幕間
第100話 幕間
◆幕間
トワイライト本部。
どこにあるかも分からないその広大な建造物内の廊下を、男は歩いていた。
『
エーデル・グラスパー。
筋骨隆々の彼は歩いているだけで威圧感を与え、すれ違う人々は皆、彼を避けるように道を譲って頭を下げる。
その様子に彼は少し悲しそうに眉尻を下げる。
だがその顔も厳つくなっているために、更に人を寄せなくなっていた。
「……どうした?」
そんな彼に、声を掛ける一人の男性がいた。
ウェストコット・ライトブルー。
『トワイライト』の戦闘職のトップに立つ人物である。
「おお、ウェストコットか。久しぶりだな」
「バンバンと肩を叩くな」
「痛くはないだろう?」
「それはそうだ。やわな鍛え方はしていないからな」
「そうだと思った」
二人は快活に笑い合う。
強者同士、お互いを認め合っている。
だが、戦闘のトップ3人の中に、エーデルの名はない。
理由は単純だ。
エーデルは目立った成果を上げていないからだ。
トップ3に比べて、撃破数が極端に少ない。
故に数えられていない。
しかしながら知っている人は知っている。
彼の戦闘能力は他の3人にも引けを取らないことを。
「それはそうと、今日はどうしてここに来たんだ?」
「んー、来たって言うか呼ばれた、って言う方が正しいな」
「ということは……『
「ご明察。しかも結構待たせていたりするんだよな」
肩を竦めて嘆息した後、歩みを始めるエーデル。ウェストコットも横に並び、2人は『
「まあ、確実にお怒りのメッセージだわな」
「怒りって……またいつものか」
「ああ、いつものさ」
「全く……」
今度はウェストコットが溜め息をつく番であった。だが彼が苦言を呈そうともエーデルには聞かないし効かないだろうということを悟り、彼に苦笑いを投げかける。
「それで先程は悲しい顔をしたのか」
「おお、よく俺が悲しんでいたこと分かったな。でもそれ違うわ」
「え?」
「みんなが俺を避けているのが悲しくなっていただけだ。同じ人間なのにな」
「括り方がおおざっぱすぎるだろう。お前は鏡を持っていないのか?」
「持ってないねえ。持ったら破裂するかもって怖いんだよ。ほら、ホラーものの映画で必ず割れるだろ」
「その返し方は意外だよ。更にお前に怖いものがあるなんてな」
「ああ、鏡と息子娘が怖いな。あとまんじゅう」
「まんじゅう?」
「ジャパニーズおとぎばなし……いや、ハヤシ? ハナシカ? であったんだよ。本当は怖くないけど怖いっていう話」
「それの何が面白いんだ?」
「さあ?」
「知らないのか……それにちょうどいいな」
「ちょうどいい?」
「今度のお前の行先はジャパンだ」
「わお。マジか?」
「マジだ」
そう答えた所で、2人は一際大きな扉の前まで辿り着く。
「だから今回呼ばれたのは、その指令のことも含まれていると思うぞ」
「そんなことでわざわざトップの前まで呼ぶのか?」
エーデルは眉を潜める。
「もしそんなことがあるとしたら――ジャパンには『
「……」
ウェストコットは答えない。
すなわち、それが答えのようなモノだった。
「……分かったよ」
エーデルは言及しない。
理解したからだった。
詳細までは分からないが、それでもウェストコットがそこで何故そんなことを言ったのかが分かる。
――余計なことを言うなよ。
「俺は頭が悪いから、積極的に戦えって言われることくらいしか思いつかねえよ。心配するな」
「……心配などしていないさ。最初から」
ウェストコットは口の端を上げる。
それに対してエーデルは「ふん」と鼻を鳴らして扉を開ける。
「んじゃま、怒られてくるわ」
「ああ、くじけるなよ」
「そんなことにはならねえよ。俺の異名を知っているだろ」
彼は、にかっ、と笑い、囃す様な口調で自身を親指で差した。
「『
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