第二夜 “退屈な毎日の終わりはあの夢で”
6時間とはいえ、日直だったせいか一日が嫌に長く感じた。
あとは日誌を書いて提出し、教室の整頓や戸締りをすれば帰れる。
「
「ありがと
クラスで一番仲のいい友達と言えるであろう陽奈ちゃんに手を振り、机に向かった。
久しぶりに早く帰りたかった。
そんな気持ちを押し殺しながら、ひたすらに日誌に向かった手を動かし続けた。
久しくというのも、実はこんな性格をしていながらもクラス委員をやっている。
そのため、何かと先生に雑用を頼まれたり、用事があるから放課後の日直の仕事を押し付けられたりと、最近はまともに早く帰宅することができなかった。
ましてや昨日は体育祭だった為、先生達はいつも以上に扱いが雑で、毎日疲れきっていた。
しかし、体育祭の結果は私たちの団が優勝し、今までの雑用が報われたような気がして嬉しかった。
まぁ、そんな次の日に日直なのは大変だったが、ようやく日誌が書き終わり、やっと仕事に終わりが見えてきた。
「5時になりました。用事のない生徒は速やかに下校しましょう。繰り返します…───」
窓の外を見れば、外でやっている部活の声とともに、夕焼けが目に入る。
この時間に空が赤くなるのも秋になってきた証拠なのだろう。
「帰ろ。」
そんな独り言を残して、教室をあとにしようとした時、
「よかった、教室開いてた。」
急に誰かが入ってきた。サッカー部の松風だ。
「どうしたの?」
と、反射的に質問すると、忘れもん!と、汗を流しながら机に向かい、タオルを手に取った。
「じゃあな、楠木。お疲れ。」
手を挙げて去る彼の後ろ姿に、お疲れ、とひと声かけ、教室の鍵を閉めた。
見ての通り、私は友達はそこそこいるほうだと思ってる。
陽奈ちゃんをはじめ、クラスの皆とはなかはいいと思う。断言はできないけど。
誰もいない廊下は、ローファーの音だけがコツコツと鳴り響いていた。
3階の教室から、1階の職員室までは案外距離があり、一日の疲れをさらに増やすにはもってこいだ。
やっとの思いでたどり着いた職員室を前に、カバンを廊下におろす。
ガラガラと、古びた校舎らしい音を響かせながら扉を開けると、忙しそうに動いている担任を呼び止めた。
「須藤先生。」
「あぁ、楠木さん。日直お疲れ様でした。」
笑顔でそう告げた先生に、さようならと挨拶を交わすと、そそくさに職員室を出た。
廊下に置いておいた荷物を肩にかけ、次は校門へと足を進めた。
「ばいばーい」
「お疲れ様でした!」
そんな挨拶を横目に、帰って何をするか考え始めた。
まずは課題。やりたくはないが、明日提出の課題があるため終わらせなければならない。
その次はテレビだ。ずっと撮り溜めてたドラマを一気に観る。まぁ、ドラマだけではなく、バラエティに音楽番組、面白そうだからと撮っておいたアニメも見なければならない。
しかし、夜中になっていくことを考えると、思い出すのはあの夢のことだ。
また、あの夢を見るのかと思うと、どうも悩んでしまう。
やる気なんてそうそう起きない私が唯一やる気になるのがあの夢をどうするかという事だ。
占い師に見てもらった方がいいのだろか、と思ったこともあったが、占いはあまり信じれないほうなので諦めた。
しかし、あの夢のせいであまり眠れてない気もするため、どうにかしなければ、とついつい夜な夜な考え込んでしまう。
「ただいま」
「おかえり」
頭を悩ませながら歩く帰路は意外と早いもんだ。
電車通学にも関わらず、乗ったことも、降りたこともあまり覚えていない。
とはいえ、家には着いたのだからなんの問題もなかったんだろう。
真っ先に自室へと向かい、着替える間を惜しむように、制服のまま机に向かった。
学校ではありえない速さで課題に向き合っていく。
好きなことのためなら頑張るのが人間というものだ。
なんて偉そうに考えるのは結構テンションが高いからかもしれない。
ぶっ飛んだ考えをどうにか押さえ込み、結構な量の課題を40分でやってのけた。
そこから寝るまではそこそこ有意義な時間を過ごせた。
観たい録画番組を殆ど見終えることが出来たし、晩ご飯はオムライスという、また少し嬉しいメニューだった。
学校は憂鬱になる時が多いが、この嬉しさが味わえるのなら少しくらい頑張ってもいいだろうと改めて思えた。
さて、今は1時とあって家族もみんな寝てしまい、やけに静かになった。
それなのに起きてる自分はやはり夢について考えているからだ。
「よし…!!おやすみ!」
考えても拉致はあかない。寝るっきゃない。そう思い、気合を入れて目を瞑った。
夢の中で出会ったあなたは、最後まで美しかった 夜月時雨 @Sh_Ys__00
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