とある神の世界の話

牙桜

第1話 この世界の創造主は話が長い

 ん~、ちゃんと見えてるかな?

 初めまして。ボクは、まぁいわゆる神だ。

 なんでも出来ると言われがちだが、別にそうでもないよ。

 自己紹介はもうこの辺でいいよね、本題に入ろう。

 ボクと一緒にを見ない?

 別に特別面白いってわけでもないが、自分の創った世界の様子を見るのは他の神にとっても数少ない暇潰しなんだ。


 今この目の前の液晶に映し出されてるのがボクの創った世界。で、その中でもデカデカと映ってる青い惑星の名前はテラ。まぁ、創ったといっても君達の世界、第3世界のアレンジである第56世界のアレンジなんだけどね。

 知ってるかい?君の世界は案外かなりアレンジが多いんだよ。

 元々一桁世界シングルのアレンジは多いけど、その中でも段違いで第3世界は多いんだ。君達の世界を創った人は相当だよ。

 しっかりと様々な設定を綿密に組んでいたからね。それでもちょっとした手違いなどもあったけど、概ね完成度は高い。

 第1世界なんかは知性を持つ者のいない世界だから、その世界に生きるものは全て本能の赴くままにしか生きていないんだ。世界創造の練習にはちょうどいいけどね。


 さて、能書きはいいから早く見せろ、とでも言いたそうだね。悪いね、ボクの周りにはあまり人がいないもんだから、話し始めると長いらしいんだよね。この前も注意されたよ。その時は確かアレスがイシュトリルトンにチェスで負けた時で「戦の神なのに負けるんだー?」ってからかって……


 ちょっと、話が長いからって無視するのは酷いよ!

 まったく……ほら見て。あの子が今回の物語の主役さ。彼は少々運が悪く生まれたようでね。

 そうそう、ボクの世界では産まれた時に運の総量が決まっていてね、死ぬまでに使い切るように、毎日に平均して運が使われているんだ。と言っても、死ぬような不幸の前に大抵いいことがあったりするけどね。

 君の世界ではもっと複雑な使い方をしていたんだけど、少し簡略化したのがこれさ。で、時々イベントが起こって、運を蓄えるために少し不幸になって、そのあとに大きな良い事があったり、反対に前借りして良い事を起こしてそのあとしばらく不幸になるんだ。よく言われる塞翁が馬さいおうがうまってやつだね。


 あの少年は、その総量が少ないんだ。あの家を見てみたけど、どうやら姉にその分の運が多めに入ってるみたいだね。

 この世界も、1人に人生1回分の運ってわけじゃないことも多いんだ。弟に全ての運が行って、産まれることすら叶わない兄がいた、なんてこともあるからね。

 で、あの少年はそこまでではないにしてもお姉ちゃんに運を持っていかれたみたいだね。持っていかれた量はそこまで多くはないけど、それでも他の人より決定的に運は悪いね。


 あ、財布落としたことに気が付いたのかな、すっごい慌ててるね。折角運良く貰ったお小遣いで欲しい物が買えるだけのお金が貯まったっていうのに、あぁ、残念。それにしてもちょっと上げて盛大に落とすだなんて、ボクの創った世界だけども中々酷いね。そんなにこの世界はあの少年が嫌いなのかねぇ。


 さて、ボクはそろそろ他の世界も見に行かないとだから、君はしばらくこの世界を見てていいよ。さて、あの世界はまだ調節が終わってないから早くしないとな~

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