第23話 聖ノ島の攻防③ー上

ー養兵所のグラウンド

「ふふ、面白いことになっているわ!」

あちらこちらを見回しながら笑みを浮かべ八薙は言った。あれから両者は衝突し、その結果は辺りの木々は燃え黒焦げになり、枯れたりしている。さらに校舎にまで被害が及んでいる。窓が割れたり、一部が崩れたりと景色は一変した。姫城の火の力とそれを上回る炎の力と八薙の毒の力、そして二人の強力な圧気による影響である。

「貴様らは神器を集めて何をするつもりだ?内戦を起こし、血を流してまで」

「いづれはわかることだわ。あなた達も!」

「八薙!何が言いたい?」

「ふふ、言うわけないわ!」

姫城は八薙の後ろにいる聖斗とジンに目を向ける。二人は座り込んでしまっていた。二人の戦闘の一部始終を目の当たりにしていた結果である。

「貴様の部下に聞くまでだ。貴様を動けなくしてからなぁ!」

「それもさせるわけがないわ!二人共、立ちなさい。殺すわよ!」

八薙の殺すと言う言葉に反応し、聖斗とジンは我に返り、言われた通り立ち上がる。

「はい!八薙教官」

「凶暴なことだ!」

姫城はそのやり取りを見て、相変わらずだと思う。八薙は後ろを振り向かず、ある命令をする。聖斗達に振り向かないのは、姫城から一瞬たりとも目が離させないからである。

「先に行って、合流しなさい。そして、あなた達がやるのよ!マキちゃんに邪魔はさせないわ。いるでしょう。そこに」

八薙が言っている意味は自分達の近くに倒れている女つまり、ボロボロになっている水波を人質にして、先に行けということだった。

「そういうことですか。了解!」

聖斗が返事をすると、水波に近づいていく。それを見た姫城はキイっと睨みつける。それを感じた聖斗は立ち止まる。

「聖斗君もそろそろ慣れないとね。こんなのには」

「そうなるのはまだ先の話しですよ」

「そういうことか!」

姫城は敵の意図がわかり、剣に炎を纏わせる。

「そんなことしていいのか?ババァ!」

「ふふ、ババァ!」

その言葉にクスクス笑う八薙は姫城から睨まれる。

「ババァではない!そんなに老けておらんわ」

そう言われるほど、老けてはいないと否定する姫城は剣に纏わせていた炎を収める。

「物分りが早くて助かる!」

「黙れ小童!わかった。先に行かせてやるが、水波は渡せ」

聖斗は水波の首根っこを掴んで、姫城のいる方向に歩いていく。

「雑にするな!」

圧気による威圧が放たれた。聖斗は立ち止まる。

「人質に取られて、そんなこと言える立場か?」

「あまり調子にのるな。小童。早く渡せ!」

そして、聖斗達が姫城とすれ違う。その時、姫城による目の威圧がとてつもなく感じた聖斗。一緒にいるジンも同様に感じている。正直、意識を保つのがギリギリな所である。もし、気絶すれば恐らく自分たちは殺されるだろうと思っていた。

「ここでいいか?」

姫城とすれ違って、ある程度離れた所で水波を地面に置いていいか聞いた。

「そこでいい。だが、さっきも言ったが・・・」

「それは俺たちの自由だ。俺達に命令出来るのは上官のみだ!」

そう言っているが聖斗は水波の首根っこを掴んだ状態で、ゆっくりと地面に下ろし、寝かせた。

「マキちゃん。動いちゃダメよ。それはさせないわ!」

「・・・」

「どうやら図星だったみたいね!」

姫城がこの後、行動しようとしていたことはこうだった。聖斗達が水波から離れた瞬間に、切り捨て殺すことだった。後ろにいる八薙とは距離が離れている為、間に合わないだろうとふんだからである。とにかく二人を穢れの岩戸に行かせれば敵の戦力が増してしまう。それを出来れば防ぎたかったという考えがあった。

「八薙!」

八薙は瞬間的に近づき槍のような長い針を姫城に向ける。

「二人共、さぁー、行くのよ。命令を果たしなさい!」

すると、二人はうなずき、速いスピードで移動を始める。姫城は水波の所にいって、しゃがんで声をかける。

「水波!大丈夫か。我だ」

「ひ・姫城さん!わたし・・・すみません」

水波は目を少しずつ開け、姫城であることを認識すると、少し涙をこぼし、己の不甲斐なさを尊敬する上官に謝罪した。

「貴様が殺されずに良かった。生きているだけで大したものだ!」

「ふふ、そうね!確かに頑張っていたかしらね。弱かったけど」

不敵な笑みを浮かべ、後ろで二人の会話を聞いていた八薙は水波と戦った時のことを思い出し、弱いなりに立ち向かってきたので二人の会話に混ざり、褒めるコメントをした。

「貴様の感想など聞いていない!」

当然、ナメたこと言ってきた八薙を睨みつけ、剣に炎を纏わせ立ち上がる。

「貴様は絶対にここを通さん!」

「ふふ、別にいいわ!あの子達が加われば大丈夫でしょう。それにしても・・・」

八薙の後方から感じていた気配というか圧気の流れが変わったので後ろを見ずに横目で読み取る。

「あの子達がやられるなんて・・・」

だが、落ち込まず、再び不敵な笑みを浮かべる。

「だけど、戦況には対して影響はしないわ!あの子達はどうしようかしらね」

あの二人、エリとレナをどう処遇するか少し考え込む。オロチは失敗や敗北は許されない。今までそうなってしまい掟により始末されてきた。それも上司もあるのだが同じ仲間同士の手によることのほうが多かった。最悪、連帯責任で上官共々、始末される場合もあるが、それは八薙がうまく言えば済む話である。

「殺すのだろ?」

「ふふ!」

姫城は炎の斬撃が八薙に向かって飛ばす。それを槍のような針で受け止める。そして、今度は八薙が毒を針に纏わせ、突きにいくとそこから武器と武器が混じり合い、再び激しい戦闘に突入していく。

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ディファレント・ワールド 悠霧 @yugiri23

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