愛屋及烏magnétisme

玉鬘



 売布市役所環境整備課課長、飾磨種市しかま たねいち(45歳、未婚)には悩みがあった。それは課の全職員を前にして行われる朝礼である。彼は自分の番になるのが嫌だった。人前で話をするのが苦手であったし、誰もまともに聞いていないのに話の内容を一生懸命考えるのも苦しかった。

 だが、この日は違った。

 全職員が飾磨の目をじっと見て、一言一句逃すまいとしんと静まり返っている。彼は意を決し、口を開いた。職員らは話が終わるまで静かだった。

「朝礼は以上です」

「ふざけんな!」

「大空洞に落っことすぞ!」

 怒号が飛び交った。

 だろうなと飾磨は嘆息する。それもそうだ。当然だ。この上ない厄日だ。彼が話したのは環境整備課の扶桑熱係にとっては爆弾じみた内容である。しかもその爆弾は破裂寸前の状態で飾磨に回ってきた。ぎりぎりまで煮詰めていた話の内容を変更せざるを得ないほどのものだ。

「……ええー、皆さんのお怒りもごもっともですが、メフ警察の方からですね、強い要請といいますか、外圧というか、そういった類のものをね、受けましてですね。我々としても」

 先日、蘇幌学園で二つの事件が起こった。狩人や警察をも巻き込んだ暴力沙汰である。やくざが死に、警察官が死に、狩人が死に、市民が死んだ。殺された。メフ警察はそのことを重く考えていた。それゆえに市役所の狩人に協力を要請してきたのである。手伝えと。しかも無償で。

「舐め切ってんでしょ!」

「せめて金出せ!」

 マイクを持つ手が震えた。飾磨の声も震えていた。

「しかしですよ、我々は公務員でして、しかも環境整備課としては」

「うるせえ!」

「今から乗り込んで警察あいつらぶちのめしてやろうか!」

 大の大人の口から飛び出てくる暴力的な言葉を浴びながら、飾磨は溜め息を吐いた。

 この時期、狩人は忙しくなる。春になるとケモノの数が増えて活発になるからだ。その分だけ狩人の出動回数も増える。その上よその手伝いをしろと命じられれば反発も起こる。手を借りたいのはこちらも同じなのだ。このままではまずい。二年前のようにストライキを起こされては敵わない。今度は庁舎に火を点けられるだけでは済まないかもしれないぞ、と。飾磨は必死に考えた。

「もちろんですね、狩人の増員についても思案しておりますので、具体的にはですね、狩人の登用についての制度のですね、ええ、緩和を……」

「二年前にも同じこと言ってたじゃねえか!」

「そ、それはどうにも、私だけのアレでは、アレすることができなくてですね」

「辞めちまえ!」

「いや! 私らが辞めればいいのよ!」

「それもそうか!」

「ええ……ちょ、ちょっと、そもそも公務員のストライキは」

「法律とかルールとか知るか! ブラックが!」

「ケモノはどっちだ!? お前らの方じゃないか!」

 こうして狩人のストライキが始まった(二年ぶり五回目)。



「叔母さんのバカ」

 むつみは聞き間違いをしたのかと思った。彼女は洗面所から顔を覗かせて、もっぺん言ってと声を張る。今日のむつみは珍しくスカートで、カーディガンを羽織っていた。

「バカって言ったんです」

 幸は制服に着替え終わってリュックサックを背負っているところだった。彼は洗面所を通り過ぎて玄関に向かう。

「あ、ちょっと待ちなさい。なんでそんなこと言うの」

「知りません」

「知りませんって、君が言ったんじゃない」

「いってきます」

「いってらっしゃい。あっ、さち君、少年、おーい、さちー。……行きやがった」

 幸がどうして怒っているのか、むつみには心当たりがあり過ぎて思い至らなかった。むすっとした顔でいかにもといった風にバカと言われたことなど一度もない。しかし悠長に考えている時間はない。今日はさすがに登庁しろというお達しがあったのだ。何かあったに違いなかった。



 幸が一組の教室に着くと、いつも通りにうるさくて騒々しかった。赤萩組と藍鶴会、そして蛇尾の構成員が暴れ回った痕跡も、一部を除いてすっかり元通りになりつつあった。

 しかし幸は冷めた目をしていた。クラスメートを睥睨してぼそりと呟く。

「静かにしなよ」

 半ば以上八つ当たりだった。翔一を筆頭にクラスの男子がぎょっとする。

「あ、わ、わりい。なんか怒ってね?」

「怒ってないよ」

「怒ってんじゃん」

「委員長が怒ってるー」

 田中小と田中大が幸をからかった。その瞬間、椅子を蹴飛ばす音がして教室が静まり返る。制服の上からスカジャンを羽織った蝶子が、幸をからかったものたちをねめつけていた。

「委員長のゆうことが聞けんのか。あ?」

 蝶子はいつの間にか一番後ろの席を陣取り、副委員長の肩書きをも手に入れていた。彼女は大きな声を活かして委員長のフォローに回ることが多くなっていた。

「す、すんません」

「いや、でも姐さん」

「誰が姐さんやねん」

「姐御」

「姐御でもないわ」

 蝶子は蹴飛ばした椅子を自分で拾って元の位置に戻し、幸の隣に立つ。

「親のゆうことは絶対じゃ。このクラスじゃあ委員長が絶対やろが」

「あ、あの、猪口さん」

 幸はすっかり引いていた。やはり人に当たるのはよくないのだと反省した。

「お前ら分かったんやったら返事せえや!」

「はい! すんません!」

 誰よりうるさい蝶子だった。

 やがて鉄が教壇に立ち、妙な雰囲気を感じ取ったか咳払いをした。

「中間考査が近づいております。皆さん、テスト勉強は自分のためだと思ってしっかりとなさってください。それから」

 鉄は蝶子に視線を送る。

「校内では制服を着てください」

「はい」

 蝶子は素直にスカジャンを脱ぐ。彼女の内部ヒエラルキーでは鉄が頂点付近に立っているのだった。



 この日、一組では中間テストのことで持ち切りだった。幸にとっては蘇幌学園での初めての試験であり、学業をしっかりしなさいというむつみの言葉もあってちょっとした重圧が小さな背にのしかかっていた。それでも昼休みになると空腹が勝り、テストのことはすっかり頭の片隅に追いやってしまっていた。

 幸はリュックサックの中を見て呻く。

「どうしたよ」と翔一が寄ってきて、幸の問題に気づいた。

「何? 昼飯忘れたんか」

「どうしよう。……あ、学食」

 傷一つないギターを担いだ男子が首をゆるゆると振った。

「なんか今日は開いてないらしいぜ」

「そんなピンポイントな……」

 幸はうなだれた。クラスメートが彼の周りにぞろぞろと集まってきて、弁当のおかずを一品五十円で分けてやろうなどと交渉を始める。幸は仕方なく財布の中身を確認した。

「何なん、弁当ないん? じゃあうちの分けたるわ」

「いいの?」

「ええよ」

 クラスメートの顔つきが五つくらい老けて見えた。

「え?」

「は?」

 蝶子は幸の机の上で弁当を開ける。存外可愛らしい包みと子供っぽい弁当の中身を見て、クラスメートは息を呑んだ。激震が走った。彼女は真面目くさった顔でこういう時は助け合いが大事なのだと言ってのけた。

「あんなあ、これな、お手伝いさんが作ってくれたやつなんやけど口に合うかなあ。あ、箸ないん? どないしよ。一緒でいい? 遠慮せんでええよ、食べさせたろか?」

「嫌だあああああああああああああ!」

 田中大、魂の慟哭だった。彼はがっくりと膝をつき、腕を広げて天を仰いだ。

「びっくりさせんなや。なんなん、訳分からんで」

「わからいでか!」

 他の男子が田中大の肩を抱き、幸を指差した。

「委員長もなんで口開けて待ってんだよ!? そういうのって普通、もうちょっとためらうだろ!」

「だって分けてくれるって言うんだし」

「間接キスも辞さないってか」

「それくらい気にしないけど」

 幸は言ってのけた。蝶子は『あっ』という顔をしていたが、彼はいたって平然としていた。そのことが田中大たちの怒りに更なる火を点けた。

「……なんか姐さんって八街にだけ特別優しくね? 俺らだってケッコー頑張ってたんだけどなー」

「そ、それは分かっとる」

「だったらなんでだよおおおおおおお」

 怒ったり嘆いたりするクラスメート。幸は不思議そうな顔をしていた。

「いちゃいちゃすんなよおおおお、せめてするにしても俺たちの視界に入らないところでやってくれよおおお」

「しとらんわ!」

 あ、まずい。教室の外に避難していた翔一はそう思った。

「お、お、お前ら……! ええ加減にせえや」

 蝶子は両手で椅子を持ち上げて震えている。顔は真っ赤で目は血走り、視線はふらふらと定まっていない。幸は彼女に話しかけた。

「そんなことないよね。今日はぼくがお昼忘れたからお弁当を分けようかって言ってくれただけで、猪口さんは皆にもそうするよ」

「え。あ、お、おう。せやな」

「だよね」

 蝶子は椅子を下ろしてそこに座った。彼女の熱が下がると共に他の男子もクールダウンしていた。翔一は、こいつら全員、明日は昼飯を持ってこないつもりだなと察していた。

「でもなー、いまいち信じられねえってーか。八街君だけ特別扱いしてる感否めなくね? 否めなくね?」

「どないせえゆうねん」

「カラオケとか行きてえ」

 田中大は言った。蝶子は目を丸くさせる。

「あー、確かに。だって蝶子ちゃん今までぜんっぜん遊んでくれなかったじゃん」

「カラオケ……」

 蝶子は難問にぶち当たったかのような顔つきになった。

「そそそ、カラオケ。蝶子ちゃん行ったことある?」

「行ったことないけど、やったことある」

 田中大たちは思った。押せばいける。引けばいけぬ。

「じゃあさ、今日の放課後にセンプラのカラオケってことでいい? 一組の皆でさ」

「はい、はい、そうです。今日の夕方で、人数は……十五、六人くらいですかね。はい、いけます? あっ、マージっすか、ありがとうございます、はい」

「ほら、もう予約の電話入れちゃってるみたいだし」

 えー、と、幸が不満そうな声を出した。

「中間テストの勉強しないと」

「じゃあ八街は不参加、と」

「つーか別に来なくていいしな」

 今度は蝶子が不満げな顔つきになる。

「八街こーへんの? じゃあうちもやめとこうかな」

「待って待って、勉強だったらカラオケでもできるって。八街来いよ。やっぱ俺らお前がいないとダメだわ」

「ちょっとくらい音がある方が集中できるって聞いたことあるし」

「頼むよ! な!? 親睦を深めるってことで! そういうのも委員長の仕事だと思わないか?」

 幸は頼まれると弱かった。



 幸たちは大人数にも対応しているパーティルームに通された。一組の面々は蝶子を真ん中に座らせると適当な場所に陣取り、飲み物の注文や音量の調整などを始めていく。

 幸は隅っこできょろきょろとしていたが、テーブルの上に教科書とノートを広げた。彼の空気を読まない行動を見て舌打ちするものはいたが、とりあえずここまで連れてきただけで充分だとして咎めるものはいなかった。

「よし、誰から行く?」

 背の高い男子がマイクをひらひらと振った。それを弾き語り系男子が引っ掴む。ノリのいいナンバーが場の空気を温めた。しかし、本日の主役であるところの蝶子はリモコンと睨めっこして忙しなく、ぎょろぎょろと瞳を動かすばかりである。彼女は明らかに緊張していた。

 こうなっては誘った方にも責任があるとばかりにどうにかして盛り上げようとする男子ども。タンバリンを軽やかに打ち鳴らし、音程を無視して店中に響き渡るような声でアニメソングを歌ったり、蝶子を褒めちぎったりしていたが、当の彼女はジュースをがぶがぶ飲んでいたので席を立つ回数が増えていた。

 幸はぺらぺらと教科書をめくっていた。彼は、確かに周りがうるさいくらいの方が集中できるかもしれないと思い込み始めていた。

「よう委員長、テス勉進んでるかー」

 疲れ果てた男子が幸の隣にどっかりと腰かける。

「かなり。いいよこれ。またカラオケに来ようよ」

「……蝶子ちゃんにもそう言ってもらえたらなあ」

「猪口さんも楽しんでるんじゃないのかな」

 幸は、蝶子に胸ぐら掴まれたり至近距離で睨まれた時のことを思い出す。その時に比べれば随分と楽しそうではある。

「嫌だったら最初から来ないと思うし」

「そっかなあ」

 誰もが歌うのを止めて雑談に興じ始める。幸はふとペンを止めた。

「今、誰か狩人がどうって言わなかった?」

「え、言ったっけ?」

「言ったよ。緩和がどうとかって」

「言ったっけ? 言ってなくね?」

「言ったってば!」

 蝶子が戻ってきたので再び曲が流れ始めた。幸は話の出所を探ったが、皆、飛んだり跳ねたりしていて誰も話を聞いていなかった。



 結局、蝶子がマイクを握ることはなかった。それでも彼女は帰る頃には笑顔を浮かべていたので、クラスの皆でまた来るのも悪くない。そんなことを考えながら帰路に就く幸だった。

 家に帰ると珍しく疲れた顔をしたむつみがいた。リビングにぐでーっとした体勢で座っている。買い物袋もそのままで放置されていた。

「ただいま。これ入れときますね」

 幸は冷蔵庫や戸棚に食料品などを入れながらむつみに話しかけるが、彼女からの反応はなかった。死んでるんじゃないかと思ってちらりと見ると、むつみはしっかりと目を開けている。

「……? あ、今日は学食が使えなくって、クラスの子にお弁当分けてもらったんです。特にあの、なんていうんですか、昆布巻きみたいなのが美味しかったです。ああ、あと、そろそろテストって先生が言ってました。そいで、あのー、叔母さんに聞きたいことがあって」

 むつみは瞬きもしないで幸を見ていた。

「狩人のことで、もしかして何かあったのかなーって。あの、聞こえてますよね。返事して欲しいんですけど」

「今朝のことを忘れたわけじゃないよね」

「え?」

「バカって言ったじゃない。あれ、謝って」

 しまったと思った。幸は自分の機嫌が悪かったことなどとうに忘れていたのだ。

「そんだけよく喋れてるんならひと言謝るくらい簡単でしょう」

「ごめんなさい。あの……だって、叔母さんが狩人のこと全然話してくれないから、つい」

 むつみは長い間黙りこくっていたが、幸の慌てふためく様に満足したのか、鼻息を漏らした。

「調子がいいな、君は」

「話してくれるんですか」

「お弁当の方がいい?」

 幸はきょとんとした。

「お昼のことだよ」

 幸は今、昼食代をむつみからもらっている。それで前日の内にタダイチやいかるが堂で総菜パンなどを買っているのだ。ちなみにいかるが堂で買い物をしないと藤にしこたま怒られるので、彼はなるべくそちらを利用するようにしている。

「そんな、だって悪いですよ」

「『悪いですよ』だって。そういうのはいい子が言うもんだよ」

「でも」

「気にしないでいいんだよ。私も明日からさ、しばらくお役所の方行かなきゃいけないから」

「え、お仕事ですか」

 むつみは眉根を寄せた。

「猫の手も借りたいくらい忙しいみたいでね。私もお弁当になるし、一人分も二人分も大して変わらないからさ」

「じゃあ、お願いします。あの、それより」

「ああ、狩人のことね。まあー、なんだ」

 むつみは体を伸ばして幸に向き直った。

「狩人だけじゃないけどさ、正式なものになるには色々面倒なことが多いんだよ。試験とか、資格とか。そういうのを減らしたり簡単にしようとか。大空洞に入ったり出たりするのももっと楽にしようって話になってるの」

「いいことじゃないですか」

「ふふ、君にとってはね。でも、変な人が狩人になるのも困る話だからね。物事を簡単にするのも、簡単にはいかないんだよ」

「だったらどうなるんですか」

「偉い人がスパッと決めてくれないかなあ」

 幸にとってこの上ない朗報だった。彼は期待に満ちた目でむつみを見ていたが、彼女はへっと鼻で笑う。

「思ってるほどいいもんじゃないけどなあ。そんなにケモノを殺したいのかね」

「そうじゃなくって、狩人になりたいというか、強くなりたいんです」

 幸の憧れているもの、求めているもの。それに最も近いのが狩人だった。

「体鍛えるとかじゃないんだ?」

「それもありますけど……ぼくは、分かって欲しいんです」

「何を」

「ぼくのことを」

「誰に」

「叔母さんに」

 むつみの目が細められる。

「私に? ……ああ、だから怒ってたの?」

「だって」

「何度も言うけどさ、私は君の保護者なんだよ。君の家族から君のことを頼まれて、預かってるの。だからね」

「預かってるんですか?」

 幸は俯いた。

「だったら、ぼくはいつ帰れるんですか。いつか帰れるんですか」

 言葉が出なかった。むつみは幸のことだけではなく、自分のことをも考えていた。

「帰りたいって言ってるわけじゃないんです。最初は帰りたいって思ったこともありましたけど、でも、今のぼくの家族は叔母さんなんです。叔母さんだけなんです」

 むつみは自分でも気づかない内に立ち上がっていた。彼女は伸ばしかけていた腕を認めて、それを引っ込める。幸は不思議そうにしてむつみを見上げた。

「何でもない」

 聞かれてもいないのに、むつみはわざと素っ気ない風に言った。頭に手を遣り、緩く髪の毛をかき回す。彼女は椅子に座り直して長い息を吐き出した。

「家族って、だったらなおさら危ないことさせられないじゃない」

「じゃあ叔母さんもやめてください」

「狩人やめろって言うの?」

 幸は小さく頷いた。むつみはもうすっかり彼の性根やらやり口やらを把握しつつあった。

「……いっこ約束して。死なないこと。怪我するのはまだいいよ。治せるかもしれないから。でも死んだらさ、さすがにどうしようもないからね」

「いいんですか」

「よかないよ。でも、勝手にやられるよりマシだからね。私の目の届くところで好きにしてくれるなら妥協するよ」

「約束します。絶対」

「すぐにってわけじゃないけど、君のことは古海に頼んでみるよ。狩人のこと、あいつなら人に教えるの好きだし」

「叔母さんが教えてくれないんですか」

 幸は残念がっていた。

「駄目。私は人に教えるの苦手だし、嫌いだし、甘やかしちゃいそうだからね」

「そうは見えませんけど」

「遊びじゃあないんだからね。しっかり人の言うことを聞いて、嫌になったらやめてもいいから。ああ、そう。研修だよ。見習い。アルバイトでも最初はそうだったでしょう? それに近いことをしてるだけ。分かった?」

 むつみは自分にも言い聞かせるようにしているかのようだった。幸はきちんと彼女の目を見て頷いた。

「そういえばテストが近いんだってね。成績が悪かったら狩人がどうこうなんてやめさせるから。いい?」

「はいっ」

 楽あれば苦あり、苦あれば楽あり。どこかの誰かの言葉だ。

 人生もまた山登りのようなものだ。苦しみを背負いながら歩き続けて、楽しいことは一瞬で過ぎ去る。これは確か、日本の狩人の言葉だったか。

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