第3話名前で呼んで!

キーンコーンカーンとベルが鳴る。

「じゃあ帰るわ。」

ドアを開けようとすると中川がドン引きした目でこっちをみてくる。

「なんだ?」

あら中川さん怖いですわ!

「先輩?こうゆう時は危ないから送ってくよ!って言うんですよ?」

妹以外の女と手もつないだことない俺に言われても…

「お前ら全員送ってたら妹が俺のこと心配しちゃうから嫌だ。」



「うわーシスコン。」

「先輩シスコンだったんですねー」

「……シスターコンプレックス。」



「優しい兄弟愛と言っていただけると助かります。」

そう言ってドアを閉めた。さあ!帰ろう!

さすがに諦めたのか追いかけては来ない。

「待って!!」

引き止めてきたのは佐久間。急いで荷物を片付けてきたらしい。

「なんかようか?」

正直こいつが一番あの中で扱いにくいんだが。

「私も一緒に帰る。」

「俺お前の家知らないんだけど…」

そういうとだーくね、……じゃなくて佐久間は肩を落としてはぁとため息をつくとこちらに小走りできた。え?なんか変なこと言った?


「あなたの家の隣。」


う、嘘だろ!俺の家の付近にはこの高校の知り合いはいないはずなのに!!(そもそも知り合いすらいない。)

「わかった。じゃあ帰るか。」

そう言って2人で並び歩き始めた。



× × ×



俺の家はこの高校から電車で35分程度の場所にある。俺が少し離れた高校に来たのは理由があるがそれはまあいい。そんなことより………なんで俺 こいつと帰ってるんだ?

「ふんふふんふふ〜ん♪」

俺の真横には鼻歌混じりにスキップしている花凛(かわいい)がいた。中二病がこんなに可愛いとは。

「なあ佐久間?」

「なぁに?」

こいつ中二病がなきゃめっちゃかわいいんですけど

「お前ほんとに俺の家の隣なのか?」

俺の家は親が海外で仕事をしているため妹と俺しかいない。親が帰ってくるのも夏休みと冬休みくらいだ。しかも3日くらい。だから俺の家はご近所づきあいが極めて少ない。

「ほんと…」

ふーん。それしか感想が思いつかない。



「ところで紅邪眼レッドイビルアイ最近の調子はどうなのだ?」



「うむ。まだ我が力は最大限まで戻ったとは言えぬ。」

自分で言ったあと気づいた。なんでこいつ、俺の過去を、知っているんだ?



——桐川類、中学2年生の思い出。——



俺の中2の時の自己紹介。

「我が名は紅邪眼!!わけあってこの左手の包帯と左目の眼帯は外せぬ。」

ここでビシッとポーズを決めた。

「…………」←クラス全員ドン引きの目。



悪い思い出じゃねぇか!!!

「なんで知ってんだよぉぉ!!!」

肩を掴み全力で揺さぶった。

「ちょ!やめ!あばばばば!!」

なんでこいつ俺の過去を知っている!!

「なーんーでーだーー!!!!」

わざわざめっちゃ勉強して誰も来なさそうな学校選んだのに!!!なんで知ってるんだ!!!

「い、うから!や、やめ、て!!」

スッと手を放した。聞いた後にやろう。

「我が眼は全てを見通す!!」

サッとポーズを決めた。しかも超ドヤ顔。俺は心の中で決意しそれを言葉にした。



「あなたと一緒に帰った時間は短かったですが私はお一人で帰らせていただきます。それとこんりんざいいっさい話しかけることのないようお願いします。どうかお体にお気をつけて。」



そういうと俺は後ろに振り返り歩き始めた。どうだ!この丁寧な言い方で相手を黙らせてさらにそこから逃げる!!最後の体に気をつけれ的なあれは適当に言ったわけでもなくはない。

「まっ、まってぇぇええぇぇ(泣)!!」

なんかめっちゃ泣いてんだけど…。つーか泣くなよ。周りの人が俺をゴミみたいなめでみてるからさ〜。

「な、なんでもします!肉奴隷にでも下僕にでもなんでもなります!行かないでぇぇぇ!!」

周りの俺を見る目線がさらにゴミになった気がした。どうでもいいけどこいつ素に戻ってるしな。

「わかったわかった。わかったから泣くな。もういいから…。」

「…うん。」

めっちゃかわええ。

「で、なんで俺の過去を知ってるのか正直に話せ。」

なんかさっき微妙に論点ずれてたけどね。

「……その、あの……。」

恥ずかしいのか、佐久間はもじもじしながら俯く。やがてスッとポーズを決めた!

「我が眼は…」

言ってる途中に俺が頭にチョップした。

「早く言え。」

キレ気味の表情が伝わったのか?佐久間は口を開いた。

「べ、ベランダでよくやってた。」

あー、それでバレたねか。自業自得や。

「このことは誰にも言うなよ?」

「う、うん。」

そういった佐久間(かわいい)は黙って俯いた。なんでこいつ中二病なんだろう。

「ほら、行くぞ!佐久間。」

声をかけると数秒黙って佐久間が口を開いた。

「か、花凛って、よ、よよよんで!!」

まじかよ。妹以外ろくに女子と免疫のない童貞男子にそれを言うか。



「か、花凛。」



「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「は、恥ずかしいなら言うなよ…」

ほんっとこっちが恥ずかしいからさ。

黒眼ダークネスアイの命令は絶対。」

「わかったよ、花凛。」

「う、うん!!」

春の風は心地よく、春の夕焼けはきれいだった。




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俺の青春はゲームで始まる 速水 早田 @yh0929

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