・断章第二話「よくわか……らない混珠言語」

・断章第二話「よくわか……らない混珠こんじゅ言語」



 猛烈な激戦だった。辺境諸国群の一国、ガインバ爵国を襲ったのは、かつてルトア王国を滅ぼした『必勝クリティカル欲能チート』の勢力や、『必勝クリティカル』に卸していた複製錬術れんじゅつ兵だけではなく複製魔術呪具で操る複製欲能チート行使者を操り従えウルカディクの隠れ里を蹂躙した『複製コピペ欲能チート』、シュウソウ連村国を支配した『色欲アスモデウス欲能チート』の眷属や辺境に覇を唱えた『軍勢ミリタリー欲能チート』の軍閥に勝るとも劣らぬ新天地玩想郷ネオファンタジー・チートピアの一勢力。


 かつての『色欲アスモデウス』と共に〈魔王候補〉と目される魔族へ転生した欲能チート行使者〈七大罪〉、その『強欲マモン欲能チート』と『怠惰ベルフェゴール欲能チート』が連合して率いる魔族軍だ。


 その軍は主に『強欲マモン』が率いる矮鬼ゴブリンと『怠惰ベルフェゴール』が率いる豚鬼オークで構成され、少数ながら炎や雷を帯びる魔犬、指揮官級の魔族が駆る乗用魔猪も加わり、まさに複数種の魔獣魔族が混合統一され運用されるという〈魔王軍〉の条件の一つを満たしていた。この上『強欲マモン』『怠惰ベルフェゴール』に加え、『混乱バベル欲能チート』、『神殺ニーチェ欲能チート』を加え合計四名の欲能チート行使者が所属しているのだ。規模的に言えば所属欲能チート行使者の数でいえば正に上記の諸勢力を上回っていると言えるだろう。


 ならばこの場にて繰り広げられるのは、再びの悲劇であろうか。


 否、断じて否! 何故ならば、〈欲能を狩る者達チートスレイヤーズ〉と、その仲間達がいるからだ!



「させるかぁああっ!!」

「ぎひぃっ!?」「ふごぉおっ!?」


 ルルヤが先陣切って突貫する。【真竜シュムシュの膂力】で振るわれる剣技が矮鬼ゴブリンの槍衾を切り落とし隊列を叩き切り、豚鬼オークの棍棒の直線的な降り下ろしに抉り混む様に身を翻し、その顔面や喉首を繊細な徒手武術に破壊的な威力を乗せ肉壁を切り裂いて。


 嘗てルルヤの戦闘力を『惨劇グランギニョル欲能チート』は〈豚鬼オークの100や200差し向けても肉挽き器に突っ込む事にしかならない〉と内心評したが、この突撃はその具現だ。


「『怠惰ベルフェゴール』、覚悟ぉっ!」

「ブギイイイッ!」


 並の欲能チート行使者等及びもつかぬルルヤだが、今この時は全力で必死だ。


 何故ならば、タフな王族種豚鬼オークキングの肉体と一定範囲の敵の力を堕落させ衰えさせその間その分だけ己の力を増す欲能チートを持つ『怠惰ベルフェゴール』、広範囲を攻撃する魔術を多数の強奪した魔法装備で強化した矮鬼魔術王ゴブリンハイソーサラーの体と傷つけた相手から力や装備を奪い自らを強化する欲能チートを持つ『強欲マモン』、やはり強靭で高い生命力・再生力を持つ魔族の体と一定範囲における言語・魔法の行使を撹乱し情報と連携を遮断し己への攻撃魔法を跳ね返し他者への回復・強化魔法を我が物とする『混乱バベル』、そしてこの転生者達の中で唯一の人間だが魔に与し己に対する法術と相手の法術防御を無効化しリアラに「チェーンソーじゃないか! 神聖の否定っていうのは欲の形として有り得るとしても、ベタなネタを!」と言わしめた轟音を立てる魔剣に無効化した法術を蓄積し必殺の威力とする『神殺ニーチェ』。


 この四欲能行使者チーターが一丸となって発動される力は殆ど擬似的な『邪流』に近い。魔法的は防御は『神殺ニーチェ』『混乱バベル』に無効化破壊され、『怠惰ベルフェゴール』の力の範囲に入ってしまえば逃げる事も叶わず『強欲マモン』に食い殺される。さながら殺戮と蹂躙の台風!


 ベルフェゴールが時にアスモデウスと変わり色欲の大罪を司るとされる事もあるように堕落し鈍重だがその内に邪欲をたぎらせる『怠惰ベルフェゴール』と、欲能チートを得た事で倫理を失った悪行転生者故に当初の金銭欲だけでなくあらゆる欲を暴走させた『強欲マモン』。その軍勢がガインバ爵国の街に雪崩れ込めば凄惨な事態を招くは必定。確実に逃さすこの場で阻止殲滅しなければ。


 だが、【真竜シュムシュの鱗棘】の力により、力を奪う『怠惰ベルフェゴール』の欲能チートを遮断するだけでなく【鱗棘】を奪わんとする『混乱バベル』の干渉をも打ち消すルルヤ達だが、【鱗棘】で守られた自己の肉体に対する【膂力】等の強化はそれにより奪われずに済むが、体の外へと放たれる魔法には『混乱バベル』の効果が及んでしまう。


 それにより【真竜シュムシュの咆哮】での阻止が難しい為、この戦い、竜術護符をルルヤが与えた自由守護騎士団と〈無謀なる逸れ者団〉も参戦している。再生産量と消費量の比率的に、ガインバ爵国の兵士にまで竜術は付与できない。【真竜シュムシュの地脈】を使った大規模行使をこの状況下で行えば『怠惰ベルフェゴール』との二重の力の吸収による被害が生じうる。故にこそ最優先で討ち取るべきは『怠惰ベルフェゴール』と『混乱バベル』だ。前者がいれば爵国兵が動かせず、後者は自己優位特化の『神殺ニーチェ』と違い敵の雑兵を食い止める騎士団と傭兵団の力を広範囲に削る。


 DOBABABANN! CRASH!


「敵射撃通過! 集合! よし、いくわよ、砕け散りなさいっ!」

「ギギャッ!?」「キッギイイッ!?」


 かつて『軍勢ミリタリー』と取引し入手した数十丁の火縄銃を硫黄流通規制によって最後となった弾薬を消費し矮鬼ゴブリン銃兵隊が射撃するが、それを【鱗棘】護符と法術による二重防御、そして散開状態で射撃をかわし直後に密集し襲撃するユカハの戦術指揮で突破、矮鬼ゴブリン長槍兵を長槍より長い槍衾突破用超長槍による突撃で突き崩す自由守護騎士団。激突の瞬間以外は邪魔となる超長槍から即座に装備転換するが……本来なら更に攻撃法術による突撃中牽制射撃が加わるのだが、それが出来なかった事が祟る。


「《焼討》! 《餓顎》! 《踊拷問具》!」

「うあああっ!?」「きゃああっ!」


 『強欲マモン』による、魔術の連続爆撃が牽制しきれずこのタイミングで打ち込まれる。爆炎が女騎士達を飲み込みにかかり、化け物の顎と焼けた鋼の凶器が乱れ飛び炎の中に飛び込んで追撃とばかりに食らいつかんとする。


 無論本来ここまでの連携や装備・魔法の使用は矮鬼ゴブリンには不可能だ。普段の矮鬼ゴブリンは精々が原始的な木槍や石器を使う少しましな猿程度の戦力でしかなく、数もソティア・パフィアフュがその調査で解明した矮鬼ゴブリンの地域生息数算出目安「村に害する十数匹程の矮鬼ゴブリンの巣穴一つに対し、数十人の村一つ、矮鬼ゴブリンを退治する為にやってくる冒険者数人、冒険者が普段いる村より幾らか大きい街が一つ、嘆かわしいが近年歯そこに小規模の盗賊団が一つ、そして村に接触しない矮鬼ゴブリンの巣穴がもう一つ」という程度。


 それがここまでの軍となるのは、玩想郷チートピアの起こす戦乱で溜まった怨念が魔を生むマッチポンプの集約点、〈魔王候補〉たる〈七大罪〉の存在故。混珠こんじゅの魔王とは、普段は個々の群れの生存や個別の本能に則って生態系の範疇で生きる魔族や魔物を、その怨念と恨みを最優先に、戦う為に後先考えず増え、人を襲い侵略し殺す事を最優先とする死兵へと変え統べる存在。候補ゆえ全魔族や魔物を動かせる訳ではないが、そこに現代人の悪知恵と欲能チートが加わる。


 だが。


「皆、大丈夫かっ!」

「はいっ、フェリアーラ卿……!」「馬はもう、けど、私はまだ……!」


 攻撃魔法が使えないハンデ如きで矮鬼ゴブリンに負けてたまるものかと、女騎士達は戦い続ける。魔竜ラハルム退治で得た耐久力をもって、フェリアーラが仲間をその身を盾として庇う。魔法剣《硬き炎カドラトルス》の力ならば本来なら剣から迸る火炎で矮鬼ゴブリン魔術王の魔法如き押し返せたろうが、今はそれを『混乱バベル』のせいで使うわけにはいかぬがゆえの手段であった。


「ケッ、『色欲アスモデウス』ノ奴隷ガ粋ガリヤガッテ! 〈長虫バグ〉共サエ殺レリャ、奴等ガ居ナキャ一捻リナノニヨ!」

「……過去の否定はしない。だが、私達が、その前提を満たさせはしない。死ぬのはそちらだ……まだ行けますね、団長!」

「勿論よっ! 名無ナナシ達なんて、もっと拙い状態で戦ってるんだから!」


 今は風も炎も無き魔法剣をそれでも構え、斬り進むフェリアーラとユカハ。


 そしてユカハの言う通り、魔法に使用制限のかかる事は、少年傭兵団である〈逸れ者達〉と豚鬼オークの戦いにおいて、騎士団に対してより更に逆風となっていた。


「《軽業》効果強化三倍継続、効果時間倍増継続……《活気》効果強化五倍継続っ、効果時間倍増継続……皆、勝手違うだろけど、頑張って、負けないでっ……げぼ、ぜえ、ああもう、可愛くないなっ……喉も頬も血でべたべただよ……!」


 普段は魔法を得手としない仲間からリソースを護符を使い譲り受けて大規模魔法を行使するミレミは今、限界を越えた極度の魔法行使で自らを傷つけ、血涙と血反吐に溺れそうになるのを痩せ我慢しながら長杖を振るっていた。


 ……魔法の他者行使を封じる『混乱バベル』がいるにも関わらず〈極度の魔法行使〉? その理由は、名無ナナシとミレミが考えたこの戦場に赴く為の策だった。


 卑劣な戦法を理解しそれを逆手にとる対傭兵戦と異なり、単純至極の力押しでくる豚鬼オーク相手に子供達が戦うには本来魔法は不可欠。だが、魔法をこの場で他者にかけようとすれば『混乱バベル』に奪われる。本来ならその時点で詰みに近い。


 だが、自分にかける魔法、既にかかっている魔法は【鱗棘】の護符でそれから守られる。つまり身体強化系の魔法ならば、事前に近いミレミから団員という他者への付与であっても【鱗棘】に守られて効果が残り続ける。ならばそのようにして、普段なら戦闘中に使うリソースまで全部身体強化系魔法の効果増加と長時間維持の為に突っ込むしか、豚鬼オーク相手に戦えるようにする魔法支援の方法はない。


 様々な魔法を戦況に合わせ使い分ける事に比べれば遥かに効率が悪く、すでに発動住みならば効果を維持する事に問題はないが、倍率を極度にあげた負担の大きい魔法を団員全員分維持し続けるのは、本来あくまで団員同士で力を融通しあわなければ大規模魔法を易々行使とはいかぬミレミにかくも苦しい負担を強いるが。


「けど、それでも役立たずでいるよりは、ずっとずっとましだっ……!」


 そう、ミレミは己を強いて呟き、戦う。自らにも付与した身体強化魔法の力で増した速さと力〔速さはともかく力はそこまで得意とする魔法を会得している訳ではないので限定的なものだが〕を振るい、迫る豚鬼オークの眼球を尖らせた長杖の先端で刺突眼底骨突破脳髄貫通殺!


「でやぁっ!」「このぉっ!」


 BOU!! VIIIIIINNN!!


「プギャアッ!?」「ピギッ!?」


 消耗しているミレミを助けるべく、投紐で対火縄銃には火を遠くに飛ばすために軽くしている精油壺に目一杯油を積めて点火し豚鬼オークに叩きつけ焼き豚にする半森亜人エルフの少年と、攻陣用の荷車砦もぶち抜く張力がきつすぎて戦闘中再装填不能一戦闘使用一回限定の抱弩砲を構え撃ち放ち反動を殺すために地面を転がる細山亜人ドワーフの少年。両者の攻撃は狙い過たず豚鬼オークを一撃で屠るが、精油壺も弩砲も使用回数に限りはある。


「ええいっ!」「やぁっ! 強いのは名無ナナシの大将だけじゃあ、ねえぞっ!!」

「フゴオッ!?」「ブギイ、チョコマカトッ!」


 故に傭兵団主力の前衛は、人間の少年達は鎌槍や矛を振るい、獣人の少年は銜剣を装備し転がるように地を駆け、正当派の対豚鬼オーク戦術で立ち向かう。


 即ち、分厚い筋肉と脂肪で覆われた太さの半分程まで切り込まねば致命傷にならぬ胴を避け、目、口腔、頸椎、気管や太い血管や腱が走る首・手首・足首、内股付け根、脇下、股間を狙う事。十分な打撃力があるなら頭蓋を狙うも可能。子供達には最後の急所は背丈の差もあり狙い難いがそれ以外の急所は、力任せで雑な動きで長は邪知狡猾だが雑兵は連携する程賢くない豚鬼オークなら、子供とはいえ戦狼の如き傭兵達、血反吐を吐いてミレミが強化した身体能力と練磨の技量で巧みに掻っ切ってゆく。


 とはいえ豚鬼オーク共の中にも強敵も居て、振り回される棍棒〔刃物を管理できる程豚鬼オークは繊細ではない。剣を奪っても、忽ち刃を損じ金棒同然としてしまう〕に骨を叩き折られ、悶絶し倒れ仲間に後送される少年もいる。そういった強豪豚鬼オークの中には己の弱点を理解し、体格が合わず着用できぬ鎧〔敵対魔族用の鎧を作るのは重罪であり鍛冶師は虜囚時それを求められても死しても拒む事が求められる。また、豚鬼オークは嗅覚が敏感な為例え被れるサイズでも総兜フルヘルムの着用を苦手とする〕の代わりに人里から奪った鉄鎖を手首や足首に巻き防具とする者はいるが、鎖を上手く巻けぬ急所は当然あり、


「よくも! 去勢してやらぁこの腐れ豚肉がぁぁっ!!」

「ぴぎいいいいいいっ!!」


 そういった相手には、このような攻撃をしていく。あるいは手先足先や膝を砕いて動きを封じたり、内股や脇の血管を狙って倒す。だがいずれにせよ、普段の傭兵相手の巧みな戦いよりは、どうしても消耗の激しい出血戦を強いられる〈逸れ者〉達。


 故にこそ突撃を選択したルルヤだったが……


 ZDOM! SWASH! GRAP!


「っ、しぶといっ! (仕留め損ねた!)」

「ブギイイイッ! オノレ、ヨクモ、ッ、殺、レィッ!」


 護衛豚鬼オーク程度何の役にも立たぬと割り切り、ルルヤが来た瞬間『怠惰ベルフェゴール』は味方にその欲能チートを限界まで行使、回りの豚鬼オークを辛うじて呼吸が精一杯な程度まで弱体化させその力を己に結集させた。それでも尚ルルヤの膂力に押し負け人間から転生した知恵で自分で誂えた鎖鎧を軽々切り裂かれ手傷を負い騎乗していた魔猪を殺され転落する『怠惰ベルフェゴール』。


 だが、その一撃を急所から逸らしルルヤの手を掴む事に成功した。そして河馬の様に巨大で通常種と違いイボイノシシを凶暴にしたような特長を持つ顔を引き攣らせ叫び呼ぶ。欲能チートによる力の収奪から外した、本陣に控えさせていた『神殺ニーチェ』を。


 それは元々独立していた『怠惰ベルフェゴール』勢力と『強欲マモン』勢力が〈欲能チートを狩る者達〉を恐れ連合を組んだが故の、恐怖が磨いたコンビネーションだ。ならば。


「ああ、やってやるさ!」


 SLASH!


「何っ……あごぼっ!?」「腐れ欲能チート野郎をなぁっ!」


 ならば絆結んだ戦友同士の真のチームワークに勝てよう筈無し! 『神殺ニーチェ』に名無ナナシが奇襲! 魔法付与に威力を頼った投短剣を主力武器とする為に〈逸れ者〉の中で最もこの戦場を苦手とする少年が! それでも尚、ただ身軽さと急所を抉る技量を武器に戦場を突破してきたのだ!


「行けぇえっ!!」


 出血も骨折も省みず跳躍し、豚鬼オークの動脈を幾度も抉った短剣と靴仕込刃から今新たに一瞬の奇襲で必殺の攻撃力が有ろうと振るえねば無意味と掻っ切った『神殺ニーチェ』の喉笛から血の糸を引いて宙を舞いながら、名無ナナシは叫んだ。ルルヤと、リアラに!


「「ああ!」」


 リアラとルルヤの声が揃う。リアラもまたこの時すでに、それぞれ炎と雷で妨害射撃を行う魔犬二匹を仕留め突破していた。『混乱バベル』を討つ為に。


「畜生ッ!? 別動隊何ヤッテヤガル!? 街モ襲ワズ俺モ守ラズ! 畜生ガ!」


 悲鳴をあげて部下の不始末らしき事に当たり散らしながら、『怠惰ベルフェゴール』は1%でも1秒でも長く生存する可能性を上げる為だけに無差別に味方から力を略奪し、更に速度と力を上げて棍棒を振り回すが。


「畜生なのは貴様の心だ、そして……何匹いようがどのみち無駄だっ!」


 豚を何千何万匹積み重ねても、天舞う竜に届く筈無し! ルルヤの叫びと共に『怠惰ベルフェゴール』の首が飛ぶ!


「こマ!? はー! 怠カス恵体の癖にほんまつっかえ!? 熱い掌返し不可避! アカンわ魔猪あるやんけ逃げたろ、『強欲マモン』、後はよろしくニキー!」


 ……この珍妙な口調の言葉は、飛ぶ『怠惰ベルフェゴール』の首を見て、巨大な目と嘴と馬の鬣の様な髪を持つ橙色のぐねぐねした河童めいた魔族『混乱バベル』が叫んだ発言だ。


 『混乱バベル』は二太刀で屠られた『怠惰ベルフェゴール』を役立たずと罵り、『強欲マモン』を見捨て魔猪を駆り逃げようとしていた。


「ッ手前ェッ!? ギャアアアアッ!?」

矮鬼ゴブリンと思えない程、奪った力で強かったわね!」「だが、それだけだっ!!」


 『怠惰ベルフェゴール』が死ぬ前に部下を無差別に吸収した結果護衛がいなくなり、挙げ句『混乱バベル』に見捨てられた怒りで隙を見せた『強欲マモン』がユカハとフェリアーラに二重に両断される中、リアラは要請じみた羽を閃かせ地面すれすれを飛翔し『混乱バベル』を追った。その手には矛を持ち、その顔には


「……何でぜんJぜんぶ実況ジャパン語なんだよお前はぁっ!!?」「ホゲーッ!!?」


 故郷のインターネットスラングへの当惑と怒りとインターネット交流を愛していたが故に同類を殺す事への少しの悲嘆を帯びて、リアラはバットじみた棍棒で防戦する暇も与えず『混乱バベル』を刺し貫いた。魔猪から突き落とし、地面に串刺しにピン止めにした。思えばそのインターネットスラングが使われる場を象徴するAAキャラを、何となく思わせる姿をした魔族を。


「グェー、死、死んだンゴ……せやかて、魔族になってもうたら、ぐう畜せえへんと生き残れへんやん……」

「……」


 そんなじわりとした悲嘆故に、『混乱バベル』の言葉が、復讐と新たな被害者を防ぐ為、罪もない人を守る為の戦いだとはいえ、じくじくとリアラの罪悪感を疼かせ。


「ちな、しゃあないんでとりま最後に自爆するもよう」

「えっ」


 それ故に、次のその言葉と自爆が、ほぼ完全に奇襲として入った。閃光が、唐突極まりない展開にあっけにとられたリアラが見せた酷く間抜けな表情を照らして。


KA―BTOOOOOOOONMM!!


「リアラーーーーーーーッ!!?」



 ……


 …………


 ………………その後、数十分から数時間の後。


「……うう、ぜんぶ実況ジャパンは……日本のインターネット掲示板……Nチャンネルの……で……」


 気絶前のインパクトを思わず譫言し、(……もしかして〈する造〉とか〈しないだ郎〉みたいな姿の魔族転生者もいるんだろうか……もし居たら、出来れば、戦う相手ではあってほしくないな……)と、夢と内言の中間を思うともなく抱いて。


「っ!」


 意識を取り戻し、リアラはがばと身を起こした。ベッドの上。窓の外に見える風景からして、ガインバ爵国。気絶して、治療されたのか。気絶前の状況からして、戦闘は終わったのだろう。敵の別動隊が行方不明になったのはどうなったのだろうか。そこまでリアラはすぐに把握し、自分を心配そうに見守っていたルルヤを見て。


「リアラ コ ン キイヘヒ チ ナチササ。フツ マ ムチヲシフ ネムバハ ン フソソフソ シワペフヌヒガ」

「……えっ、る、ルルヤさん、今一体何を、言って……」

「リアラ リアラ!? ネムバハ ダ シアソソシフゲ」


 直後……リアラとルルヤの顔から血の気が引いた。


「まさか」

「イキチ 」

「ビノチ ルソテノ リアラ ヂ ヒフロワ ビ!」

「……混珠こんじゅ語が……分からなくなってる……!?」


 リアラは未経験の窮地に立たされる事となった。さながら『混乱バベル』の祟りの如く。



「ラワシラハ チ イキチ」

「ミフセ マ ホフ ブヂテ マ?」

「ルルヤ ケホゾソフヒ ワジャ?  ナテマネ リ」

「サマ リゲビ シマス シワゴ」

「ユカハ、フェリアーラ ザネ アタネ イガテ ハヌソマ マネショテ チ?」

「タセ ラモネ マ マネショテ ン ヒヌチス ホワキヂワドセ イガテ リ」

「サノハソ ケホゾエ マゴリ シフマチ シュネジュシ シニ?」

「サマリゲビ シマス シワゴ」


 負傷者の治療をしていたと思しい騎士団と傭兵団の皆の内手空きの者が集まって、リアラのベッドサイドで混乱の態で騒がしく相談していた。……その中に囲まれながら、リアラは心底心細かった。言っている事が、分からない。誰の言う事も。


「どうしよう……どうすれば……あの自爆の、何が、一体どうして……」


 思わずリアラは呟くが、それを聞いた皆は、やはり悲しげな表情を浮かべるが答える事はできない。通じないのだ。


(……考えろ。考えるんだ)


 これは玩想郷チートピア相手とはいえ殺生を重ねた報いか、という思いに囚われそうになるのを押さえ込む。……事前の調査によれば、『混乱バベル』もその力を悪用し軍団の尖兵として破壊工作を行い、人々から言葉を奪い、混乱と恐怖の中で殺してきた存在だ。


考えなければ。……ルルヤさんが、さっきから、同じ言葉を繰り返し、とても、混乱して……怯えたように辛そうだ。このままだったらどうしようと思う、けど。


「ルルヤ」

「リリ、リアラ!」


 名を、呼んだ。名を、呼び返してくれた。……強く思った結果、分かったことが一つある。先ほどからのやりとり、固有名詞は少なくとも聞き取れている。つまりこれは、混珠こんじゅ語の音はそのままに聞き取れているという事だ。


「ミレミ」

「ミ ネワ!」

「フェリアーラ、ユカハ」

「シイト リ! ムチエ ワビシ! サネチ!」「ジャミ セイウ……」


 ユカハも同じ考えに達したらしくうなずき、それをルルヤに向き直り説明する。少し、ルルヤさんの表情が明るくなったと見てとって、リアラは力付けられた。


「……ビハヘシャ チズチ ミエフウ アウ マ シイト ヂ」


名無ナナシが、顔を近づけてきて名にかいっていた。その言葉はわからなかったが、その意味は何となくわかった。名無ナナシの名前は、名前だけど固有名詞ではない。……名無ナナシならそれに気づくだろうと思った。


名無ナナシ之権兵衛、傭兵、娼婦之子」

「シシヌマバワドト ナノロフ ギョネケマラ」


 リアラが言うと、名無ナナシも言う。分かったか? というような名無ナナシの視線に、リアラはこくりとうなずいた。この音が、混珠こんじゅ語でいう、名無ナナシ之権兵衛、傭兵、娼婦之子、という意味の単語、なのだろう。……ジョン・ドゥ・マーセナリー・サノバビッチという聞こえる音と書く時の漢字の表記どっちに対応しているのか、というのも……今の名無ナナシの名乗りの区切りの数で分かった。区切りの数は三つ、四つじゃない。前者だ。


「……大丈夫。頑張る。ありがとう、皆」


 リアラはそう言って微笑んだ。大丈夫ではない。何を頑張ればいいのかもまだわからない。けれども。少しでも皆を安心させたくて。言葉の意味が伝わらないだろうけれど……ありがとうといいたくて、少しでも。


「リアラ」「リアラジャワ」「リアラ」「リアラキワ」


 それに、皆もその心に感じ入った表情になって、健気なと思う様子のフェリアーラ、頑張って何とかしないとという様子のユカハ、良かったと思うリアラだったが。全くお前って女? は大した奴だよ、というようの名無ナナシの表情の中に、無理しやがってと言う様な察しと、その上でそれに乗って、何とかしてやるから無理すんなよ、と言う様な見破った理解の強さがあるのが、恥ずかしさと心強さが入り交じるようで、また逆にそれでも只管心配そうなおろおろが抜けないルルヤさんが、かわいいと思うと同時にすまなくて心配だった。


「ヲホホツナネ ヲエビヨ チフケヨイヤネ チヨノエビヨマ ン チヨエワビ  ザノチ ルテ チタ クハ ジョネキイヤネ ス ヒヨソフエ タ ナゼワビ ソノハ ジョネヒフ ン ヌニドカ ヘラヌゴタ」


 名無ナナシが皆に何か語り始めた。それにユカハもうなずく。少しほっとして、だが間に合わない、足りないという風に、皆がやがやと話し合う。恐らく、と、推理する。つまりこれは最悪でも、一から混珠こんじゅ語を学び直せば何とかなるという事だ。皆が話しているのは、それは確かに希望だが……要するに玩想郷チートピアとの戦いにおいて、とてもではないがそれを待ってはいられないという事だろう。


(僕もそう思う)


 だから、何とかしなければ。……思い立ってリアラは【真竜シュムシュの宝玉】にアクセスした。アクセスが出来るか、アクセスして過去の文書は読めるか、自分の書いた文書は読めるか、それを確認すれば、より情報が絞り込める。


 後はそれと、それを伝える手段だ。【宝玉】にアクセスできれば、かつて読んだ文献を見る事が出来る。その中には自分で入力したソティアさんの研究資料もあれば、読んで内容を暗記した真竜シュムシュに関する古い記録もある。……ルルヤさんや昔の真竜シュムシュ教徒が使う古語が現代混珠こんじゅ語とどれくらい違うかわからないが……少なくともルルヤさんとの最初の二人きりのやりとりは古語で、今ルルヤさんは現代語で皆と会話してると思うけど……ともかく、幾度かの伝言を交えれば、幾つかの単語は理解できるようになる筈。現状の理解と対策の確立に……皆も動いてくれている以上、僕に出来るのは少しでも情報を伝える事。その為の、一助にもなる、と。


 【宝玉】の閲覧利益を開く。


 【入手物・39】。今見る表示は【〒■●▼★∴■●∵★▽★・#^】。


(前に謎解の時に知ったけど、混珠こんじゅ文字は母音と子音を別々に記載し組み合わせ表現する形だった筈……数字は地球のアラビア数字と同じ様な記載で……ううん、複雑だなあ……。ああ、そうだ。確か言語に関するソティアさんの研究があった。精霊降臨以前やそれに近い頃の言語の資料、その頃は今と違いもっと言語が多く……そうだ、「今の、目的語・動詞・主語という語順と違っているものも多かったんですよ。色々の当時の言葉が入り混じった結果、実際には今の言葉もそこまで整然としていませんけど」って……言ってた。日本語とも英語とも全然違う事を……)



 それから数日の間、実に様々な検査調査が行われた。また、少しづつ、かつ断片的ながら、リアラにも混珠こんじゅ語単語の意味を掴み……交代で回復魔法や調査魔法をかけ続けている面子とは別の面々に平行して見よう見まねで混珠こんじゅ文字を書き反応で正誤を確かめ……分かった情報が何とか共有された。まず、状態異常を回復する魔法では治療ができなかった事、【宝玉】へのアクセスが可能である事から竜術は今機能している事、件の自爆は魔術と欲能チートの偶発的な混合である事、それがなぜ効果を及ぼしたのかについては一瞬だけ【鱗棘】の効果が弱まったのではないかという事、本来なら【血潮】の効果でとっくに直っている筈の事……その理由が、本来なら分からない事。


「リアラ ムチヒヒ ラネフネラハ チ フイ」

「リアラ バコワ シアホシフ イビ」

「リアラ バコワ シチチウヌソフレヂ タハハ ラワシラハスリ ムヒホ ヂ」

「ツシン ソセビトヒマス タハハ ミヒイ ヂ ナヨノヂ ムヒホ ヂ」


 その間ルルヤはずっとリアラの側に居て……終始悲しげに詫び続けていた。戦場での猛々しさと正反対の、戦いよりも別の事に心を砕いている時の彼女は、こんなにも繊細なのかと思わせる表情で。


「そんな事、ないです。ルルヤさんは、自分を卑下するような事は、何も、ない。……あー、ええと……ルルヤ クゾ ヘエシ テビキフ ヘル」


 思わず日本語で言った後、苦労して何とか混珠こんじゅ語を捻りだそうとし……それに対し憂い顔が吹っ飛ぶような驚きと乙女としての喜び混じりの恥じらいの表情をルルヤは浮かべ……自嘲卑下を退治する事には成功したが、何か発言に間違いというか誤訳があったようだ、と、リアラも赤面し周知する羽目になり。


「リアラ ヂ キブチフヒ ヒヒテ ヤニ ヘエシナ ブギャテ ミワイヌ アミセフオ ヒューヒュー」


 過ぎた自虐はよくないぜと同じくルルヤを諭していた名無ナナシが、そんな二人を口笛を吹きながらからかい、三人とも三者三様に苦笑した。



「ミウイヘ ヤネラテ ヂ ミマ」

「……ゼヒアス ヂ? ルカホソ ラハ ザネフネ?」


 それが大きく変化し、状況が解決したのは……魔族軍別動隊の壊滅を調査していた調査隊からの報告に始まる。


 リアラはそれを状況が解決してから改めて聞く事になったのだが、聞いた時は随分と驚く羽目になった。曰く……


 〈魔族軍別動隊は、唯一匹の魔族軍に所属しない別の豚鬼オークによって壊滅させられた。その豚鬼オークは、鬣を結い、通常豚鬼オークが着用する腰巻ではなく、幅の広い褌を着用していた。独特の徒手格闘技と、その徒手格闘技を強化する欲能チートを用いていた。そして欲能チートを用いている、つまり転生者でありながら、自分は玩想郷チートピアの者ではないと偵察隊に語り交流し……話を聞いたあと、リアラについて幾つか訪ね、混珠こんじゅ語ではない文字を書いて、これをリアラに読ませれば治るであろうと言い、自分は別にやらねばならぬ事があるので、と言い立ち去った〉のだと言う。


 世にも珍しいその手紙には、こう書かれていた。日本語で。


「魔法の力は、心の力。気力、精神、心の修養が無くば揺らぐのは、相撲の取り組みと同じ。恐らくその戦いの時、自分に近しいかもしれない存在を殺めた事で、心が一瞬弱った事で欲能チートの効果を受け、それが心に引っ掛かった結果、自己治癒の術が上手く働かなくなっていたのでしょう。優しい事は良い事ですが、心が揺らぐ事は混珠こんじゅの戦いにおいても相撲道においても負けに繋がる危険な事。どうか心強く、その戦い、殺生と言えど救世の菩薩道と心得下さい。件の魔族軍とは対立し続けた身、その悪行を奴等が最初からゲーム感覚で楽しんで積極的に行っていた事、あくまで『混乱バベル』個人は悪党であった事、見知っておりますれば、それと戦い打倒する事が悪行ならざる事、申し上げさせて頂きます。魔族の身故中々人里には参れませぬが、自分も玩想郷チートピアの行いには抵抗する身、いずれお力添えすべく、ご活躍の噂をお聞きしたとき以来力士豚鬼リキシ・オークとして相撲道で出来る事を行うべく鍛練や活動を行っております。この文がお力添えとなりますよう」



「……ああ。って、力士豚鬼リキシ・オーク!? 何それ!? あ、まさか!? 相撲取りで、転生者で、玩想郷チートピアと戦えるくらい強いって……国際横綱カルテル事件で亡くなった横綱高瀬踏関!? うわ、転生してたの!? て、手形とサインも付けてほしかった……!」


 言われて、リアラは改めて気づいたのだ。あの時感じた、じくじくとした罪悪感。転生前は善人だったのではないか、やむを得ずああなったのではないか、それを殺したのではないかという胸の閊え。それを無意識に抱え、それが原因だった事にその瞬間思い当たり、そして、敵が真に悪であった事を改めて教えられたことで、その閊えが取れた瞬間『混乱バベル』の呪いは完調となった竜術が即座に祓っていた。その納得直後、アドバイス相手の珍奇な情報とその正体……他の横綱から受けた粛清制裁じみた危険相撲行為による負傷、弟弟子による彼以外の横綱による八百長他の組織的違法行為の告発、その弟弟子への集団暴行に対する正当防衛による凶器を持っていた暴行参加力士全員を素手で気絶させ制圧、その時の負傷による死と事を隠蔽しようとした業界の偽装工作の発覚で国民を騒然とさせた一代事件の結果伝説となった横綱の存在に思い当たり、吃驚したリアラの叫びが混珠こんじゅ語で響き渡り、瞬間全員目を丸くして驚いた。



「……うっかりしていた! 基本中の基本を!」

「……悪い意味で、そういう葛藤は慣れちまってたが故、ってやつだな」


 そして後からその理由をリアラから聞かされ、ぴしゃと額に手をやってルルヤと名無ナナシが慨嘆した。それはある意味、戦人であるが故の盲点であり。


「……団長は、気づいていて? だから偵察隊にその豚鬼オークに接するよう……」

「薄々だけど。フェリアーラも、そう思っていたのじゃない?」

「ある程度調べがついた段階でそうではないか、とは。ただ、だとすると、当人の心の問題ですから、ある程度の時間で何とかなるかと……まさか、こんな突拍子もない展開で解決するとは、さすがに思いませんでしたが」


 そして騎士としては未熟な面もあったが姫として人の心に細やかであったユカハと、それに接してきたフェリアーラが逆に気づき、上手く手を打ってこの事態を招き寄せていたという事を知るのであった。


「いずれにせよ、これでリアラさんに改めてお礼が言えるわね。『混乱バベル』を素早く倒してくれた結果回復魔法を使用できる時期が早まって、そのお陰で負傷者を救うことができたんだから」


 そんな騎士主従の会話は、今はまだ待った方がいいわね、というユカハの表情で打ち切られた。その視線の先には、感極まってリアラに抱きつくルルヤの姿。


「リアラ、ここ数日何を言っていたのか、改めて教えて貰うぞ。それにしても」


 ともあれ暫く胸の谷間でリアラを溺れかけさせたあと、無事の落着にほっとして、ルルヤはリアラに笑いかけ。


「やはりリアラの心は、優しいじゃないか。それが繊細さという形で出たとしても、私は今回の事、別に何も迷惑したとは思わんぞ。そういうリアラでいてくれ」

「……~~~っ……!!」

「な、何だ、どうした!?」


 カイシャリアⅦとの戦いで直面した己の醜さとの対峙を救ってくれた過去を思い起こさせる言葉に、リアラが涙を思わず零して、ルルヤが笑顔から一転またあわあわと慌て、心配が止まらないリアラへの豊かな愛情を示して……


 それがこの一件の最後の一幕だった。力士豚鬼リキシ・オークについては今はまだ別の物語だが、それもまたリアラとルルヤの物語、それと交わる物語。


何時の日か、別の話にて語られるいずれふくせんとしてきのうする事になるだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る