第124話 勝てない -03

    ◆



 数分後。

 フランシスカとセバスチャンは『魂鬼』がいる場所まで辿り着いた。そこそこ雑居ビルが建っているが、街から少し離れているのもあって、普段からあまり人通りは多くないイメージの場所であった。今は静止した空間ということもあり、文字通り人の気配が全く無い場所になっていた。


「あいつね」


 フランシスカが指差した先には、10メートル程の二足歩行の巨人型の真っ黒な『魂鬼』がいた。


「あれが動いたらまずいですね」

「あの大きさは経験ないわね」


 でも、と彼女は眉を潜める。


「あれが動きそう、って何で判断したのかしらね?」

「確かに妙ですね。周囲に動いた形跡がありません」


 巨大な『魂鬼』の周囲は比較的綺麗であり、周囲のビルの破損は全く見られなかった。


「単純な判断ミスでしょうか?」

「単純なミスとか有り得ないでしょうが。っていうか、そんなこと分かっているでしょう?」

「そうですね。しかしながら、それ以外に理由が見つからないというのも本当のことです」

「うん? あなたがそう言うのならば、そうなのかもしれないわね。……全く、ジャパンのサポーターは質が低いのかしら?」


 あっさりと先程口にした「有り得ない」という言葉を撤回し、彼女は「まあいいわ」と両手に剣を握る。


「さっさと終わらせましょうか。――セバスチャン」

「はい」


 フランシスカがセバスチャンの名を呼ぶと、彼は彼女の近くにて膝を付く。


「一応契約するわね。――あなたの頭脳を望むわ」

「御意に」


 本来ならばセバスチャンの頭脳を借りるレベルの相手ではない。しかしながらフランシスカは自身に対してのセバスチャンの対価が低いこともあって、念には念をという形で契約をしたのだ。

 より確実な形にするために。


「さて、じゃあ早速あの『魂鬼』を倒す方法を――」



「――



 突如。

 そんな声が聞こえて来た。

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