば! 通常では全くありえない『一定範囲の人々の人格が突然入れ替わる現象』を発生させつつ誰と入れ替わるかまで指定できその混乱を最大限に悪用可能!」


 凄まじいまでの説明台詞を垂れ流す二人の欲能チート行使者!



「あっ効いてない!?」「まさかお前ら!?」

「悪いけど【真竜シュムシュの鱗棘】があると、そういうの効かないんですよ」


 そこに飄然とやってくるリアラとルルヤ! 二人の欲能チート行使者の問いに対して返事をするのはリアラだ。ルルヤはその傍らで力を溜めている!



「酷い!?」

「何て面白味のねぇ奴等だ!」

「そんな事言われても無理なものは無理ですよ!?」


 小題が成立しないレベルの竜術の防御力BS耐性に抗議の声を挙げる欲能チート行使者達! 実際この能力をうまく使えば別に小題のネタ以外でなら普通に中々戦えるのだが……



「いいから悪事止めろ!」

「「ぎゃーっ!」」


 南無惨ナム・ムザン! その前にルルヤの鉄拳が二人に炸裂だ! 〈3.人格入れ換えネタ〉完!



4.性格反転ネタ



欲能チートが駄目ならこの世界の魔法道具だ!」

「食らえ魔法薬《性格反転酒》!」


 ルルヤにぶん殴られながらも死なずに慌てて人格入れ換えを解除して逃走した『奇妙ランダムイベント』と『選択ロールオアチョイス』。仕返しすべく毒を盛ろうとするが……



「それも効かんな」「効きませんね」


 けろりとした様子のルルヤとリアラ。【血脈】の効果で血液が霊薬と化している為毒薬による攻撃も無効だ!



「な、なんて面白味の無いピンチのバリエーションの無い奴等だ! 話の展開が限られるぞ!?」

「上品可憐なルルヤとかワイルドで攻め攻めなリアラとか見てみたいと思わんのか!?」


 天丼めいて繰り返される無効化! 再びの小題不成立に八つ当たり気味に叫ぶ『奇妙ランダムイベント』と『選択ロールオアチョイス』!



「ど喧しいわ!」

「「「ぎゃーっ!」」


 南無惨ナム・ムザン! 〈3.人格入れ換えネタ〉のコピー&ペーストめいてルルヤの鉄拳が二人に炸裂だ! 〈4.性格反転ネタ〉完!



5.学パロ時空!?



「転校生の天海渡あまと 流々夜るるやだ」


 いつぞやの時第九話~第十四話と違い、ブレザー制服姿のルルヤさんが、そう言って黒板の前で挨拶した。前と違ってプロフィールの偽装をする必要なく振る舞う彼女の姿は実に堂々としていて、ブレザーの輪郭がまるで剣のようにピンと立つような、威厳がありながら重々しすぎない、水晶の刃のような煌めく鋭さがあった。



流々夜るるやさん……ブレザーも似合うんだな……」


 神永かみなが 正透まさとは、思わずそう呟いていた。何しろ、今回は潜入でもないし戦いでもないのだ。落ち着いてその姿を見る事ができる。思えばこうして彼女が転向してくるまで、本当に色々なことがあった。


「こうしてまた同じ高校に通う事になるなんてなあ。僕もすっかり女子のブレザー着るのも慣れちゃって……」


 そしてその傍らで、リアラがそう呟いて。



「「……えっ!?」」


 正透リアラの前世とリアラは、驚いて声のする方向を見た。


 ……僕は僕を見た……僕が僕を見た……!?



「……という夢だったんですよ……」

「自分が二人、か。それは確かにどきっとするだろうな……しかしそれはそれとして、夢の中でまで私に見とれてるのか、リアラは」


 翌朝。がばりと跳ね起きるように目を覚ました、しばしば悪い夢を見る僕を心配していたルルヤさんは、身支度を整えながら内容について尋ね、内容を聞いて案じながらもしかし予想よりは遥かにましな夢の内容、また夢に自分が出てきた事について苦笑した。



6.魔法少女時空!?



「しかしそういうもしもの話か。旅芸のネタとしてリアラからは〈不在の月ちきゅう〉の物語について色々と聞いたが。混珠こんじゅのような世界での冒険譚の他にも、色々と定番があるのだったよな。もしも、そういう世界で私達二人が出会っていたら、という話は面白いかもしれんな」


 前の小題の話題について、思いの外ルルヤはもし自分が地球の少女であったらというリアラの話に興味を持った。それは、日々の旅芸人暮らしにおいて演目のネタに使ったりするリアラの語る地球の様々な物語を、リアラは言わば第一の観客として、楽しんで聞いているが故だ。ファンタジー、SF、現代異能伝奇、等身大のもの集団のもの巨大なもの等の特撮ヒーロー、スーパーロボット、リアルロボット、その他実に様々に。



「例えば……(空想中)ほわんほわんほわん


 ルルヤは一つ想像してみる事にした。リアラから聞いた地球の物語の形式の世界で生きる自分達の姿を。



「ど、どうしてもこの格好じゃないとダメなんですか……? (////)赤面


 丁度リアラがはじめてビキニアーマーを着せられた時のように恥じらう、フリルとリボンで飾られているのに臍と鎖骨と背筋のかなりの部分がむき出しの魔法少女コスチュームで女装させられている神永かみなが 正透まさと。女顔で華奢だから、似合う。



「何で僕が魔法少女!? というか何で前世!? (////)赤面

「い、いや、リアラの夢の内容が内容だったもんでな……」


 ルルヤが口にした分だけでなく、【真竜シュムシュの宝珠】で、その想像した光景をばっちり映像で見せられてルアラは悶絶し、ルルヤは思わず浮かんだその想像とリアラの戸惑いに、悪い悪いとしながらも同時に笑いとかわいいという感情が押さえられないといった表情をついつい浮かべた。



7.SDスーパーデンジャラス



「普通にルルヤさんが魔法少女でいいんじゃないですか?」

「……格好だけ変わっても、私は地が女っぽくないからな。やる事があんまり変わらないような気がして……」

「う、ううん、そんな事は……」


 前の小題の話題について、リアラは抗議ついでにルルヤに訴えた。そっちの方が自然に思えるし、何より可愛い格好をしたルルヤさんを見てみたいと思い想像するリアラだが、ルルヤのその言葉に、特撮変身ヒーローと放送時間帯も近ければ戦闘の殴り合いっぷりも下手すれば特撮変身ヒーローより激しいヒロインアニメの事を連想してしまい頭を抱えるリアラ。折角想像できたそれっぽい格好のルルヤさんが、脳内イメーンで女児向けアニメっぽいデザインの敵達の腕をもいだり首を引き千切ったりしはじめてしまった。



「だからこうしよう。私は混珠こんじゅでいう所の《使魔つかいま》みたいな、魔法少女をサポートするちびっちゃい奴だ。ますこっと、とか言ったか?」

「そっち!? それなんか別のネタのような気が……!?」


 そして直後のルルヤの素っ頓狂な提案に、頭を抱えていたリアラは叫んだ。人の頭に乗っかれる程のサイズの二頭身にSDされた逆襲のルルヤたんが、自分の頭の上にちょこんと座っている光景を咄嗟に連想して。



(空想中)ほわんほわんほわん

(あ、想像し始めた)


 だが困った事に、既にルルヤは空想を育て始める為に目を瞑って座り腕を組んで考え始めていた。邪魔しないようにリアラも声を出せなくなり数秒。



「くっ、ダメだ! 二頭身だと口より先に手が出るより先に噛みつきが出る!」

「バイオレンスマスコット!?」


 二頭身の小さなルルヤが耳まで口を開いて頭から敵めがけ飛んでいく……多分瞳もぎゅぴーんと十字状に発光している……そして相手の喉笛を食いちぎるのだ……可愛いから一転してホラー・スプラッタというかホラー・スプラッタをネタにしたギャグめいた描写。ルルヤが口走った事が、想像できてしまいリアラは困った。



8.更なる可能性



「想像してみてわかったが、二頭身SDでこの格好ビキニアーマーというのは中々難しいな」

「……」


 前の小題の話題について、腰の括れもへったくれもない姿でのビキニアーマーというのは厳しいため、体のバランスをある程度保ちつつ頭と体のバランスを取るという事が求められるわけだな、と、ルルヤは想像してみて呟き。それを聞いてリアラは、遥か昔コンピューターゲームが8ビットでドット絵だった頃の人は余程才能があったんだろうなあ、と、早逝した前世の世界を思った。



「男性の真竜シュムシュ教徒なら……いややっぱり微妙か? ……男性、か……」


 男性の真竜シュムシュ教徒の戦士ならば、外見イメージはどちらかと言うと以前捕縛した狩闘の民の戦士か、図書館で見た荒々しい古代の英雄達のようになるだろうから、と思ったルルヤだが、かっこよくはどっちにしろならないだろうなと思い。ふと、リアラが前世男性だったという事を思い出し、自分が男だったらどうだろう、と想像して……男の自分がリアラと一緒にいる様子を想像して、なんだかどきりとし、ぷるぷると首を振った。



「まあ、そういうディフォルメはむしろコメディタッチな感じのが多いんで、あえて寸胴なデザインでもいいかもしれないけど」


 とリアラは、ふと、暢気で微笑ましい、あるいは不条理ギャグな自分達二人、というのを思い浮かべてみた。やはり寸胴なビキニアーマーは間抜けでコミカルだった。



「「………………」」


 リアラとルルヤは、お互いの思い付きの内容を改めて想像し、顔を見合わせて……



9.一段落



「……さて、と」


 一連の小題の話題について、そこでルルヤは一区切りいれ、立ち上がった。



「ええ」


 馬鹿話で一呼吸入れた。少し楽な表情で、リアラも頷く。



「そろそろ」

「旅を再開しますか」


 何時か、こんな暢気な笑いばかりの日々になる事はあるのだろうか。復習は終わるのだろうか。……それは、戦いの果てにしか分からない。

 尚、今回ばかりはそれはまた別の話にて語られるいずれふくせんとしてきのうするという事はないかもしれない……多分。 だが、あるいはそれはまた別の話にて語られるいずれふくせんとしてきのうする事になる……かもしれない。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。



 きゅるるるる。


「…………(////)赤面

「……朝御飯、食べるの忘れてましたね。食べてからにしましょうか、出発は」


 続く。

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