第67話 悲獄の子守唄 -09
◆原木
「……っ、何で!?」
原木は動揺して歌声を止めてしまった。
動揺した理由は二つ。
一つは、相手が見知った人物であったこと。
攻撃の為にビルの横から飛び出すことで、実際に目視で確認できる距離まで詰めることとなったので確信に至ることが出来た。
先日、買い物の際に手を貸してくれた高校生の内の二人。
彼らがまさか敵だとは――悪人だとは到底思えなかった。
そしてもう一つ。
先に放った攻撃。
それは相手の顔を見ずに放った攻撃だったので躊躇も何も無い、相手を殺すための攻撃であった。
しかし、彼らは生きている。
それどころか無傷であった。
その二つが重なり、原木は立ち尽くしてしまっていた。
「どうして……あの子達は……」
どうしてあの子達は敵なのだろう?
どうしてあの子達は自分の攻撃が通らなかったのだろう?
頭の中をぐるぐると疑問が駆け巡る。
更に、戸惑いも同時に生まれてしまった。
困った人を手助けられる高校生を、その手に掛ける。
殺す。
そんなの、どちらが悪人なのか。
「……決まっている」
生まれた思考に、すぐさま否定の言葉を重ねる。
「私が――悪人だ」
何人も殺した。
この歌で殺した。
そしてこの後、この二人も――
「……殺さなきゃ、駄目なんだ」
原木は大きく息を吸い込んだ。
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