第9話 狂う歯車
あの後帰ってきた彼らの顔はトヨさんが言ってた通り晴れやかだった。
私は余計なことは言わず、その代わりに彼らの労をねぎらう会を開催した。
普段は侘しい私の食卓だが、今日だけは違った。
何日眠ってたのかわからないような鍋や皿を引っ張り出した。
無論妻に先立たれてから私はたまにしか料理をしていなかった。それでも今回は頑張った。
なんせ子供達にとっては一つの一大イベントの終わりだ。
私はこれ以上なにか勉学をしろと彼らに言うつもりはなかった。
一年間にわたり彼らは闘ってきたのだ。
せめて、この結果が返って来るまでのわずかな時間だけでも………。
そう思い、慣れない格好をして料理をしたのだ。
唐揚げ、グラタン、ビーフシチュー……
量が明らかに四人で食べる量には多いとわかっていたが、それでもいいと思っていた。
余れば私が食べればいい。
食後には、みんなでコーヒーを淹れて遅くなるまで話をしていた。
自然と笑顔が咲く。
夢のような時間だった。
この時間がいつまでも続けばいいと思った。
しかし、夢はいつか終わる。
わかってる上で、私は目を逸らしていたのだ。
楽しそうな顔をしていても
何度もテストから帰ってきた子を見てきた私だから、わかる。
間違いであってほしい。
あんなに今は楽しそうにしてるのに。
帰ってきた時からずっと、バレないようになんとか悲しみをひた隠そうと努力している子がいる。
それが杞憂でないことなど、私自身が1番わかっていた。
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