第4話「それからとこれから」

 交渉は当初、難航した。

 人間同士の移民ですら様々なトラブルがあるのだから、異界からの移民受け入れに難色を示すのは当然だった。

 今までの人間と異災の衝突の歴史もそれに拍車をかけた。

 しかし、異災たちの総数がそれほど多くなかったことと、今まで異災との戦いの最前線に立っていた神器使いたちが仲立ちとなったことで、何とか交渉は進んだ。

 神器使いたち。

 雄志郎や尊とは別の土地で異災と戦っていた、御神槍使い、御神弓使い、御神鏡使い、御神銃使い、御神石使い、御神スマホ使いなどの人々である。

 彼らは戦いの中で、異災たちが必ずしも否定すべき存在ではないと感じ取っていた。だからこそ、これまで異災たちを殺さずに送還していた。そして今回、異災たちの移住を受け入れる方向にも動いた。

 彼らの尽力と、人間の住めない地域に居住するという異災たちの申し入れのおかげで、交渉は何とかまとまっていった。




 そして、時は過ぎ、たけるは高校の卒業式を迎えた。




「いいのか、尊。このまま界境神社うちに就職する道に進んでも。異災との戦いは終わったんだぞ」


 卒業式を終え、神社に来た尊に雄志郎ゆうしろうは尋ねる。


「いいんですよ。オレには今さら他の生き方はできません」

「その年で何を言うておるか」


 答える尊に、姫神様も声をかける。


「それに、異災との間に何かトラブルがあった時に対応するのは、神器使いの仕事でしょう?」

「それはそうだがな」

「まあ、そこまで意志が固いのなら、わしからはこれ以上何も言わんよ」

「姫神様がそう言うのなら……。いずれにしろ、神社を維持する人間も必要ですしね」


 姫神様が容認する態度を示すと、雄志郎も同調する。

 そうして話していると、新たな訪問者が現れた。


「姫神様、雄志郎さん、尊さん。こんにちは」


 詩乃しのだった。


「おお。おぬしらの移住ももう終わったのかの」

「はい、先日。ですから、お世話になった皆さんに御挨拶に伺いました」


 異災たちのこちらの世界への移住は半年前から段階的に行われ、先日、完了したのだった。


「これから先、うまくやっていけるでしょうか」

「それはおぬしたち次第……」


 姫神様が言葉を紡ぎかけたその時、突如として周囲一帯が朱い陰に覆われた。


「…………?」


 一同が見上げると、朱く染まった天に巨大な円盤が座していた。

 そして、人々の脳に直接届くように声が響き渡った。




『我らの名はズウェルヴィア。これより地球人類に宣戦を布告する』




 神器使いを初めとした人類と、異災たち。

 彼らが手を取り合って新たな敵に挑む、これが幕開けだった。

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姫神様と御神刀使い、しかし 彼野あらた @bemader

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