喧嘩

「なんで、なんで貴方は私のことを分かってくれないの?!」


 突然、hystericの如く泣き出す彼女。普通なら、同じように感情が溢れ出してもおかしくない現場だろう。けれど不思議と、彼女の涙を目にした瞬間、自分の感情がすうっと消えていくのが分かった。


 大袈裟に涙を拭う彼女。それをまるで他人事のように見つめる俺。


(君はいつだってそうさ。自分の思い通りにいかなければ泣き始める。君はまるで、子供だよ)


「あなたはいつもそう!自分のことばっかり、私のことなんてこれっぽっちも考えてはくれない!私のことなんか、本当はどうでもいいんでしょ?!」


(よくもまぁ、君の口からそんな台詞セリフが言えるね)


「ねぇ?!私のことちゃんと見てくれてる?私のこと、ちゃんと理解してくれてる?」


(理解なんて出来るはずがないだろう。君と俺は、あくまでも他人だ。自分以外の人間を理解するなんて、不可能な話なんだよ)


「ねぇ!何か言ってよ!何で何も言わないのよ!」


(何を言って欲しいのさ。君はいつだって、言葉を欲しがっている。不本意な言葉ならば、君はもっと機嫌が悪くなるじゃないか。それなのに、『何か』とはあまりにも無責任じゃないか)


「やっぱり・・・、貴方は私のこと何にも分かってくれてないのね・・・」


(それなら聞くよ)


「君は、俺の何を知ってるの?」

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