3さじめ
「夢魔」
嫌なことがあると、初恋の人が夢に出る。
今、どこに住んでいるのか、何をしているのか、ぼくには全くわからない。記憶の片隅に残った、あの頃の姿で彼女は出る。
夢の中でぼくは「よかった」と思う。彼女とどうにか連絡が取りたい気持ちがどこかにあるんだろう。
以前の夢では場面の端々に彼女が居た。
次の夢では彼女に声をかけることが出来た。
その次の夢では彼女が声をかけてきた。
また次の夢では、彼女の連絡先を聞いた。
昨日の夢では、彼女と1日デートをした。
ぼくが現実で嫌な気持ちになるほど、彼女は饒舌になっていく。
今日の夢でも、彼女に会えるだろう。楽しみだ。楽しみだ。
そういえば、最近、夢魔病というものを耳にした。なんでも、会いたいけど会えない人が夢に出て、精神を蝕んでいくというものらしい。
きっとぼくもそれなんだろう。
でもいいんだ。この病気にかかっているうちは、ぼくは誰かを愛していられる。
毎日毎日毎日、よくわからないまま生きているよりはずっと幸せだ。
仕事が終わったら早く帰ろう。
早くねむろう。
彼女に話したいことがたくさんあるからね。
ひとさじの塩 水玉カエル @mizutama-kaeru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ひとさじの塩の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます