第2話 「豚の相手は面倒にございます。」

 オーロが来てから数日が経ったある日、姫様はいつもより早く起きました。

「オーロ!オーロはどこなの!?」

 時刻は朝5時、姫様はどうやらオーロを探しているようで、屋敷中をドスドスと歩き回りました。

 そして姫様はキッチンへとたどり着きました。

「いたわ!オーロ!」

 姫様はすっかりオーロがお気に入りになっておりました。


「おはようございます、姫様。本日はお早いですね。朝からドスドス、わーわーと、大地震か怪獣でもきたのかと思い、火を止めて机の下に隠れておりましたよ。幸運なことに朝の仕込みはまだ終わっておりません。さあ、早く鍋の中へお入りください。」

 オーロは朝から爽やかな笑顔で姫様を罵倒しました。

「なっ、なによ…!朝から大地震や怪獣で私の心配だなんて…!それに避難場所の鍋を確保してくれているなんて…、やっぱり貴方、私に惚れているのね…!!」

「何をおっしゃっているかわかりませんが、近づかないでください。今包丁を持っているので…ヤりかねません。」

「なっ…!!」

 姫様は、私にケガをさせまいと近づかないでと注意したのだと思い込んでいました。

 一方オーロは、どう姫様を切り刻み料理しようかと思っておりました。


「姫様ー…。まだお休みの時間です…。さあ、ベッドにお戻りになってください…。」

 低血圧のじいやが姫様に言いました。

「いやよ!私はオーロとお話していたいわ!」

「じいやさん。お任せを。」

 オーロは何か企みの笑みを浮かべ、じいやに言いました。


「姫様。」

「はい、なあに?オーロ。」

「残念ながら私、ブレイクファーストの仕込みをしておりますので…。仕込みをしつつ、姫様をお相手する…そんなの…」

「いいわ!私はオーロを見ているだけで…!」

「とても面倒にございます。」

「えっ…」

 オーロはプンと吐き捨てるように姫様に言いました。


「仕込みは料理の芯の部分。それを怠っていい料理ができるとお思いですか?私は、姫様に最高の料理を召し上がっていただきたいのです。それを、片手間でやれなど…コックとして…正直吐き気がします。」

 吐き気がするのはきっと、姫様のお相手の事をオーロは言っているのでしょう。

「オーロ…」

「私が言いたいこと、駄犬…いや、ダメ豚の貴方でもわかりますね?」

 じいやは思いました。ところどころに毒が織り交ぜられ、毒入りミルフィーユのようだと。

「オーロ…貴方…貴方って人は……」

「さあ、さっさと豚小屋に戻ってくださいね。」

「なんて優しいのーー!!!!!私の相手をしていると私にばかり集中してしまい、私に美味しい朝食を食べさせることができないのが吐き気がするほど嫌なことなんて…!!!!!」

 姫様のポジティブシンキングは今日も健在でありました。


「わかったわ!私、眠くないけど…そばにいたいけど、我慢して寝室に戻るわ。」

「姫様、頬を赤らめていますが、吐き気がするので早くお休みになられてください。」

「わかったわ!!!」

 そう姫様は言うと、オーロの方を振り返りつつゆっくりと、寝室へと向かいました。


 こうして、本日も美味しい朝食は皆に届けられました。

「姫様!朝食の時間です!!ここをお開けください!!」

「うふふ…むにゃむにゃ…オーロ……」

 ただ一人を除いては…。

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豚姫様と腹黒コック ラムレーズン軍曹 @otometo32

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