手を振る

 遠くで手を振る人がいた。それが、俺に向けられているものではない事など、分かっていた。けれど、俺はその人から目が離せなくなっていた。


 きっと、俺の近くにいる誰かに向けられたものなのだろう。分かっている。そんな事は分かっているんだ。


 その人のとびきりの笑顔が、どうしても魅力的で、俺は悔しかった。


 


 あんな風に、俺に手を振ってくれる人が居るのだろうか。

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