・断章第一話「混珠飯食堂~孤独じゃないグルメ~」
・断章第一話「
「日誌、リアラ・ソアフ・シュム・パロン記、人歴2703年青月小拍月欠周半月日。今朝、食堂の厨房で長羊の枝肉を見つけた。割いた腹にはしっかりと下拵えがされていた。この店は僕達にかかっている。偶々で入った僕達に……」
昔見たアメコミを年頃らしく何となく真似て、わざと低めしゃがれさせた声でそう呟きながら、リアラは食堂デヒノ亭の厨房で【宝珠】の記録機能を使い日記をつける。豚と違い丸羊に劣るとはいえ肥育の間羊毛を毎年産出する長羊は豚より普及した食材だが、地球、中でも日本からの転生者にとってはやはり丸ごとの枝肉はインパクトが強かった。書き初めの一節を記し、暫く首をかしげた後、主に何とはなしに、ほんの少し何かの霊感を感じて、口実をつけて書き加えた。
「何となく、万が一これから先、僕と同じような出自で
以下が、その内容である。
それ以前、精霊を
それらと比べて最も使われていない歴法である、そもそも精霊が人族に降臨し、魔法が始まった〔当時は全て霊術と呼称されていたと言われていたが、霊能、霊技、霊力という呼称も存在し、また霊術を得て獣より有利を得るは卑怯と霊を拒んだ〈無霊の狩人〉に関する獣人達に伝わる伝承等も、ソティアさんのフィールドワークで発見されている。このように、一般的にこの歴法は魔法研究等において使われる学術用語としての面が強い〕時代から勘定するのを霊歴と言い、これによれば今年は霊歴7833年に当たる。
そして最も古いのが、精霊達が降臨時に人々に教え、そして、人々の研究によりまず間違いなしとされる、この
これを長いと見るか短いと見るかは、転生者としては難しいところだ。地球46億年の歴史と比べれば、確かに非常に短い。だが、キリスト教における天地創造紀元とも呼ばれるビザンツ歴が七千数百年だった筈である事を考えると、それよりは大分長い。何しろこの
ともあれ、引き続き述べるならば、
龍年は各九十日間の青月・赤月・黄月・白月という、実際の月の変化を反映した春夏秋冬を表す4色月に分けられ、1色月間に月は三回満ち欠けし、大・中・小と新月を経る度に大きさを変える。これは
そして拍月の月が満ちていく過程を満周、欠けていく周期を欠周と言い、15日単位のこれをあわせて周と呼び、この周が日より上で最小の年月単位となる。
「いよいよ、今日だねえ……託したからね、頼むよ、皆」
「おう、やってやるぜ!」
「アタシも、下拵えなら幾らでも手伝えるし、力仕事なら任せておけ。リアラ?」
「あ、はいっ。準備、ありがとうございましたっ!」
日記がひと段落した時、背後から声をかけられ振り返るリアラ。そこには、この食堂デヒノ亭の女将であるワーサ・デヒノさんと、料理人見習いの少年ティスタ・クット、そしてルルヤの姿。リアラは返事をして頷くと、【宝珠】の術式を切り替えながら、身支度を整え始めた。
即ち、清潔に手を洗い、髪を頭巾で覆い……エプロンを着用したのだ。
そう、これより始まるは、
即ち。
(〈人類国家〉時代の古法で、競合する料理店や宿屋同士の合法的決闘方法として法制化されてるとはいえ、まさか
……『
((……本当に
思考どころか現代
((お前では相手にもならねば広告にもならん! 最もこんな時代だ、古いものはいずれ消え去る、どっちみち、何もできぬわ!))
((できらぁっ!))
この街を訪れた『
それを知った『
既に味勝負の契約は交わされていた事から、挑発に乗ってしまった事へのティスタ君の後悔やワーサさんの食堂の存続に関する対話等のすったもんだの末に、相手が味勝負に引きずり込む長髪の為に設えた助っ人OKの条件を使い、追加の料理人として介入する事になったのだった。……ビキニアーマーを隠してしまえば、まだ奴程度の下っ端に入っている情報ではこっちの正体を見破られる事が無かったのは幸いだった。ビキニアーマーという要素のインパクトが、他の情報を押し隠したのだ。踊り子への偽装と並ぶ、戦闘以外でビキニアーマーに助けられた結果であった。
((ゴメン。本当に、ごめん。……あいつが、古いものは皆無くなるって言った時、エクルガ先生の事、思っちゃって。……尊敬していた人も、凄いと思っていた技も、大事な思い出も、全部消えちゃうのか、って……〈戦争〉がどんどん起きるようなこんな時代に何小さい事怖がってるんだって言うかもしれないけど……それでも、凄く嫌だったんだ))
((望まれてる、かい。こんな時代だからこそ昔ながらの味が。ほっとするってかい。嬉しい事言ってくれるじゃない。それじゃ止める訳にもいかないねえ!))
「(【宝玉】記録展開、【ソティアさんの研究記録・17-食文化】、【入手物・39】、【冒険記録-ポンヤ家晩餐会事件】【冒険記録-魔族料理屋
その様々な記憶を一瞬回想し、そして【宝珠】に記録した料理に関する様々なデータを片っ端から脳裏に引き出しながら、リアラは……昨日で終わった相手の
それぞれの特性としては、北方料理は狩闘・採探系の文化による自然産物を茹でる・焼く・薫製・発酵・生食等を基本とするシンプルな料理で、動物食から必要栄養素を取得しきる為の狩闘民文化である血や内蔵を使った料理や獣肉発酵食品等が特徴で、一際癖が強い。しかし一見すると原始的に見えるが食肉加工における知恵は高度であり、帰省中や病原菌を避けて生食する技術やそれに近い栄養素を維持できるぎりぎりの加工で済ます技術、少ない燃料と水分で効率的に茹でる技法、包んで焼く、包んだ上で埋めて焼く、毛を取り去った皮をつけたまま焼く等の肉汁を逃がさぬ様々な焼き方等、決して原始的なのではなく進化洗練の方向性が異なるのだと言える。
その、方向性が違うだけなのだと言う事を恐らく
諸島料理は必然シーフードが中心となるが、諸島で算出する様々な果実や香辛料を用いる事で、驚くほど変化に富む。それにより北方料理の獣肉発酵食品と対を成す魚介系発酵調味料の癖を消し、旨味だけを引き出すのだ。また、取れたての魚介が豊富なため生食文化も発達しており、魚介の鮮度の維持と生食可能な鮮度の見分け、香辛料を用いた消毒、寄生虫や有毒部位の除去など北方料理の獣肉加工と同様の技術発展を遂げているのも特徴だ。
砂海料理は中小諸国・諸島海との交易を食材調達の基本としているが、それに加え砂羊の乳製品や肉、
種族料理については種々様々だが、代表的なものの特徴を述べるならば、例えば
そして、中部料理であるが、これは各地の食文化の特徴を少しづつ取り混ぜつつ、中部の肥沃な土地の農畜産物を主に用いるものである。同じ中部料理といっても海岸であれば海産物の消費が増え、内陸では農畜産物が増える傾向があるが、内陸においても淡水魚の河川湖沼からの漁獲や養魚池による養殖等あり、様々な乳製品、畑で野菜と共に生産される香草、そして歴史ある連合帝国や古い歴史を持つ各地の王城や協会で醸される酒や発酵調味料。主食となるのは
今日この日の味勝負においては、この中部料理がリアラ達の主な献立となる。食堂の元々のメニューがそうであった為だ。そして先代料理人の残した帳面、ティスタ少年が難儀していた走り書きめいたそれを、幸いにしてリアラが各地から集めた知識と、ティスタ少年が師から授けられていた修行や、その言葉の記憶が合わさることで解き明かすことができた為だった。
(これがなければ、勝負にならなかったかも)
何しろ、ルルヤは至極単純な料理しか出来ない。随分昔に下界から断絶していたウルカディクの隠れ里は、文化的に停滞していたらしかった。【
(お陰で。今日も又一人じゃない)
亡き料理人と彼が縁深く結んでくれた少年と女将に、そして、普段のように絶対の力にならずとも、それでも手伝ってくれるルルヤに、リアラは内心感謝した。
そして何より、その、些細な改良を重ね続けた洗練されたレシピは、リアラに、些か大仰な表現かもしれないが、大義を与えてくれた。
それは、『
「さあ、やるぞ!」
リアラはきっと目を見開いて、眼前の会場を見つめ、そして勝負が始まった。
「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい!」
じゅうわああああああっ……!
熱された鉄板の上に、零れ落ちた液体が沸騰し焦げを作る音と、沸き、焦げる事によって放たれる複雑で香ばしい香りが辺りに立ち込め、その脇、別の料理を煮込んだ大鍋から放たれる複合的な香辛料の香りが、異性のいい掛け声と共に客を誘う。
「おお、いい音……!」
「旨そうな香りだな。このスパイスの混ぜ方は初めて嗅ぐ匂いだ……」
(……流石に、手強い!)
率先して客を呼ばわる、和食板前風装束だがそれに縛られぬ『
(
あくまで庶民的な食堂における、そのメニューでその後の営業の収支をつけられる範囲を見切りながらの過酷な味勝負。無論それこそ地球には山ほどもっと高級で凝った調理法を施した料理があるが、
(ふはははは! 何百種ものハーブ・スパイスと発酵調味料を調べあげ、再現は完璧! 住民の好みもリサーチ済み! 匂いと音の衝撃で思わず口にすれば、ふっ、味でも十分勝てるが、『
食べ比べができるよう少量づつ盛られた料理。自分の所の客がそれぞれ食べ終わった瞬間、緊迫の表情を浮かべるのは今度は『
(馬鹿な、
「どうぞ、めしあがれ!」
常の勝負であれば、一口食べさせた時点でもう腹一杯になるまで己の料理に夢中になる筈の客が、きちんと向こうの料理も食べに行っている……
「あっ!?」「?」
「い、いえ、何でもございません、失礼致しました……(まさか、あの女共!?)」
一瞬漏れた声。怪訝な表情を浮かべる客に、客商売なので物腰丁寧に謝りながら、『
(ま、まさか……〈
自分達新天地
(わ、私は殺していない、今の所直接殺してはいないぞ!? 路頭に迷わせた人間は何人もいるが……そいつらの生死は知らんがっ……)
いざという時の為の手段を入れた内ポケットに手をやるが、自分から仕掛ける心算は毛頭なかった。むしろ、このまま味勝負で勝ってそれで相手が引き下がってくれればそれに越したことはないと……
「なん、だと……!?」
身の危険のほうに意識が行き、目をそらしていた味勝負事態に、改めて視線を向け。『
塩、甘味、酢、油、発酵調味料、出汁、酒、ハーブ、スパイス。甘味は砂糖、果汁、蜜、飴、煮果。酢は穀物酢、果実酢、酸味果汁。油は種実油、果実油、乳脂、乳油、獣脂、鳥油。発酵調味料は穀醤、茸醤、魚醤、肉醤。出汁は魚粗出汁各種、海藻出汁各種、茸出汁各種、獣骨・獣粗出汁各種、菜片出汁各種。酒は、穀酒発泡非発泡二種、地球でいうワインやシードルや椰子酒を含む果実酒各種、蜜酒、乳酒、樹液酒、そしてそれらの蒸留酒。ハーブとスパイスの種類は数えきれない程。
地球の伝統料理においては、調味において香辛料に重きをおく文化、出汁や発酵調味料に重きを置く文化、油脂に重きを置く文化があるが。
そう、これは各地の伝統料理の情報が共有され、各地の食材が物流で共有された、地球の現代料理と同等の条件を有している事を示す。
地球にあり
そして。地球の歴史は
加えて何より。
「姉ちゃんのくれたヒント、助かったぜ! そら、エクルカ先生の最後の新作と、オイラの最初の作品だいっ、食ってくれよな!」
「僕より僕の先生、ソティア・パフィアフュさんに感謝してくれると嬉しいです! そしてティスタ君、君と君の師匠、ウビスガ・エクルガ先生に僕から感謝を!」
「ううん、肉汁が溢れ滴る!」
「うわっ、こんなにふわっふわだ……臭みも無い、いい匂いと、香ばしさと、旨味が、この値段でこんなに洗練されてる……ホントにこの値段でいいのかい!?」
「これ、何!? 食べたことないよ!?」
新しい料理は敵だけの物ではない。先にも言った通り、
古来からの名物である香辛料と香料と発酵調味料のタレに漬けた肉の串焼きを改良した物がまず一皿。本当に旨いタレは肉の癖を消すのではなく肉の癖を活かすのだとより繊細に改め、安い細切れ肉を使って家庭では作られるそれを太い串と大振りに切った肉で行いその後に各自に取り分ける風に変える事でよりジューシーさを保ち、更に火で炙る時の串の位置取りと角度、串に刺す順番を工夫し串の下に金皿を置く事で、上に刺さった肉から滴る油や肉汁が下に刺さった野菜や皿に置かれたパンに染み込み、副菜主食も美味として更に栄養バランスも改善するウビスガ氏の名案。
そこにソティアさんの安い香草をより良く活用する食文化に関する研究成果が加わり、そしてまた精肉中に発生した端切れ肉を次の一皿に用いることで、大振り肉を使うことによる価格の上昇は最小限。その端切れ肉を叩き良く練り他にも様々な材料を挽き込んだ挽肉生地は、肉団子にして煮込みに入れて良く種を抜いた野菜に詰めてオーブンで焼いて良くパン生地で包んで焼いても良く、一つの生地から高い応用を生む。これら団子、詰め物包み焼きもまた個展ではあるが、挽肉生地に混ぜる素材の吟味、また更に中部名産のチーズや卵を合わせたり、ソースを工夫したり、パンを焼くのではなく
そして更に加わるのは、香草と共に蒸した後皮目を焼かれた
((この事実は、きっと沢山の人を助けられる))
((そうすれば……リアラ姉ちゃんのソティアさんも、エクルカ先生も……きっと、幸せだろうな))
捨て値で売られたり廃棄されようとしていたのを濡らした布でくるめば平気で暫く生きるしぶとさを活かしてかき集めた鰻鯰鯉は、材料代の節約にも大きく貢献してくれたが、これがきちんと取り扱われるようになれば養魚者の為にもなるし、支社の名誉にも、元祖の店としてのデヒノ亭の為にもなるだろう。その未来の為にも負けるわけにはいかない!
「これがリアラの故郷の食べ物か……成る程、美味しい。けど……」
料理手伝いの合間どさくさで自分達側の料理だけじゃなく相手の料理にも手を出したルルヤが、唇についたお好み焼きソースを舐めとりながら、真剣な表情で呟く。
「むううっ……! (畜生、これまでは
こちらも相手料理の味を見た『
「しまった! ソースがぁっ!?」
その原因がついに破裂する。即ち、食材の在庫切れ。チェーン店本店で作らせている、本来は安定供給可能な筈の独自ブランド食材が、交易上の混乱において開店セール+味勝負分として本来持ち込むはずの量が届かず、本来予定の三分の二程しか持ち込めていなかったのだ。
「今です!」「さあどうぞ、さあどうぞっ!!」
そしてその隙を見逃すはずもなく、リアラ達は攻勢を強め……!
「ぐうう……」
「やったーっ!」「やったよお前さん!」「よっしゃーっ!」
そして結果は、デヒノ亭の勝利であった。審査に参加した町の人全員の投票による結果。『
味勝負は、これにて終わった。
だが……
ある意味、短いが、真の戦いは此処からだった。
「わ、私を、どうするつもりだ」
祭りのようにごった返す会場からこっそり逃げようとした『
「わ、私は殺してない! 味勝負は合法行為だ! 乗っ取った店でも、た、多少こき使いはしたが、殺してはおらんぞ!? なのに私を殺すのではあるまいな!?」
怯える『
……リアラは、そっとルルヤの顔を見た。ルルヤは、戦場並みに深刻な顔をしていたが、そこからは苦悩が伝わってきた。
それは二人にとって正に難題であった。
各地の被害に一刻も早く駆けつける為、常に全力疾走する様に戦い続けてきたが故に、これまでそういった相手が現れた場合、どう対処するか決める暇も無かった。それが、遂に、二人に突きつけられたのだ。……よりによって味勝負が原因で!
(どう、します。ルルヤさん)
こうして路地裏に追いつめたのも、『
(………………)
リアラの言葉に、ルルヤは沈黙を保った。リアラは、ルルヤの横顔を見た。その表情には、痛ましい混乱があった。
(ルルヤ、さん?)
それに、リアラはひどくぎくりとした。その感情を【宝玉】文通にリアラは書き込まなかった。これほどまで、という思いと、混乱しているルルヤに当惑を気取られてそれでルルヤがショックを受けることを懸念して、表情を沈黙に対する只の心配に保とうとした。そしてルルヤも、次に思った感情を【宝玉】に書き込めなかった。
(私は。……こんな男まで、殺したい、のか?)
ルルヤは、己の中に確かにこの男に、この程度の力しか持たぬ命乞いする小物にまでも憎悪と殺意がある事を認めて、狼狽し、己を恐れたのだ。今こうしてこの局面に立つまで、殆ど殺すことを当然と考えていた己を。……だが実際、乗っ取った店において少ない人員をこき使えば不要と判断され、解雇された者は苦渋を舐めただろうし、それは悪であり見過ごせぬ行為だし、家財を奪われ困窮死した者もいたかもしれぬ。後者が事実であれば道義的に殺すに値する、と同意する者も居るやもしれぬ。だが、〈しれぬ〉で、見せしめに死体を曝し、『
そして、それに対してリアラもまた、苦い自己嫌悪を覚えた。
(……リアラ)
ルルヤはリアラを見た。自分と同じく苦渋するリアラを。それが、ルルヤの心を動かした。ルルヤは、己に強いた。
(……考えろ、私。誓った筈だ、憎悪と復讐心の奔馬を乗りこなして見せると)
嘗て自分はリアラに語った。正義は遠いが、正義について考え続け、目指し続けろと。ソレこそが、辛うじて正義に近くある道だ、と。そして、正義であろうとし続けよう、と。その言葉を、リアラを裏切るわけにはいかない、と。だから。
「……ならば、貴様」
「……リアラさん」
だから、話しかけようとした。問いかけようとした。問い続け、答えに近づくために。問う内容は考えていた。命乞いをするというのであれば、如何に悔い改める、と。罪を犯して悔い改める者等罪を犯さぬ者に比べれば大したものではなく後者こそ賞賛されるべきと賢者は言うが、悔い改めれば許されるのでなければ誰も悔い改めず悪事を続けるが故に。もしお前が解雇した者の中に困窮の結果死んだものが居たらお前が殺したに近いがどうする、有無は知らぬがならばこれから調べよう、その上でそれが判明した時どうする、と。そう、問おうとした。……そんなルルヤの己が暴走する憎悪を克己せんと足掻く横顔に、リアラは安堵し、その問答を支援しようとし。
「アッアッアッアッ!?」「!?」
それが一瞬の隙を生んだ。その瞬間、『
「ガブガブ、嫌だ、ゲホッ、やめろ、ゴク、やめ……アアーッ!!」
だが噎せ返りながら拒絶を叫ぶその様子は、『
(情報を加工すれば良い醜聞になりえますね、ここでの戦闘は。そして、うまく使えれば良い弱点になりえますね、この殺意と憎悪は。何やら頑張ろうとしていたようですが、今ここで完全に乗り越えたり妥協して頂いては困ります)
同時。遥か後方、都の劇場。詩を吟じ終え喝采を受けながら内心『
(この醜聞を、その心理的弱点を利用して、何れ貴方達を破滅させるのはこの私、この『
『
そして、スープを摂取した『
「UUUUUUMAAAAAIIIIIZOOOOOOOOOO!!!」
「これは……っ!? ルルヤさん、防戦を! けど、どうします!」
「っ、私は……!」
リアラは蛇に動揺を示しながらも、考える事を止めまいとしたルルヤの助けになればと、問うように剣を抜き。ルルヤもまた、未だ結論の出ていない複雑な思いをそれでもまだ噛み締めながら、襲い掛かってくる『
戦いは、その後すぐ終わった。その内容結果については、今はまだ別の物語だがそれもまたリアラとルルヤの物語、何時の日か、
しかし、いずれにせよ。
「本当、有難うねえ。これ、少ないかもしれないけどお礼。それと、いつでもうちに来たらただで食べていいよっ。それくらいしかできなくてすまないけど……」
「リアラ姉ちゃん。姉ちゃんと一緒に料理したこと……絶対忘れねえ!」
それでも感謝が、二人の心に温もりを与える。
戦いは続く。旅は続く。
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