第2話 その少年、運が足りない模様
「な、なんで?!」
少年の後ろには、犬型のものから巨人型のものまで、多種多様なモンスターがいた。
否、追いかけていた。
必死で逃げる少年。しかし、少年は人。追いつかれるのは火を見るより明らかだった。
そして、もう10メートル後ろにはモンスターが迫ってきていた。そこで、少年は不幸にも石に躓いてしまった。後ろを見ると、目と鼻の先にモンスターが
「このまま踏みしだかれるのか。死因がモンスターの大群に踏まれる、か…」
そして、頭上にフェンリルの爪が迫ってきて…
――――――――――
ボスッ
「いった!」
「いつまで寝てるのよ、もう学校に行かないと間に合わないわよ!」
「は?あぁ、夢か……」
くっそ、夢の中からツイてないとは。今日も一日不幸か。
「この私が起こしに来てあげたのよ、感謝しなさい」
彼女は幼馴染だ。幼稚園の頃からずっと尻に敷かれている。
これも不幸なんだろうなぁ。昨日も財布落としたし……
「母さんは?」
「さっき出て行ったわよ。今日は早いみたいね、あなたと違って」
「はいはい、どうせ俺は寝坊助だよ。で、お前はそこで着替えでも見るのか?」
そういいながら俺は上着を脱ぎだした。
「バ、バカじゃないの!?なんで女子がいるのに着替えるのよ!」
そういって彼女は乱暴に部屋のドアを閉めて1階の方へ向かった。
さっさと着替えて、俺もノートの入ったかばんを持って1階へ向かった
「遅いわよ、私まで遅刻しちゃうじゃない」
「だったら先に行けばいいのに……」
「なんかいった?」
「いや、何にも」
適当にパンを口に放り込んで、玄関に向かった。遅いといっても、今家を出れば歩いてでも間に合う時間だ。だが、生憎今日は少しでも早く帰らなければ行けない。故に、俺はチャリの鍵を取った。
「ちょっと、なによそれ」
「いや、今日は早く帰らないとだし」
「どーせまたアニメとかゲームでしょ」
「また変な漫画に影響されたのか……?別に俺はオタクじゃない、バイトの時間がギリギリだからだ」
うちの親は放任主義で、家にいたりいなかったりだ。多少の食費等はくれるのだが、お小遣いは特にないので欲しいものは自分で買うしかないのだ。
「チッ つまらないわね。それにその言い方だと私がオタクみたいじゃない」
「えっ、今更オタクじゃないとか言い出すつもりじゃないよな?俺はお前が小学生に入る前からゲーム漬けだったのを見せられてるんだが」
何を隠そう親や園長を説得して保育園でゲームをし、それを無理やり横で見させていたのはこいつだ。そんなこいつを見ていたから俺はゲームをしたいと思ったことはあまりない。
「私は(他のハイランカーたちと比べたら)オタクなんかじゃないわよ」
「あれだけゲームしててオタクじゃないとかちょっと引くぞ、それよりもう家出るから、お前も早く出てくれ」
「はいはい、分かったわよ。あんたも急いでいくのはいいけど気をつけなさいよ」
「ん、一緒に行くんじゃないのか?行きは時間あるんだし自転車押して歩いて行くつもりだったんだけど」
「なっ…それを早く言いなさいよ!もう、早く行くよ!」
あ、こいつ諦めてくれてたんだ。そんなの言わないでさっさと行けばよかった。
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