第二章
・第十五話「Next:続きから始まる現状戦況」
・第十五話「Next:続きから始まる現状戦況」
「いやあ、えらい事になったね、どうも。酷ぇ騒ぎだ」
異空間から己の部屋に再出現し『
それはこの
そして、己と同格の相手が討ち取られ、件の二人のビキニアーマー女戦士は自分達
それは、愚かしい想像力の欠如なのか、対外的には同格とされていても己の方が実際は勝っているのだから己は負けも殺されも滅びもせぬという自負か。それとも。
「
「正確に言えば、お前が伝えた情報だけで考えればそうなる、だろ、『
傍ら、確かに同じこの場所に表の顔においては属している相手だが、勝手に人の私室に転移出現した華やかで煌びやかな吟遊詩人の装いをした糸目の男に、緑衣の少年はうざったそうに言い、そしてその意図を問うた。
「何の用だよ、連合帝国筆頭宮廷詩人さん」
「なあに、どうやら、諦めも絶望も無い様子ですので。同じ〈帝国派〉として、今後について
互いに表の階級称号で呼び会う、
窓の外の風景は、八つの丘の間を二つの川が流れる土地に広がる巨大な町並みだ。
巨大な街を囲む尖塔を繋いだ八角形の城壁と優美なアーチを描く十の大門。
八角形の土地全体を覆う放射線状と八つの丘の頂点から始まる放射線状とが複雑なレースの網目を織り成す道路と清浄化の魔法を護岸に刻印された水路、川を跨ぎ区画や塔や神殿や廟や城櫓を繋ぎ屋根を完備し建物としての機能を持つ橋。
八つの丘の中心に座し列柱と尖塔とアーチとそれらを繋ぐ壁とドーム屋根で出来た宮殿、城壁と宮殿を連絡する貝殻のような螺旋塔に花弁のような出窓や狭間を備えた城櫓、八つの丘の頂点に建ち様々な神々や精霊や英雄聖人を祀る様々の様式で建てられ祭祀信仰の場としてだけでなく衛生保健等様々な役割を果たす神殿、そして大きな民間の建物は何れも雪白・砂黄・海青・夕赤・樹緑の石に草花や命煌めく川や神話伝説を象った浮き彫りとタイルを飾って造られ、小さな民間の建物や軽量を求められるものや屋台等の簡易な建物は木造だがそれらも樹液と油の塗料で保護された精緻で際密な寄木細工で一手間加え住民に美を与えていた。
馬車や騎獣や人々が行き交う路地は石で葺かれ、様々な出店も清潔に並び活気を、真鍮・青銅・石・樹液塗木の彫像や水時計を備えた噴水が彩りを添える。
即ち此処こそ〈人類国家〉の衣鉢を継ぐ
そして連合帝国筆頭宮廷詩人とは宮廷に出入りし詩歌を奉じる事を許された吟遊詩人の中で最秀とされる者にして吟遊詩人が諸々の風聞と事件や人物を吟じる報道者としての役目を持つ事から相談役としての権力を持つ存在であり、帝室顧問冒険者とは皇帝一族からの冒険の依頼を受ける縁故を持つ冒険者。
即ち
「いーだろ、座りたきゃ適当に座りな。んで、何から話すかだがな。お前、何で敵の戦力について誇張して話したんだ?」
そして『
「ええ、ええ。実際には『
「ですが何しろ、私達は恨みを数多買っている者が多い、似たような事は何処ででも起こりうる、用心するに越した事は無い……というのがまあ、情報操作の建前。で、本音は、これで下位の者達の統括がやり易くなる事です。強い敵は恐怖による結集と隷従の種です」
それだけではなかろうと思いながら『
「何にせよこれで、
「各派閥に分かれた上で、な。この一連の騒ぎの中、どの派閥が滅び、どの派閥が生き残り、どの派閥がビキニアーマーを狩るか。それが、最終的に
そう、自分達が属す組織が行う戦いについて皮肉げに言い合い……よってたかってビキニアーマーに血眼って、と、さすがに客観的に冷静に皮肉ぶるにはちょっと、と笑いあった後、やっぱ『
「
「その〈王国派〉が今回コケた訳だ。『
派閥を数え上げる『
「未だ新しい
空いた順番が第七位と第八位というのがポイントだ。下の者が繰り上がるにせよ空いた順位に新規の者が補充されるにせよ、万年十位である現状をよしとする『
「リスクとメリットでは、メリットが上回ると判断する事になるわけだ。つまり、〈王国派〉以外の派閥は、動くし、動かざるを得ない。少なくとも〈海賊派〉と〈教団派〉は確実にこの機に一気に勢力を広げようとするだろーな。どちらも派閥に
禁欲的な『
……
…………
………………
「
ZDOOOOOOOOOONNNNMMMMMM!!!! !!!!
『
回想しながら、『
「そーいう訳だけどさ。俺達がどーするかって、そっちでは何か考えてんの?」
状況を把握した上で『
「前提として私も貴方も、お互い現状は人知れず静かに振る舞いたい、という事から始めましょうか。貴方は一つ一つの運命操作による悲喜劇をじっくり味わいたいという欲望の為に、私はこの世界の情報の流れを支配する目的の為に。貴方と私の
「何が「真なる教えの成立の歴史に一切打算はあってはならぬ」だ、狂人め」
『
「となれば我々〈帝国派〉のとるべき道は〈海賊派〉〈教団派〉と協調する事無く、〈王国派〉と正面切って事を構えないまま〈王国派〉相手に将来的な
「その方針の為にどうするんだ? それと〈
こいつさっきからだらけ続けてこっちにばかり喋らせて、という『
「各地に点在する
妥当な論だなと『
「あと要るのは〈海賊派〉〈教団派〉が負けた場合負けた連中の残党を取り込む工作をかけとく事、それともう少し積極的な手に出るんなら、確実に倒せる場合〈
無論『
「非恭順者を罪をでっち上げ粛清すればよいのですよ。命惜しさに〈
「……ま、そーなるわな」
にっこり笑って公然の秘密を方言する『
(……さてはて、この状況、『
同時刻。〈絶え果て島〉。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
『
「どいつもこいつも、レベル低すぎだっつーの! お前もそう思うだろ!?」
そう、誰に言うとでも無く独り言にしては大きすぎる声で語り、『
「………………・」
奇妙な表情を『
「ま、まだ出番は無さそうだな。こっちにとっちゃ、それがいいんだけどさ。はっ、
尚、雑な口調で暫し呟き、何を対象にしたとも分からぬ雑言を吐き散らした後。
「『
……至極藪から棒に、宇宙的で、故に神秘的とすら錯覚しそうな程の虚無の表情で、『永遠』は呟いた。
その、『
『
カイシャリアⅦ解放より暫くの後。リアラとルルヤは、運命目掛け、真正面から対峙し、その方向へと再び歩きだそうとしていた。
山間の彼方此方から、押し付けられた
ハウラとソティアの体は、ルトア王国の郊外に埋葬せざるを得なかったが、持ち歩いていたハウラの小さな遺品を、此処に納めたのだ。故郷に帰れるように、と。
祈りを終えリアラは立ち上がり振り返り、ルルヤとミシーヤに頷き、言った。
「……もう、大丈夫です」
リアラとルルヤが連峰に暫時留まったのは、休息と復興の手助けという目的もあったがそれ以上に、ナアロ王国軍が再占領の為の軍事侵攻を行った場合、例え激戦を経た直後の体であっても迎撃し、撃退か最悪でも避難の時間を稼ぐ為でもあった。
過去に収集したものに加え此処の社長室や学園長室から押収した情報に記された
((世界は、穢されても美しいな。故郷から離れ、こう思ったのは初めてだ))
((……ええ。僕も
そう、覚悟を決めて敵が迫り来たならば見つける為、山の頂から周囲を見渡しながら、連峰の峡谷を見下ろし、二人交わした会話の記憶は、非常に鮮烈なものだった。幸い、短時間での急襲は無かった。いや、幸い、ではない。必然であった。
ナアロ王国の侵略の停止。それは
敵の混乱・内紛と、味方の存在。前者は彼我の規模の比較からいえば電撃的と言っていい速度での敵幹部への攻撃による、後者は之迄の人助けによる、抵抗の挙げた成果だ。そしてそれだけではなく、自由守護騎士団の派遣に正式なお墨付きを与えた諸国の内には、かつてリアラが、ハウラやソティアとともに旅をしていた頃、ソティアの知恵によって幾つかの事件を解決した事により覚えの目出度かった国もあった。かつての冒険が、今力になったのだ。その時に感じた懐かしさと涙の出る様な追憶と感動は、今もリアラの胸で燃えている。嘗て過ごした日々が、確かに人を助け、縁を結び、更なる人を救う礎になったのだという胸の奥に明日への活力が漲ってくるような感覚。その二つの効果により、敵が自由守護騎士団に竜術の護符が配布され対
「自由守護騎士団の皆様は、信頼のおける人達です。それに、この様子なら、今暫くは情勢は静かでしょう。それでも、もし何かあったら、自由守護騎士団の人達に《早文》の法術を頼んで下さい。あの時はそれを使える人が居ませんでしたけど……今度こそ、飛んでいきますから」
「分かったわ。大丈夫、今度こそ、守り抜くわ。おかげさまで、奴等から奪えた力もあるし。……本当、何から何まで……それなのに、また戦いに行くのに、助太刀もできなくて……」
祈りを終え、体力を回復したリアラとルルヤは、新たなる戦いへと赴こうとしていた。調べ上げた新たな情報から判明した各地の
それに対し竜術により操る力を逆に支配下に置いた事で本来『
「いいえ、いいえ! 路銀も用立てて貰いましたし、養生もさせて貰いました!」
「それに、そもそも
悪神の狂気を跳ね返し啖呵を切ったと思えぬ初々しい口調でリアラは答え、伝統を保つ狩
「……それに、これ以上奢られては、いかな
そう茶目っ気の効いた笑みを乗せて。自由守護騎士団が来ると解り旅立つ事を告げた昨晩は、解放当日の夜に勝るとも劣らぬ感謝と見送りの宴で。今はその翌日早朝、皆の見送りを受け街を出た後だ。その言葉に、漸くミシーヤもリアラも笑った。
「うん。本当、楽しいお見送りでした。……それじゃあ、また」
「ええ、また、よ。また会いましょう、姉さんと、アタシの、大事な人」
この、二人としての挨拶を交わす為に。ミシーヤは見送りの後、山林を走破し墓碑に参ったのだ。……悲しみは胸の中に。だけど悲しみの上に、笑顔を交わせた記憶を重ねる事は出来る。ハウラの見守りを確信しながら、最後に抱き合い、そして別れ。
「行きましょう、ルルヤさん」
「ああ、行くぞリアラ」
そして二人は、再びの旅立ちに踏み出した。その行く先に敵を見つめる瞳に、得た情報から知った敵の蛮行への怒りを宿し。
その視線の先、彼女達が立ち向かう存在は、それぞれ、全く異なる地球の側面。
即ち秩序。
「〈唯一〉を!」「「「「「「「「「「「〈唯一〉を!」」」」」」」」」」」
それは、皆顔も頭も覆う漆黒の長衣を纏い、朱塗りの鞍を置いた
何れも恐ろしい程完璧に整列し、そこにはその派閥に属する
それを率いるは、先頭を行く戦車を自らストイックに駆り、皆と同じ装束を纏いながら、しかして無冠にして王者を上回る威風、武装にして聖人に勝る峻厳な威光を纏う者、即ち新天地
即ち混沌。
「ヒャッハー!」「ヒィヤッハー!」「ヒャッハーッ!」
それは、各地で略奪してきたらしき、船としての種別も推進方法も雑多な、大型軍艦からジェットスキーやモーターボート程度の小型のものも含む、しかし軍船改造混在だが何れも必ず武装を施された、波を嘲笑うように進む無秩序の船団だ。
それに乗るのは、
おぞましい事に、そいつらは既に純粋な意味での人間の形ではない。ある者はまるで大海老の鋏のように両腕を己が胴程にも巨大化させ、ある者はまるで蝦蟇のように巨大な胴を持つ。上半身のみ肥大化し極度に短い足を持つ者、巨人の如き体と頭より太い首がまるで魚のように括れ無く胴と繋がり腕と脚の比率も歪なアンバランスに巨大化した者、人間を噛み砕ける程巨大な口と顔と頭を持つ者、飛蝗のように長い足を持つ者、異常に柔軟な軟体生物の体を持つ者。
これこそは、黒字に白髑髏の地球式海賊旗に、〈∞を鷲掴みにする拳〉の意匠を加えた旗を掲げるこの一団、ジャンデオジン海賊団の長たる新天地
そんな異形達の中で稀に居る普通の人類種〔人間、亜人等を統合した表現〕の姿をしたままの者は、これもどれも憎らしげで剽悍な面構えの、増大させられた身体ではなく自前の
何れにせよその者達も、『
『
「良き敵だ。竜よ。お前達は良き敵であり、良き存在だ」
『
「食らい甲斐が本当にありそうだってばよ、堪らねえ……!」
『
「願わくば我が神の教えに、お前達が従う事をこそ祈ろう。その教えを打ち倒そう。古き竜。さすれば我が神の教えはより権威を得る。世界はより〈唯一〉に近づく!」
何故なら『
「戦う! 勝つ! 必ず! あいつらを殺せる程度の奴なら、久しぶりにちょうどいい相手だ! もっと、強くなれる! オラ、わくわくしちまうぞ!」
何故ならば『
故に。
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